第9章…あると便利なアクセサリー
花の写真に必要な機材は、基本的に前述したカメラとレンズと三脚とフイルムですが、レンズ保護と有害な光をカットするために、フードとプロテクターフィルターは必ずつけておきましょう。この他に使用頻度は何を撮るかによって変わってきますが、あると便利なものをあげてみます。しかし、前述したように野外での撮影はなるべくシンプルにということが一番で、便利だなと思って購入した物が、押入の片隅に眠っている場合も多々あります。十分な検討の上に購入することをお勧めします。
■フードとフィルター
フードは順光線(頭の後ろに太陽)の場合には必要ありませんが、逆光の場合には鮮明な写真を得るための必需品です。また、フードをつけていると、木や石にレンズをぶつけた場合でも、フードにあたってレンズ本体の損傷が和らぎます。フイルターは各種発売されていますが、レンズにほこりや汚れ、水滴などが直接つかないようにするために、プロテクターフィルターは必ずつけましょう。プロテクターフィルターも思わぬ時のレンズの損傷を和らげます。この他、花の写真撮影で使用されるフイルターは、水面や葉の反射を押さえるPLフィルターや、ソフトフォーカスフィルターなどが使われますが、写真撮影に慣れてから順次揃えれば良いと思います。また、自然のままに撮影することを基本とする方には、フィルターはプロテクターフィルターだけで十分です。
■レリーズ
三脚にカメラをつけていてもシャッター速度が低速になると、カメラブレやシャッターを押す時の手ブレなどの各種のブレが発生します。特に、レンズの明るさが暗い200mm
前後の三脚座のついていないレンズを使用する時は要注意です。また、一般の明るいが三脚座の無い望遠レンズや望遠ズームレンズに、後述する中間リングやクローズアップレンズをつけて撮影倍率を上げて使用する場合にも注意が必要となります。花の写真は接写が多くなり、三脚にカメラをしっかり固定していても、指でシャッターボタンを押す場合、使用するレンズの焦点距離の1/3
位のシャッター速度になったら迷わずレリーズを使いましょう。また、レリーズは無理な体勢での撮影や風待ちの時などにあるととても重宝するアクセサリーです。
■ローアングル用ファインダー
山野草や花壇の花のような背丈の短いものの撮影には、ローアングルからの撮影が多くなります。また、地面すれすれのローアングルになる時も多く、このような場合、ファインダーを覗くのにとても窮屈な姿勢となり、時には地面に寝ころんでの撮影になる場合もあります。以上のようにすれば何とか撮影出来ますが、無理な姿勢を続けることは身体に悪いし、寝ころんだら周囲の草花を多量に押しつぶすことにもつながります。また、時には犬や猫の有り難くない落とし物で衣服が汚れる場合すら起こります。このようなローアングルの撮影には、真上からファインダーを覗けるアングルファインダーが便利です。また、逆に高いところに咲いている木の花を撮影する場合、首を後ろに曲げて見上げるような恰好となりますが、こんな時にもアングルファインダーを使用すれば楽な姿勢で撮影できます。しかし、アングルファインダーはメーカーによっては高額で、しかも取り付けの面倒くさいものもあります。このため、一般の方には購入しても使用頻度の低いアクセサリーとなってしまう可能性がありますので、十分に考えからの購入をお勧めします。
■ローアングル用ミニ三脚
前述した花の写真に向いたローアングル可能な三脚を使っていたとしても、もっとローアングルになればと思うことがしばしば起こります。このような場合、小型で軽量の携帯に便利なローアングル専用のミニ三脚を持っているとスムーズです。人によってはビーンズバックを用いている場合もあります。また、工作の得意な方は板切れに自由雲台を取り付けて自作することも出来ますが、バックに収納する事を考えるとミニ三脚が無難です。これに上記のアングルファインダーやレリーズを併用して、一味違った独特なローアングルの世界をものにしましょう。
■レフ板
逆光で撮影する時、被写体とする花は暗く影になっています。このような場合、レフ板で光を反射させて被写体を明るくして撮影することになります。あまり強い光を反射しますと不自然になります。また花弁の薄い花なら透き通ったまま写したり、逆に、シルエットとして写すことにも味があります。レフ板はアルミホイルを揉んでボール紙に貼り付けて自作することも可能です。また、携帯に便利な円形のレフ板も発売されています。いずれにしてもレフ板を一人でうまく操作するのは非常に面倒くさく、風が吹いていると尚更です。このためケーブルレリーズを付けて、片手を比較的自由に使えるようにするのが肝要です。
■ストロボ
