(6月)
6月30日、山梨県甲府市帯那山〜北巨摩郡白州町中山峠
今日は先週の復讐戦である。西武の松坂大輔投手がよく口にした「リベンジ」ということになる。しかし、日本ウィークエンド・ナチュラリスト協会掲示板に携帯電話で投稿したり、遠距離電話をしたりしたので携帯電話の電池切れである。簡易充電器も電池切れとなっているので、甲府盆地に10分ほど降りたコンビニへ買いに行った。ナショナルの乾電池が長持ちすることになっているようだが安いものを求め、煙草を買うと店主が明日から料金がアップしますよと言う。なんと20円もアップするのである。昨晩、電話した方は年金生活者に仲間入りしたばかりというのに、横浜市の国民健康保険料がなんと月に5万円だと言う。年間だと60万円になるのだから、減る一方の年金金額に比べて「ふざけるんじゃないよ」と怒っていたのは同感である。本当に政治が悪い、それを放任しておく日本人もおひと良しである。7月1日から煙が出れば良いのだから、煙草は「しんせい、ハイライト、エコー等」にするしかないな等と店主と笑って話をする。電池を簡易充電器にセットするとこれで安心、なにしろ帯那山も中山峠も携帯電話が使えるのである。
さあ帯那山に向けて出発。水ケ森林道に入るとやはり先週のように路肩に車を停めて、モミジイチゴを賞味する。昨日、クワの実とコウゾの実を賞味したが、断然モミジイチゴが美味い、次がクワの実でコウゾの実は何となく薬っぽくて吐き出してしまった。そんな訳でモミジイチゴを片手山盛り2杯食べて再出発。先週に比べるとモミジイチゴの実の盛期は過ぎているようである。帯那山下の駐車場に行く途中、コアジサイ(写真左)が日陰にたくさん咲いていて、深山幽谷を感じさせる美しさに感嘆する。一昨日のヤマボウシといい、コアジサイといい、山に咲く自生の樹木の花は風情がある。一昨日、富士五湖でクマシデ、ヤシャブシ等の花が咲いていたが、このような地味な樹木の花の写真も撮りたくなった。サワグルミの花なんか最高である。今年はキノコを撮るので無理だが、樹木の地味な花はキノコに負けないくらいの趣がある。シデコブシの花を見たくって、遠く渥美半島まで見に行くご婦人がいらっしゃるが、山に自生する各種の樹木の花巡りも本当に素晴らしいことだろう。そこには「日本」があるように感ずるのである。
帯那山に着くと、アヤメは見頃を過ぎたが、先週とは打って変わっての蝶のお出迎えを受ける。ヒョウモンチョウ、ギンイチモンジセセリ、ツマグロヒョウモン、コキマダラセセリ、ヒメキマダラセセリ、ヒオドシチョウ、そして、お目当てのアサマシジミも写真撮影が出来る数が飛んでいた。しかし背景が煩雑なこともあるが、、アサマシジミはヒメシジミに比べると、後ろ羽が大きいのか絵にしにくい蝶である。しかし、思う存分、30年振りに見たのだから良しとしよう。かつてこのアサマシジミが東京の陣馬山にもいたのかと思うと感慨深いものがある。ナンテンの葉のような独特な葉と青紫が美しい花を咲かせるナンテンハギが食草だが、ナンテンハギは各所にあるのに、どうしてアサマシジミが生息していないのだろう。昆虫生息には複雑な様々な環境要因があるのに違いない。今度はコマツナギを食するミヤマシジミを探しに行こう。ミヤマシジミに出会えれば空色の小さな蝶であるブルーの似通った3種をすべて見たことになる。しかし、ヒメシジミだけがヨモギも食べるのに、他は決ったマメ科のものしか食べない狭食性なのが不思議である。何でも食べるということは生存上強いということのようである。最後に中山峠へ行ったが、ゼフィルスにはお目にかかれず、ノコギリクワガタのお出迎えを受けた。
<帯那山で観察したもの>蝶/ヒョウモンチョウ、ギンイチモンジセセリ、ツマグロヒョウモン、コキマダラセセリ、ヒメキマダラセセリ、ヒオドシチョウ、アサマシジミ(写真右)、ヒメウラナミジャノメ。
6月29日、山梨県中巨摩郡敷島町
今日は遠くまで行かないで、ユースホステル周辺や甲府盆地へやって来ると必ず行く敷島町の雑木林の探索となった。昨晩はさすがに土曜日、ユースには私を入れて合計4人の方が泊まった。一度、甲府ハイランドユースホステルに泊まれば、また泊まりたくなるだろう。何と言っても若いペアレント(ご主人)が気さくで蝶の趣味を持っているし、奥様はお顔をHPでしか拝見したことがないが、山に登りたくてやって来たということである。朝食も夕食も美味しいし、ユースの造りが凝っていて、建物の中央が吹き抜けで、階段がユースの「Y」の字をかたどって洒落ているのである。7月12日(土曜日)は甲州名物郷土料理「ほうとう」と「地ワイン」の会が催される。この時、私も行くつもりなので、今年は始めたばかりの日本ウィークエンド・ナチュラリスト協会主催とは行かないが、蝶好きな方はオオムラサキの最盛期だし、昆虫なら夜にニイニイゼミの羽化が見られるし、花が好きな方は山梨フラワーセンターや明野村のヒマワリ畑、乙女高原へ行けば良い。温泉好きな方だったら、ふやけてしまうのが心配だが、甲府盆地温泉巡りなんていうのも楽しいだろう。もちろん、山好きな方は何をか言わんやということになってしまう。何たって「山があっても山梨県」ですよ。ぜひ、お暇だったら泊まりに来て欲しい。
そんな訳で朝食を済ませるとユース周辺の農道の散策となった。ちょうど散策中に昨晩泊まった立川から来た若者が歩いていたので、即席自然観察会兼写真撮影講習会となってしまった。彼から見ると私のような人間は「異星人」に見えたことだろう。長靴を履いて、トレパン、長袖、カメラザックを背負って、三脚を小脇に抱え、何にもないように見える農道をうろつくのだから不思議に映るのは当たり前だ。そんなことを「毎週末もう15年もやっているんです」と言ったら、目が飛び出んばかりな顔をしていたので、私のHPの名刺を渡したら、昨晩、感激のメールが届いた。農道散歩の途中で羽化したばかりのオオムラサキが落花したプラムにたかっていたり、山間の渓流沿いの道を歩いていたら、カワトンボやミヤマカワトンボもいたし、ヒマワリ、タチアオイ、ヒャクニチソウ等の花で構図を決めて青年に覗かせてやったり、黄金比例分割や大小の構図という写真の基本的な構図を教えてやったり、「青年よ、私は38歳から始めたのだから、とんでもなくつまらない仕事は仕事として、趣味の世界で大志を抱け」と説教したりしたのだから、変んなうるさいオッサンと思われても仕方がないのだが、感激しましたとのメール。世の中まだ捨てたものじゃないな。
午後からは敷島町にある総合運動公園周辺の雑木林に出向いた。まずは誰もとらない梅の実(写真右)が黄色く色づいて青空に映えていたからシャッターを切り、ルドベキアを撮って付近を見回すと「ねんねんネムノキ」が咲いている。しかも、紅色が濃いものだ。このHPの読者であるOさん「どうしてネムノキは美しい紅色から、美しいとは言えない褪めた紅色の花まであるのですか?」とお聞きしておこう。運動公園の下は大きな池になっていて、ヘラブナやブラックバス釣りのメッカだが、なんとなんとヘメロカリスがたくさん植えられている。もちろん、あらゆる手法を使って今年も傑作が撮れたようである。オオムラサキや各種昆虫の宝庫である雑木林の小道を上がって行くとアカマツの丸太が転がっている。去年は何か昆虫はいないかと探したが、今年はキノコをやってるだけあって、マツオウジはないかと探したら、久しぶりに見るウバタマムシのペアがいるではないか。本当にタマムシの顔は柔和で可愛らしいなと思った。
<今日観察出来たもの>花/ヒマワリ、ヒャクニチソウ、タチアオイ、トルコギキョウ、フウリンソウ、ルドベキア、ヘメロカリス、ネムノキ(写真左)、ヤマホタルブクロ、アジサイ、オカトラノオ、シモツケ等。蝶/オオムラサキ。昆虫/カワトンボ、ミヤマカワトンボ、ウバタマムシ、オオイシアブ、ヨツボシオオキスイ等。その他/オレンジ色のキノコが一杯。
6月28日、山梨県富士吉田市土丸尾〜南都留郡鳴沢村富士ケ嶺林道
