第6章…測光方式と露出補正

■各種の測光方式

 カメラに内蔵されている露出計による適正露出を計る方式(測光方式)も、最新オートフォーカス一眼レフカメラには下記のような種類が搭載されています。

●多分割測光
 メーカーによってその呼び方が変わり、マルチパターン測光とか評価測光とかハニカムパターン測光とか呼ばれています。いずれもファインター画面を6分割とか10分割とかに分けて、被写体や撮影状況、使用するレンズやピント位置などによって、あらかじめコンピューターに蓄積された膨大な撮影データから適切な露出を割り出す方式です。ネガカラーを使った撮影では失敗することはまず無い方式で、ポジフイルムを使用した撮影でも、人物や風景、スナップなどの一般的な撮影なら、多くの場合、露出の過不足が許容範囲内に収まります。しかし、極端な構図や接写が多くなる花の写真では適正露出に至らぬ場合が多く、後述する露出補正を加える必要が生じます。

●中央部重点測光

 メーカーによって呼び方が変わりますが、ファインダーの中央部を重点的に測光する方式です。多分割測光はメーカーによって、あるいは同じメーカーであっても機種によって異なった結果をもたらす場合が多いものです。しかし、昔からある伝統的なこの測光方式はメーカーや機種による違いはあっても、理解可能なアナログ的な多少の差ですから、この方式に慣れておけば、メーカーや機種が異なっても、また、ほとんどこの方式であった昔の一眼レフカメラも使いこなせます。お手持ちのカメラにこの測光方式が搭載されていたら、ポジフイルムを使用した作品づくりには、迷わずこの方式で、後述する露出補正を理解して使いこなすことが上達の早道です。

●スポット測光

 部分測光とも言い、中央部のピンスポット的なごく小さな丸い部分で測光します。普及版のカメラには搭載されていない場合も多く、また、写真撮影に精通したベテラン向けの測光方式です。逆光や夕焼けなど適正露出が分かりづらい場合、雪の中の人物撮影や舞台撮影などの明暗差が激しい場合など、標準的な反射率の色を見つけて、その部分をこの方式で計って撮影します。しかし、いちいちこの方式にセットして、マニュアルモードで適正露出をつかみ、再構図してシャツターボタンを押すというような撮影手順になる場合が多く、中央部重点測光と露出補正を加えて撮影した方が遙かにスピーディで能率的であると思います。

■露出補正のテクニックは必修

 ここまで厳密な定義もなしに適正露出とか標準露出という言葉を使って来ましたが、露出に関する考え方には3通りの意味合いが含くまれています。

●カメラの露出計が示す露出
 カメラには露出計が内蔵されています。カメラ店で販売されている単体露出計には入射光式のものと反射光式のものがあります。この違いの詳しい説明は省きますが、カメラに内蔵されている露出計は反射光式の露出計です。被写体に当たった光が反射してレンズを通ってフイルム面に到達する光の量を計っているわけです。そして前述した各種の測光方式に従って使用するフイルムが適正に露光する適正露出を示してくれるわけです。この適正露出をカメラが示す適正露出と呼んでいます。しかし、カメラに内蔵される露出計はもちろん単体反射光式露出計も、被写体に当たってはね返る反射率18%の被写体を基準として適正露出を示すことになっています。具体的にはどういうことかと言うと、測光方式が中央部重点測光の場合、カメラのファインダー中央部付近に反射率18%の被写体が大部分を占めていれば、カメラに内蔵される露出計が示す適正露出でシャッターを押せば適正露光の写真が得られということです。しかし、中央部付近に反射率の高い白や黄色などの明るい被写体が占めていれば、カメラに内蔵される露出計が示す適正露出に従ってシャッターを押すと露出アンダーの写真になり、逆に中央部付近に反射率の低い黒っぽい被写体が占めていれば、カメラに内蔵される露出計が示す適正露出に従ってシャッターを切ると、露出オーバーの写真になります。
 これはカメラに内蔵されている露出計が、反射率が高いと反射率18%の光が多く来たと思って、フイルムを適正に感光させようとしてシャッター速度を速めたり絞りを閉じたりしてしまうために起こるのです。また、逆に反射率の低い場合は反射率18%の光が少なく来たと思って、フィルムを適正に感光させるためにシャッター速度を遅くしたり絞りを開いたりたりしてしまうために起こるのです。
 以上のようにカメラに内蔵されている露出計による適正露出では、被写体の反射率によって適正とは言えない写真が出来上がって来ることになります。ネガカラーフイルムを使用していればプリントの時に露出の過不足は補正してくれますが、ポジフイルムでは致命的なものとなってしまいます。

