(1月)
1月26日、東京都町田市小野路町
今日から樹木の名前調べの観察を開始した。そう宣言しておかないと、蝶よ花よ昆虫よという季節になると、なかなか樹木に目がいかなくなる危険性がある。そこでこのHPで宣言しておけば、少しはまじめにやるだろうという魂胆からである。1月22日の観察記で、動植物の名前なんか知らなくとも、里山で充分楽しく遊べるはずだ等と書いて、一週間も経たない内に、今日から樹木の名前調べをするのだと宣言するなんて、ちょいと可笑しいが、人間の心には右脳的な欲望と左脳的な欲望とが入り乱れていて、しかも、私なんぞ血液型がAB型なのだからなお更ひどくなる。また、ちょっと油断するとすぐ怠けてしまう悪癖があるためと、これから歳をとって行くと友達が必要だから、友達作りも兼ねてカルチャーセンターで樹木の勉強をしようと思っていたのだが、パソコンで一講座を見つけたには見つけたが満員ということであった。しからば、自分でやるしかないなということになって、知人に尋ねたところ、山と渓谷社から出ている樹に咲く花全3巻が図鑑として優れていると助言され、一巻がかつて肉体労働の方々が多く使っていた特大のアルミ製弁当箱位の本を買って来た。神保町の古本屋さんで運良く新本同様なもの見つけたので、9500円と1840円安く買えたわけである。もし、神保町へ行くことがあったら、明倫館、悠久堂、鳥海書店という古本屋と書泉グランデ、地方の本ばかり扱っているアクセスという書店を覗けば、動植物に興味を持っている方なら、何冊も買って読みたいと思う本が並んでいるはずである。
そんなわけで今日は樹木のお勉強と、いつものフィールドへ出かけ、初めは昆虫観察でとても馴染みの深いドングリがなる木、いわゆるブナ科から探索とあいなった。もちろん、弁当箱3つも持っていけないから、一つの木を違った角度から数枚写真として納めて、自宅で検索と言うわけである。私の知りたいのは多摩丘陵に生えている木なのだから、南や北や山地や高原等の木などはどうでも良い。しかし、そこだけを取り扱った本が無いのだから仕方が無い。最近の使わない機能がたくさん付いてる電化製品やカメラ等と同じである。しかし、そんな単機能の本がないのだから、これ幸いと私がいつの日にか多摩丘陵の樹木という本を、その図鑑と同じ手法で作れば良い訳である。等と意気込んで、手始めにたびたび青紫に輝くムラサキシジミが日向ぼっこをしている食樹、幅の広い葉を持つカシが何と言う名前なのかと調べた結果、アラカシであることが分った。そして知人に多摩丘陵で見かけるカシは何種類あるのですかと聞いたところ、あと私にも馴染みの深いシラカシがあると言う。このことからコナラやクヌギやシラカシの新芽や若葉も代用食として食べてはいるのだが、ムラサキシジミはアラカシが一番好きなことが分った。さて、1回フィールドへ行ったら、必ず一種類の木を撮影して名前調べと思っているのだが、樹木専用のスライドファイルを用意し、一樹種最低4カット、今年は70種類は何とかするぞ等と出来もしない目標を立てたため、折角だからと、大変お世話になっているクヌギとコナラの樹肌と冬芽を撮影した。葉や実や樹肌はだいぶ異なっていることは知っていたが、冬芽も比べて見るとだいぶ違うことが分って、樹木の観察を始めて良かったなー等とひとりほくそえんでいるのだから単純な男である。
さて、そんなことをしながら尾根道を歩いていると、若い夫婦がクヌギの幹に見入っている。何を見つけたんですかと尋ねると、シラホシコヤガやキスジコヤガの幼虫であると言う。主にクヌギの幹についている薄緑の地衣類(ムカデゴケ属)を食べ、小さな蓑虫のような巣を作る蛾である。その幼虫と来たらクヌギの幹についている地衣類そっくりで、その若奥さんが細い枯れた草の茎でつつくと、やめてくれーと身体をよじるので、やっとその存在が分る訳なのだ。かなり変てこりんな物を撮る私でも、この擬態は完璧で、何を撮ったか分らなくなるので撮影は遠慮した。もう帰ろうと、谷戸に降りて来ると野鳥をビデオで撮影している方に出会った。今年の年末から野鳥も撮影開始するぞと思っているので、いろいろ聞いてみると、ビデオ撮影もとても面白そうである。私が昆虫を専門にやっていると言うと、昆虫写真の大御所である栗林慧氏の昆虫ビデオの話で花が咲いた。写真は瞬間を撮影するので、どうしても珍奇種を撮りたい等となりがちだが、ビデオ撮影は動きを撮れるのだからカラスやスズメやムクドリ等の超普通種でも、例えば子育て等はとっても写していて楽しいのだと言う。昆虫だって、例えばアゲハチョウの成虫は知っていて撮影しているものの、卵、幼虫、蛹、食草等となると、ほとんど知らない撮影していない方が多いものである。今日は、樹木の普通種の各部位を観察し、野鳥のビデオ撮影をしている方の話を聞いて、超普通種だって自然観察の楽しさ一杯と再認識した次第である。
