2003年:つれづれ観察記
(7月)


7月30日、東京都大田区東京港野鳥公園

 今日は朝起きたら雨、Yahooで天気予報を見たら一日中雨。「やったー万歳、これで一日中寝てられるぞ」と思ったら、無常にも10時近くになると雨が止んだ。こうなったら貧乏性の性格が災いして、落ち着いて寝ていることなんて出来やしないし、机に向かって本を読んだりの勉強という訳にはいかない。そこで仕方無しに、今日は久しぶりに東京港野鳥公園へ行った。私のHPや本の写真数のやたらの多さからか、ずっと毎日のように写真を撮っていたように誤解している方が多いようだが、2年前までは隔週に半日土曜出社がある会社に勤めていたのである。もちろん、その代わり他の日に有給休暇を取ったりしたが、正真正銘のウィークエンド・ナチュラリストであったのだ。とんでもなく出社したく無い、ほとんど何も無いというお留守番の半日の土曜出社の日は車で出勤して、帰りに良く東京港野鳥公園へ行ったものである。東京港野鳥公園については以前書き記しているので割愛するが、ちょうど半日を過ごすのに手ごろな広さで、しかも、いつ行っても珍しいものではないものの、手ごたえのある写真が撮れるのである。
 7月17日の観察記で女流の昆虫写真家「水上みさき」さんのことを紹介したが、講談社α文庫「川辺の昆虫カメラ散歩」の203Pに、野鳥公園で撮ったギンヤンマの空中ホバリング(停止飛翔)の写真が載っている。レンズはシグマの300mmである。この写真を見るたびに「凄い、私も撮ってみたい」と思うのだが撮れる自信は全く無い。私に昔の根性が戻って来たとしても、フイルムを恐らく3本は軽く消費し、ブレやピンボケがあるものの何とか見られる写真しか撮れないだろう。昆虫の中でも蝶やトンボはことに難しい写真のジャンルである。近づくと逃げるし、なかなかじっとしていてくれないからだ。「生半可な気持ちで、これらを追う事はよした方が良いですよ」といつもアドバイスをしている。しかし、私が良く行く小野路町で知り合った昆虫写真家の田辺秀男さんのお友達で、トンボの写真家として著名な杉村光俊氏は、なんと50mmマクロレンズでトンボを写していると言う。私なんか200mmマクロでないと写せないのに、まさに神業である。しかし、トンボの生態および近づく方法を熟知していればこそ、50mmマクロでも撮れるのである。かつて私も「蝶の棲む世界」という本を出してもらったが、その中に、もう二度と撮れないだろう神業的な写真がいくつかある。まさに写真は被写体に対する限りなき情熱なのだ。
 野鳥公園の駐車場に着くと車は一台も止っていない。可愛らしい軽自動車の「小野路号」一台というのは寂しい限りだ。入園料300円を払って入口だけにある喫煙場で煙草を吸っていると、側らにブルーベリーの木があって実がなっている。これは撮らなくてはと一枚撮影してから自然生態園に行くと、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、ウスバキトンボ、アオモンイトトンボが飛んでいる。もちろん空中ホバリングのトンボを撮る勇気はなく、棒の先に止ったトンボを撮ろうと考えていたのだが、なかなか絵になる場所に止っていない。今度は管理事務所の反対側でセミを撮ろうとUターンすると、なんとシロツメクサが一面に咲く広場の上空で、ウスバキトンボに混じって複数のチョウトンボが舞っている。なんとか撮りたいとずっと待ち、周りに止っていないかと探索もしたがこれもアウトとなった。今日の目的のもう一つであるミンミンゼミは鳴いているものの姿が見えない。ミンミンゼミは何処でも生息しているのだが、自然度の高い雑木林や公園では敏感で、人の接近を関知してすぐに逃げてしまう。しかし、東京都心で発生するミンミンゼミは、手でつかめる程に人馴れしていると言う訳で期待していたのだが、変わってニイニイゼミがたくさんいて、これもおっとりしていたので近づいて鮮明に撮影した。

<今日観察出来たもの>昆虫/ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、ウスバキトンボ、チョウトンボ、アオモンイトトンボ(写真右)、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ等。その他/ブルーベリー(写真左)、メダカ等。


7月28日、横浜市戸塚区舞岡公園

 昨日、小山田緑地でトンボの撮影が今一だったので、大小の溜池が点在する舞岡公園へ久しぶりに出かけた。今日は平日だから人の出が少なく、本当に自然が好きな人たちだけが来ている筈である。ここに来ると午前中は谷戸を詰めて一回りして来るコースをとる。そして午後はクヌギ休憩所を経て、尾根道を樹液が沢山出ているクヌギ林まで行くというのがいつものパターンである。「それにしても今年の田んぼの稲の生育は芳しくないな」と知り合いがボランティアで耕作している田んぼを見渡す。先日、新治市民の森でやはりボランティアの方々が耕作している谷戸田を見たが、かなりの葉に勢いが無く白く虫にやられている。そのことをボランティアの方に恐る恐る聞いてみると、「長雨のためかニカメイガ等の蛾が発生して困っているんです」という答えが返って来た。それに対して「農薬はまかないんですか」等と言う馬鹿げた質問をしてしまった。このような谷戸でボランティアの方々が耕作する田んぼや畑で、化学肥料や農薬を使わないのは当たり前のことなのである。それを知りながらも聞いたのだから、害虫による稲の被害の惨状が分ることだろう。「まきたいんですけどね。昔ながらの無農薬栽培が基本ですから」との答えが返って来た。舞岡公園の田んぼの稲は、新治市民の森よりいくらか被害が少ないようだがやはり元気が無い。
 こんな長梅雨を象徴するかのような事が自然観察をしていても巡り会った。もうとっくに姿を消しているはずのオオミドリシジミとミズイロオナガシジミの弱った個体に巡り会ったのである。いつ飛ぼう、いつ交尾しよう、いつ産卵しようと思っている内に雨や低温の日が続いて、なかなかその思いを遂げられなかったようである。まるで今度こそは今度こそはと甲府盆地通いをした私のようである。舞岡公園にもカワセミがやって来る池がある。昨日の小山田緑地での幼鳥と比較するために見に行くと、成鳥は身体も少し大きく色彩も鮮やかで、嘴も真っ黒くて少し長いようである。もちろん飛翔や行動もきびきびとしていた。今日のもう一つの目的であるクワの古木に見られるスズメバチに擬態したトラフカミキリと、ヌルデの樹肌に擬態した奇怪なマダラアシゾウムシは、前者は去年いた木にいたものの後者は見つけることが出来なかった。今日の特筆すべきものとしては、アカツメクサの花に様々な昆虫がいたことである。特にマメコガネが花を食べに多数来ていて、何とか「花虫とおる」の面目躍如と頑張ったが、風が少しあり久しぶりの天気に浮かれたマメコガネも忙しそうでシャッターを押せずに、獲物を待ち構えてじっとしているハナグモをアカツメクサの赤い花の中に納めた。
 昼食を食べようと火の見櫓のある瓜久保の休憩所に行くと、昆虫が大好きなご婦人のNさん、Kさん、そして毎日のように自転車でやって来る股旅物の時代劇の親分を連想させる風貌のTさんに会った。Tさんは私の久しぶりの舞岡公園登場を喜んでか、舞岡公園で撮影したナガサキアゲハとアカボシゴマダラの写真を見せてくれた。「凄いですね。私なんか一度も撮ったことが無い」と言うと、照れ隠しもあるのだろうが「犬も歩けば棒にあたる。たくさんフィールドに来れば珍しいものにあたるということかな」と笑って言った。確かにそれは名言だが、それにしても素晴らしい。そんなことを皆でしゃべっていると、今度は石垣島へ行った時の蝶の写真を見せてくれた。普通種のカバマダラ、リュウキュウアサギマダラはまだしも、憧れの大型で美しいツマベニチョウの写真も撮っておられた。私も以前に仕事でタイへ言った事があるが、バンコク市内の植物園でも、日本で見たことの無い蝶がたくさん飛んでいた。海外旅行というと一般の方は名所旧跡と美味しい食べ物と決まっているが、蝶を含めた昆虫に興味を持っていると、目はキョロキョロと挙動不審の胡散臭そうな日本人になってしまうのだ。

<今日観察出来たもの>蝶/モンキアゲハ、アゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハ、キタテハ、イチモンジチョウ、コミスジ、スジグロシロチョウ、ミズイロオナガシジミ、オオミドリシジミ、、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/トラフカミキリ(写真右)、ヒメシロコブゾウムシ、トウキョウヒメハンミョウ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ニイニイゼミ、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ等。花/ヤマユリ、キキョウ(写真左)、ヤマハッカ等。その他/カワセミ等。


