2003年:つれづれ観察記
(3月)


3月30日、横浜市青葉区元石川町

 例年なら春分の日の頃に満開となる横浜市青葉区元石川町のハナモモが、やっと満開になった。しかし、そのためか、ぱっと咲いてぱっと散る桜のように、今年のハナモモの命は短いようで、見頃はあと2、3日のようである。ここのハナモモは、首都圏にモモの節句の頃に市場に出すために植栽されている。しかし、一部には全ての枝を刈り取ってしまったものも見受けられるのだが、毎年、どういうわけかほとんどのものが枝一杯に花をつけて咲いている。ほとんどがピンクの花色のものだが、白や紅色のものもあり、付近にはトサミズキのクリーム色、名前は分らないがスモモのようなバラ科の樹木のやや紅がかった白い花が咲き乱れているのだから、それはそれは桃源郷と言っても嘘偽りの無い美しさである。
 実は昨日、様子を見に行ったのだが強風の為に撮影を諦めたのだが、今日は風も無く薄曇で絶好の撮影日和となった。この撮影場所も依然に比べ沢山の方に知れ渡って、高級カメラを抱えた方々が様々な角度から撮影にいそしんでいる。しかし、植物園と異なってゆったりと撮影できる。また、メインとなるハナモモ畑以外にも付近を散策すると、ボケ、シデコブシ、シダレザクラ、ハクモクレン、レンギョウ、ヒュウガミズキ等の花木も植栽されていて、もちろん多くの路傍の野の花も見られ、雑木林だって近くにあるのだから、この時期には欠かせない花の写真のフィールドとなっている。交通は1月18日の同地の観察記を参照されたい。なお午後は、川崎市黒川と青葉区寺家町に寄って見たが、シュンランやクサボケが咲いて、ミヤマセセリやモンシロチョウ、キアゲハ等が飛んでいた。いよいよ今週末は桜で、花よ蝶よ虫よの絶好のシーズンが開幕となる。

<今日観察出来たもの>花木/ハナモモ(写真左)、トサミズキ(写真右)、ボケ、シデコブシ、シダレザクラ、ハクモクレン、レンギョウ、ヒュウガミズキ、オウバイ、ツバキ、ミモザ、カイドウ等。 


3月23日、神奈川県平塚市土屋〜秦野市弘法山

 昨日は植物園で各種の花をアートしたから、今日は広々としたフィールドへ行くたくなったのだろうか平塚市土屋へ行って来た。今日はとても暖かく風も穏やかで本格的な春を予感させる陽気となった。このため冬の凍て付くような濃紺の空はなく、水蒸気に満ちたやや乳白色の空が広がっていた。カントウタンポポの咲く南に面した斜面では、モンシロチョウ、モンキチョウ、越冬したキタテハ等が軽やかに飛び、各種の野の花の間をナナホシテントウが忙しく動き回っている。雑木林の縁の低木では、ムラサキシジミが日光浴に余念がなく、ずんぐりむっくりの縫いぐるみのような格好の、春にだけ現れるビロードツリアブも発生を始めていた。いよいよ本格的な昆虫シーズンの到来を予感した。
 何故だか知らないが小さな生き物である昆虫がとても好きである。私が生まれて物心がついた時、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、ニワトリ、チャボ、ウズラ、コイ等が家に飼われていたので、知らず知らずの内に動物好きになったのだろうか。それもあるようだが、何と言っても昆虫は眼と口を持っていて、系統的にははるか遠い関係なのだが、私たち人間に近い生き物のような気がして、とても親しみを感じてしまうのだろう。カメラ雑誌のフォトコンテストで、いくら美しく花を写してもなかなか入選しないが、そこに昆虫や蜘蛛、カタツムリやアマガエルなどの小動物が入れば、必ずと言って良いほど賞金3000円の佳作位には入選する。このように小さな命の存在は、写真を生き生きとさせ、ドラマを感じさせ、とても親しみ深いものとするのであろう。フォトコンテストを狙う方は、美しい花や植物の写真+小動物と肝に命じて撮影されたら良いと思う。
 話はだいぶ横道に逸れてしまったが、今日は各種の春の野の花を図鑑的に撮影しようと思って行ったのだが、ヒバリが鳴く広々としたフィールドへ来ると、広角レンズの出番が多くなる。残念なことに丹沢をバックにしたツクシの写真は撮れなかったが、菜の花やナズナ、ヒメオドリコソウ等を広角接写で撮ることが出来た。谷戸に降りると野草摘みの方が来ていて、小川の水を引き込んだ野菜の洗い場で、セリやノビルやフキノトウを洗っていた。ちょうどその時、昼近くになっていたこともあって、真っ白なノビルの根を見た瞬間、空腹感を強烈に感じた。ノビルに味噌をつけると最高に美味しいのである。
 昼食を済ませると、どうしても撮りたいイボタガという早春の蛾を探しに秦野市の弘法山へ行って見た。ここにはイボタガの食樹であるイボタがたくさんあるので出会えるかもしれないと思ったからだ。イボタは早くも芽を吹き若葉を広げ、イボタガが卵を産み付ける適期と感じられたが、発見することが出来なかった。このHPを見てイボタガの生息場所を教えて頂けたら、飛び上がらんばかりの嬉しさとなるので、宜しくお願い致します。