●見た目通りに写すための露出



























 それではどのようにすれば見た目通りの写真が得られる露出を得られるのでしょう。この露出こそ写真撮影における適正露出と言えます。この露出を得るにはカメラ内蔵の露出計の基準となる反射率18%の明るさとはどのようなものであるかを理解しなくてはなりません。反射率18%の明るさとは人物や風景、街並みなどのスナップ写真で得られる平均的な反射率と言われています。具体的にはコダック社が発売しているグレーボードのネズミ色やフジフイルムのフイルムパッケージの緑色とされています。花でたとえると明るくもなく暗くもない赤い花の色といえましょう。
 このような反射率18%の色の被写体や各種の色が混じっているが平均すると18%になる被写体が、中央平均測光で画面中央付近に大きな面積を占めていれば、そのままシャッターボタンを押せば良いことになります。もしそれより明るい色ならば明るさによって露出補正をプラスにしなければ適正な色としてフイルムに写ってはくれません。逆に、暗い色ならマイナス側に露出を補正せねば適正な色に写ってくれないのです。

例えば
(測光方式は中央重点平均測光、被写体は中央付近にあるとし、また、使用するフイルムの種類、カメラメーカー、機種よっても若干異なります)
・タンポポのような明るい黄色や白い花を大きく入れる⇒プラス1.5 または2補正。
・キンセンカのようなオレンジ色の花を大きく入れる⇒プラス1または1.5 補正。
・各種の花に普通なやや明るい赤い色の花を大きく入れる⇒プラス0.5 または1補正。
・暗い赤や普通の明るさの紫や青の花を大きく入れる⇒プラス0.5 または補正無し。
・バイオレット等の暗い紫や褐色の花を大きく入れる⇒マイナス0.5 または1補正。
といった具合の露出補正が必要ですが、片隅にこれらの花を入れる構図では、中央重点平均測光での撮影の場合、中央部の明るさが基準となりますから上記のような補正量にはなりません。例えば、タンポポを片隅に小さく入れたが中央部が暗い土であった場合などは補正なしまたはマイナス側に補正せねばならなくなる場合も多いものです。
 次に逆光や水面の反射、木漏れ日、空などを背景とする場合も、プラス補正が必要となって来ます。その補正の量はまちまちですが、良くある青空を背景とした花の写真ではプラス1または1.5 の補正が必要となります。少しでも白い雲がかかっていると補正量は多目になります。
 このように書いてくると難しそうですが、経験を積めばおおよその見当がつくようになります。最初のうちはクロマイシロップ(黒っぽい場合はマイナス補正、明るい場合はプラス補正)と覚えて、補正量を変えて何枚か写してみましょう。

●作品としての露出

 以上のように適正露出について書いてきましたが、正確な色の再現が必要な図鑑的な写真を撮る場合以外は、これでなくてはならないという露出はありません。作品として意図的に露出オーバーや露出アンダーにする場合も多くあります。また、人それぞれで明る目のものが好きな方や暗くて落ち着いたものが好きな方もいます。このように作品としての露出や各人それぞれの露出があるわけですが、偶然そうなったのではなく、見た目通りに忠実で、花の微妙な細部までを再現できる露出を習得した上で、意図的に露出をコントロールしたいものです。