7月27日、東京都町田市小山田緑地〜小野路町・図師町

 今日は土用の丑の日である。ウナギを食べて暑さによる夏ばてを乗り越えようと考え出された日本人の知恵と思われるが、今日も涼しい曇り空である。しかし、昨日、一昨日に比べるといくらか湿度が低い。ラジオの天気予報では昼頃より晴れると言っていたので、午前中が勝負とばかりに小山田緑地へ急いだ。本園に行けば、オオムラサキを保護しているだけあって、確実に複数のオオムラサキを見ることが出来るのだが、池のトンボを撮りたくて分園のアサザ池に行った。途中、休耕田と山裾との境目にピンクのナツズイセンが咲いている。今まで度々フィールドで見ているものの、一枚もちゃんとしたものを撮影していなかったので、背景は今一だったが、咲き始めの新鮮なものだったので慎重に写した。こんなに美しくて、一体、ナツズイセンとは園芸品種なのか野生種なのかと思い図鑑を開いてみると、ヒガンバナと同じで、遠い昔に中国から渡って来た史前帰化植物とある。これを証明するかのように、8月下旬に咲くキツネノカミソリは良く結実するが、ナツズイセンとヒガンバナは結実しないとある。
 アサザ池は共に黄色いアサザとコウホネが咲いていて、オオシオカラトンボやシオカラトンボが飛んでいるのだか、今一絵になる場所に止っていない。そこでゴルフ場の方まで歩いて行くと、近づいても逃げない馴れ馴れしいカワセミが水路の脇で獲物を狙っている。しかし、どう見ても弱々しく頭部の色彩もさえず、尾もなんとなく短い。しかも、2メートル程まで近づくとやっと逃げるという按配なのである。きっと、これは巣立ったばかりの若鳥だなと思った。それにしても生まれて初めてのような慣れない狩りで、獲物を捕る事が出来るのだろうかと心配になった。さらに道を詰めると畑仕事に自転車でやって来た方の荷台に、化学肥料の封を切った袋が積んであって、羽化したばかりの美しいスミナガシがたかって肥料を舐めていた。また、ゴルフ場の生垣にそってオニヤンマがひきりにバトロールをしていたり、たぶんセリを食べていたと思われるキアゲハが交尾していたりと、目的のトンボは空振りとなったが、充分楽しめたのだからと、昼食まで時間が少しあるので図師町の谷戸を覗いてみた。
 今日は日曜日とあって、まずUさんに合った。Uさんは野鳥にも詳しいので小山田緑地で見たカワセミのことを話すと、やはり巣立ちの時期で幼鳥ではないかということになった。今日は先日会ったSさんNさんが見たと言うクヌギの木にカブトムシの雌が来ていて、その周りの芝地には沢山のカブトムシの雄の頭胸部が散乱していた。「アオバズクの仕業ですね」とNさん、「何で雄ばかりなんでしょうね」と後からやって来たKさんが言う。その時は閃かなかったが、アオバズクも、雌を食べたら来年のカブトムシの発生が少なくなるからと選択して食べているのかも知れない。そんなことを話していたらMさんが遅い出勤で登場し、ヤマタノオロチのような大蛇であるアオダイショウの話になった。Mさんは2匹見ていると言う。そしてSさんNさんと私が見たし、山桜の古木の枝に抜け殻もあるから、きっと、この谷戸に居着いているということになった。しかし、心配は無用ですよ。いくら太くて2〜3メートル位の長さがあっても、アオダイショウは昔から家に居着いていて「家の守り神」とされていたおとなしい蛇だから、ここのアオダイショウも「谷戸の守り神」という訳である。この花の谷戸が大好きなご婦人たちも安心して、今が盛りのヤマユリやオオバギボウシを見に行って欲しいものである。

<今日観察出来たもの>蝶/モンキアゲハ、カラスアゲハ、キアゲハ(写真右)、スミナガシ、キタテハ、イチモンジチョウ、コミスジ、スジグロシロチョウ、キチョウ、クロヒカゲ、コジャノメ、ジャノメチョウ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/カブトムシ、キマワリ、トウキョウヒメハンミョウ、ヒグラシ、ニイニイゼミ、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ等。花/ナツズイセン(写真左)、アサザ、コウホネ、ヤマユリ、オオバギボウシ、タカトウダイ、トキワハゼ、ヤマハッカ、ソクズ、ヤブミョウガ、ヘクソカズラ等。キノコ/ニガクリタケ、ノウタケ、コテングタケモドキ、ドクツルタケ、ダイダイガサ等。その他/カワセミの幼鳥、ウワミズザクラの実、ヤマカガシ等。


7月25日、東京都町田市小野路町

 毎週のように連続して甲府盆地へ遠征したためか、さすがに疲れが出たようである。今週末も行く予定であったが止めにして、近場の自然観察と写真撮影に励むことにした。今日はその第1弾で、ほとんどの時間を美しい雑木林の中で過ごして、樹液に吸汁する昆虫たちや樹木の幹に止っているセミや甲虫類を撮影しようと考えて小野路町へ行った。雑木林の中は薮蚊が多いので、薮蚊対策に腰に蚊取り線香をぶら下げているのは勿論のこと、手の甲や首筋に防虫スプーレーを散布し、長袖を手首まで下ろしての重装備である。そんな思いをしてまで何故雑木林の中がそんなに面白いの?と一般の方は思うだろう。様々な昆虫に魅せられた者にとって、クヌギやコナラを主体とした、しかも平坦に近い雑木林はわくわく面白ランドなのである。しかも、近場の雑木林では気が引けてまだ実行してないが、夜が昼にも増して面白いのである。まあ、こんなことを言うと異常人間と思われても仕方が無いのだが、だまされたと思って私に同行して頂いたら充分に納得されるに違いない。
 昼はオオムラサキ、ルリタテハ、キタテハや発生が少し遅れるがゴマダラチョウ、スミナガシ、アカタテハ等の奇麗所の蝶以外に、クロヒカゲ、ジャノメチョウ、コジャノメ等の黒装束の面々が樹液に吸汁に来ていて、昨晩から居残ったカブトムシやコクワガタ等も見られ、樹木の幹にはヒグラシ、ニイニイゼミ、ノコギリカミキリがたかっているのである。夜になると樹液にやって来るメンバーは代わって、ベニシタバ、キシタバ、コシロシタバ、フクラスズメ、ベニスズメ、セスジスズメ、トモエガ等の蛾やミヤマカミキリ、ウスバカミキリ、キマダラカミキリ等の夜行性のカミキリムシがお出ましになり、本来が夜行性のカブトムシ、ノコギリクワガタ、コクワガタ等もたくさん集まって来る。そればかりでなく樹木の幹や下草の葉裏で各種のセミの羽化が見られるのだから、昆虫好きは勿論だが、一般の方々でも充分に楽しめると言う訳だ。
 そんな訳でオオムラサキこそいなかったものの、一通りの目的の撮影が終わると、一週間前に来た時にあったノウタケはどうなっているのかなと気になって生えてた場所に行ってみた。すると、先週の美味しそうな菓子パンのようなノウタケは何処にもなく、緑色の黄な粉のようになって小さな砂山のように溶け始めていた。キノコの観察を開始して初めて分ったのだが、いわゆるキノコの見頃は本当に短いのである。キノコは菌類の花だと前にも書いたが、各種の植物の花よりその命は短いようだ。今日は死亡例もあると言われる毒キノコのニガクリタケが気持ち悪い程たくさん生えていて、生えてる場所だけがクリーム色に見えるから遠目でもすぐ分る。その他、雑木林の中や小道のへりにヤマユリが相変わらず美しく、早くもヤマホトトギスが咲き出しているのには驚いた。今日は湿度が異常に高い日で、おまけに長袖を下ろしていたので疲労困憊しての早上がりとなった。

<今日観察出来たもの>蝶/ルリタテハ、スジグロシロチョウ、キチョウ、クロヒカゲ、コジャノメ、ジャノメチョウ(写真左)等。昆虫/カブトムシ、コクワガタ、キマワリ、ルリボシカミキリ、ノコギリカミキリ、ヒグラシ、ニイニイゼミ等。花/ヤマユリ、ヤマホトトギス、ヤマハッカ、ソクズ、ヤブミョウガ、ヘクソカズラ等。キノコ/ドクツルタケ、サンコタケ(写真右)、ニガクリタケ等。


7月22日、山梨県北巨摩郡白州町中山峠

 
今日は朝から青空が広がる。昨晩の天気予報によると梅雨前線が南下しての晴れだから、すがすがしい観察日和になるはずである。昨日、行けなかった乙女高原や南アルプスを眺めると、山頂付近は雲で覆われている。雨こそ降っていないものの、霧の中に包まれているようである。今年の高原や山の植物や昆虫たちは、いったいどのようになるのだろう。そんな思いを浮かべながら、携帯電話が確実に通ずる白州町中山峠へ向けて出発する。しかし、直行するのも味気ないと、南アルプスから流れて来る渓流に沿った林道の探索をしてからということにした。この時期、渓流や崖からの雨水や清水が林道にあふれ出ていると、今日みたいな晴天の日には多くの蝶達が吸水にやって来る。また、渓流沿いに咲くやや花期は過ぎたものの、蝶の大好きなオカトラノオにも各種の蝶が吸蜜に現れているはずである。例年だと、ミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、コムラサキ、コミスジ、シータテハ、スジボソヤマキチョウ、コチャバネセセリが吸水に、ホソバセセリや各種のヒョウモンチョウが吸蜜にという訳である。
 