<今日観察出来たもの>花/オオイヌノフグリ、ナズナ、ホトケノザ、ウメ。樹木/アラカシ(写真左)、クヌギ、コナラ、ニセアカシアの葉痕(写真右)センダンの冬芽。昆虫/シラホシコヤガの幼虫、オオムラサキの幼虫、コカマキリの卵のう。その他/野鳥をビデオ撮影している方の野鳥の子育ての楽しいお話。
1月22日、東京都町田市小野路町
今日は格別撮影したいものがあるわけではないが、しばらく行かなかった私のメインフィールドへ出かけてみた。何か目的があってフィールドへ行くのと異なって、ただぶらぷら歩くのは最高である。こういう時に意外な傑作が生まれるのである。多分、目をギラギラさせて被写体を探し回ると、見えるものまで見えなくなってしまうのだろう。あるフィールドで良く出会うY嬢は、今日は何に出会えるかなとわくわくしながらフィールドを歩くのが楽しいのよ等と言っていたが、道端自然観察の楽しさの奥義であろう。私のようなプロモドキは撮影対象を探し回るのだから、きっと大切なものを見失っているに違いない。
今日は水曜日だから、毎週火曜日に広々とした谷戸にどっぷりと浸かりに来るバイクのおばちゃんは来ていない。長靴を履いてどんなに汚れても構わない服装で、颯爽とバイクに乗ってやって来るのである。月光仮面も顔負けである。もう既にこの谷戸周辺の雑木林で見つけて食べたキノコがなんと27種類にものぼり、必ずセリを中心とした食べられる野草を採集して帰るのである。この前来た時には、運悪く(?)つかまってしまって、私が昆虫に詳しいことを知っているので、越冬している昆虫をたくさん見せてあげた。オオムラサキ、ゴマダラチョウの幼虫、ジャコウアゲハの蛹、ウスタビガの空繭についた卵、ヤママユの卵といったものである。このおばちゃんは本当に好奇心旺盛の自然好きだから、撫ぜたり摩ったりいろいろな方向から見たり寝転んで見詰めたりと、一つのものに対して1時間見ていても飽きないのだから素晴らしい。私なんぞもカメラや三脚はどこかに捨て置いて、子供の頃のように木登りをしたり、藤の蔓を枝にかけてターザンごっこをしたりして、どっぷり里山で遊ぶ方が良いのかもしれない。花の名前、木の名前、昆虫の名前、鳥の名前など大して知っていなかったけれど、子供の頃の里山遊びの方が充実していたようにも感ずる。
谷戸から尾根に上がってしばらく行くと、一生懸命ホオノキの葉を集めている男性に出会った。何に使うんですかと聞くと料理に使うんですと言う。飛騨の高山に朴葉味噌ってあるでしょう。まあ、そういった具合に使うんですよと言う事である。それは分るんだけれども、褐色に変色した落葉の葉で良いのかなと思ったが、そこまで深く追求したら失礼に当たるので、いつもの谷戸への道をたどった。やはり谷戸に射す日差しは年末に来た頃と異なってとても明るい。谷戸田も周りの雑木林もともに変化は無いのだが、光が強くなったから明るく輝いて見えるのだろう。いつもここで昼食を摂るのだが、昼食と言っても菓子パンなのだが、防寒具を身に付けた格好ではさすがに日溜りでは暑い位である。あいにく今日は溜池に氷が溶けずに残っていてカワセミはやって来ない。昼間はこんなに暖かくとも夜から朝にかけては物凄く寒いのであろう。