昆虫/モンキチョウ、モンシロチョウ、ムラサキシジミ、キタテハ、ナナホシテントウ、ビロードツリアブ。花/アブラナの花(写真左)、コマツナの花、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ(写真右)、ホトケノザ、カントウタンポポ、キジムシロ、ナズナ、タネツケバナ、フキノトウ、ツクシ、トウダイグサ、ラッパスイセン等。


3月22日、神奈川県立フラワーセンター大船植物園

 昨晩の天気予報では、今日は一日中曇りで気温が低いとあったので、身体を休めようと思って朝遅く起きたのだが、どす黒い曇り空でもないし風も弱めなので、鎌倉市にある神奈川県立フラワーセンター大船植物園へ行って来た。先日、川崎市黒川の民家の庭に咲くスノーフレーク(スズランスイセン)を見たので、どうしても撮りたくなったのである。この時期に咲くサクラソウの仲間、プリムラ・マラコイデスやプリムラ・ポリアンサ、そしてビオラ等が何故だかとっても好きなのである。ウィークエンド・ナチュラリストを標榜する私が、人工的な植物園へ出かけて園芸品種の花を撮るなんて、自分でも不思議に思っているのだが、きっと、アートとしての花の写真に魅力を感じているのだろう。写真なんて、人それぞれが満足できるものを撮影できれば良いはずだから、ああでもないこうでもないと言うのは失礼千万なのだけど、図鑑的な写真だけでは私の心は満たされないようである。
 天気予報を見てか、さすがに入場者は少ない。管理の職員の方がソメイヨシノを見上げて、「開花予想は3月27日だけれど、咲きそうも無いですね」と今年の寒さによる各種の花の開花の遅れを実感を込めて言われていた。また、昼食に寄った売店のご主人が、28個仕入れた弁当がまだ5個しか売れてないと嘆いていた。去年は異常な程の暖冬だったが、今年は打って変わっての遅い桜の開花となりそうである。例年のギフチョウの観察も、だいぶ遅れてしまいそうである。それでも各種の花が咲いていて、まあまあ満足できる作品が撮れて、行って良かったと思った。もし行ってみたいという方がいらっしゃったら、一週間後の風の無い暖かい日を選べば最高である。
 神奈川県立フラワーセンター大船植物園は、東京都立神代植物公園に比べるとだいぶ狭い。 しかし、コンパクトながらも各種の花が植栽されていて、それだからか気が散らずにかなり良い写真が撮れる。大船植物園の最大の特徴とも言える花はシャクヤクで、190種類2200株が咲きそろう5月中旬の艶やかな美しさは筆舌に尽くしがたく、また、ちょうどその頃にお隣にあるバラ園も春の花期となる。売店のご主人に「シャクヤクの頃は、弁当が飛ぶように売れるでしょう」と言ったら、笑っていた。