朝起きてみると雨が降っている。昨晩、何べんも天気予報を調べたのに、梅雨時の天候は梅雨前線の微妙な動きで変わってしまうから仕方が無い。そこで、今晩は甲府ハイランドユースホステルに泊まることだし、どこか雨が降っていない所はないかと、またまた、インターネットのYahooで調べてみると、山梨県の富士五湖地方が曇りとある。そこで神奈川県城山町穴川へ行くことを変更して、青葉インターチェンジから東名高速道路に乗った。しばらく走ると厚木周辺は雨が降ってはいない。弘法山か渋沢丘陵、大井町にある足柄いこいの村でも行こうかと頭をよぎるが、そのまま御殿場目指して愛車「小野路号」は、軽自動車にもかかわらず真ん中の車線を100kmオーバーで快調に走る。しかし、大井松田を過ぎるとなにやら雲行きがおかしい。御殿場に近づくにつれ霧が深くなり小雨がぱらつく。「失敗したかな」とも思ったが、富士五湖へ行けば大丈夫と御殿場インターで降りる。その先は一寸先が見えないという霧の中を走る。「五里霧中」等という四文字熟語を思い出すのだから暢気なものである。
軽自動車でも普通車と同じ料金の東富士五湖道路の籠坂トンネルを抜けると、待ってましたとばかりに薄日が漏れる曇り空に変わった。山中湖から平野に行こうかとも迷ったが、アカマツ林の中を走る国道138号線を富士吉田市目指してひた走る。このあたりは本当に気持ちの良いドライブコースで、那須の黒磯から湯元の間のアカマツ林を思い出す。富士吉田市に近づくにつれ、どうも目指す本栖高原上空の雲行きが怪しい。近くに朝霧高原という霧で有名な所もある位だから、静岡県に近づくと雨かもしれない。せっかくこのあたりは曇りなのだからと、北富士演習場のお隣の土丸尾へ行くことにした。ここは富士吉田市で最も富士山麓の植生を残している場所と言われ、ここで見られる蝶の種類はすこぶる多い。しかし、このHPを見て期待して行ってもらっても「なんだこんな所」と思う方も多いはずである。自衛隊の大型車が入る広い林道横に車を停めると、富士山に向かって右側の草原に入って行く。ヒメシジミやギンイチモンジセセリがたくさん飛んでいる。しかし、いつ来てもこの草原で見られる草花を美しいと感じてシャッターを切ってしまう。アカツメクサ、シロツメクサ、ミヤコグサ等の極普通の花が、富士山で発生する霧に洗われるのか、湯上りのような美しさなのである。また、ここからは太宰治が「富士にはツキミソウが良く似合う」と書いたように、天空の底が抜けたかと思われるブルーの空、青黒い富士、そして黄色のツキミソウ(オオマツヨイグサ、アレチマツヨイグサ)という取り合わせでシャッターが切れるのだから最高だ。さすが太宰治の感性は鋭いと感心することだろう。
今日はまさか富士五湖までとは思わなかったので、普通に起きた為に、すぐに昼となってしまった。昼食を済ませるといざ本栖高原へ、本栖高原は私が知ってるフィールドの中で最高の部類に入る。蝶、花、昆虫の観察場所としては一級の場所なのだ。なにしろ今の時期はノハナショウブが咲き乱れているのだから楽しくなる。しかし、精進湖に近づくと雨足が強くなる。そこで止む無くUターンして雨が降っていない鳴沢村まで引き返し、青木が原を貫く富士ケ嶺林道に入る。時間がないので入ってすぐの路肩に車を停めて付近を散策すると、なんとヒメシロチョウがおでましとなった。しかし、風が強くてじっとしてはくれない。付近を見回すと食草のツルフジバカマがあちこちに勢い良く生えている。ここも土丸尾に劣らず植物が生き生きとしていて、なんとなんと桑の実(写真右)が輝いてとても美しく、ここまで来てシャッターをきってしまうのだから飽きれてしまう。その他、たくさんあるウツギ、シモツケ、ナワシロイチゴが生き生きとして自己主張を繰り返す。谷筋に降りて行くと、野生としてははじめて見るヤマボウシの林に行き着いた。独特な葉と花が織りなす美しさは、静寂をより静寂にと、そこにはサウンド・オブ・サイレンスの世界が広がっていた。
<今日観察出来たもの>蝶/シータテハ、イチモンジチョウ、ホシミスジ、ヒメシロチョウ、ヒメキマダラセセリ、ギンイチモンジセセリ、ヒメシジミ、ウラゴマダラシジミ等。花/ヤマボウシ(写真左)、ウツギ、シモツケ、ナワシロイチゴ、アカツメクサ、シロツメクサ、ミヤコグサ、ムシトリナデシコ、ビロードモウズイカ等。動物/キツネ、カッコウ、オオヨシキリ、アオダイショウ。
6月26日、東京都町田市薬師池公園〜小山田緑地
今年の梅雨は本当に梅雨らしいなと思う。梅雨の中休みの晴れの日も長く続かない。ゼフィルスの季節は終わって、緋色が鮮やかなヒオドシチョウが現われる頃となった。しかし、このところの天候では蛹の中で今か今かと悩んでいることだろう。今日は神奈川県足柄上郡大井町にある「足柄いこいの村」へ行こうと思っていた。しかし、朝起きてみるとどんよりとした曇り空、おまけに昼過ぎから雷雨もあるかもしれないというので諦めた。足柄いこいの村は、各種の昆虫観察に最適な雑木林があって、ヒオドシチョウも生息しているが、この天気では発生していても出て来ないだろうと思ったからだ。まあいいや、再来週にまた栃木県の中三依へ行くからそこで出会うだろう。そこで今年はアジサイの花を本格的に撮らなかったなと思い、薬師池公園へ午前中行って、午後からジャノメチョウがたくさん見られる小山田緑地へ行こうと決めた。
アジサイ園に着くと、私のことを色々面倒見てくれるプロカメラマンのKさんのお友達で、雑誌「月刊カメラマン」で紹介されて顔を知っていたプロカメラマンの石井さんに出会った。石井さんは私も良く行く横浜市緑区にある「新治市民の森」をフィールドとしていて、氏のHP「石井孝親のネィチャーフォト」を是非ご覧になって欲しい。石井さんと話していたら氏も昆虫大好き人間であることを知って嬉しくなった。プロカメラマンのKさんも昆虫大好き人間だから、ネィチャーフォトのプロやアマチュアの中には相当数のかつての昆虫少年がいるのではなかろうかと思った。石井さんと私とKさんとの共通点はもう一つあって、故木原和人著「接写のフルコース」日本カメラ社刊に感銘を受けたのである。私も擦り切れんばかりに繰り返し読んだ名著で、今でも売られているので、カメラ機材に関してはいささか古くはなったが、氏の心優しい情熱が伝わって来るネィチャーフォトを志す者にとっての必読の書である。
まだ大丈夫と踏んで来たのだが、やはりアジサイの季節は終期を迎えていて、ハナショウブに至ってはとっくに見頃を過ぎたようである。大賀ハスの咲き出す7月下旬まで薬師池公園行きはしばしお休みで、少し離れているが7月1日より町田ダリア園が開園する。本当に、キノコを除いて5月と同じで6月も給料日前後は被写体が減じてしまう。もうすぐ7月、民家の庭先にヒャクニチソウ、ダリア、ノウゼンカズラ、クサキョウチクトウ(オイランソウ)等の夏の花が咲き始めている。いまだ梅雨の最中とは言え、夏がそこまでやって来ている。昼食をすませて小山田緑地へ行くと、駐車場の横の草地にベニシジミ、ヤマトシジミ、オオチャバネセセリ、キマダラセセリが見られ、石畳の道にはオカトラノオ、小山田の谷の奥のハンゲショウの葉もだいぶ白くなった。クヌギの樹液にはオオスズメバチ、ヒメスズメバチ、キイロスズメバチと、ご婦人なら卒倒してしまう連中も集まり、いよいよ国蝶オオムラサキの出番を待つばかりとなった。ススキの草地に羽化したばかりのジャノメチョウが美しかった。
<小山田緑地で観察したもの>蝶/キアゲハ、ヒメアカタテハ、キタテハ、メスグロヒョウモン、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ、コジャノメ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ツバメシジミ、オオチャバネセセリ、キマダラセセリ。昆虫/オオスズメバチ、ヒメスズメバチ、キイロスズメバチ、カノコガ(写真右)、オジロアシナガゾウムシ等。その他/芝地にキノコが一杯。
6月23日、山梨県甲府市帯那山〜北巨摩郡白州町中山峠