帰り道、今年の春から存分に楽しませてくれるだろう美しいクヌギを主体とした平坦な雑木林へ行くと、持ち主の老人が枯れ枝を集めて束ねている。束ねる蔓は、もちろん雑木林で見つけた藤や葛の蔓である。シーズンになったら度々出向くので、少し仲良くなっておかないと思って話し込んだ。農家の方々は地下足袋姿でまた衣服が汚れることもあって、家へ帰っても農作業が終わる夕方まで、土間で昼飯を食べたり休憩したり暖をとったりするのだという。その時にストーブで燃やす薪を集めているという訳なのである。また、お爺さんは落ち葉掻きにも熱心で、雑木林の落ち葉は牛小屋に敷いて、牛の寝床として活用すると同時に、牛の糞尿が混じった落ち葉を外へ出して一年位寝かせると、すごく良い堆肥になるのだという。一頭の牛に必要な落ち葉は、かなり広い面積の雑木林が必要となるらしい。お爺さんの話は、化学肥料が出回るまでの里山の雑木林と人間生活との綿密なかかわりあいそのものであった。
<今日観察出来たもの>花/丘の上の梅(写真右)が咲き出しました。冬芽/ゴンズイ、リョウブ、ニセアカシア等。昆虫/チョウセンカマキリの卵のう。その他/お爺さんのとてもためになった里山のお話、シイタケ(写真左)。
1月20日、横浜市緑区新治市民の森
ニホンスイセンとロウバイの撮影が終わると2月10日位まで撮影する花はほとんど無くなる。それなら、成虫は勿論のこと、蛹や卵で越冬する昆虫たちを写せば良いのではと考えるかも知れないが、しかし、月日が経つに従って鳥などの天敵や風雪に耐えられなくて死んでしまうのか、年末に比べてぐっと少なくなる。また、土や塵や埃などが付いてか越冬したての新鮮な輝きが失われてしまう。落ち葉捲りは、落ち葉自体が湿り気を帯びて黒褐色に変色し始めているから捲る気にもならない。そんなわけで私にとっては、この時期が一年で最も暇な言わば農閑期ということになる。いづれ超望遠レンズを手に入れて、このHPに鳥のへやを作るために、この農閑期を充てようと考えているのだが、来年以降になりそうである。
今日は日溜りに咲き出した路傍の草花を写そうと、新治市民の森に出かけた。この辺りは横浜市の上水施設があるために、広大な緑地が残されている。四季の森公園から上白根の西ひかりが丘団地を経て、三保市民の森へ行き、最後に新治市民の森まで歩くとかなり長い緑の中の道端自然観察が楽しめる。私はかつてこの辺りに蝶の観察に5年間も毎週出向き、分布の調査をした懐かしいフィールドである。その時観察した蝶は56種類にものぼり、その後にジャコウアゲハ、ギンイチモンジセセリ、温暖化のために北上を果たしたクロコノマチョウ、ツマグロヒョウモンを観察しているので、60種類の蝶を見たことになる。新治市民の森は、現在もI氏が熱心に調査を続けていて、これにプラスしてムラサキツバメが見られたと言う。しかし、開発に伴ってホソバセセリやミスジチョウ等が見られなくなったと言うから、総種数は15年前と変わりがない。
かつて新治町と言えば、文一総合出版から出版されている−カタクリの咲く谷戸に−という本を見れば分るように、水田の広がる谷戸であった。しかし、国の減反政策によって田んぼはほとんど埋め立てられ、生き物の賑わいはかつてに比べてかなり減少した。そして多くの方の力によって市民の森として緑地は残ったことは残って万歳三唱なのだが、昆虫を観察する者にとって、疑問符がつく事柄も多く見受けられる。メインの道は舗装されて両脇の道端の野草はなくなり、道と雑木林の境は土留めされ、雑木林の手入れの際にウラゴマダラシジミやイボタガの食樹であるイボタ等のみすぼらしい低木は刈り取られ、美観のためか林の中の風倒木や朽ち木は片付けられてしまうのである。これらの事は多くの種類の昆虫たちの生活の場を奪うことに繋がる。市民の税金で賄っているのだから、多くの人が来てくれ、しかも、安全でなければならないわだ。以前、ボランティアの方々が桜の木を植えて花見をしたいなどと言っていたが笑止千番なことであるのだが、昆虫観察等と言う極々少数派の声など笑止千番と返り討ちにあうことだろう。
今後、新治市民の森がどのように管理運営されて行くのか分らぬものの、猛威を振るうアズマネザサやモウソウチク等の一部を除いて、森を構成するどのような草木でも大切にしなければ、それに依存する昆虫は減り、その昆虫を食べる鳥たちも減少して、生き物たちの賑わいは次第に減じて行くことだけは確かである。私のような者から見ると間違った管理運営によって、新治市民の森が、そこに暮す動植物の減少が著しい横浜市の各所にある市民の森や自然公園、ふるさと村等の二の舞にならないことを願って止まない。交通は東急田園都市線青葉台駅下車、若葉台行きバスで郵便局前下車、少し戻って右手に入ると市民の森の駐車場(平日は休み)に着く。