<今日観察出来たもの>花壇の花/プリムラ・マラコイデス、プリムラ・ポリアンサ、デージー、キンセンカ、パンジー、ビオラ、スノーフレーク(写真右)、各種スイセン、アイスランド・ポピー。樹の花/ヤブツバキ、乙女椿、その他各種の椿、ミツマタ、トサミズキ、ウメ、ボケ、アセビ、ミツバツツジ、ヒカンザクラ、タマナワザクラ、ケイオウザクラ(写真左)等。その他/菜の花、ツクシ。


3月16日、川崎市黒川〜町田市小野路町

 ちょうどこの時期は早春の花々と本格的な春の花々との端境期に当たっているのか、撮影したい花が少なくなる。もちろん、サンシュユ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ等を撮影していない方には適期なのだけれど、とっくに撮影が済んでしまった私には、早く違った花が咲いておくれよと言った按配なのである。しかも、蝶や昆虫たちの本格的な活動にはいくらか時期が早すぎる。先週一週間はとても風が強く気温が低い日が続いたから、フィールドの変化はさほど無いだろう。だから何処へ行っても同じと感じられ、こんな時は余り期待せずに、定例の観察コースである川崎市黒川から町田市小野路町へ行ってみようということになった。しかし、寒い日が続いたが、決して歩みを止めることが無い自然は、かなり鈍足とはいえ変わっていた。農家に通じる日当たりの良い小道にはラッパスイセンが咲きそろい。スノーフレーク、ハナニラ、ムラサキハナナも咲き出している。ハナモモやヒュウガミズキ、トサミズキの蕾もだいぶ膨らんで、後一週間程で写真撮影の適期となるだろう。
 畑には収穫されなく残ったコマツナが、目が眩むほどの鮮やかな黄色の花をつけている。その間を、一匹だが新鮮なモンシロチョウが、花の蜜を求めて軽やかに飛び回っている。2週間前は、まだ地上に顔を出したばかりであったツクシもだいぶ背が伸び、早くも胞子を青空に撒き散らしているものさえある。やはり自然の歩みは一時の超鈍足のスピードとなっても、徐々に本格的な春に向かって行進しているのである。
 雑木林に差し掛かる小道を上がって行くと、農家の敷地にミツマタが咲いている。一生懸命に撮影していると、デジタルコンパクトカメラを軽量な三脚につけた中年の男性が現れた。私の知人と同じ機材なので、てっきりキノコの撮影に来たのかなと思ったら、ハチの写真を撮っているとの事である。私は昆虫にはかなり詳しいと自認しているのだが、ハチとなるとまるっきり苦手である。刺すからではなく、作品としての写真にはなりにくい昆虫からかも知れない。しかし、その方のベッコウバチやハキリバチなどの生態の面白さ不思議さを聞いていたら、その方がハチの習性の観察およびそれを記録する写真撮影に魅了されていることが解った。そのような意味では昆虫を含めた動物は、確かに興味をそそる手ごたえある対象物で、かのフランスのファーブルは、その好奇心の偉大な先覚者であったわけである。

<今日観察出来たもの>花/ツクシ、ムラサキハナナ(写真右)、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、フキノトウ、キジムシロ、カントウタンポポ(写真左)、アブラナの花、コマツナの花、ラッパスイン、ハナニラ、スノーフレーク。昆虫/モンシロチョウ、キタテハ、ルリタテハ。