「朝食の支度が出来ました」という声がかかるまでぐっすり寝ていた。こんなに眠ったのは久しぶりである。確かNHKの宮本武蔵を見て、お通さんは可哀想だと思って、歯を磨いて床に入ったのだから、延々10時間も眠っていたことになる。これだけ眠ると身体の調子はすこぶる良い。しかし、空を見上げると今にも降って来そうな雲行きである。「まあ、いいや。折角来たのだから」と、お世話になった甲府ハイランドユースホステルのご主人に別れを告げて、帯那山目指して出発する。甲府ハイランドユースホステルは、どうしてこんなに不便な所に建てたのかと思うほど、俗世間から離れた帯那山の山裾に建っているとても立派なユースである。とは言っても眼下に千代田湖が見え、遠く甲府市街も望まれる位置だから最高の場所とも言える。ユースから千代田湖までの間は長閑な山村で、何にも無いけど道端自然観察には最高のフィールドである。農家の方々が植えている園芸品種の花はもとより、各種の野の花、雑木林に行けば各種の蝶、田んぼや千代田湖へ行けば各種のトンボが見られるからだ。
しかも、ユースのご主人の趣味はなんと蝶である。ご主人の話によるとユースの庭にオオムラサキやスミナガシもやって来ると言うし、ツマグロヒョウモンは庭のパンジーを食べていると言う。ちなみに昨日はクジャクチョウの第1化がやって来たということだ。付近の雑木林は栗の花が満開で、見られるゼフィルスはミドリシジミを除いた平地産ゼフィルスに、ウラキンシジミ、ウラクロシジミ、メスアカミドリ、ウラミスシジミと言う事である。もちろん、平地に見られる蝶は豊富で、ふらふら付近を散策すれば沢山の蝶に会うことが出来る。ユースからほんの少し戻った林道は水ケ森林道と言って、途中で林道の名は変わるが、乙女高原を経て奥秩父の最高峰である国師ケ岳下の大弛峠を越えて、長野県の川上村まで行ける気の遠くなる林道である。途中、ダートの部分があるので、私の軽ワンカボックスカー「小野路号」で何処まで行けるかは疑問だが、ご主人の話によると舗装工事が進んでいるので、そのうち乙女高原まで行けるようになるだろう。そうなれば甲府ハイランドユースホステルを拠点として、様々な場所へ道端自然観察へ出かけることが出来る。蝶でたとえるならオオムラサキからキベリタテハということになる訳だ。
帯那山までの林道沿いにはモミジイチゴがたわわに実っている。こんなに美味そうなのだから食べなきゃ損とばかりに車を路肩に停める。先日、小野路町で出会ってギンリョウソウをご案内したご婦人に、モミジイチゴを味わって貰って大好評であった。きっと、このHPをご覧下さっていると思うので「凄いです凄いですよ。大きさも大きいし鈴なりです。味は小野路のものよりいけますね。帯那山に着くまでにバケツ3杯は楽に採れます」とお伝えしておこう。そんな訳で行きに片手に山盛り一杯を3回食べて、帰りに1杯の合計4杯も食べたから、合計ドンブリ一杯食べたことになる。このモミジイチゴの実を食べに来るだけでも最高の林道である。さて、帯那山に着くとアヤメの群落が実に見事である。お目当てのアサマシジミは一頭の雄を見つけたのだが、今一絵にならないので「どこかに止って」と驚かすと、入ってはいけないアヤメの群落の中に飛んで行ってしまった。もっといるだろうとたかをくくっていたが、発生初期なのだろう、その一頭だけで雨も降り出しやむなく下山となった。
帯那山の駐車場に戻って、キーを回すとカーステレオからビートルズの「レット、イット、ビー」が流れて来た。人っ子一人いない霧雨降る林道で聞くレット、イット、ビーもなかなか良いものである。NHKのラジオ番組で「もし無人島に一人で住む事になったら、何を持って行きますか?」という質問があった。私なら本を数冊と、まず、不可能だろうけどCDなら「ベェートーベンの第九」だなと思っていたが、林道で聞いて「レット、イット、ビー」も良いなと感じた。もし、20名以上の賛同者が集まったら、甲府ハイランドユースホステルを買い切って「ビートルズを聞く夕べ」等というバーベキューパーティーでもやったら素適だなと考えながら、車を白州町中山峠に向けた。だいぶ離れてはいるが、一時間程で着くはずである。国道20号線の韮崎から茅野までの間は、信号も渋滞もほとんど無い快適な一車線の国道が続く。国道沿いのあの道この道は、ほとんど行ったことがある私の庭のようなものである。
国道20号線は韮崎から穴山橋にまでの間、釜無川沿いの土手の上を走る。釜無川は韮崎で須玉川と合流し、甲府盆地で笛吹川を合して富士川となる訳である。富士川という名がついているが、富士山の水より南アルプスと奥秩父、八ヶ岳に降った雨を集めて流れている。最下流の川幅の広さは驚くべきもので、新幹線で旅行の折などに見てもらいたいものである。釜無川では今日は平日だと言うのにアユを釣っている方がかなり見られる。国道と河川敷の間の斜面には、私にとってとっても気になる花が咲いている。外来種のビロードモウズイカ(写真左)というすっと伸びた独特な花である。はやく中山峠に着きたい筈なのに、車を停めて今年も撮影してしまった。東京都の埋立地に行けば腐るほどあるというのに。南アルプスの山をバックにすると、青黒い中に黄色い花が浮かび上がるのである。
お酒の銘柄で「七賢」というのがあるが、その七賢の酒造元のある台ケ原の入り口を左折すると中山峠に通ずる林道に入る。最近、別荘地開発が進んで、かつてに比べるとかなり自然が破壊されているが、蝶や昆虫観察にはまだまだ捨てがたいフィールドである。林道が雑木林に差し掛かる手前に、リンゴやスモモの果樹園があって、その手前には花の栽培をしている畑もある。もう少し経つとヘメロカリスの花が見事となる。いつものように車を雑木林の縁に停めて、下草が奇麗に刈られて管理された雑木林に入って行く。この雑木林周辺で、これまで数多くの昆虫の写真を撮影している。ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ、コクワガタ、ルリボシカミキリ、オオツノトンボ、オトシブミ、ウラナミアカシジミ、ミドリシジミ、オオムラサキ、スミナガシ、キバネセセリ、ホソバセセリ等、数え上げたら切りが無い。しかし、今日は生憎の今にも降りだしそうな曇天である。平地産のゼフィルスを期待して行ったのだが、ストロボで甲虫類を撮影するのみとなった。ことによったら日野春の鉄塔の下のほうが面白かったかもしれない。
<帯那山で観察したもの>蝶/アサマシジミ、ヒメキマダラセセリ、ヒメウラナミジャノメ。昆虫/エゾハルゼミ(写真右)、ジョウカイボン。花/アヤメ(写真左)、キンポウゲ。
<中山峠で観察したもの>蝶/オオミスジ、オオチャバネセセリ、クロヒカゲ、ベニシジミ。昆虫/カブトムシ(写真右)、ゴマダラカミキリ、ハスジカツオゾウムシ、カツオゾウムシ、トホシオサゾウムシ、シロコブゾウムシ、キマワリ。花/ホタルブクロ、オカトラノオ、アマチャ。
6月22日 東京町田市小野路町・図師町
昨日は港北ニュータウンにある茅ケ崎公園生態園のボランティアに行った。偉そうな事を言ったって里山管理のお手伝いをしなければ方手落ちと考えているからである。昨日の作業は外来植物の駆除である。対象植物はブタクサ、オオブタクサ、セイタカアワダチソウ、ヒメジオンの抜き取りである。しかし、私はこんなことをしているお陰で、その植物の見分けがつくが、一般の方には少し難しい。ブタクサはシダのような葉、オオブタクサは別名クワモドキというように桑に似た葉、セイタカアワダチソウはヤナギのような葉がすっと伸びた茎から出ているし、ヒメジオンは白い花が咲いている。という訳で、誰もが区別できるヒメジオンを徹底的にやっつけようと言う事になった。しかも、女性のKさんは、ヒメジオンの花が咲いているといかにも貧乏臭く、手入れがされていないと感ずると言うのだ。ほぼ2時間の作業の後のヒメジオンの花が見当たらない生態園は、本当に緑一色の美しい園と変わった。
今日は梅雨の中休みの晴れ、こんな日は自然光による写真撮影は限られて来る。梅雨の花は雨の中でこそ映えるのだが、雨ではカメラが濡れてしまうから曇り日がベストとなる。かんかん照りの陰影の深い梅雨の花の写真なんて、干からびた食パンのようなものである。こんな日はキノコを撮っても、木漏れ日がちらついて美しい写真は撮れない。日陰にいる昆虫を自然光で撮ったり、ストロボを使って様々な昆虫やキノコを撮る位である。もちろん、梅雨が明けたら様々なトンボ等を日向で撮ることになるのだが、まだまだトンボの季節は少し先となる。そんな訳で先日弘法山で見つけたオオミドリシジミを小野路町で見つけようと美しい雑木林経由でフィールドに入った。もう既に雄はボロボロとなっているだろうが、メスなら新鮮であろうと思ったからだ。