<今日観察出来たもの>花/オオイヌノフグリ(写真右)、ホトケノザ(写真左)、ナズナ、セイヨウタンポポ。昆虫/オオカマキリの卵のう、ハラビロカマキリの卵のう、チョウセンカマキリの卵のう、ナガコガネグモの子供部屋、ヒメアカタテハの蛹、ナナホシテントウ等。
1月18日、横浜市青葉区元石川町
今日は別段撮りたい物もないし、まだ、歩いていなかった町田市小野路町の東半分の地域で、北風に揺れる変な物の昆虫を撮影しようと家を出たのだが、昨日、神代植物公園で撮影できなかったムクロジの葉痕を急に撮影したくなって、青葉区元石川町へ寄り道した。ムクロジは落葉高木だから、種から伸びたばかりの若木か株立ちしている若木を見つけないと撮影できない。神代植物公園にはバラ園の傍の売店横にあるのは高木で、種が落ちて伸びたばかりの若木もあったにはあったのだが、鉛筆のような太さのために葉痕も貧弱で撮影を諦めたのである。ムクロジというととても懐かしく、子供の頃、昔の名主さんの裏庭にあって、果実をとって石鹸として遊んだのが懐かしい。図鑑を調べてみると絹織物の洗濯や洗髪用に使われたらしく、今で言うシャンプーであった訳である。また、はねつきの羽の玉の部分にこのムクロジの種子が使われていることは有名である。
私の家のルーツは、江戸の昔に薩摩藩を脱藩して流れ流れて綱島村の名主さん宅の用心棒として雇われ、お嫁さんを吉田村(現在の新吉田町)から貰ったために性を吉田としたわけである。このため名主さんのお声がかかれば、どんな時にもすぐかけつけられる名主さんの家から一番近い場所に居を構えていたのである。名主さんの庭にはとても珍しい植物が植えられ、大きな池には様々な魚が住んでいて、まあ、私が動植物に興味を持って、このようなホームページを開くことになったのも、この頃の経験が大きく作用しているに違いない。
ずいぶん横道にそれてしまったが、春分の日の頃、是非一度この元石川町へ出かけて欲しい。丘の上には数え切れないほど多くのピンクの花を付けるハナモモの木が栽培されていて、クリーム色のトサミズキや純白のハクモクレン、シデコブシ等が彩りを沿えて、恐らく極楽浄土とはこのような華やかな所であるに違いないと感ずるはずである。しかし、残念なことに、最近、多くの人に知れ渡って来たためか、私もその一人であるが、カメラを抱えた方々がたくさんやって来るけど、かなり広い場所なのでゆっくり楽しむことが出来るだろう。近くに美味しいラーメン屋さん等もあるから身軽な格好で行くことお勧めする。交通は、東急田園都市線の多摩プラーザで降りて、柿生か虹ヶ丘行きのバスに乗り、保木入口で降りて進行方向左手の丘の上である。
<今日観察出来たもの>花/ソシンロウバイ、カンツバキ。冬芽/ムクロジ(写真右)、アカメガシワ、ヌルデ、クズ(写真左)、アジサイ等。
1月17日、東京都調布市都立神代植物公園
まだ少し早いかなと思っていたのだが、先日、小石川植物園でお会いした方が、都立神代植物公園でロウバイが咲いていましたよと言うので出かけてみた。かなり花に詳しい方なら良いのだが、ロウバイと言うと少し早く咲くソシンロウバイと間違えている方も多く、また、ソシンロウバイとロウバイを一括してロウバイと呼ぶ方も多いので要注意なのである。ソシンロウバイは花の芯が黄色だが、ロウバイは赤褐色なのである。案の定、ほんの少し咲き出した梅林に隣接した所に咲いているロウバイは咲き初めで、ソシンロウバイは花期をすでに過ぎていた。ともに芳香を放つ花なので、かすかではあるが、良い香りが穏やかな日和の空気に漂っていた。