3月11日、横浜市戸塚区舞岡公園

 どうしてこんなに長く寒く風が強い日が続くのだろう。西山泊雲の俳句に「冴え返り冴え返りつつ春半ば」とあって、毎年の恒例の冴え返るであるが、今回のは非常に長く厳しい。まさに「寒戻り」である。この時期になると、越冬している昆虫や樹木の冬芽や葉痕の撮影に戻る気はしなくなる。そこでたくさんのお仲間がいる舞岡公園へ行って見た。16枚ほど残っているフィルムが写し終えれば、まあいいかなと言った軽い気持ちである。
 舞岡公園は横浜市営地下鉄舞岡駅で降りて歩いて行けるのだが、地下鉄の駅の階段を上がった途端に田んぼが見られるという、自然観察には絶好の場所である。舞岡公園に行くまでの田園地帯は、舞岡ふるさと村の一部で、途中に「虹の家」という施設があって、各種の資料や展示物などがあるから覗いてみよう。初めて行く方は、ここでイラストマップを手に入れてから、舞岡公園を目指すと良い。
 舞岡公園は公園化したためと盗掘などによって山野草は見る影もなくなったが、路傍の花は各所に見られ、ヤマザクラ、フジ、ハコネウツギ、ウツギ、ミズキ、キリ、ネムノキ等の木の花は見応えがある。また、蝶や昆虫、野鳥に関しては、まだまだ第一級の観察地であることに変わりなく、ことに蝶や昆虫に関しては、舞岡公園に行くと多く見られるが他所では少ないといった種類も多い。しかも、何故だか分らないが、蝶や昆虫の傑作写真が数多く撮れるので、私も何べんも足を運んでいる。
 舞岡公園へ着くと馴染みの管理事務所のMさんが、火の見櫓がある瓜久保広場で一生懸命に掃除をしていた。本当に良く働く女性である。今日は、主に鳥の撮影に専念している舞岡公園の主的存在であるFさんは来ていないももの、その後、お仲間が徐々にやって来た。初老のAさんが鳥の撮影に来ていたのだが、撮影機材が重いので、これからビデオにするので、このレンズ(トキナー150〜500mm)での鳥の撮り納めと言ったので、そのレンズをお安く分けてもらった。今年はもうじき「花よ、蝶よ、昆虫よ」の時期に入ってしまうので使うことがほとんど無いが、今年の暮れからは大活躍しくれそうで、鳥の写真がたくさん撮影できるに違いない。
 舞岡公園を一周り回ったが、シナマンサクは時期を過ぎ、谷戸地形であるために開花が遅いウメが満開である。今日のお目当てであるミツマタやキブシは咲き始めで絵にならないし、ツクシも顔をだしたばかりで、おまけに風が強い。そんな訳で河童の池のベンチでお仲間と昼食をとっていると、モズ、ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリなどがやって来て、AさんやTさんに鳥の観察と撮影の仕方を教えて貰った。レンズも手に入れたし楽しみが一杯になった。
 このHPを見て頂ければ分るように私は、他に抜きん出て昆虫に詳しく、次にほんの少し花に詳しく、そして去年キノコもかじったし、このレンズで鳥をかじれば、大嫌いなヘビを抜かして一応全てに触れられ撮影できる。折角フィールドを歩いているのだから、一つは「任しておいてよ」という分野を持ち、他にもしっかりと目を向けられてこそ、自然観察という趣味がより楽しく充実すると考えている。

<今日観察出来たもの>花/ミツマタ、キブシ、ウメ、シナマンサク、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、フキノトウ、ツクシ、菜の花、ラッパスイン。鳥/カワセミ、クイナ、コガモ、モズ(写真右)、ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリ。風景/ハンノキ林の湿地(写真左)