雑木林に接する畑の小道にネジバナが沢山咲いている。やや陽が和らいだので這いつくばって撮影し、雑木林の中を徘徊すると早くも夏の蝶であるジャノメチョウが羽化していた。この他、コジャノメやヒメジャノメが元気で、ギンリョウソウは花期が過ぎたがまだ咲いている。小道脇に咲き乱れるホタルブクロに目をやるとガク片が盛り上がったヤマホタルブクロも混じっている。Tさんの事務所の前を通るとTさんが「昨日、あそこに積んであるシイタケのほだ木に沢山のカミキリムシがいたとKさんが言ってましたよ」と教えてくれた。それでは帰りに注意してみますと、五反田谷戸に向かった。今日は日曜日だからお友達がたくさんいるはずである。
いるいるハッセルのMさん、645のUさん、67のMさん達である。みんな梅雨の中休みの晴れで撮影する気が抜けたようで、山桜の大木の日陰で休んでいる。私もお仲間に入れてもらってカメラ談義、写真談義に花が咲く。私が「暗い所にあるキノコを撮影するとプラス補正が適正になるんですよ」と不思議そうに言うと、Uさんが「長時間露光になるとフイルムの感度が下がるんです」と教えてくれた。さすがUさんである。しばらく話がはずんだ後に一回りし、昼食を摂った後に昼寝をして、甲府盆地に向け出発した。6時半が今日泊まる甲府ハイランドユースホステルの夕食時間なのである。今日は一日中、真っ白なストライプが美しいホタルガにたくさん出会った。ほんもののホタルも今が盛り、ホタルブクロも今が盛りと来ているのだから、ホタルガも蛹の中でじっとしていられなかったようである。
<今日観察出来たもの>蝶/ジャノメチョウ、コジャノメ、ヒメジャノメ、クロヒカゲ、ムラサキシジミ、アカシジミ、ベニシシジミ、ルリシジミ等。昆虫/ホタルガ等。花/ホタルブクロ、ヤマホタルブクロ、ネジバナ(写真右)、ギンリョウソウ等。鳥/カルガモ(写真左)。
6月20日、横浜市緑区新治市民の森〜三保町及び上白根町
今日は、昔の仲間が「おいでよ、スエヒロで飯でも食おうや」等というお誘いがあったから、銀座へ行ってから、久しぶりに本業の仕事でもしようかなと思ったが、新治市民の森と三保町及び上白根町へ自然観察に出かけた。昨日の夕方から台風の影響で風が強い。こんな日は写真撮影は無理だが、コナラやクヌギやハンノキの葉に止っていたゼフィルスが、いたたまれずに下草に非難して来るのである。もし、写真撮影はせずにゼフィルスという蝶に是非会いたいと思ったら、こんな風が強い日がベストなのだと覚えておこう。去年の風の強い日もそうだったが、今日も小野路町の美しい雑木林にアカシジミやウラナミアカシジミが多数避難していたことだろう。それに18日に雨で中断してしまった三保町及び上白根町のキノコを見に行きたかったのである。風があってもキノコは揺れないから、曇り空だし撮影にはぴったりと言うわけである。
新治町に着くと、どうせ自然光による蝶や昆虫の撮影は無理だから、広場に積んである丸太にやって来ているカミキリムシをストロボで撮影しようと、カメラにマクロストロボを着けて歩き始める。雑木林の小道に入るとコナラの幹にキマワリが撮って下さいとばかりにじっとしている。キマワリは色がゴキブリのような色をしていて姿格好も変わっているので、昆虫好きのご婦人でもなかなか好きになれないかもしれない。しかし、上目がちなパッチリした複眼を持つ顔はなかなか素っ頓狂で可愛らしいのである。キマワリはどうも幹についている苔の仲間を食べているようである。いつか紹介した苔を食べるシラホシコヤガの幼虫と同じということになる。キマワリとは漢字で書くと「木回り」で、樹木の幹や切り出した丸太の上を生活の場としているのでそう名がついた。
今日の市民の森は人っ子一人いない。ホトトギスの鳴き声が響き、遠くに風による木々の梢のささやきが聞こえる。「不思議だ。しんと静まり返っているよりも、木々の梢のささやきがある方が静かに感ずるなんて」等と思いながら、散策路の下草に注意して歩いていると、予想通り各種のゼフィルスが風を避けて非難していた。一番数が多いのはアカシジミで、鱗粉が剥げ落ちたウラゴマダラシジミもいる。ハンノキ林に行くと羽化したての美しいミドリシジミの雌が複数下草に降りていた。この他、ムラサキシジミ、メスグロヒョウモン、イチモンジチョウも非難していた。
昼食をすませるとお隣の三保町および上白根町へ。18日に多種多様なキノコを見たので、武蔵中山台住宅から雑木林に入り、ゴルフ練習場の縁を回って団地裏の雑木林に入って戻って来るコースで一周してみたかったのである。雑木林へ入るやいなやイグチの仲間がお出迎えを各所でしているものの、今一絵にならないからパスして、広大なシラカシとスギとコナラで構成され、下草がほとんどないという不思議な平坦な森に到着する。あるわあるわ様々なキノコ。ここは本当にキノコのワンダーランドである。私がキノコに興味を持ったのは去年の秋からだが、キノコの形の面白さはもちろんだが、キノコが生えてる風景が好きになったのだ。だから、広角レンズによる背景を入れた写真を撮りたくなる。そんな写真にはぴったりな場所なのである。キノコは蝶や昆虫や花には無い、じっと静かであるが存在感がある。お喋りではしゃいでばかりいる私には無理かもしれないが、いるだけで存在感のある人間になりたいものである。
<今日観察出来たもの>蝶/キチョウ、メスグロヒョウモン、イチモンジチョウ、ウラゴマダラシジミ、ミズイロオナガシジミ、ミドリシジミ、ムラサキシジミ、アカシジミ、ベニシシジミ、ルリシジミ、ヤマトシジミ、アゲハ、キアゲハ等。昆虫/ヤマサナエ、カノコガ、トンボエダシャク、キマワリ等。その他/カワリハツ(写真左)、マンネンタケ(写真右)他、各種のキノコが一杯。
6月19日、神奈川県秦野市弘法山
今日は一日中雨は無しと踏んで、秦野市の弘法山へオオミドリシジミの探索に行って来た。その昔、高校生の頃、「明日、ハヤシミドリに会いに行くんだ」と言ったら、私に気があるらしい色白の美少女が眉をしかめたことがあった。彼女は「林みどり」という女の子に会いに行くのかなと思ったのである。それを見て「陣場山の神奈川県側のカシワ林に、カシワを食べるゼフィルス、ハヤシミドリがいるんだ」と説明すると顔が明るくなったのを思い出す。今は落ちぶれて見るも哀れな熟年男だが、若かりし頃は紅顔の美少年で結構もてたんですよ。そんな美少女も今年で53歳、どんな素適なご婦人になっているのかな等と空想に耽っていたら、弘法山の駐車場に着いた。
早速、オオミドリシジミが見られるクリ林へ直行した。いたいたいました。やや古びているものの羽を開いて、ライトブルーにキラキラ光る羽の表を出して日光浴をしている。しかし、何だか落ち着かずじっとしてくれない。そんな訳で撮影を諦めてクリ林の草原に目をやると、小さな熟した桃のようなものがたくさん落ちている。何だろうと近寄ってみるとニオイコベニタケと言うキノコの様である。昨日の雨をたっぷり吸い込んだミズゴケの絨毯の中からも顔を出している。緑と赤の色のコントラストが実に美しい。これは撮るしかないなとチジミザサの葉を脇役として入れて撮影した。ファインダーを覗いただけで「傑作」と感じたので慎重に撮影した。他にオオミドリシジミはいないかなと探したが見つからなかった。
そこで前回と同様に弘法山を目指して踵を返す。女坂と男坂の分岐の所は野の花の宝庫だが、今日はホタルブクロがみごとなまでに咲いていた。急な男坂をあがる元気は無いので、男なのに女坂を上がって行くと、尾根に行き着くまでに、ジャコウアゲハの雄に擬態したアゲハモドキ、メスグロヒョウモン、ミドリヒョウモン、ツマグロヒョウモン、ゴマダラチョウ、アカシジミに出会った。今はゼフィルスの季節でもあるが、ヒョウモンチョウの季節でもあるのだ。尾根に着いて黒松の切り株に目をやると、それはそれは見事なマツオウジ?(写真右)の親子が並んでいる。早速、広角レンズを取り出してキノコの生える風景を撮影していると、10人程のハイカーがやって来た。こんなに素晴らしいキノコを見つけたので「見て下さい、感激しますよ!」とお誘いすると、皆さんびっくりして本当に感激してくれた。私が名刺を出すと「あれ知ってる。クマガイソウの時にお会いしましたね」と元気の良いご婦人が言った。何と何とこのHPを楽しみにしていてくれるMさんの山のグループだったのだ。