そんな訳で、いつも必ずこの時期に一度は訪れる韮崎市北宮地という所から甘利山に通ずる林道に行って見た。この林道は現在崩壊が激しいので甘利山までは行くことが出来ない。また、更に国道20号線を北上して青木鉱泉へ入る林道から鳥居峠を経て甘利山へ行く道は通れるはずだが、道が悪くてお勧め出来ない。もし、甘利山へ行くなら全面舗装のさわら池経由の林道である。例年ならクガイソウ、コバギボウシ、ニッコウキスゲ等の花が咲き、駐車場から30分も歩けば行き着く山頂を一回りしてくれば、コヒョウモンモドキ、アサギマダラ、各種ヒョウモンチョウ、ウラジャノメ、ヒメキマダラヒカゲ等の蝶が飛んでいる筈である。また、8月に入れば山頂から千頭星山へ向かって1時間も歩けば、高山蝶のベニヒカゲやクモマベニヒカゲに会えることだろう。この道は人が来ずに静かな山旅が楽しめ、いつも富士山が見渡せるから最高である。しかし、去年はこの全面舗装の林道も、雨による土砂崩れにあって長らく通行止めとなっていた。いずれにしてもこの方面は雨による土砂崩れによって、すぐに通行止めとなるから要注意である。そんな訳で林道探索と言っても時間も無いことだし、ちょっと入り口から少し入っただけだったが、カラスアゲハやコムラサキが吸水していて満足して中山峠へ向かった。
 中山峠に入る林道脇の雑木林の側らに車を停めると、早くもオオムラサキが旋回してお出迎えとなった。ここのクヌギやコナラは多摩丘陵では信じられないくらいに樹液の出が豊富で、気持ち悪くなるばかりにアオカナブンやカナブンが集まっている。しかし、例年に比べるとオオムラサキの発生は少なく、おまけに厄介もののオオスズメバチも少ないから助かるものの、それに変わってコガタスズメバチやヒメスズメバチ等の中小型のスズメバチがのさばっている。昼近くになると八ヶ岳や奥秩父にモクモクと入道雲が発生し始めた。甲斐駒ケ岳や鋸岳には黒い雨雲が厚くなりつつある。今日は雷がやって来そうである。こんな光景を見ると、もうすぐそこまで夏がやって来ていると感じさせるのに充分であるのだが、どうした訳なのだろう。かなり長時間オオムラサキの羽の開くのを待っていたにもかかわらず、美しい青紫の羽を撮影する時間だけ開いていてくれる気の良い個体は現れず、雨でも降ったらと思い、更に林道を別荘地のある奥に詰めると、ニホンザルの群れが現れて木登りをしているではないか。大きな猿は木の幹にお腹をばんばん打ちつけながら物凄い勢いで登って行く、私の車に驚いた別の猿は、するすると滑るように降りてきて地上から5メートル以上もある高さから地面に飛び降りた。野生とはこんなに激しいものであるのか等と感心したが、以前、歩いていた時に猿の群れに出合った恐ろしさが甦って来た。

<今日観察出来たもの>
蝶/カラスアゲハ、オオムラサキ(写真左)、コムラサキ、コミスジ、シータテハ、ジャノメチョウ、クロヒカゲモドキ等。昆虫/ルリボシカミキリ、カブトムシ、ツノアオカメムシ、アオカナブン(写真右)、カナブン、ヒグラシ、コガタスズメバチ、ヒメスズメバチ等。


7月21日、山梨県東八代郡中道町曾根丘陵公園〜中巨摩郡敷島町

 
今日は朝から雨が降っている。昨晩、大雨だったから止むはずであると思っていたのが大間違い。携帯電話が通じない乙女高原には、祝日である今日と考えていたのだが、これで2週間続けてお流れとなった。ユースのペアレントが蝶に造詣が深いと前に紹介したが「今年は虫屋さんは開店休業で泣いてますね」とおっしゃるのはまこと真実である。こんな天候では蝶も順調に成長して飛ばないのではなかろうか。また、今年、あまり蝶が飛ばなければ産卵数もぐっと減るだろうから、来年も期待できないかもしれない。しかし、そんなことはお構い無しに様々のものを撮影する私だから、雨さえ降っていなければとてもハッピーな訳である。甲府盆地の何処かは雨が降っていない筈だと、乙女高原に行けないのは残念だが、いたって暢気なものである。同宿の女性が「今日はどうしようかな? 昇仙峡巡りに行こうか行くまいか?」と迷っていたので、「雨や霧にむせぶ昇仙峡巡りも風情があって良いのではないですか。それに馬車には幌がついているから濡れませんよ」等と無責任な事を言って、「途中、通りますから乗って行きませんか」と勧めてしまった。果たして彼女は後悔していないだろうかと気がかりである。
 そんな訳で同宿の女性を昇仙峡入口で降ろすと、甲府盆地を見下ろせる敷島町の高台にある総合運動公園に行った。甲府盆地を見下ろすと先週と同じで中道町周辺の雲が薄い。そんな訳で7月14日と同じように中央高速を一区間乗って曾根丘陵公園へ行った。私が予想していた通り雨は降ってなく、今日も1日中、自然観察と写真撮影が出来ると思うと嬉しいような、また、雨が降って一日中寝ていたいものだとの思いもよぎる。こんなに毎日のように野山を歩いていると「晴耕雨読」等よりも「晴写雨寝」となり、雨で仕方が無いなぁ等と諦めるて寝る日が来るのが待ち遠しくなるのである。いずれにしても自然観察や写真撮影は持ち時間では無いのだから、もう少し余裕を持った時間配分をせねばならないと考え始めている。曽根崎丘陵公園は、先週、沢山のキノコが生えていたのだが、今日は見るべきキノコが無い。先日、小野路町の畑の横の栗林に入って行ったら見るべきものが無かったのと同じである。「今日は生えてませんね」と、その栗林に入ることを許可して貰っている地主の農家の方に話すと「一時沢山生えると、しばらくしねぇと生えないんだ」とおっしゃる。土とともに自然とともに生きて来た初老の農家のおじさんの言う事に間違い無い。
 そんな訳で雨が降っていないものの撮影対象が無いなと思っていたら、沢山あるワルナスビ(写真左)が小さなトマトのような緑の実を鈴なりにつけていた。本当に可愛らしく美味しそうである。図鑑を見ると毒とは書かれてないので、何か工夫したらきっと素晴らしい料理が出来るに違いない。そこで、このHPがキノコだらけになるのも不本意と思って実を写し公園内を散策すると、盛りを過ぎたがキキョウが美しく、また、ツマグロヒョウモンの雄が嫁さん探しでテリトリーを張っている。何べんも逃げられて追いかけっこをしながら一枚シャッターを切った。そんなことをしていたら敷島町の上空も明るくなったので、午後は敷島運動公園に戻った。しかし、期待したオオムラサキの発生は少なく、たくさん生えてるキノコの撮影となった。ユースに戻って相変わらず美味しい夕食を食べ、酔い冷ましに探しておいたクヌギの樹液を見回ってカブトムシをたくさん捕り「さすが昆虫の吉田さん」と言われたく、ペアレントに虫かごを借りたのだが見事にあぶれてしまった。しかし、農道にはヘイケボタルが沢山飛んでいて、その事を話すと、同宿の女性が見たいと言う。若い女性一人の農道歩きは危険と思って、またまた、農道へヘイケボタルを見せに引き返したが、とても感激してくれたので「さすが昆虫の吉田さん」の面目は保たれたと言う訳である。

<今日観察出来たもの>蝶/オオムラサキ、ツマグロヒョウモン(写真右)、ジャノメチョウ、クロヒカゲモドキ、ホソバセセリ等。その他/敷島運動公園周辺にキノコが一杯。


7月20日、神奈川県秦野市弘法山〜大井町足柄いこいの村

 今日は例によって夕食時間である午後6時半までに甲府ハイランドユースホステルに着けば良いのだから、何処かへ寄って自然観察及び写真撮影と考えていた。富士五湖方面は先々週及び先週に行ったから、今日は神奈川県内でウロウロしてから甲府に向けて出発と決めていた。前の日に町田市小野路町や図師町の多摩丘陵でヤマユリを見たから、風情溢れるヤマユリの花が撮影したくなったのだ。そこで私が知っているヤマユリが沢山見られる弘法山へまず行くことにした。園芸品種の花は美しく艶やかだけど風情に欠けると言われている。とは言っても園芸品種の花も撮影するし、また、とっても好きである。鮮やかな色様々な花々たちに囲まれると、ある種の幸福感に似たような思いを覚えるのも確かなのだ。園芸品種の花は、フランスのブルボン王朝等の着飾った王侯貴族の御夫人達を連想するが、日本の風土に咲く野の花は、毎日生活の中で咲き続ける清く健気な日本女性を連想する。まあ毎日、西洋料理ばっかり食べていたら飽きてしまうし、かと言って毎日、精進料理みたいなあっさりした和食を食べていたら、これまた飽きてしまう。また、歳若い頃は脂ぎった西洋料理や中華料理が好きだったが、歳をとるに従って純和風料理へ好みが変わる方々も多いのではなかろうか。花の世界も世の中と同様に、色々あって面白くて楽しいのだ。
 そんな多くの日本の野の花の中で、艶やかさと清らかさを合わせ持った花の筆頭にヤマユリが上げられる。1861年にヨーロッパに紹介された時、驚きの目を持って歓迎され、その後、山採りの多数の輪茎が輸出され、様々な品種改良がなされて多くのユリの園芸品種が出来上がった。そんな訳でヤマユリはこの時期に野山を歩く者にとって忘れられない存在ばかりか、世界の園芸史上においても忘れられない存在なのである。私が子供の頃、どうした訳だか分らないが、ヤマユリを見つけて家に植えることが流行った。誰もが知っているようにヤマユリはたったの一輪しか花を咲かせない若齢のものから、それこそ十数個の花を咲かせる見事なものまである。この何個花を咲かせるかとか、輪茎の大きさ等を競った訳である。しかし、残念なことに、庭に植えるとだんだん花の数が減って、ついには芽を出さずに消え去ってしまうのである。ある山の茶店のおやじが「輪茎を逆さに植えると大丈夫」と言ったので試してみたが駄目だった。こうした経験から、西洋に輸出されたヤマユリは果たして上手く咲き続けることが出来たのだろうか。ヤマユリに限らず、野の花は頑なまでに野に固執するが、学問的には当たり前のことなのだろうが“あっぱれ”なことだといつも思う。
 弘法山はそんな私の期待を裏切ることなくちょうどヤマユリの見頃で、一目百花とはまさにこのような状態を言うのだろう。特に雑木林の中に咲いているものが風情一杯である。ヤマユリの花はとても大きいから一輪の重量はとても重たい。だから、陽が余り差さない雑木林の斜面に咲いていると、茎は細っそりと間延びして、このため花の重さに耐え切れずに茎が弓なりに曲がって咲くのである。また、そよ風が雑木林の中に吹いているので、いくら待っても花は止らなくて撮影を梃子摺らせるのだが、これがまた風情をかもし出しているのだから仕方が無い。そんな訳で雑木林の中のヤマユリの撮影は諦めたが、最近、北上目覚しい美しいナガサキアゲハの雌がやって来て、ヤマユリの花の間を縫ってヒラヒラ飛んでいる。こんな楽園を連想させるシーンをじっくり味わうのもとても素晴らしく、時間は長時間止って、写真撮影のことはしばらく忘れてしまった。