ストロボを使って独特な花の写真をものにしている方もいますが、一般的にはカラスウリなどの夜に開花する花、オシロイバナやユウガオ等の夕方になってから開花する花以外、ストロボは花の写真には必要ないと思います。しかし、日中シンクロの手法を使って軽く光を発すればレフ板と同じような効果が得られるし、夕方近くの光で赤茶けた色合いに映るのを防ぐこともできます。また、花の細部の造りを鮮明に拡大して撮影するような目的があるのでしたらストロボはとても有効です。この場合は一般的なストロボでなく、影の出ないリングストロボや2灯式のマクロストロボが使われています。
■中間リング
別名を接写リングともいい、カメラとレンズの間に装着して最短撮影距離を短くするためのアクセサリーです。最短撮影距離の長い一般レンズが、マクロレンズに変身するという便利なものです。一般にズームレンズではなく単焦点レンズに使われ、等倍までのマクロレンズなら等倍以上の拡大撮影が可能となります。マクロレンズでは発売されていない明るい単焦点レンズを使って、被写界深度の浅いボケの大きく美しい花の写真を撮影している写真家もいます。但し、無限大にはピントが合わなくなり、レンズはやや暗くなってファインター上でのピント合わせもしずらくなります。標準ズームレンズに取り付けた場合、メーカーやレンズの機種にもよりますが、一番薄い中間リングを使用しても広角側では被写体とくっつく程となり撮影は困難となります。また、ズーミングするとピントがズレてしまいますので、あらかじめ焦点距離を決めてからピントを合わせる使い方となります。この為、ズームレンズに中間リングを使用した撮影法は一般的ではありません。
■クローズアップレンズ
一般のフィルターと同じように、レンズの前面にねじ込み式で装着します。レンズは暗くはなりませんが、無限大にはピントが合わなくなります。また、画面周辺部の画質は少々落ちますが、花の写真のように中央部付近に被写体があるものなら問題はありません。このため、ある程度絞りを絞って使用する方が画質的には安心です。ズームレンズに取り付けた場合、一度ピントを合わせるとズーミングしてもピント位置は変わりませんのでとても便利です。なるべく性能の良いクローズアップレンズをお勧めしますが、2枚重ねの厚みのあるものですと、広角側で四隅がけられる場合が有りますので注意しましょう。このように大変便利で安価なアクセサリーですが、ピントを合せられる撮影距離の巾が狭く、このため、何枚もの度の異なったものを持っていないとあらゆる花の撮影に対応できないのが難点です。また、フィールドでの取り外し交換は非常に面倒です。しかし、広角から中望遠まで画角を変えて写せる手軽さも捨てがたく、そう割り切って装着したままの標準ズームレンズを一本用意して広角マクロズームレンズとして使うのも良いでしょう。まずクローズアップレンズを一枚買ってみようという方には、No.3がお勧めです。
■テレコンバーター
カメラとレンズの間に装着すると、最短撮影距離は変わらぬもののレンズの焦点距離が長くなるアクセサリーです。このため、一般のレンズでも低倍率のマクロレンズに変身します。普通、1.4
倍ないし1.5 倍と2倍になるものが発売されていますが、レンズが暗くなり画質や手ブレも心配ですから1.4
倍程度にとどめておく方が無難です。また、等倍マクロレンズに装着すると1.4倍ないし2倍の拡大撮影ができます。
■撮影小物類と手帳
花の撮影に持って行くと便利な小物類は、周囲の不必要なものをカットするハサミ、しばし止めておくための洗濯バサミ、花の揺れを少なくするために茎に添える棒を作るためのナイフ、ひもなどは必需品です。しかし、それらの使用に関しては、自然はあくまでもみんなのものだということ、手を加えることによって自然ではなくなるという2点をいつも頭に入れて、なるべくこれらの物を使わずに撮影しましょう。また、絞り値や露出補正値、花の名前などを、その場で記入するための鉛筆付きの手帳も必ず用意しましょう。こまめにデータを手帳につける方は、花の写真の腕前もぐんぐん上がります。
■その他の携行品
植物園や公園では必要無い場合もありますが、自然度の高いフィールドへ出かける時は藪蚊対策が必要です。防虫スプレーや蚊取り線香(腰にぶら下げて使用)はもちろん、蚊に刺された時のかゆみ止めは必携の医薬品で、初夏から秋にかけては、紫外線が強いため日焼け止めクリームも用意しましょう。
■バック
以上のようなアクセサリーはもちろんのこと、カメラや交換レンズ、フイルム、傘、弁当、水筒、医薬品などをフィールドへ持って行くわけですから、これらを収納するバックが必要となります。バックはショルダー式とリュック式の2種類がありますが、野山を歩いて撮影するのですから、リック式のものが一番で、なるべくコンパクトのものを選びたいものですが、後々の事を考えると収納に余裕のある大きさにしておきましょう。