頂上へ行くまでの尾根筋にとっても絵になるホタルブクロの群落を見つけたが、なにしろ尾根筋はいつも風が強い。多分駄目だろうがまぐれでピントが合うかも知れないと、絞り開放で数枚連写する。頂上までの坂道は相変わらずアジサイが美しい。頂上に着くとお先に行った山のグループがお食事中。「先程のキノコは見事でしたね」と男性の方がおっしゃる。一ついかがですかと別の男性が「焼タラコ入りのおにぎり」を差し出してくれた。山の会の活動や山の話を楽しくしていたら、ご婦人がコーヒーを入れてくれた。今年の夏は北海道の大雪山へ飛行機で行く予定があると言う。そのうちお仲間に入れてもらおうかな。最後に、おにぎりもコーヒーもとても美味しかった。皆さん有難う御座いました。
<今日観察出来たもの>花/ホタルブクロ(写真左)、ノアザミ、ウツボグサ、ネジバナ、アジサイ、オカトラノオ、イチヤクソウ、オニノヤガラ、シモツケ等。蝶/メスグロヒョウモン、ミドリヒョウモン、ツマグロヒョウモン、ゴマダラチョウ、オオミドリシジミ、アカシジミ、ベニシシジミ、ルリシジミ等。昆虫/カノコガ、アゲハモドキ、キマワリ等。その他/各種のキノコが一杯。
6月18日、横浜市緑区三保町及び旭区上白根町
6月は首都圏平地で見られる蝶の種類が一番多い月である。それに各種の花が咲き天気も曇りが多いから、写真撮影及び自然観察に絶好の月なのだが、こう雨が多いと嘆きたくなる。そんな訳で遠くに出かけて、すぐにUターンとなってはつまらないので、身近な場所へ出向くことになる。本当は山梨県へ行ってアサマシジミに会いたいのだが、こんな天気が続くとどうなることやら。今日は朝起きてみると曇りというので、かつて平成元年から毎週末4年間通った懐かしい、また、自然観察と写真撮影の原点とも言える、横浜市緑区三保町及び旭区上白根町へ行って見た。ところが1時間位すると雨になって、雑木林の中なら幾分濡れないので「キノコウォッチング」となったわけである。しかし、驚いた事に私が知っているフィールドの中で、これ程までに多種多様のキノコが見られ、その絶対量も多く、しかもアップダウンも余り無く、雑木林の下草も比較的少なく、雑木林に分け入る小道も沢山あって、更に倒木、朽木がたくさんあるのだから、こんなに優れたキノコ観察の場所は他に無いだろう。
まだキノコの名前はさほど知らないし分らないので、間違っていることの方が多いと思うが、とにかく一番あったのはオオホウライタケで、倒木にはアラゲキクラゲ(写真左)、シロキクラゲ、ダイダイガサ、イヌセンボンタケ、イタチタケ?(写真右)等。林床には紅紫の小さな傘が美しいハナオチバタケやヒトヨタケの仲間、ベニタケの仲間、イグチの仲間と数えあげたら約20種類位のキノコにお目にかかったことになる。生憎雨も降っていたし薄暗かったので、それ程写真は撮ってこなかったものの、何処へ行かなくとも、ここだけ通っていたら多摩丘陵の主要なキノコを撮影できるという感触を持った。種名はそのうち分る分るように勉強すると考え、撮るに撮ったりの100種類以上は年末までに軽く行けそうに感じた。そうすればその半分位はキノコ通の人に聞いたりして種名が分ることだろう。それと雑木林の中を歩いていたら、盗掘が心配なので名前は控えるが、かなり珍しい植物にも出会った。町田市やその他、遠くまで行ってばかりいたが、自宅から最も近いフィールドで、あの道この道どこへ通じる道と熟知している、かつてのメインフィールドの自然度の高さにびっくりした。
それではこのHPで蝶に関心を持ってる方も多いと思うので、平成元年〜平成4年までの蝶の観察記録から、主要な蝶を列挙しておくことにした。その総種数は56種類で、その後にジャコウアゲハ、ギンイチモンジセセリ、クロコノマチョウ、ツマグロヒョウモンを見ているので60種となるのだが、現在もなお新治町を調査し続けているIさんによれば、絶滅したものもいるので、今現在、約55種類前後の蝶が生息しているものと思われる。
<平成元年〜4年迄の蝶の観察記録>モンキアゲハ、カラスアゲハ、ツマキチョウ、オオウラギンスジヒョウモン、ミドリヒョウモン、メスグロヒョウモン、ミスジチョウ、オオムラサキ、テングチョウ、アサギマダラ、ジャノメチョウ、ウラゴマダラシジミ、ミズイロオナガシジミ、オオミドリシジミ、ミドリシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、トラフシジミ、コツバメ、ゴイシシジミ、ミヤマセセリ、オオチャバネセセリ、ホソバセセリ、その他の合計56種。その後に観察した蝶は、ジャコウアゲハ、ギンイチモンジセセリ、クロコノマチョウ、ツマグロヒョウモン。
6月15日、東京都町田市小野路町・図師町
毎日のようにいろいろな場所に行っていて良いな、なんて思わないで下さいね。社会に役立つ仕事を持っていたり、家庭をしっかりと守っていたりするのがまずは基本ですよね。私なんかやることが無いので仕方なくという惰性の部分もありますが、OさんのHPに触発されて、私も心癒され、見る人も心癒される「愛溢れる写真」を撮ろうなんて思うようになっているんです。昨日、蝶が大好きなKさんからメールが届いた。何とウラゴマダラシジミが美しい紫色の羽の表を開いている写真と、ミドリシジミの写真が撮れたとの朗報である。多分、一昔前の私なら「こんちくしょう」と思ったに違いない。しかし、まだ素直にとは言えないものの「Kさん、良かったね」と言える様になったのはどうしてだろう。歳をとったからではなく、蝶の写真への興味が減退したわけでもない、蝶と言う撮影対象の難しさを深く理解しているからである。また、平日は仕事に精を出しているからこそ、週末のフィールドで精気がみなぎり、フィールドの神様も好運を与えてくれるのだろう。それに将来、私が出そうと思う本に写真を貸してくれるかもしれない。
蝶はあそこにいますよと連れてって貰っても、何処かへ飛んで行ってしまっている場合も多いし、手の届かない場所にいる時もあるし、いたとしても羽を開いていて構図も素晴らしいとなると、偶然とも言えるような大変なチャンスなのである。多摩丘陵で羽が開いていてくれないと困る蝶で、なかなか羽を開いてくれないものに、ウラゴマダラシジミ、オオミドリシジミ、ミドリシジミ、オオムラサキ等がいる。多分、Kさんは羽を開いているウラゴマダラシジミを見つけた時、自分の目を疑うと同時に、喜びに胸が高鳴り、羽を閉じてくれるなよ、逃げないでねと必死な思いで近付いたに違いない。ああいいな、たかが蝶、されど蝶、純真な少年のような心に戻れるなんて。そして、そう簡単には撮らしてくれないからこそ、思ったように撮影できた時の喜び。ああいいな蝶って、やっぱりこの趣味は素適ですよね。
そんな訳で、私もウラゴマダラシジミとミドリシジミを求めて今日もフィールドへ行ったのだが、途中、雨が降るという天候で空の雲も厚く、ゲーテのように「もっと光を」という状況で出会えなかった。それに小野神社から牧場経由で行ったから、途中、各種の花に時間を取られてしまった。こんなもの撮ってどうするのと思われる、何処でも普通のワルナスビ、植木屋さんの植溜めに咲いているクチナシ、それから畑の脇に顔を出した各種のキノコと言うわけである。最後に長旅の途中に立ち寄ったと見られるアサギマダラがヒラヒラ飛んでいるのを見て家路に着いた。冒頭にも書いたように「愛溢れる写真」を各種撮って、しかも、野鳥と同じく一番難しいジャンルの蝶も撮りたいなんて、フィールドの神様が許してくれる訳がありませんよね。しかし、偶然というのが起こるのも面白いかなこの世界、そんな好運を期待して、今後とも性懲りも無くフィールドへ足を運ぶに違いない。
<今日観察出来たもの>花/ホタルブクロ、ノアザミ、ミヤコグサ、ウツボグサ、ネジバナ、ワルナスビ、ギンリョウソウ、アジサイ、クチナシ(写真右)、ナツツバキ等。蝶/キアゲハ、アサギマダラ、アカシジミ、ベニシジミ、ルリシジミ、キマダラセセリ等。昆虫/カノコガ、シロヒゲナガゾウムシ、カオジロヒゲナガゾウムシ等。その他/各種のキノコが一杯。