<今日観察出来たもの>蝶/ナガサキアゲハ、モンキアゲハ、オオムラサキ、ジャノメチョウ等。昆虫/オオセンチコガネ、タマムシ等。花/ヤマユリ(写真左)等。その他/大井町足柄いこいの村にてタマゴタケ(写真右)、ドクツルタケ等。


7月19日、東京都町田市小野路町・図師町

 谷戸田を見下ろす芝地になった小高い場所に腰を降ろすと、ヤマザクラの古木から「チィーチィー、ニィーニィー」とニイニイゼミの声が聞こえて来る。谷戸田と雑木林が接する斜面には、オオバギボウシ、ヤマユリの白い花が満開で実に見事である。今日は土曜日だというのに誰もいない。そこで一句「百合咲いて、谷戸に染み入る、蝉の声」とへたな句を作ってみた。松尾芭蕉が立石寺で作った句をもじったわけだが、芭蕉が耳にした蝉もニイニイゼミだったのである。例年、ニイニイゼミが鳴き始めると梅雨が明ける。そこで私は「梅雨明けを知らせる蝉」としてニイニイゼミを捉えている。今年は梅雨明けが遅そうだが、ニイニイゼミが鳴いてから、少なくとも1週間位経てば梅雨は明けるはずである。昨日、仕事で飯田橋の公園を歩いていたらミンミンゼミが鳴いていた。蝉の季節である夏はもうすぐそこである。今日は田植えをしてから初めての草取りらしく、中ほどの谷戸田には農家の方々が大勢来ていた。そのためかどうかは分らないが、先日出会ったSさんNさんが出会ったと言う、びっくりする程大きなアオダイショウが芝地に寝転んでいた。「ここはご婦人に人気の花の谷戸だから姿を現したらあかんで」と叱り飛ばしたのが効をそうしたのではなく、私のドタバタする長靴の音に驚いて逃げて行った。本当にヤマタノオロチを連想するくらい大きなアオダイショウであるが、蛇嫌いの私でも親しみを持つ愛嬌ものの蛇である。
 谷戸田周辺は本当に白い花ばかりが目に付くのだが、赤紫のノアザミ、レモンイエローのミヤコグサ、青紫のウツボグサもまだ咲き残っていて、多摩丘陵では珍しいオトギリソウも咲いている。オトギリソウにカメラを向けると風があってなかなか花が止らない。そこで昼飯を食べてからゆっくり撮ろうと菓子パンをほおばり、腹ごなしに乾いた田んぼに沢山開いているハンミョウの幼虫が住んでいる穴に草の茎を入れて釣り上げようと遊んだり、キアゲハやジャノメチョウを写そうとしたり、SさんNさんが出合ったというカブトムシを探したりしていたら、ああ何と不思議、オトギリソウは花を閉じてしまった。午前中に咲き午後に閉じる花なのだろうか? それとも曇って来ると花を閉じてしまうのだろうか? 図鑑を開いてみたが書かれていない。この他、なかなか絵にはなりにくいが、谷戸に来る途中の日陰の各所に、ヤブミョウガやソクズ(クサニワトコ)も咲き始めていた。
 さて、先日来た時は雨になって観察できなかった、お爺さんが手入れを怠らない美しい雑木林を見回って、明日からの遠征の為に早く帰ろうと谷戸を後にした。ここしばらく来なかったが、お爺さんがまるで掃き清めるがごとくに落葉落枝を冬に集めている為に美しいクヌギ林である。お爺さんに会った時、「たびたび、この雑木林に写真を撮りに来ますので宜しく」と言ったら、「ここはマムシがいないから安心だよ」とおっしゃったので、安心して自由自在に雑木林の中を歩き回れる。しかも樹液をたっぷり出しているクヌギの大木があって、今日はいましたよ、羽化したばかりのピッカピカのオオムラサキの雄が2頭、ルリタテハ、キタテハ、ジャノメチョウと押し合いへし合い樹液に夢中になっている。しかし、しばらく頑張ったがオオムラサキは青紫の羽の表を見せてくれない。そこで証拠写真とばかりに羽を閉じたものをカメラに収めて雑木林の中を散策すると、大きな美味しそうなパンが3つも並んで地面に落ちている、ノウタケである。キノコを始めたばかりの私でも、見間違うことの無い食べられるキノコの一つである。今日は、時間つぶしに来たようなものであったのだが、本当に沢山の収穫があった。おまけに小野神社手前の無人売り場に沢山の野菜が並べられていて、市価の三分の二位の値段だから、あるものみんな一袋ずつ買って帰った。特にピーマンは甘くて美味しいお勧めの一品で、家族みんなが首を長くして待っているのである。

<今日観察出来たもの>蝶/オオムラサキ、ルリタテハ、キタテハ、ジャノメチョウ、カラスアゲハ、キアゲハ、コチャバネセセリ、ルリシジミ、ベニシジミ等。花/ヤマユリ(写真左)、オオバギボウシ、ソクズ、ヤブミョウガ、オカトラノオ、オトギリソウ等。その他/アオダイショウ、ルリボシカミキリ、ノウタケ(写真右)、タマゴタケ等。


7月17日、横浜市緑区新治市民の森〜横浜市緑区キノコの森

 今日は、先日来た時に観察したハグロトンボを撮影しようと、新治町の梅田川にやって来た。不思議だ!ここが横浜市内だなんて、まるで低山地の小川にいるようである。水の流れが川の中にある大きな石にぶつかって発てる音や急な落ち込みに水が流れる込む時に発する音、急流の瀬を水が流れる音、農業用水路から水が小さな滝となって落ちる音等、梅田川の岸を歩いていると横浜市内にいることを忘れてしまう。流れる水もここが横浜市内なの?と疑うほど澄んでいて、小魚が群れを作って泳いでいる。小さいのはきっとクチボソ(モロコ)、大きいのはアブラッパヤかヤマベ(オイカワ)のようである。もちろんマブナも泳いでいる。そんな川面にそって羽が黒く、雄は胴体が金緑色に光るハグロトンボが涼しそうに飛んでいる。胴体が黒褐色の雌に雄がちょっかいをだしたり、水面に頭を出した石の上にテリトリーを張って止っていたり、雌が水中に没する草にお尻を水中に突っ込んで産卵していたりと、丹沢の麓の城山町や愛川町の小川にいるような錯覚を覚えてしまう。一度釣り竿を持って来て魚釣りがしたくなる。また、子供の頃よく遊んだ「四つ手網」を持って来て、魚捕りも面白そうだ。ことによったらマタナゴやテナガエビ等と言う、懐かしい生き物に出会えるかもしれない。昨日、黒川の水田脇に流れる小川で感じた懐かしい泥の臭いのする流れは無く、近くに家を建てて小川のせせらぎの音を聞きながら寝床に入ったら最高だと感じる程なのである。
 今日はハグロトンボを撮るんだと、それはそれは重たい200mmマクロレンズを持って来た。しかし、なかなか絵になる場所に止ってくれない。たいがい水面に垂れる禾本科の草の茎や川岸近くの川底に根があるミゾソバ等の葉に止るので、川の流れに揺れてピントが合わせられないのである。また、水面に顔を出した石に止っているものを狙おうとしたら、長靴に穴があいていて水が浸入し、靴下が濡れてしまうといった按配である。それでも靴下がびしょびしょになりながらも、何とか一枚お見せする事の出来る写真を撮影した。確か「水上みさき」さんと言ったと思うが、女性でトンボを専門に撮っている写真家がいらっしゃる。以前、カメラ雑誌でトンボの撮影風景が紹介されていたが、なんと渓流釣りで履く腰まである「バカ長」を履いていた。やはり水辺が生息場所であるトンボの撮影にはこれくらいの身づくろいが必要なのだと実感した。なお、このような小川や池で写真撮影をする場合、三脚にカメラをつけたままその場を離れるなどと言うことは絶対にしてはいけないことで、もし三脚が倒れたらカメラもレンズも完全に使い物にならなくなる。
 昼食を済ませるとあまり満足とは言えなかったが、小川のせせらぎを聞きながらハグロトンボを見て、農道の水溜りに羽化したばかりのアオスジアゲハ、クロアゲハ、アゲハ、コチャバネセセリを観察出来たのだから、いざキノコの森へということになった。しかし、キノコの森もひところの賑わいは無く、テングタケダマシ、チチタケ、オニイグチモドキ、ツルタケ等が目についた位で、キノコの森と言えども季節の端境期に入っているようである。一体、梅雨が明けて真夏の太陽がかっと照ったらどうなるのであろう。

<新治市民の森で観察したもの>野の花/ノカンゾウ、ヤブカンゾウ等。蝶/アオスジアゲハ、クロアゲハ、アゲハ、ジャノメチョウ、コチャバネセセリ等。昆虫/ハグロトンボ(写真左)、オニヤンマ、ウスバキトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、シオヤアブ(写真右)、トウキョウヒメハンミョウ等。