3月10日、神奈川県平塚市土屋

 このところ冷たい風が非常に強い。本格的な春が近づいている証拠である。土曜日は小野路町でなんとかなったのだが、昨日は最悪であった。たまたま茅ケ崎公園生態園でバードウォッチングの催しがあったので参加した。しかし、風が強く空は真っ青で、野鳥を探して見上げるヤマザクラやクヌギの小枝は光り輝いて、とても眩しかった。いつもは見られるカワセミもやって来ない。それでも双眼鏡の使い方から始って、バードウォッチングの仕方をいろいろ教えて貰って、とても勉強になった。ちなみに観察出来た野鳥は、カルガモ、ジョウビタキ、ツグミ、コサギ、アオサギ、シジュウカラ、コゲラ、メジロ、エナガ、スズメ、ハシブトガラスなどで、私も花や昆虫ばかりを追いかけていないで、たまにはバードウォッチングをしなければと思った程の楽しさだった。午後は寺家町へ行ったが、風が強く寒くて自然観察をせずに帰って来た。
 そんな訳で今日はいくらか風が収まったので、心休まる神奈川県平塚市土屋へ行って来た。朝の内は空が真冬のように真っ青で、真っ白な富士山、箱根、主峰に雪を戴く丹沢の山並みが美しかった。今日の目的は大山を背景に取り入れたり、青空に抜いたりしたツクシの撮影であった。しかし、いつもの場所のツクシはまだ出ていない。うろうろ探していると「また来たんですか」と、農家の息子に声をかけられた。去年も同じ場所でツクシを撮影していて、いろいろ話したから、私のことを覚えていてくれたのである。「今年は遅いですね。でも、スギナがたくさんあったから、今年も出ますよ」と言われ、また2週間ほどたったら来て見ますと言って別れた。
 しかし、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、ナズナ、カントウタンポポ、キジムシロなどがたくさん咲いて、ヒメオドリコウもようやく垂直に立っていろいろ背景を変えて撮ったり、図鑑的に撮ったりした。昼近くなると風も幾分収まって、真っ青だった空が暖かみを増し、モンキチョウやキタテハが現れて盛んに飛んでいる。絵になる土屋霊園の雑木林に咲くラッパスイセンは、どのくらい咲いてるだろうかと見に行くと、少しは咲き始めていたものの、こちらもツクシと同様、あと10日程かかりそうであった。

<今日観察出来たもの>花/ホトケノザ、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、フキノトウ、キジムシロ、カントウタンポポ、菜の花、ラッパスイン、キンセンカ。昆虫/モンキチョウ、キタテハ、ナナホシテントウ。風景/雪を被った富士山、丹沢連峰(写真左)、大山(写真右)、箱根連峰。


3月5日、栃木県栃木市星野

 昨日は物凄い風が吹き荒れ明日は用事があるので今日しかないと、今年の遠征早春第2弾、栃木県栃木市星野のセツブンソウを撮りに行った。朝5時に起きて今年は車で行きました。さすが早朝、道は空いてて、あっという間に東北道に乗れ、途中、ゆっくりと朝食、歯磨、洗顔等をパーキングエリアで済ませたにもかかわらず、9時半に現地に着いて嬉しくなった。それでも既に10人位の方々が熱心にレンズを向けている。しかし、去年や一昨年に比べ、ちょうど見頃だというのにセツブンソウの花の数は半減していた。セツブンソウの里を守る元気の良いおばちゃんによれば、地主さんが逝去され、草刈などの手入れがなされなかったから減ってしまったとのこと。今後、栃木市やボランティアの方々の助力がないと、一番写真が撮り易い田んぼの脇の斜面に咲くセツブンソウは無くなってしまうかも知れない。また、お役所が税金を使って保護すると、三脚使用禁止等という写真撮影泣かせの愚挙に至るかもしれない。そんなことも考え、良い写真をたくさん撮ろうと頑張った。
 どんな花でもそうだが、特に青空に抜いたりすることが難しい地面すれすれに咲く白いセツブンソウは、ピーカンの日にはどす黒い陰影がはっきり出て、情緒もへったくれもない写真となってしまう。しかし、今日は花曇で絶好だ。一回りして絵になるものは全て撮り、たくさんの方が来だして混雑し出したので、川を渡った反対側のカタクリの群生地の方にあるザゼンソウを写しに行った。今年は去年と異なって絵になる場所に咲いていないが、とりあえず1カットを証拠写真として撮影した。また、同所の雑木林の小道に可憐なミスミソウ(ユキワリソウ)が一株、ピンクの花をつけていたが、写真にはまだこれからの状況で残念だった。そこで、ほんの少し下った農家のネコヤナギが咲き始めていたので、いろいろアングルを変えて写したが、風に揺れて花が止るのを待つのがとっても大変だった。花の撮影はいつでも風は禁物だが、ことにネコヤナギには泣かされる。
 簡単な食事を済ませると、また、セツブンソウに再挑戦。昼以降はほとんどの方が帰ってしまって、私だけのセツブンソウの群落が広がっているのだから最高だ。また、太陽はすぐ後ろの山に隠れてしまって、しっとりとしたセツブンソウを撮るチャンス。ピーカンの日であっても、午後になれば日陰が広がるのに、それを知っている方は何べんも来ていないと分らないようだ。もし、星野にセツブンソウを撮りに行ってピーカンなら、午後がチャンスと頭に入れておいて下さい。花が少なく充分満足とは言えないものの、午後2時で撮影を切り止めて帰途に着くと、何と高速道路は空きに空いていて、4時半に自宅に戻ってくることが出来きて大正解だった。