6月14日、横浜市緑区新治市民の森〜長津田町
昨日は飲み会でだいぶ遅くなって帰宅したので、今日はぐっすり眠って近場へ行ってみようと思い、久しぶりに新治市民の森に出かけた。ここは、前にも書いたと思うが、かつての私のメインフィールドであった所である。去年、フィールドで出会った「神奈川きのこの会」の方々が、月に一回の定点観測をしている場所でもあって、きっと、たくさんのキノコにも出会えかもしれないとも思い、また、谷戸奥に横浜市では珍しいハンノキ林があって、ミドリシジミが発生していないかなとも思ったのである。歩き始めていつも通り左手の農道を上がって行くと、2人の捕虫網を持った少年に出会った。腰に懐かしい捉えた甲虫等を殺す毒ビンぶら下げている。甲虫屋さんだなと思い声をかけてみるとその通り。今満開のクリの花にはたくさんの甲虫類が集まって来るのである。成果を聞いてみると、ミドリカミキリ等の各種のカミキリの他に、ムツモンタマムシまで採集できたようである。話によるとオオミドリシジミを見たとのことである。
背の低い栗林に入ってみると、本当に今が満開のクリの花が美しい。ゼフィルスは何か来ていないかなと期待したが的外れで、下草にはベニシジミがたくさん止り、ネジバナも咲き出していた。次に広々とした丘の上の畑へ行くと、スイカ、カボチャ、ナスの花が咲いている。少し坂道を上がってきたので汗が額からタラタラ流れる。「おお、私も生きているんだ」等と、新陳代謝が盛んな事を喜び、トイレや水飲み場がある広場に向かって歩を進める途中、二つ並んだ形の良いテングタケの仲間のキノコを発見した。ここ数年、図鑑や本、HPに使用することが多いので横構図ばかり撮っていたが、見栄え良くキノコを撮るには縦構図の方が良いと感ずるようになって、横構図と縦構図を撮った。横構図をトリミングして縦構図にするのは簡単なのだが、縦構図をトリミングして横構図にするのは難しい。そこで図鑑とか本に将来使われることを考えている方は、必ず横構図のものも押さえておいた方が良いと思う。写真展や写真集を目指している方なら、どちらでも絵になる構図を選べば良いと思う。
トイレや水飲み場のある広場へ行ってたっぷり水を補給し、ハンノキ林目指して歩き始めると、今度はベニタケの仲間のキノコが撮って下さいとばかりに構図を決めている。「よし分ったよ、美しく撮ってあげるからね」と声を掛けて撮影した。キノコは風があっても揺れないし、誰でも簡単に写せるが、どう美しく撮るかということと、種類の判別が難しいことと、珍しいものを探すのには藪の中に入って行く勇気が必要である。いづれキノコの同好会でも入って、もっと良く知りたいとも考えるのだが、つれづれなる気ままなウィークエンド・ナチュラリストの私には、道端で出会えて、図鑑の絵合わせで分る種類で、美しく撮れるものだけでいいやとも思っている。いずれにしても、キノコも自然を彩る重要なキャラクターであることには間違いない。
ハンノキ林に着くがミドリシジミは見当たらない。長い柄の付いた捕虫網でハンノキを叩けばその生息や発生が分るし、捉えて下草に止らせれば撮影も出来るのだが、そこまでしてという気持ちになってしまう。最後に蝶の観察30年以上に及ぶIさんに出会った。兎に角、その昔、青葉区の荏田町にあったとっても素晴らしいフィールド「赤田」を調べた方である。本当にいいなIさんは、地味な活動をずっと続けている姿に、ただただ感動し頭を下げる思いであった。Iさんの話では、今日は蝶を22種類も観察し、アカシジミのとても新鮮個体にも出会ったという。
<今日観察出来たもの>花/ホタルブクロ、クリ(写真左)、アジサイ、スイカ、ナス、カボチャ等。蝶/ミズイロオナガシジミ、オオミドリシジミ(他の方の観察)、アカシジミ(他の方の観察)、ベニシジミ等。昆虫/カノコガ、ミドリカミキリ、ベニバハナカミキリ、エグリトラカミキリ、ヒメナガサビカミキリ、ムツボシタマムシ(少年2人が採集)等。その他/カヤタケ?(写真左)等。
6月11日、神奈川県相模原公園〜小野路町・図師町
最近、信じられないくらいに、このHPを見てくれる方が多くなった。とても嬉しいことである。毎日、世捨て人のような生活をしているのだが、顔が分らない方々が何かを期待してこのHPを見てくれているのかと思うと、心が癒され励まされる思いである。少しは役に立っているんだと思うと、私もこのHPも世の中で少しは存在価値があるんだなと思うからである。そこで大した収穫はなかったものの、6月11日の観察記録を書いておくことにしました。なお、もっと社会参加をしなくてはならないと思っていますので、無料の「写真講師」や「自然観察講師」などもしたいと思いますので、お気軽にお声をかけて下さい。
今日は雨の筈であった。ゆっくり寝ていられるぞと期待していたのだが、起きてみたら絶好の曇り日、そこで最近、更新が少ない「花のNewALbum」を充実させようと、大船植物園〜舞岡公園にしようか相模原公園〜小野路・図師町へ行こうかと迷った末に後者をとった。花だけでなくゼフィルス、特にミドリシジミとウラゴマダラシジミを撮りたいと思ったからである。相模原公園は久しぶりである。しかし、見頃となっているのはハナショウブとアジサイだけである。他にはほとんど撮影すべき花が無いと言って良い状況である。梅雨時の日本が誇る名花と言ったら、誰がなんと言ってもアジサイとハナショウブであるのだから、力を入れているのは納得できる。相模原公園の菖蒲田はとても広く見事である。しかし、昨晩雨が降ったこともあり、花びらに水滴が着いて重く垂れ、撮影意欲をわかせるものには巡り会わなかった。
そこで早々と町田市に向かって踵を返し、図師町の五反田谷戸に11時に到着する。ウツボグサが見頃、撮影し頃となっていたので、どうしても曇り日に撮りたかったのである。平日で雨がいつ降って来るかもしれないという天候だからだろう、谷戸はとても静かで誰も来ない。主観的な作品は撮れなかったがウツボグサをカメラの中に納めて昼食を摂っていると、何処からとも無くオレンジ色の蝶が舞って来て柿の木の葉に止った。近づいてみると羽化したてで眩しいくらいに美しいウラナミアカシジミである。さっそくカメラに納め、もっと近づき余分な葉をどけようとしたらヒラヒラと舞って、山桜の大木のだいぶ高い葉上へ止ってしまった。万事休すである。
その後、何べんも出会っている野の花を撮影しているご夫婦に遭遇し、ギンリョウソウの話をすると是非見たいと言う事になって案内した。付近に他にもギンリョウソウがあるのではないかと探してみると、二つも見つけることが出来た。ご主人によると小野路町・図師町では見たことはないが、町田市にはオニノヤガラもあると言う。なお、クリ林のクリの根元に、気持ち悪くなるくらいにキノコ(たぶんナラタケ)が生えていたが、ぞっとするので撮影はパスした。
<今日観察出来たもの>相模原公園で見頃の花/アジサイ、ハナショウブ等。小野路町・図師町で観察した蝶/ウラナミアカシジミ(写真右)、ミズイロオナガシジミ、キアゲハ、キタテハ、ルリシジミ、ベニシジミ、ダイミョウセセリ、キマダラセセリ、クロヒカゲ、コジャノメ等。小野路町・図師町で観察した花/ギンリョウソウ、ウツボグサ(写真左)、ノアザミ、ミヤコグサ等。
6月10日、神奈川県秦野市弘法山
今日は久しぶりに36枚撮りのフイルムを3本も撮った。九州は梅雨に入り、今週一週間の関東地方の天気予報に、傘と曇のマークばかりで太陽のマークが一つも見当たらない。いよいよ待ちに待った写真の稼ぎ時である梅雨が来た。「蝶」「花」「虫」「里」とテーマを追って撮り続けたものが一段落して、目標達成後の虚脱感に捕らわれてスランプに陥っていたが、先週の日曜日に町田市図師町の谷戸で出会ったOさんのHP(リンク済)を見て触発されるものがあった。目的を持つとそれだけを追ってしまうが、自然の中に身を置いて様々なものと饒舌になって語り合い、生命の温もりを愛情込めてカメラの中に納める。人は皆孤独であるが、私の尊敬する故牧野富太郎博士が講談社学術文庫「植物知識」の中で語っていた博士の自然観察の奥義を思い出した。初心に戻って「生命の温もり」を撮り続けて見ようと思ったのである。