神代植物公園へ行ったら、まず、入場無料の駐車場裏のグリーンギャラリーのある公園の方へ行って見ることをお勧めする。ここは意外な穴場で、知っている方しか来ないからとても静かで、入場料を払って入る本園よりも道端自然観察には優れている。各種の花や樹木は勿論のこと、例えばトンボなら、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボが普通に見られ、グリーンギャラリー前のスイレンの植えられた人工の池には、クロイトトンボ、キイトトンボがいたりする。また、春には年一回しか現れないツマキチョウが軽やかに飛び、初夏にはヒメクロオトシブミが一生懸命葉を巻き、夏なら樹液が出ているクヌギの木にカナブンが集まり、秋にはキチョウやキタテハがたくさん見られる。そう言って勧める私なのだが、実は目が飛び出る程の高い駐車料金が気になって、ここでじっくり腰を据えて自然観察をしたことがないのである。しかし、その気になったら1日中いても飽きないに違いない。時期が来たら今年は電車で行って、微小な昆虫を写すにはかかせないストロボも持参して、日が暮れるまで頑張って見たいと思っている。
今日の入場無料のグリーンギャラリーのある公園では、春一番に咲く花壇の花とも言える可愛らしい純白のスノードロップが、奥に入った所には僅かばかりだがフクジュソウが咲き出していて、春がもう既に始っていることを強く感じさせてくれた。なお、神代植物公園本園のフクジュソウはまだ芽も出ていない状況で、固い蕾をようやくほころばせたという感じのシナマンサクと同様に、見頃は2週間程先になりそうである。
<今日観察出来たもの>花/スノードロップ(写真左)、フクジュソウ、ソシンロウバイ、ロウバイ(写真右)、カンツバキ。冬芽/ニワトコ、リョウブ、ベニバナトチノキ、ムクロジ、サラサモクレン、アジサイ、フジ等。
1月15日、神奈川県秦野市渋沢丘陵
ここ数日風が無い穏やかな晴天が続いたが、今日は打って変わって北風の吹く寒い日となった。こんな日は家の中に閉じこもって、本でも読んでいた方が良いのだが、延ばし延ばしとなっていたニホンスイセンの撮影に出かけた。東名青葉インターから東名高速道路に乗ってしばらく走ると、真っ白に白衣を着飾った富士山が真っ青な空に映えて美しい。特に相模川の陸橋から見える富士山は、右手に丹沢山塊、左手に箱根の山々との中間にそびえていて、遠い昔には日本アルプスに引けを取らない我が国でも有数のスケールの大きな景観だったに違いない。今でこそ高いビルや鉄塔、住宅街等が立ち並ぶ厚木市街が邪魔をしているが、出来ることならタイムマシーンに乗って、源頼朝が活躍した頃に戻って、超広角レンズで撮影したいものである。
今日は本当に富士山が美く見えるから、平塚市の遠藤原や七国峠に立ち寄って富士山を写してからとも思ったが、渋沢丘陵にも富士山を眺めるのに格好の場所があるので、太陽光線が和らぐ10時半位まで、そこで富士山を写すことにした。渋沢丘陵で富士山が遮るもの無く良く見える場所は、震生湖の丘の上の駐車場から栃窪神社の方向に20分位歩いた所で、いきなり広々とした畑が開けて来るからすぐ分る。途中、美しいクヌギを主体とした雑木林の中で落ち葉を蹴飛ばしなが歩いて遊んだり、丹沢山塊が良く見える休憩所や相模湾が陽に輝いて見える場所などを通過するから、楽しく散策できるはずである。もちろん、春から秋にかけては道端自然観察には絶好の小道で、各種の昆虫や野草の宝庫である。
たまには違った場所に行けば良いと思うのだが、ニホンスイセンを撮りに震生湖にはもう何年も通っている。関東大震災の震源地に近く、小川が土砂崩れで堰き止められて出来たのだから、池のように小さくとも溜池やダム湖と異なって正真正銘の天然の湖である。ニホンスイセンは風がさいぎられる秦野福寿弁財天上の雑木林の窪地にある、地元の方々がオキナグサを保存栽培している児童公園の斜面に咲いていて、そこだけは寒中暖ありといった日溜りになっている。横浜の自宅のニホンスイセンは12月から咲いていたので、ちょうど良いかなと思って出かけたのだけど、あと1週間後位からが見頃である。去年の12月に雪が降ったりしたが、花暦は平年並みのスタートのようである。
もし、このHPを見て電車で出かけようと思う方がいらっしゃったら、小田急線の大秦野から名水が飲める白笹稲荷神社を経て震生湖に出て、丘陵伝いに渋沢駅に行くコースが一般的で、おそらくほとんどのハイキングガイドに載っているから参照されると良いと思う。
<今日観察出来たもの>花/ニホンスイセン(写真左)、ウメ。景色/富士山(写真右)、丹沢山塊、箱根の山々。
1月8日、東京都文京区小石川植物園