<今日観察出来たもの>花/セツブンソウ(写真)、ザゼンソウ、ミスミソウ、ネコヤナギ、ソシンロウバイ、ロウバイ、ウメ。


3月2日、川崎市黒川〜町田市小野路町

 やっと公園の水道が凍らなくなったので家族を起こさないようにそっと出かけ、280円の朝定食を食べて、公園の水道で歯磨、洗面を済ませてフィールドに向かった。いよいよいつもの観察パターンが始った訳である。今週末の天気予報は見事に当たって、風が凄く強い。軽ワンボックスカーである愛車「小野路号」は風に煽られてヨロヨロするので運転が大変だ。昨日の雨を「木の芽おこし」と言うならば、今日の風も、もう休眠から目覚めなさいよと吹く「木の芽おこし」である。こんな日は花の写真には最悪だから、風でも撮れるものに絞らなくてはならない。フキノトウやツクシなら何とかなるだろうと川崎市黒川に向かった。黒川は路傍の花を撮るには絶好のフィールドである。
 車を枯れ木枯れ枝等が落ちて来ない所に停めて外へ出るとやはり風が強い。どうしようかなと一瞬困惑したが、コナラの実の芽生えがどうなっているかなと気になって、帽子を飛ばされながらも美しく山掃除された雑木林に向かった。南斜面に面する谷戸奥の雑木林は風も無く、益々強さを増した日差しが降り注いで暖かい。たくさん落ちているコナラの実は、そこかしこに芽を伸ばし始めている。もうすぐミヤマセセリが、クヌギやコナラの木立を縫って飛び始めることだろう。今年に入って度々悲しいことが起きて、元気だけがとりえなはずなのに時には耐えられない程であったが、近づいて来た本格的な春を感じると、今年は良いことがたくさん起きそうだと思うのだから飽きれてしまう。この黒川のフィールドで冬を迎えた多くの生命は、その寒さに耐え切れずに、事切れてしまったものも少なからずいることだろう。しかし、春はそんな悲しみを忘れたかのように「頑張りなさいよ」と希望に向かって後押しをする。
 昼近くになると風もだいぶ納まって、昨日の雨で薄く水の残った谷戸田が春の日差しを反射して眩しい程に輝いている。畑の側らに植えられたラッパスイセンが勢い良く伸び始め、日溜りではオオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ等が競いあうかのように咲いている。ツクシもようやく伸び始め、カントウタンポポの鮮やかな黄色が目に染みる。
 今日は久しぶりの晴れの日曜日、いつも元気な火曜日に来るバイクのおばちゃんはいないだろうが、きっと小野路町のフィールドにも、沢山のお仲間がやって来ているに違いない。そう思って昼食を済ませるとハンドルを小野路町に切った。そんな予想がぴったり当たって、文一総合出版の日本の野鳥で優秀賞をとった小野路の主である鳥専門のK氏にまず出会った。2月26日に相模原公園で多くの方がヤツガシラという鳥を狙っていたと話すと、わざわざ図鑑を取り出して見せてくれた。ヤツガシラという鳥は、特殊な形をした冠毛を被ったオレンジ色の美しい鳥で、なかなか見られない鳥であるという。これで朝早くから相模原公園に、多くの方々が集まっていたのが納得できた。一回りフィールドを散策すると、シロスジコヤガの若夫婦は見えないものの、鳥好きのIさんがスポッティングスコープを三脚に付けて現れた。セリを積みに来た方も多く見られ、いよいよフィールドは生き物も人間も一番賑やかな季節を迎える。