そんなスランプから脱したのを歓迎してか、今日は絶好の撮影日和、目的は平地産のゼフィルスだと言うのに、美味しそうなビワの実や真っ黄色のカボチャの花を撮ったり、雑木林の暗所に生えるキノコを撮ったりと、何だかチンプンカンな撮影である。いつもたくさんゼフィルスがいる栗林の小道に足を入れると、多摩丘陵では珍しいイチヤクソウがちょうど見頃である。しかし、余りにも暗い所に生えているので涙を飲んで通り過ぎる。栗の花もだいぶ開花しているのに、何だか知らないがゼフィルスは一頭だにいない。踵を返して女坂を登っているとタンポポの花に己の目を疑う蝶、羽化したばかりのクジャクチョウが吸蜜している。まさか弘法山で発生しているとは思わなかったからである。女坂の道端や尾根道にはやっとホタルブクロやシモツケが咲き出し、両脇に植栽されているアジサイも花開いている。弘法山の一番美しい季節が到来した。
いつものように弘法山へ登って一回りして「めんようの里」まで散策してみると、やっと羽化したてのミズイロオナガシジミに複数出会った。先週、オニノヤガラが生えていた雑木林の開けた場所に行くと、だいぶ盛期は過ぎているものの独特な格好は健在である。またしてもとっても美しいマスダクロホシタマムシを見つけようと檜の丸太が積んである所へ行くが今日もいない。ミズキの木下の下草にはハートマークを付けたエサキモンキツノカメムシ、ウドの葉にはアカスジキンカメムシ、カラムシの群落にはラミーカキリ、路上にはテングチョウやルリシジミが舞い、コナラの樹液にはコジャノメが群れ、こんなにゼフィルス発生のお膳立てが出来ているのに、何故、いないのだろう。来週にもう一度来ればその結論が出るであろう。
<今日観察出来たもの>花/ノアザミ、ホタルブクロ、シモツケ、アジサイ、オニノヤガラ、イチヤクソウ等。蝶/クジャクチョウ(写真右)、ミズイロオナガシジミ、テングチョウ、ルリシジミ、ベニシジミ、ダイミョウセセリ、キマダラセセリ、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、コジャノメ等。昆虫/エサキモンキツノカメムシ、アカスジキンカメムシ、ラミーカミキリ、センチコガネ、トホシオサゾウムシ、ヨコヅナサシガメ、オオイシアブ、カノコガ、トンボエダシャク等。その他/中型のキノコ、カボチャの花、ビワの実(写真左)等。
6月8日、東京都町田市野津田公園〜小野路町・図師町
昨日は遠くに行ったから疲れているはずと思い朝寝坊したが、起きてみると快調である。きっと、遠くに行ったとは言え、自然観察の時間よりも電車に乗っていた時間の方が多く、しかも、だいぶ電車で寝ていたからそれ程でもなかったようである。そこで先日、フィールドでお会いしたご婦人が、野津田公園のバラ園のバラが美しかったというので見に行った。しかも、野津田公園にはアジサイ、キンシバイ、ナツツバキがあるので、その咲き具合も知りたかったのである。バラ園には各種の品種があって、植物園と異なった雑木林を背景とした写真が撮れる。今日は風もありピーカンだから撮影はしなかったが、今後に期待の持てる花園である。咲き具合を見に行ったアジサイやキンシバイはこれからで、芝生のネジバナ等の野の花ももう少し先である。早く本格的な梅雨に入ってくれないかなと思った。湿生植物園に行くと池では早くもショウジョウトンボ、ギンヤンマが見られた。
時間があったので今日は日曜日だからたくさんのお友達が来ていると思い、お隣の小野路町、図師町へ出向いてみた。案の定、Mさん、Uさん、Oさん、Kさんが来ていた。何処の谷戸も雑木林もホトトギスの澄んで響き渡る囀りが爽やかである。昼食を済ませてTさんの家の近くを通ると、Tさんが木をゆすって地面に落としたものを、中年のご夫婦が盛んに拾っている。何だろうと近づいてみると、丸々として黒紫に色づいた桑の実である。家へ帰って洗ってから煮て、蜂蜜を加えてジャムにするのだと言う。私も拾って食べてみたが、やっぱり甘味を少し加えた方がより美味しいと思った。Tさんによるとカラスが目ざとくやって来ると、たくさん食べられてしまうのだという。
今日は晴れと言うこともあってか、待ってましたとばかりに新鮮な蝶がやけに目についた。多分、羽化としたてと思われるミズイロオナガシジミが何処の雑木林に行ってもたくさんいる。もちろん、林縁を通る小道の下草などにも休んでいる。テングチョウも羽化したばかりで、田んぼの畦の土に口吻をさして吸水している。その他、ルリシジミの鮮やかなスカイブルーが美しい。今日出会った蝶は、種類としては少ないものの、新鮮で羽化したばかりの蝶は実に美しい。特に、ミズイロオナガシジミは羽化したばかりだと、とってもおとなしいので、撮影もすごく楽である。例えゼフィルスの中で最も普通種とは言え、こんなにミズイロオナガシジミが多いということは、フィールドの雑木林の豊かさを証明している訳である。また、アワブキにはスミナガシの食痕も見られた。
<今日観察出来たもの>花/バラ、キンシバイ、ウツボグサ、ノアザミ等。蝶/ミズイロオナガシジミ(写真左)、テングチョウ、ルリシジミ、ベニシジミ、ダイミョウセセリ、ヒメキマダラセセリ(写真右)、サトキマダラセセリ、クロヒカゲ等。昆虫/シオヤアブ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマ、シオヤトンボ。
6月7日、栃木県塩谷郡藤原町中三依
今日は電車で道端自然観察をして来た。毎年、2、3回は必ず行っている鬼怒川温泉の先で福島県の手前の藤原町中三依である。別段、名所旧跡がある訳でもなく、ハイキングコースもある訳では無い。電車を降りて林道をマス釣り場まで行って帰って来るだけである。もちろん、横道があればお邪魔したりするし、写真撮影に時間を取られたりするから、往復4kmの距離を約5時間かけてぶらつくのである。東武日光線やその先の野岩鉄道には、駅から降りて当ても無くぶらつく、道端自然観察に適した場所がたくさんある。しかも、電車賃が安く、福島県のほんの手前まで行って浅草から片道2110円である。しかも、急行並に早い快速電車が走っている。私の場合、横浜からだから大変だが、浅草に近い所に住んでいたら行かなきゃ損である。
今日は何と4時45分に起床、東横線の一番に乗って浅草まで行った。浅草に着いたのが6時30分で、快速の出発時間が7時10分だから、その間に食事、洗面、トイレ、煙草と言うわけである。20分前にホームへ行けば、何処でもどうぞと言うように席が取れる。しかし、今日は会津の何処かの山開きらしく、また、尾瀬へ行く方もあって混んでいるものの、ボックス席の進行方向に向かった窓側の席(特等席)を確保した。出発前にほぼ満席になるので、北千住から乗ろうと考えない方が良いだろう。無人駅の中三依に付いたのが10時10分位だが、寝ていると行きも帰りもそう長く感じないのだから楽である。駅を降りると絶好の花曇り、しかし、少し風が強い。天気予報通りではないなと思うが仕方がない。
中三依に住んでいる方は非常に花が好きで、クレマチス、アイリス、ルピナス、ジキタリス、カーネーション、ナデシコ等、色取り取りに咲いている。野の花としては各所に自生するアヤメ、キンポウゲ等がちょうど見頃である。しかし、写真を撮ろうと三脚を立ててしばらく待つが、風による揺れは一向に止らない。「あーぁ、今日は駄目だな」とため息が出るが、このHPのために何とか写真を撮ろうと歩き始める。林道に入る手前の畑ではウスバシロチョウがまだ舞っていて、何とツマジロウラジャノメという山地性の蝶が舗装道路に止っている。撮ろうかなと思ったが舗装道路では撮る気がしない。林道に入るとエゾハルゼミの合唱がうるさい位だ。時折、ハルゼミの「ムゼー、ムゼー」という鳴き声も聞こえて来るから、いくらかハルゼミも居残っているようだ。
炭焼き小屋にはたくさんの広葉樹の丸太が積んであるが、各種のカミキリムシやタマムシ等はもう少したってからのようである。なにしろ美しいヤツメカミリやハンノアオカミキリ等が見られるのである。林道を更に進むとススキの原が開けてくる。ここにはギンイチモンジセセリ、ヒメシジミが発生しているのだが、風が強くて撮影に梃子摺る。しかし、なんとか撮影して歩き出すと、下草の上にエゾハルゼミが止っている。ハルゼミにしてもエゾハルゼミにしても、声は聞こえども姿が見えずだが、時折、何かの間違いで下草に止ったものがいるから、その時が撮影のチャンスとなる。