7月16日、神奈川県川崎市麻生区黒川〜東京都町田市小野路町

 このところずっと甲府盆地にいたみたいで、多摩丘陵は久しぶりである。しかも、黒川となるとだいぶ前だったように感ずる。ゲンジボタルを見に行こうと思っていたのだが、Mさんご夫婦が様子を見に行ってくれて、田んぼが埋め立てられて駄目みたいというメールを貰って、なんとなく行く気がしなくなっていたのだろう。しかし、黒川には自然観察に適した道端が沢山ある。こういった道端を私は「不思議な道端」と呼んでいて、黒川にはそのような道端が2本ある。ともに舗装された平坦な道をぶらぶら歩けば済むのでとても有り難い。第一の不思議な道端は野草観察にも最適で、タカトウダイ、チダケザシ、ヤマハッカ、イヌゴマ、タケニグサ、ヘクソカズラ等が咲いていて、早くもミズヒキ、ユウガギクが咲き始め、フジバカマ、センニンソウ、カガイモは蕾を持ち、キクイモやワレモコウはだいぶ背が高くなっている。ずっと梅雨空が続いていてるが夏の花が咲き出し、しかも、その先の秋の花まで用意万端と来ているのだから、確実に季節は巡っているのだ。
 今日はある出版社さんの頼まれ仕事に、そろそろ精を出さなければならないと思って黒川にやって来た。出版社さんの仕事というと珍奇種を探しての撮影かと思うかもしれないが、身近に見られるものがほとんどである。昆虫で言ったら出版社さんの欲しがるものは「カブトムシ、アゲハチョウ、オニヤンマ」等が確実に上位を占める。何を撮っているのかは来春出版されるまでの秘密であるが、いつも頼まれ仕事は「やだなぁー、そんなものを撮って」という気持ちが聞いた時に湧いてくる。しかし、撮り続けているとはまってしまうのである。去年は、植物につくアブラムシ(アリマキ)とカイガラムシを撮ることを頼まれて頑張った。植物ごとにつくアブラムシが決まっていて、しかも、たいがいお尻に可愛い角を生やしていて、意外と可愛い昆虫であることが分った。そんな訳で農道をうろうろしながら歩いていると、熟年のご夫婦がやって来た。奥さんの方が私を見詰めてなにやら笑顔一杯である。顔に泥でもついているのかな、それとも素適な男性が歩い来るからかなと思ったが「カブトムシの雌ですけど見つけたんですよ」と、カラフルなハンカチに大切そうにしまったカブトムシの雌を見せてくれた。奥さんの笑顔の正体はこれだったのである。人間って歳をとるに従って子供っぽくなるって言うのは本当のようである。
 昼食を済ませると、これまた久しぶりの町田市小野路町へ行った。最近、小野路町に来るとキノコばかり撮ってしまう。去年まで花や昆虫や風景をたくさん撮ったのだから今年は良しとして、今日は誰もが知ってる美味しいタマゴタケがたくさん生えていた。でも、このHPを見て採りに行ってはいけませんよ。それに雑木林の中や道端にヤマユリが咲いている。山道脇に置かれた丸太にはルリボシカミキリがいて、そろそろタマムシも現れることだろう。連日の遠征の疲労も考えて今日は早く帰ろうと山道を歩いていると、顔見知りの昆虫大好き人間のSさんとお連れのNさんにぱったり。例のクヌギ等の樹木の幹に着く苔を食べるシラホシコヤガを教えてくれたSさんである。今日は樹液に来ている昆虫たちの観察だそうである。ルリボシカミキリ、タマゴタケ、ヤマユリ、もしかしたら樹液にオオムラサキやヒオドシチョウも来ているかもしれないと、即席の自然観察会となった。しかし、途中から雨が激しくなって来て、Tさん宅の軒下に非難する。そこには様々な調査を行っている大学院生もいて、Tさんと囲炉裏の火を囲んでの即席の懇親会となった。

<黒川で観察したもの>野の花/コマツナギ、タカトウダイ、チダケサシ、ヤマハッカ、イヌゴマ、タケニグサ、ヘクソカズラ等。蝶/クロアゲハ、キアゲ、コミスジ等。その他/スイカ(写真左)、アマガエル(写真右)、アオスジアゲハの幼虫が多数。
<小野路町で観察したもの>野の花/ヤマユリ。昆虫/ルリボシカミキリ、ウスバカミキリ、キボシカミキリ、シロヒゲナガゾウムシ、ニジゴミムシダマシ、カナブン、オオスズメバチ、コガタスズメバチ等。その他/タマゴタケ、ドクツルタケ、チチタケ等のキノコ。


7月14日、山梨県東八代郡金川曾根広域農道

 
今年の梅雨は梅雨らしい等と暢気な事を言っていられなくなった。別に道端自然観察や写真撮影に支障を来たすからと言う訳ではなく。農作物の生育に影響を及ぼすのではないかと心配なのである。昨日も知ってるだけの毎年オオムラサキが良く来るクヌギを見回ったが、天候がすぐれないということを加味してもオオムラサキの発生は遅れているか、あるいは極端に発生が少ないのかも知れない。なんと言ったって日本の蝶の王様だから、少しぐらいの雨などへっちゃらさと飛び回っているはずである。今日のお目当てはホソバセセリ、コムラサキ、オオムラサキと蝶三昧で行こうと決めて、釜無川の上流に向かって左側の南アルプスの前衛の山々の山麓を巡ってみようと思っていた。余談だが山梨県に南アルプス市という市が町村合併で出来たが、今度は八ヶ岳市という名の市が誕生するかもしれないと、一昨晩、ユースで話題になっていた。大泉村とか須玉町とかが合併するわけだが、小淵沢町の人たちは反対していると言う事である。町村合併も良いが、昔馴染みの町村名が消えるのだからすごく寂しくなる。それに八ヶ岳市から八ヶ岳へ登って来たなんて、何だか情緒に欠けてつまらないし、口ごもって舌でも噛みそうになる。
 そんな訳で韮崎市にある武田八幡宮までやって来たが雨が降ってやみそうもない。どうしようと悩んで諏訪方面を見ると雲が厚い。しかし、甲府市の半分から東京よりの中道町、一宮町、八代町、勝沼町等は雲が薄く、薄日が漏れているようである。こうなったら方向転換、目的転換とばかりに車をUターンさせ、時間が惜しいから中央高速に乗って甲府南インターまで行くことにした。こういう場合は本当に車での道端自然観察はありがたい。まず、最初の目的地はインターからすぐの県立考古博物館のある曾根丘陵公園である。その公園を一巡りして、金川曾根広域農道を勝沼まで行ってみようと考えたのである。甲府盆地にはたくさんの広々とした公園があるが、それらの全てが魅力的で、たいがい雑木林や田畑や果樹園と隣接しているから、珍しいものは無理にしても撮影対象はたくさんある。また、昨日通った茅ケ岳広域農道もそうだが、大規模農道はその周りが自然観察適地で、何処に車を停めてもぶらぶら歩き回ればたくさんの収穫がある。おそらく私のようなそんな場所でも「ものすごく楽しんじゃう」という者は例外なのかも知れないが、稀少種や目的物を持たなければ、緑溢れる所なら何処でも自然観察及び写真撮影の最適地なのである。
 昨晩のNHKテレビの大河ドラマ宮本武蔵で「朝起きて陽が登り、1日何もなく終わる幸せ」等と宮本武蔵が言っていたが、また、沢庵和尚の禅の道とは「朝起きて陽が登り、雲の流れを見詰め、鳥の声や風のそよぎに耳をすませ、1日何もなく終わる幸せ」と言うことのようである。緑溢れるフィールドでぶらぶら歩き回り、美しいもの面白いものを見つけて感動するというのが道端自然観察の極意なのだから、これはきっと禅の道にも通ずる意外と高尚な趣味なのかもしれない。以前ある御婦人が「今日はどんなものに会えるかしら、と思ってフィールドを歩くのが一番楽しい」と言っていた。目的を作らずジャンルも狭めず、あらゆる方面に新鮮な目を向けて、自然を丸ごと楽しんじゃうということなのだろう。今年は無理だろうが来年は、そんな気持ちで色々な所へ行って、この「つれづれ観察記」を書いて見たいものである。そしてなるべく早いうちに「日本列島縦断つれづれ道端自然観察」を敢行したいものである。

<今日観察出来たもの>花/公園や農道脇でオニユリ、キキョウ、ヒャクニチソウ、ダリア、カンナ、グラジョウラス、ムギワラギク、ノウゼンカヅラ、リアトリス、モナルダ、ミソハギ、ムクゲ、ツユクサ、ワルナスビ等。果物や実/モモ、ナシ(写真左)、ブドウ(写真右)、カリン、リンゴ、カキ、ツバキ、エゴノキ等。その他/公園でキノコが一杯。