<今日観察出来たもの>花/ウメ、サンシュユ、フキノトウ、カントウタンポポ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、タネツケバナ。昆虫/ナナホシテントウ、ルリタテハ、キタテハ、キチョウ。その他/水温む谷戸田(写真左)、コナラの実の芽生え、伸び始めたラッパスイセン(写真右)。


3月1日、東京都大田区東京都立東京港野鳥公園

 天気予報を見ると午後から雨、明日は天気が回復するが風が強いとのこと、風が強くては花の写真には最悪だ。今日はどうしよう?と悩んだ末、発色の鮮やかなベルビアをつめて行けば、何とか曇り日でも写真になるだろうと、東京都立東京港野鳥公園へ出かけた。雨が降り出すまで何とか2時間持てば各種の花が撮影でき、36枚撮りのフイルム一本は行けるだろうと、開園の9時ぴったりに現地に到着する。さすがこんな日だから人はほとんどいない。先日の新聞に3羽のオオタカが居着いてカモを襲い、カモが他所に避難してその数が激減していると書いてあったので、バードウォッチャーがオオタカ狙いに沢山来ていると予想していたのが外れたようである。
 野鳥公園は野鳥しか観察できないと思ったら大間違いで、農村をモデルにした自然生態園があり、狭いながらも田んぼも畑も雑木林も小川も溜池もあるのである。しかも、各種の樹木、花木も植えられていて、花壇の花こそないが四季折々に咲く花の撮影には最適な場所である。もちろん、昆虫も生息していて、浅い池にはギンヤンマ、コシアキトンボ、アオモンイトトンボが飛んでいるし、少し離れた所にある大田スタジアム横のせせらぎ公園には、ギンイチモンジセセリまでいるのである。しかもいつ行っても人が少なく、羽田空港や首都高速に近いから飛行機やトラックの排気音が聞こえて来るものの、のんびりと自然観察をするのに好適な場所である。
 また、管理事務所の脇にはカップヌードルやお菓子、各種飲み物等も自動販売機で売られているし、野鳥が間近で見られる数多くある観察小屋にはフィールドスコープもあり、ネイチャーセンターへ行けば図書室もあるし、親切なボランティアの方々が野鳥の説明もしてくれる。とにかく至れり尽せりで1日を過ごせる公園なのである。オオタカはこんなに素晴らしい自然があるからと3羽もやって来たと言うのに、どうして多くの自然好きの方がやって来ないのかが不思議な位である。
 交通は、JR浜松町駅から東京モノレールで「流通センター」下車徒歩15分が便利だが、本数は少なくなるものの、JR大森駅東口または京浜急行平和島駅からバスもあり「野鳥公園」で降りれば近い。詳細は、03−3799−5031の東京港野鳥公園に電話すれば、今どんな花が鳥が見られるか等、親切に詳しく教えてくれることだろう。

<今日観察出来たもの>花/ウメ、ブンゴウメ(写真左)、マンサク、ベニバナマンサク、サンシュユ(写真右)、アセビ、カンツバキ、ツバキ、ユキヤナギ、ヒイラギナンテン、ネコヤナギ、イヌコリヤナギ、フキノトウ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ。



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