私が知っている撮影場所でシナマンサクが一番早く開花するのは、徳川将軍吉宗が開いた小石川養生所を引き継ぐ小石川植物園の正門を入ってすぐ右にあるシナマンサクである。今日はゴシュユという中国産の薬用樹木の冬芽に会いたくて植物園に行ったのだが、やはりシナマンサクも開花していた。そればかりでなくソシンロウバイ、ロウバイはもちろんのこと、オウバイと寒紅梅とカンボケも一輪だが咲いていた。すでに小寒に入って、いわゆる立春までを寒の内と言うのだが、花木の世界ではもう春が始っている。これから花の撮影も徐々に忙しくなって、越冬する昆虫たちや北風に揺れる変な物を追いかけてばかりいるわけにはいかなくなる。
小石川植物園は、そんなには広くないものの適度な管理で自然観察にはもってこいの場所で、今日はジョウビタキがいたし、モズもカワセミもいて鳥の観察は勿論のこと、昆虫ではアカスジキンカメムシ、アカスジカメムシ、キイトトンボ、シロコブゾウムシ、キマダラセセリ、アゲハチョウ、キタテハ、ヒメアカタテハ、ムラサキシジミと枚挙の暇が無い程多彩だ。去年、まだ撮影したことの無い、初めてのゾウムシにも出会ったものだが、死んだ真似の得意技にかかって、ポロリと地面に落ちて探せなかった苦い思い出もある位である。アオダイショウも健在だし、侮る無かれ小石川植物園と言うべきで、時間があったら一度出かけて欲しい場所である。
前述したようにこれから花の撮影に忙しくなるので、北風に揺れる変な物の植物篇、撮り残したゴシュユ(売店裏にある)の冬芽と葉痕を撮っておこうと出かけた訳だが、かなり以前、蝶のアオバセセリとスミナガシの植樹であるアワブキ(ゴシュユの傍にある)が知りたくて訪れた程だから樹木の種類は非常に多い。また、ネームプーレートもしっかり着いているからとても有り難い。朝10位から午後2時ごろまで各種の樹木の観察にはもってこいの場所である。
小石川植物園の見どころは、もちろん見事な桜が一番で、次にハナショウブ、ウメ、アジサイ、ハギと続くが、ハンカチノキの花も有名である。今日は大きなイチョウの木の周りで、複数の方々が落ち葉を掻き分けているので、何しているのだろうと見に行ったら、何と銀杏を拾いに来た方々だった。フライパンに塩を敷いて炒って食べると、とても美味しいことは分っているものの、あの臭いを電車の中に持ち込むには勇気がいるから、やはり近くの方々の楽しみと言うわけである。
<今日観察出来たもの>花/ロウバイ、ソシンロウバイ、オウバイ、カンボケ、シナマンサク(写真右)、ウメ。冬芽と葉痕/トチノキ、ゴシュユ(写真左)、ニワトコ、アジサイ、フジ、ヒメグルミ、オニグルミ等。昆虫/ハラビロカマキリの卵のう。
1月5日、横浜市緑区長津田町
今日は晴れてはいるが、昨日とうって変わって気温が低く風が強い。このような日は、日本海側は大雪に違いない。いよいよ冬らしくなって来た。毎年、年の初めにソシンロウバイを撮影に行くと、必ず北風に悩まされるが、今年も例年通りの天候となったわけである。もうすぐ小寒、続けて大寒である。これからしばらく、今日のような天気が続くに違いない。やはり昨日行って撮影しておいた方が良かったかなと思ったが、この位の風なら、待っていさえすれば瞬時だが風は止むはずである。
横浜市は東京に近く、丘陵地帯が多いこともあって、花木の栽培が盛んである。今日撮影するソシンロウバイも、多摩丘陵の一角で農家の方が栽培している畑である。いくら撮影のためとは言え丹精込めて作っている畑には絶対に入らないのだが、ここの畑は入って撮影してもお叱りを受けることはなさそうな管理状況なのである。しかし、そんな管理状況が災いして、強靭なクズの枯れた蔓が覆い被さっている所がだいぶある。昆虫の写真を撮る者にとって、クズは多くの昆虫たちを養う植物であり、広い葉は各種の昆虫たちの格好の休憩所となっていてとても有り難い存在なのだが、多くの植物にとっては迷惑甚だしい存在であるに違いない。
冬場に花を撮影する場合、早朝の光は余りにも固く冷たい。午前10時を回ってから午後1時頃までがチャンスとなる。しかも、春や夏のような緑のバックは望めず、あたり一面茶褐色だから、どうしても花を青空に抜きたくなる。しかし、前途したように冬は晴れていれば風がある。昨日のような暖かい風が無い日は、ごくごく稀である。それでも正味2時間程カメラを向けて、美しく撮影しょうと頑張ったのだが、いかんせん花期がやや終わりに近づきつつあり、クズの暴れ放題で断念せざるを得なかった。いかに撮影技術を磨いても、絵になるように咲いてなければどうしょうもない。