<今日観察出来たもの>花/クレマチス、アイリス、ルピナス、ジキタリス、カーネーション、アヤメ、キンポウゲ、ハルジオン、カキドオシ等。蝶/ウスバシロチョウ、ミスジチョウ、コミスジ、ツマジロウラジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、クロヒカゲ、ヒメシジミ(写真左)、ギンイチモンジセセリ(写真右)、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ。昆虫/ハルゼミ、エゾハルゼミ、リンゴコフキゾウムシ、オオゴボウゾウムシ、ウスアカオトシブミ等。
6月4日、東京都町田市薬師池公園〜ぼたん園
昨日と違って今日はずっと曇りのはず、朝起きても風も無く曇りだから「しめしめ」と思ったのだがどうしよう。蝶や花、何でも御座れという撮影日和である。この所、スランプ気味なのか、それとも撮影対象が少ないのか、晴れの日が続くからなのかなと思っているのだが「花のNewAlbum」や「虫のNewAlbum」の写真が増えて行かない。そこで迷いに迷って午前中は花、午後は蝶や虫と決めて町田市にある薬師池公園からボタン園を歩いてみることにした。薬師池公園に着くと、もうハナショウブやアジサイが咲き出しているのには驚いた。来る途中でキンシバイやオオテンニンギク、ムシトリナデシコ、オオキンケイギク、ナツツバキ等が車の窓から見えたが、野の花は一服でも園芸品種の花々は、梅雨の花にバトンタッチをしているのである。
以前にも書いたと思うが薬師池公園の花の目玉は大賀ハスなのだが、ハスはだいぶ成長して美しい緑の葉を広げている。ハスの開花は7月下旬だから、太くて大きな根を持っている割には、だいぶゆっくりした植物である。ハス田を過ぎて右奥にあるアジサイ園で、ガクアジサイを中心として花が咲き始めている。一口にアジサイと言っても、その品種は非常に多く、私の持っている図鑑には和品種、洋品種合わせて120種が紹介されいる。薬師池公園には特異な格好のカシワバアジサイに始って、十数種類は植栽されているように思われる。また、アジサイ園の前には小さな池があって、黄色いコウホネやアサザの花が咲いていた。ハナショウブ園に行くと、やっと咲き始めと言った感じだが多くの方が見えている。ハナショウブを美しく撮影するのは難しい。まずは晴れの日は駄目で曇り日で風が無い日を選ぶ。風景的に撮るにはそれなりの場所に行くしかないし、アップで撮ろうとすると柵があって近付けない。そんな訳で小石川植物園、大船植物園、緑区の四季の森公園等、各地に菖蒲園は多いものの、なかなか素晴らしい作品を手に出来ない。ところが、農家の方が自分の田んぼの片隅に植えて楽しんでいるような所を見つけると、思わぬ傑作が手に出来るのである。
薬師池公園でだいぶ時間を取られたのでお昼までさほど時間はないものの、ボタン園まで歩いて行った。途中にタチアオイがたくさん植えられている農家があって、この時期いつも足を止めて撮らしてもらう。その他、ゼニアオイ、ムラサキツユクサも咲いていて、きっとこの農家の方は花が大変好きなのである。また、ボタン園の手前に色とりどりのカルミヤの植溜めがあって、やや時期が遅いとは言え満開であった。ここは夏になるとヤマユリの園芸品種が咲き乱れる。また、ボタン園手前を左に入って行くと、町田市が管理する広大なお花畑がある。菜の花は完全に咲き終わっていたが、夏にはヒマワリ、秋にはソバの花が見事である。ボタン園にはこれと言った花は無かったが、付近を散策すると雑木林や田畑が各所にあって、とっても多彩な自然観察が楽しめる。また、7月に入るとダリア園も開園する。昼食を済ませて、いざ蝶や虫と張り切ったのだが雨が降って来たために、やむなく涙、涙の帰宅の途に着いた。
<今日観察出来たもの>花/アジサイ、ハナショウブ(写真左)、シモツケ、コウホネ、アサザ(写真右)、ホタルブクロ、チダケサシ、カルミヤ、ゼニアオイ、タチアオイ、ムラサキツユクサ、ヒメジオン、チョウセンアサガオ、オオキンケイギク等。
6月3日、東京都町田市小野路町・図師町
6月初めての自然観察および写真撮影は、大変お世話になっているメインフィールドである町田市の小野路町、図師町へ行こうと決めていた。昨日の天気予報では曇りだったのだが、ピーカンとまではいかないものの晴れである。いつも6月は湿気が充満する曇り日と思っているので拍子抜けしてしまった。でも、蛇日和ではないと言うのに、シマヘビ2匹のヤマカガシ1匹に出くわした。田んぼが田植えされて奇麗になって行き場がないようである。万松寺谷戸の奥にある栗林はようやく花が開き始めているが、独特なむっとする臭いは漂って来ない。そうなるには後一週間程かかるだろう。しかし、栗の花にはアカシジミが吸蜜していて、付近の葉上にもアカシジミが休息していた。しかし、羽が古びたもので、逸早く発生した個体であるのだろう。これからがアカシジミの本格的な発生時期と思われる。
これに気を良くして一番アカシジミが多く見られる良く管理された美しい雑木林から栗林へ回ってみるが、アカシジミにはお目にかかれない。ただ、トラフシジミの夏型が発生していて栗の花に吸蜜していた。なんとかこのHPに最低2枚は写真を撮らなくてはと思い、各種の花を探して見たが、畑のシュンギクの花は風に揺れ、ドクダミやナワシロイチゴはたくさん咲いているのだが、晴れではしっとりとした情感を出すことが出来ない。去年、樹液を出していてヒオドシチョウが見られたコナラの木に何か来ているかなと思い回ってみると、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲの群れの中に、早くもカブトムシの雌を見つけた。やや暗い所にいたのでカメラにストロボをセットしていたら、幻のように消えて、何処を探しても見つからなかった。そこで、ダイダイガサという橙色のキノコがもう出ているというので小野路城跡へ行ってみると、待ち針の頭のような大きさのダイダイガサを見つけて撮影した。しかし、これ以上大きくなって傘が開くまで成長するかは疑問である。
こうなったら少しは野の花の写真を撮ろうと五反田谷戸へ向かったが、相変わらずミヤコグサやノアザミが咲いていているものの撮影する気分にはなれず、ウツボグサも見られるが、これも後一週間ばかり先になるだろう。そんな訳ですっかり田植えが終わった谷戸風景(写真左)をカメラに納めると、ウラゴマダラシジミが発生していないかと神明谷戸に向かった。大きなイボタの周りで羽化したばかりのウラゴマダラシジミが3頭程いたが、気温が高く風もあり、仲間同士で陽気に戯れている。これを見て、晴れの日は本当に蝶の撮影は難しいなとあらためて考えさせられた。
最後に今年期待している雑木林に行ってみると、途中に真っ白い煙管のような格好をしたギンリョウソウを一本見つけた。良く見るともう一本あったが花期が過ぎて萎びていた。ギンリョウソウモドキは昨秋見ているものの、ギンリョウソウは生まれて初めてだ。一本だけでは絵にならないし、暗い所に生えているので上手く写せるかが心配だったが、これからキノコの日中シンクロ撮影を試して見ようと思っているので、ストロボの位置やシャッター速度を変えてテストも兼ねて撮影した。上手く写っていたらここで紹介出来るのだが。
<今日観察出来たもの>花/ギンリョウソウ、ドクダミ、ミヤコグサ、スイカズラ、イボタ、ハコネウツギ、ノアザミ等。蝶/アカシジミ、ウラゴマダラシジミ、トラフシジミ、メスグロヒョウモン(♂)、コジャノメ、クロヒカゲ、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ、ダイミョウセセリ。昆虫/カブトムシ(♀)、ゴマフカミキリ、サビキコリ、ベニカミキリ、ジョウカイボン、オオイシアブ、オオスズメバチ、マガリケムシヒキ等。キノコ/ダイダイガサ(写真右)他。