7月13日、山梨県北巨摩郡明野村山梨県フラワーセンター

 
昨晩の甲府ハイランドユースホステルの山梨県郷土料理「ほうとう」と地ワインはとっても美味しかった。なんとなんと「ほうとうの饂飩」はペアレント(マネージャー)のご夫婦が粉をこねて切ったものである。昨晩は甲府ハイランドユースホステルに宿泊合計93回の記録を持つSさんも来られていたが、なにしろこの天気である、この日は奥さんや子供さんも参加してささやかだが心温まる夕食となった。駐車場に横浜ナンバーの車がいつも停まっているので不思議に思っていたが、奥さんの実家は鎌倉の瑞泉寺の近くだと言う。それにしてもSさんの宿泊合計数は凄い、私も甲府ハイランドユースホステルが気に入っているので、桃の花が咲く4月中旬から滞在しても、Sさんの記録を抜くには、お盆近くまでということになる。もっとも、これだけ連泊したらペアレントご夫婦が私用で何処にも行けなくなってしまうから断わられるに違いない。良く行く白州町の中山峠に別荘地があって、住人に聞いてみたら建物込みで最低でも1000万円はかかるという。私もお盆に親戚の別荘に10日間くらいお世話になるのだが、誰もいないと蛇口をひねればお湯が一杯のお風呂、放り込んで洗剤を入れれば出来上がりの洗濯はまあ良しとしても、朝と夜の食事作りにはほとほと困ってしまう。毎日では、セブンイレブンいい気分どころか、セブンイレブンやな気分となってしまうのだ。以上のことを考え合わせると、美味しい夕食、朝食、沸かす心配のないお風呂、布団干しがいらない寝具を提供してくれて、別荘を建てる1000万円があると、なんなとなんと2000泊以上、年に100回、20年間も泊まれてしまうユースホステルの存在は魅力がある。
 今日は予定では昇仙峡から金山ダムを経て乙女高原へ行ってみようと思っていた。先日、帯那山で出会った方に水ケ森林道から乙女高原への道の舗装状況をメールで知らせてもらったが、まだ、合計5km位、あまり通りたくない凸凹のダートだという。もう少し頑張って貰わないとあかん愛車「小野路号」を思って、全線舗装の林道で乙女高原へと考えたのは勿論だが、途中、コムラサキやキバネセセリが見られ、また、独特な格好の瑞がき山や金峰山が遠望できることも魅力なのである。しかし、奥秩父方面を見るとどす黒い曇り空である。雨は降らないとしても、ヤナギランでも咲いていないと霧の中での情緒溢れる花の写真は無理である。そこで日照率日本一を誇る明野村の山梨県フラワーセンターへ行くことにした。ここへ行くまでの茅ケ岳大規模農道は何処で車を停めても、上へ行っても下へ行っても、素晴らしい自然観察を約束してくれる魅力溢れる農道である。山梨県フラワーセンターはヨーロッパアルプスにある建物を模した作りの建物が随所に建ち、しかも着飾った女性観光客も多いから、トレパンに長靴姿ではまずいと思い、スニーカーを履いて入園する。やはりここも梅雨の花と夏の花の端境期で、これと言ったものはなかったが、高山植物を集めた花園では早くもヤナギラン、ハクサンフウロウ、コマクサ、フシグロセンノウ、マツムシソウ、シキンカラマツが咲いていた。また、フラワーセンター前にある広大なヒマワリ畑は一輪も咲いてなく、やはり8月に入ってからのようである。
 昼食を済ませるとオオムラサキを探しに各所の雑木林を巡ったが一頭だに見ることが出来ず、慣れ親しんだ敷島町にある総合運動公園にユースの夕食時間に間に合うまで自然観察をしようと腰を据える。しかし、小雨がぱらついて来て万事休すと思ったが、公園内の木立の中ならカメラも濡れないと歩き回ると、凄い凄いキノコがぽこぽこいたる所に出ているではないか。特に、テングタケ(写真右)が密集して生えていて壮観である。こんな感激する場面に遭遇すると近くに誰かいるものだが、やはり親子連れがいてびっくりしていた。近くに住んでいても何べんも来ていても関心がないと見落としてしまうのである。それにしても山梨県の公園の自然度の深さには感心した。

<山梨県フラワーセンターに咲いていた花>
バラ、ガクアジサイ、アジサイ、キンシバイ、カラー、ハナショウブ、モントブレチア、アルストレメリア、キキョウ、ペチュニア、ヒマワリ(写真左)、リアトリス、マリーゴールド、ラベンダー、モナルダ、ヤマユリ、ヤナギラン、ハクサンフウロウ、コマクサ、フシグロセンノウ、マツムシソウ、シキンカラマツ等。


7月12日、山梨県西八代郡上九一色村本栖高原


 今日は6月28日に雨のため涙を飲んだ本栖高原への自然観察の再挑戦である。私もかなりしつこいと言うか、一度こう思ったらやらないと気がすまないたちなのである。それが良い方に出れば満足するのだが、意外と裏目に出てしまって後悔することが多い。執念深さというのは美しさを伴わないものなのである。それに動植物の旬の時期は意外と短い。しかし、6月の帯那山のアサマシジミの再挑戦は成功裏に終わったのだから、執念深さも時には大切なのかも知れない。そんな訳で午前6時に起床して、いざ本栖高原に向け出発する。もちろんウィークエンド未亡人を起こさないように、静かにドアを開けて出て行ったのは言うまでもない。今日の朝の天気予報は富士五湖方面は曇りとなっていたので、心がとても軽やかである。山梨県はそんなに広い県とは言えないものの、全県内すべて雨が降っているということが稀な県である。日本一の富士山、日本第二の北岳を持つ南アルプス、そして八ヶ岳、奥秩父と山々に囲まれているから、地域によって局地的な天候となるのであろう。このため、台風は甲府盆地を避けて通ると言うから台風嫌いの方にはもってこいの県である。
 今日は先を急ぐために東富士五湖道路を全線使った。なんと軽自動車でも1040円と言う料金の高さである。「稼いでばかりいないで使わなきゃ駄目よ」と言われているので「まあいいや」と言う訳である。本栖高原とは地図の上に書かれていないと思う。地域としては本栖湖の富士山よりで朝霧高原と青木が原樹海に囲まれた地域である。ここは慣れていないと駐車スペースが分りづらく、国道139号線が静岡県へ入る少し手前左側にトイレ等がある駐車スペースがあるが、その500m位手前の林道入口に狭いながらも5台位の車が停められる。もし、ここが一杯なら前記した駐車スペースに車を停めて、林道入り口まで歩いて来なければならなくなる。林道に入るとすぐに自然観察の別天地となって、ことに草原性の動植物の宝庫である。少し遅いからと心配していたノハナショウブも咲き残っていて、ヤマオダマキ、ベンケイソウ、オカトラノオ、オトギリソウ等が見頃である。蝶ではヒョウモンチョウやヒメシジミがかなり破損していたが、スジボソヤマキチョウ、ミドリヒョウモン、ウラギンスジヒョウモン、ホシチャバネセセリが羽化したばかりで美しい。今回の撮影目的としていたヒオドシチョウは見られなかったが、アサマイチモンジ、イチモンジチョウ、ホシミスジ、エゾスジグロシロチョウ等も加わって、さすが蝶の一級観察地であることを実感した。
 先日、一人静さんのホームページ(リンク済)を見ていたら、ヘビイチゴとヤブヘビイチゴの実が載っていて、その違いにとても楽しさを感じた。これはイタダキとばかりに、本栖高原ならまだヘビイチゴやヤブヘビイチゴは残っていると楽しみにしていたのだが、やはり高原、ヘビイチゴはあったがヤブヘビイチゴはなかった。これでは比較写真が撮れないので光り輝くニガイチゴの実を撮った。このように女性は男性とは異なった視点から自然観察をし、写真撮影をするから楽しくなる。以前、舞岡公園の虹の家で、レンゲソウを真上から撮ったご婦人の写真がとても面白かった。私たちは普通、レンゲソウを真横から観察しているから、タンポポの綿毛のような球形な花として捉えている。しかし、真上から見ると的に真横から多数の弓の矢が刺さった平らな花に見えるのである。この方がその名「蓮華草」らしく見えるのだ。また、以前、ある雑誌社が主宰するカルチャーセンターの花の写真の講師をしていたことがあるが、あるご婦人のカメラのファィンダーを覗くと、花ではなくて葉に映った影にピントを合わせていた。まあ、そんなこんなで女性の感性は男性には想像を超えた摩訶不思議なもので、早く多くの方々が写真展やHPで女性ならではの写真を見せて頂きたいものである。

<今日観察出来たもの>蝶/スジボソヤマキチョウ(写真右)、ミドリヒョウモン、ウラギンスジヒョウモン、ヒョウモンチョウ、アサマイチモンジ、イチモンジチョウ、ホシミスジ、ホシチャバネセセリ、コキマダラセセリ、ヒメキマダラセセリ、ヒメシジミ、エゾスジグロシロチョウ等。花/ノハナショウブ(写真左)、ヤマオダマキ、ベンケイソウ、オカトラノオ、オトギリソウ等。その他/キノコが一杯。