食事を済ませると性懲りも無く、昨日の続きのヤマウコギの探索にあちこち回った。子供の頃の記憶では、民家から少し山道を登ったような所に多くあった。若い葉はタラノキやセンノキと同様に食用になるので、決して立派とは言えず、また、刺があるにも関わらず、きっと大切にされていたはずだ。などとと考えて探し回ったのだが見つけることが出来なかった。飽食の世の中では、みすぼらしい刺のあるヤマウコギは邪魔物扱いされて切られてしまうのだろう。最後に、都筑インターが出来るまで私のメインフィールドであった港北区新吉田町倉部谷戸で、やっと立派なヤマウコギを一本見つけることができた。しかし、いかんせんタテジマカミキリの生息できる環境ではないので、もちろん見つけることは出来なかった。
それでも去年の暮れから探し回って、まだ撮影していなかったコカマキリの卵のうや、こんなに寒いにもかかわらずトタンの波板の囲いで暖を取っているヨツボシクサカゲロウに出会えたのはラッキーであった。コカマキリは何処のフィールドでも普通に産するのだが、卵のうとなると他のカマキリとは異なって見つけるのが難しい。オオカマキリは細い小枝や茎に、ハラビロカマキリやチヨウセンカマキリは、小枝や樹木の幹や石の壁等に産み付けてあるのだが、コカマキリは壁やたまに幹に産み付けられている。ことにトタンの波板が好きなようで、田畑に横にして置いてある竹竿に被せたトタン板や物置小屋のトタンの囲いに多いものである。かなり自然度の高い山里へ行けば、このような場所で必ず発見できるのだが、近場ではとても難しくなった。
<今日観察出来たもの>ソシンロウバイ(写真左)、コカマキリの卵のう(写真右)、ヨツボシクサカゲロウ、ヤマウコギ一本。
1月4日、東京都町田市小野路町
昨日、雪が降ったが横浜は積もってないし、まあ、大丈夫だろうと、ひたすら町田街道を高尾方面に向かって車を走らせた。目的地は、今年から本格的に始める多摩丘陵の昆虫たちの最北端と考えている丘陵地帯である。しかし、国道16号線にさしかかるあたりから、雪が積もり始めている。これはまずいと思ったが、フィールドだけは眺めてこようと目的地までは行ったものの、すぐにUターン。一路、私のメインフィールドである町田市小野路町へ引き返した。どうも国道16号線辺りを境にして、がらっと気温が変わるようである。このことは昆虫相にも現れていて、かつてはギフチョウ、現在はウスバシロチョウやヒメオサムシの南限の線と一致しているようだ。今日のUターンに懲りたのか、私の多摩丘陵の昆虫たちの地域は、ウスバシロチョウという大物が登場しないのが残念だが、この線より横浜よりの地域としようかななどと考え始めている。私の描く多摩丘陵は、緩やかな起伏に富んだ丘陵地帯なのである。
さて、町田市小野路町の谷戸に着くと、私の今年初めての来訪を待ちかねていたかのように、紺青だが暖かい青空が迎えてくれた。美しい雑木林の中に入って空を見上げると、コナラやクヌギを主体とした梢が、太陽に輝いてキラキラ光っている。ほんの数日前の年末にも来た筈なのに、その時には感じられなかったうきうきしたものを感じる。新年明けて初めてだから? いや、それだけでは無い程に雑木林は目に眩しいほどに美しい。今日は暖かいこともあって、雑木林から見上げる青空が、もうすぐ春ですよとささやきあっているかのようである。誰もいないこんな雑木林に寝転んで梢と青空を見上げて、健康で生きているって素晴らしいなどという幸福感を感ずるのは、私のような特殊人間だけなのだろうか。
さて、今日の目的は、年末に、とある多摩丘陵の南端のフィールドで見つけたタテジマカミキリである。とあるなどと秘密めいて書くのは、そのフィールドにたった一本あるヤマウコギに、たった一匹のみ見つけたからである。きっと、もっとたくさんのヤマウコギがあって、タテジマカミキリもいるのだろうが、私が一生懸命探しての結果であるから、そのフィールドでは希少種であることには違いない。もし、このHPを見て採集されてしまったら大変だと考えてのことである。以前、そのフィールドに良く来る方が野生のカタクリとクマガイソウを見つけたが、私であっても教えてくれなかった。そんなに信用できないのかなと、その時思ったものだが、今、その方の気持ちが良く分る。
そこで広大なる町田市のフィールドなら、たくさんのヤマウコギとタテジマカミキリに会えるはずだと、新年早々、血眼になってあちこち探したが、ヤマウコギを一本見つけただけで、お目当てのタテジマカミキリには出会えなかった。もちろん、同じウコギ科で、タテジマカミキリの食樹とされるセンノキ(ハリギリ)、タラノキも探して調べたのは言うまでも無い。
<今日観察出来たもの>雑木林の梢(写真左)、フユシャクの仲間、ヤマウコギ一本。 *写真右が、他所で見つけたウコギの枝になりすましたタテジマカミキリ。小枝に身体がすっぽり嵌るように、口器で削った窪みに、足でしっかりと抱きついています。
1月3日、横浜市都筑区茅ケ崎公園
例年なら4日から道端自然観察を開始するのだが、今年はラッキーなことに3日に時間が取れた。前日の天気予報によると、午後から雨という生憎の空模様である。起きてみなければお天気なんて分らないと思っているのだが、最近の天気予報は当たることが多くなった。いつもなら新年最初の撮影は、青空をバックにしたソシンロウバイということになっている。ウィークエンド・ナチュラリストを自称している私が、園芸品種である花木を新年始めに追いかけるなんて、どうして?と疑問に思う方も多いかもしれない。しかし、枝一杯に花をつけた何本ものソシンロウバイに囲まれて、梅に似た芳香を嗅ぎ取ると、やって来た新春を鮮やかに感じ取れて楽しくなる。でも、今日は一日中青空は望めない。そこで去年の積み残しとなっていた、茅ケ崎公園での落ち葉捲りによる越冬する昆虫観察が、今年最初の道端自然観察となった。
茅ケ崎と言っても湘南海岸に面する茅ケ崎ではない。横浜市都筑区の港北ニュータウンに僅かに残された雑木林である。何処の地域でも身近な自然を愛して諸活動を続けている方がいるものだが、大変お世話になった故大野道胤氏等の地道な活動があってこそ、港北ニュータウンの各所に狭いながらも雑木林が残された。茅ケ崎公園には、土・日のみ開園する自然生態園もあって、女性のKさんが中心となって里山保全に力を入れている。このためか現代的なマンションやモダンな住宅に囲まれてはいるのだが、意外と多種多様の昆虫が生息している。
今日の自然観察は落ち葉の下で越冬する昆虫たちである。このため落ち葉を捲る必要が生じる。狭い雑木林と言ったって、数え切れないほどの落ち葉があるのだから、昆虫たちが冬越しの寝床として好適と判断した環境にある落ち葉を重点的に捲らなければ、一匹の昆虫にも出会えないということになる。そこで長年の昆虫愛好家の経験と私の僅かばかりの経験から、エノキやミズキ等の大木がある陽の差さない北側に面した窪んだ地形の場所を、昆虫たちは好むようである。一般の方は、何故そんな寒々しい場所で?と思うかもしれない。私たち人間なら風がさいぎられる南斜面の日溜りが一番と考えるはずである。しかし、落ち葉で越冬する昆虫たちは、昼と夜の気温の較差が激しい所や乾燥する所が苦手なようなのである。
さて、そんな窪地を見つけたら、大木の根元の周りに積もる落ち葉を捲ってみよう。一枚一枚と捲っていたら途方も無い時間がかかってしまうので、手袋をはめた手のひらで、つかめるだけの落ち葉を軽く握って調べるのが能率的である。また、根元の周りと言っても、やはり風通しの悪い暗くなる側で、少しぐらいの風では吹き飛ばされない太い根と太い根の間とか、株立ちしている木なら中心に溜まった落ち葉が好ポイントとなる。
今日は午前中の2時間半程の時間を、茅ケ崎公園での落ち葉捲りによる昆虫探しにあてる予定であったが、雪が降ってきたために、僅か1時間の観察となってしまった。しかし、硬く凍った小雪が落ち葉の上に落ちる音は、雨とは異なって、乾いた感じの音がするものだということが分ったのだから、良しとせねばなるまい。
<今日観察出来たもの>エサキモンキツノカメムシ、チャバネアオカメムシ、アカシマサシガメ、アオクサカメムシ(写真右)、ゴマダラチョウの幼虫(写真左)、ワカバグモ。