7月9日、横浜市緑区新治市民の森〜横浜市緑区キノコの森

 今日は毎週1回行くことに決めたキノコの森への自然観察がメインだが、一日中、薄暗闇の雑木林に潜ってキノコ探しというのも味気ない。そこで、午前中は新治市民の森に行くことにした。キノコの好きな方のHPによると、キタマゴタケという大型のキノコが生えているということなので、それも楽しみなのである。しかし、前日の雨は相当量降ったらしく、今日の曇り日では蒸発することもなく下草はびっしょりと濡れている。極小の毛を持つ大きなクズの葉には真珠のような水滴がたくさん着いている。こんな時はブッシュに入る気もしないし、たとえキノコを見つけたとしても、良い写真は撮れないだろう。そこで新治市民の森の散策路を巡って一回りすることにした。花卉栽培の畑ではミソハギがたくさん咲いて美しい。田んぼの縁にはヤブカンゾウが見頃で、美しいヤブカンゾウを損なうミツバウツギフクレアブラムシというアブラムシ(アリマキ)もだいぶ花穂についている。春先にはミツバウツギやゴンズイに付いているのだが、この時期になるとヤブカンゾウやヘメロカリスにつくという困り者である。谷戸田と雑木林が接する斜面にはチダケサシがたくさん咲いているが、今一絵にならないので通り過ぎる。
 畑の横の小川沿いの小道で帰ろうとすると、民家の土留めのコンクリートにたくさんのオニヤンマの脱皮殻(写真右)がついている。このような人に見せたいものを見つけた時には、決まって誰かがやって来るものである。きっと「驚きは共感し合いましょう」と自然の神様のお指図なのかも知れない。熟年の女性の先生を先頭に小学生がやって来る。「いいもの見つけましたよ」と先生に指差すと、これは凄いと子供たちに説明する。「最近、こういうものを知っている方が少なくなりましたから」と先生は言う。「そうですか、それでは私のような者は貴重なんだ」等と笑って言うと、「ハグロトンボがいましたよ」と先生が教えてくれたので、まさか新治にいるわけないと思ったが、梅田川に行ってみると、美しい黒光りする羽、緑色の金属光沢を放つ胴体を持つハグロトンボが複数飛んでいた。「先生ありがとう」と疑った非礼を胸裏で謝りながら、何とか写真を一枚と頑張ったが、足場が悪くて断念せざるを得なかった。
 昼食を済ませると秘密のキノコの森へ潜り込む。前回と比べるとだいぶ数と種類は減ったものの、まだまだ、たくさんのキノコが生えている。第1キノコの森はすぐ近くに湿地があるためか、蚊取り線香を腰にぶら下げていても藪蚊が襲って来る。今度来る時には手のひらと首筋に防虫スプレーを吹き付けねばならない。その点、第2キノコの森は薮蚊も少なく、快適なキノコ観察が出来た。色とりどりのカワリハツは下火になったものの、テングタケダマシがたくさん生えている。前回、萎びたサンコタケがたくさんの卵を持っていたので楽しみにしていたが、やはり今日も絵になるようには生えてない。しかし、相変わらずオオホウライタケ、ダイダイガサ、スジオチバタケ、ハナオチバタケ、アンズタケ、イグチの仲間等がたくさんあった。第3キノコの森に行く途中、こげ茶色の傘に小さく白い角張ったピーナッツの欠片のような物をたくさん付けている大きなキノコに遭遇する。テングタケダマシではないのとだまされそうになったが、帰って図鑑を調べてみるとテングタケであった。写真を撮っておいて大正解!

<新治市民の森で観察出来たもの>花/チダケサシ、ヤブカンゾウ、ミソハギ、カンナ等。昆虫/アオスジアゲハ、クロアゲハ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キチョウ、キタテハ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、オニヤンマ、ハグロトンボ等。
<キノコの森で観察出来たもの>*多分半分位は間違えていると思いますが、各種イグチの仲間、アンズタケ、ウコンハツ、オオホウライタケ、ダイダイガサ、スジオチバタケ、ハナオチバタケ、テングタケ(写真左)、テングタケダマシ、ツルタケ、シロハツ、カワリハツ、ニオイコベニタケ、キアシグロタケ、ウチワタケ、マンネンタケ、ツリガネタケ、アカダマタケ、ヒメカタショウ、フクロツチガキ、オオゴムタケ、ハナビラニカワタケ、サンコタケ等。


7月8日、神奈川県鎌倉市大船植物園〜横浜市戸塚区舞岡公園

 今年の梅雨は本当に梅雨らしい天気が続く、今日ももう少し明るい空を期待していたのだが、まあ花の写真だから仕方が無いかなと言った曇り空である。こんな天気にプロピア等の地味な発色をするフイルムを使用すると、いくら鮮やかな花と言っても、気が落ち込んでしまうような写真となるから要注意である。ベルビア100というフイルムが発売されたから、従来のベルビアではシャッター速度がかなり遅くなる曇り日でも安心である。ここにきて無性に花の写真が撮りたくなった。とは言っても今は梅雨の花と夏の花の端境期だから、これと言った花は無かろう。しかし、入場料を払って入るのだから、大船植物園へ行けば何がしかの花が咲いているに違いない。そう思って出かけたのだが、ハナショウブ、アジサイと言った梅雨の名花は既に終わり、今日の天候も加わって入場者は極端に少ない。しかし、ゲートを入ると前方のハス池でかなりの方がカメラを向けている。先日、私のHPの掲示板で千葉の方が「大賀ハスが咲いていますよ」と投稿して来てくれたが、大船植物園のはどうも大賀ハスではないようである。花びらの色がかなり濃い。気品溢れる花びらがやや白い大賀ハスの方が私は美しいと感じている。それでもこのHPのために何とか美しいハスの写真をと意気込んだが、いかんせんまだ、咲き始めということもあってか花の数が少ない。だが、そんな時でもなんとか一枚はものにするのが、自称プロモドキの腕だからと頑張って撮影した。
 もうバラの時期は終わっているのでなかろうかと思ったが、バラ園は百花繚乱のように様々な品種が咲き競っている。しかも、バラ独特の甘い香りが漂って来て、今日が梅雨末期の気が重くなるような曇り空であることを忘れさせてくれる。しかし、バラを野外で美しく撮影するのは実に難しい。まず、高島屋の包み紙の絵柄のような整った形で、花芯まで花弁が重なっている花が少ないのである。そのような花を見つけても背景が美しい所に咲いているかと言うとそうでない場合がほとんどだ。大船植物園の三倍程の広さのある神代植物公園のバラ園でさえもそうなのだから、バラの本当に美しい写真が撮影できたらメールで送ってもらいたい。そう言う訳で自称プロモドキとしては情けないことに、バラ園では一枚もシャッターを切ることは出来なかった。この他、キキョウ、アガパンサス、ハイビスカス、アメリカフヨウ、テッポウユリ等が咲いていたが、やはり大船植物園は花の端境期であった。
 そんな訳で早めに切り上げて、今日のもう一つの撮影目的であるトラフカミキリを探しに久しぶりに舞岡公園へ行った。しかし、弁当を食べ終わって、さあ道端自然観察と思ったら非情にも雨が降ってきた。少し昼寝でもすれば止むだろうとたかをくくって、愛車「小野路号」に敷いてある仮眠用の布団にもぐりこんだが一向に雨は止まず、何と2時半まで眠ってしまった。日頃の疲れがたまっていたから良しとして、雨がやんだので歩き始める。花ではチダケサシ、タケニグサ、クサレダマ、ミゾカクシが咲いているが、お目当てのクワの古木につくスズメバチに擬態したトラフカミキリには出会えない。しかし、蝶の第2化が始ったようで、新鮮なモンキアゲハ、クロアゲハ、コチャバネセセリ、ヒメウラナミジャノメ等が飛んでいる。久しぶりにモンキアゲハが羽を開いて低木の葉に止ったので、チャンスとばかりにレンズの絞り値と露出補正値を決め三脚にカメラをセットしていざ近づこうとしたら、無常にもゴールデンリトリバーの散歩に来た方が近づいて来て通り過ぎる。もちろん、モンキアゲハは天高く飛び立ってしまった。

<大船植物園で観察した花>ハス(写真左)、バラ、キキョウ、アガパンサス、ハイビスカス(写真右)、アメリカフヨウ、テッポウユリ、ルドベキア、ジニア、ニチニチソウ、ペチュニア、キョウチクトウ等。
<舞岡公園で観察したもの>花/チダケサシ、タケニグサ、クサレダマ、ミゾカクシ、ヤブカンゾウ、ネムノキ等。蝶/モンキアゲハ、クロアゲハ、コチャバネセセリ、ヒメウラナミジャノメ等。


7月5日、栃木県塩谷郡藤原町中三依

 昨日遅くまで起きていたので睡眠不足の出発である。しかし、有り難い事に電車の中で寝られるから心配は無かろうと、東急東横線の一番電車に乗った。土曜日の一番電車は座れないということはないが意外と混んでいる。多分、花金の居残り組みが朝まで町の中をうろついていたのだろう。私のような遠くまで行く方や山へ登る方が見られてもおかしくないのだか、一番電車には昨晩からの居残り組みばかりのように感じられる。まあ、初電も終電も人生や社会の縮図のようなものが垣間見られるから、たまには乗ってみることをお勧めしたい。例によって浅草7時10分発の快速電車に乗った。最近、編成車両が少なくなったためか、ことによったらニッコウキスゲ等の山の花が咲き出しているのか、座れないことなんて絶対ないが意外と乗客は多い。しかし、今日は入線時間に行って、窓側の進行方向を向いた特等席が取れるといった按配であった。座るや否や下今市に着くまでぐっすり眠ってしまった。下今市で日光方面の車両が分割されるので、その車両に乗っていた方がたくさんやって来た。私の座っている席にも会津駒ケ岳に登山するという二人連れのご婦人がやって来た。熟年女性だというのに、私のようなひ弱な者には到底背負えそうもない重いリュックで山へ登るというのだから感心する。
 駅に降りると日差しが眩しい。それに前回程ではないが風が少し強い。こうなると歩き始める前からがっくり来る。それでもこの「つれづれ観察記」に載せる二枚の写真くらい撮れるだろうと気を取り直して歩き始める。早くもシータテハがお迎えとなったが、マス釣り場へ向かう道に足を急ぐ。中三依に住んでいらっしゃる方は本当に花が好きだ。トルコギキョウが各所に見られ、首都圏では終了したハナショウブが満開である。山々の麓に目をやるとクリの花も咲いているから、首都圏平地に比べると、約20日ほど季節の進行が遅れているようである。炭焼き小屋の前にさしかかり、今日の撮影目的である美麗なカミキリムシはいないかと探してみると、お目当てのヤツメカミキリやハンノアオカミキリどころか、カミキリムシが何もいない。「ああ、困ったな」と思うが、また、帰りに寄ってみようと歩き始める。落差がある大きな滝のある、やや林道の路肩が広くなった部分に大型バスが止まっている。まだ、裸になって渓流遊びには早いから、小学生が滝の見学をしているようだ。
 林道を更に進むと渓流は透き通るような水となり、渓流には様々な樹木が覆い被さって、殊にカエデの類が多くなる。お目当てのミスジチョウが見られるはずだ。しかし、去年来た時よりもその数は少なく、また、この辺りで緋色のヒオドシチョウにも出あえるはずだが、両方とも1頭お出ましになっただけである。今日は本格的に蝶を撮ってやるぞと、それはそれは重い200mmマクロレンズを持って来たというのになんて事だ。期待した時には現れず、期待しない時に現れるというのが昆虫一般の観察の通例だが、なんとかこのHPのために写真を二枚と焦った。こんな時には蝶の撮影が大好きなKさんでも同行してもらったらなと弱音がでる。しかし、林道をつめるに従って、ヒオドシチョウ、コムラサキ、シータテハ、アカタテハ、サカハチチョウ、ウラギンヒョウモン、ミドリヒョウモン、テングチョウ、ヒメシジミ、アカシジミが見られ、確認は出来なかったが緑色にキラキラ光るゼフィルスにも出会った。お目当てのミスジチョウやヒオドシチョウの写真が取れなかったので、たくさんいた羽化したばかりのコムラサキを撮ろうと頑張ったが、ご機嫌斜めのようで、青紫に光る羽の表を瞬時しか見せてくれない。仕方無しにこのHPのために羽を閉じたものを撮影した。

<今日観察出来たもの>蝶/カラスアゲハ、ヒオドシチョウ、コムラサキ(写真左)、シータテハ(写真右)、アカタテハ、サカハチチョウ、ウラギンヒョウモン、ミドリヒョウモン、オオミスジ、ミスジチョウ、テングチョウ、モンキチョウ、スジグロシロチョウ、ヒメシジミ、アカシジミ、ルリシジミ、ベニシシジミ。昆虫/ヤツメカミキリ、フチグロヤツボシカミキリ、キスジカミキリ、エグリトラカミキリ、カラカネカミキリ、ウスイロトラカミキリ、ジョウカイボン、ヒメシロコブゾウムシ、オオイシアブ、アキアカネ、ノシメトンボ等。その他/シマヘビ。


7月3日、横浜市緑区キノコの森

 こんな「キノコの森」等と言う場所は地図で探しても何処にも無い。私が勝手に名前をつけた場所である。何故かと言うと、こんなに色々なキノコが見られ、しかも撮影しやすい場所を内緒にしたくなったのである。普通ならとっても気が良い私のことだから、誰にでも観察場所を紹介するのだが、何だかここだけは自分一人の秘密の場所にしたくなったのだ。昨日、小野路町の雑木林の小道を歩いていたら、ご婦人がビニール袋に各種のキノコを採集していた。聞いてみると帰って図鑑で調べて、食べられるキノコを見分けるのだと言う。「よした方が良いですよ、キノコは素人判断では危険ですよ、何処かのキノコの会に入って教えてもらったら」とサジェスチョンしたら、「八王子のキノコの講習会に出たのですけど、名前は教えてくれるけど、食べられるかどうかは教えてくれなかったんです」と言う。「それはそうでしょ、もし、間違ったら殺人幇助みたいになってしまいますものね」と笑って言った。このようにキノコを食べたいと言う方はたくさんいる。私が写真に撮りたくて仕方が無い食べられるキノコばかりを狙って、小野路町の雑木林にも複数の方が出没する。食べなくともキノコを見分けるために、手にとって見たり採集したりする方も多いから、写真撮影のキノコが無くなってしまうと言う事になる。そこで「キノコの森」等という名を付けて、内緒の場所にした訳である。もちろん、キノコを採らない折らないと言う方なら、メールして頂ければ、もちろん場所を詳しく教えます。
 キノコの森には、第一の森、第二の森と名づけて、とてもたくさんキノコが見られる森を2カ所も見つけた。今日は風が強く曇り日である。こんなに風が強くては花や昆虫の自然光撮影は被写体ブレが発生して無理である。そんな訳でキノコの森へ一直線となった訳だ。先日、雨上がりの日に出かけて撮影したこともあるが、落ち葉が雨の水分を吸って黒々としていて、撮影しても美しい写真にはならなかった。明日は雨後曇りだが、そんな時は落ち葉は真っ黒ということになる。今日は前日雨が降っていないので、落ち葉は褐色ということになって、最高のキノコ撮影日和と言うわけだ。それなら晴れの日は?という質問を受けそうだが、晴れの日は木漏れ日が落ち葉に斑模様を作ってしまって、上手く撮れないのである。最近、ハンドルネームを「花虫とおる」としたが、キノコは言わば菌類の花だから、私が撮っても少しも可笑しくない訳である。
 先日、日本ウィークエンド・ナチュラリスト協会の掲示板に、動植物の名前がなかなか覚えられなくてという投稿があったが、人に簡単に教えて貰ったり、植物園等のネームプレートで覚えたりするとすぐ忘れると言われている。キノコは微妙な違いで見分けなければならないし、日本には4000種のキノコがあって、相当詳しい図鑑でも1000種類くらいしか紹介されてないので、名前調べは大変である。しかし、分らないと言う事はとても「ロマン」があって、徳川家康ではないが「分るまで待とうキノコちゃん」としておけば良い訳で、ふとしたことから、ネットや図鑑で「あのキノコはこれだったんだ」と分った時の感激はひとしおである。人間関係や仕事では後で「ああそうだったんだ」では困るが、ウィークエンド・ナチュラリストの動植物の名前調べはそれで良いと思う。また、公共出版物等に使う場合は、専門家に同定して貰えばすぐに分ることだろう。

<今日観察出来たもの>*多分半分位は間違えていると思いますが、各種イグチの仲間、オニイグチモドキ、ウコンハツ、オオホウライタケ、ダイダイガサ、スジオチバタケ、ハナオチバタケ、ヒダサカズキタケ、テングタケ、テングタケダマシ、ツルタケ、シロハツ、カワリハツ、ニオイコベニタケ(写真右)、キアシグロタケ、アミスギタケ、ウチワタケ、マンネンタケ、ツリガネタケ、アカダマタケ、ヒメカタショウ、フクロツチガキ、オオゴムタケ(写真左)、ハナビラニカワタケ、サンコタケ等。


7月2日、東京都町田市町田ダリア園〜小野路町

 いよいよ7月に入った。7月もたくさんの花や昆虫に出会える季節である。今日はダリアを撮ろうと町田市にある町田ダリア園に行った。去年まで7月1日が開園日だったので今年もそうだと思っていたのだが、6月20日から開園していたらしい。最近、ダリアと言うとヒャクニチソウやカンナ、マツバボタンと同じで、他の様々な品種改良が進む花壇の花に押されて、昔なら何処の家の庭にもあったのだから、ナツメロならぬナツハナになりつつある。しかし、町田ダリア園には、なんと500種、4000株のダリアが植栽されている。今日は昨日が雨だったためか、こんなことは経験したことが無かったのだが、駐車場が満杯となっていた。私のような歌声喫茶世代には、ダリアというとポンポンダリアと言って、真ん丸い七夕飾りのような花形が懐かしいが、ここには大小様々、花形様々のダリアが見られる。しかし、写真を撮ろうとする方は、支柱が邪魔になって思ったような構図がとれないのが残念である。きっと、あんなに大きく重たそうな花だから、風にはめっぽう弱いのだろう。町田ダリア園は、各種の花壇の花の育成販売も行っていて、お安いのかどうかは私には分らないが、たくさんの鉢植えが並んでいる。今日は丈の短いジニアが色様々でとても美しく感じられた。
 昼食を済ますと久しぶりの小野路町の雑木林探索となった。万松寺谷戸に車を停めて歩き出すと、ヤブカンゾウがオレンジ色の花を付けてお出迎え、しかし、見頃は来週になるだろう。ハス池の立てかけられた棒の先にはシオカラトンボが止まっている。去年は真っ赤なショウジョウトンボが多数見られたのだが、どうしたのだろう一匹も見当たらない。栗林に行くと6月22日に出合ったM氏が言っていたように、多分、ツルタケだと思うが大きなテングタケの仲間が、ポコポコと面白いように出ている。そこから小野路城址まで竹藪が続いているが、会いたいと思っている白いレースの衣を被ったキヌガサタケは無いようである。小野路では発生しないのだろうか? 今までキノコと言うと秋のものと思っていたが、尾根筋を丹念に探すと秋にしか出ないと思っていたタマゴタケ、ノウタケ等の大型のキノコも各所に見られた。
 キノコ観察がひとまず終わって、今日の小野路のメインの観察対象に選んでいるルリボシカミキリはいないかと切り出した樹木の積んである場所に行くと、いましたいました、瑠璃色の地に黒の斑紋を散らした粋なカミキリムシが、なんと5匹も忙しそうに歩いている。何のためかは分らないが、静かに待っていると、じっとポーズをとってくれる時がある。そんな時が撮影のチャンスである。ルリボシカミキリの撮影が無事終了したので、とにかく様々なキノコが一杯生える栗林に行って見た。まだまだ、キノコの名前を判別できないし覚えられないが、なんと5種類のキノコが生えている。ムラサキシメジ、オニイグチモドキ、イグチの仲間、クロハツ、クロアシボソノボリリュウタケ、ニオイコベニタケである。その中でも黒い耳たぶを柄の先につけたようなクロアシボソノボリリュウタケが一番面白かった。今日は美しいご婦人たちがたくさん来ているダリア園でいつもの長靴姿、そして薮蚊除けの蚊取り線香を腰にぶら下げての雑木林探索、どうみても一貫しない道端自然観察となったが、とっても面白かったと最後に報告しておこう。

<町田ダリア園で観察した花>ダリア(写真左)、ルドベキア、ジニア、ニチニチソウ、ペチュニア、サンジャクバーベナ、トレニア、マツバボタン、ベコニア、各種のユリ等。
<小野路町で観察したもの>
ルリボシカミキリ(写真右)、シオカラトンボ、ヤブカンゾウ、各種のキノコ。



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