2003年:つれづれ観察記
(8月)


8月31日、山梨県韮崎市甘利山

 今年の夏の高原に別れを告げるべく最初に訪れたのが韮崎市にある甘利山である。毎年一度は必ず訪れたくなるのだが、大雨が降ると通行止めになって行かれない年が続いたので、久しぶりということになる。事前にインターネットで調べたら韮崎から甘利山へ通ずる林道「甘利山公園線」は、県道に昇格したとある。そう言うことなら今年も雨がたくさん降ったが大丈夫と踏んで林道の入り口に着くと、この林道の道路状況を示す案内板には何も書かれていない。しかし、一番大切な天候がどうも思わしく無く、パラパラと小雨が降っている。しかも、山頂方面を見上げると暗い雲に覆われている。しかし、雲を抜ければ山頂は雨が降っていないだろう。それに下界ではこれと言って撮りたいものもないし、今回の目的であるキベリタテハは飛んでいないかも知れないが、霧雨に濡れたマツムシソウも風情があって良いのでは等と気楽に考えて、どんどん高度を稼ぐ林道を登って行く。途中、椹池を通る。この池は珍しい山地性や高山性のトンボが生息しているのだが、湖畔の遊歩道は荒れいて、かつてのように観察をすることは難しくなった。さらに林道を登って行くとダケカンバやシラカバが現れて、秋になるとベニテングダケが見られるかもしれない等と、運転しながらキョロキョロすると、なんと多摩丘陵では梅雨時の発生は終わって、秋たけなわになるとまた発生するタマゴタケが生えているのだから楽しくなった。
 甘利山直下の駐車場に着くと、小雨の中をまずは美味しい水道の水を飲みに行った。かつて、尿管結石というこの世のものとは思えない苦しい発作を起す前、この水道の水の美味さとご婦人には勧められないトイレがあることから、しこたま食料を買って来て、何泊もこの駐車場で寝泊りして自然観察と写真撮影をしようと考え実行したことがある。その時はテレビも見られる大型のワンボックスカーだったので、家にある布団を敷いて、ぐっすりととても快適なはずだったのである。しかししかし、山中に一人寝ることの心細さ、夜中に何やら動物(多分キツネ)が近づいてくる気配等を感じて、一泊で懲りて下界に降りた事が懐かしい。登山家や探検家は一人で人跡未踏の地等でテントに寝るのだから、その精神力の強さは並大抵なことではないだろうなと思い知った。幸いにも尿管結石を患ってから、自力で病院へ行ける所、救急車が来てくれる所に車中泊するようになった。もし、ワンボックスカーを持っていて発作性の持病が無い方は、是非、挑戦して見る価値がおおありの肝試しの駐車場である。ことに山頂からの富士山の眺めはすばらしいから、ここに泊まらなければ夜明けから始まるベストショットを撮る事が出来ないだろう。
 傘をさして駐車場周辺を散策するのだが、雨は降ったり止んだりの状況で一向に止まない。すでに花期が終わったヤナギラン、ハクサンフウロウ、ハンゴウソウ、ツリガネニンジン、クガイソウ、クサレダマ、シシウド、シモツケソウ、ヤマオダマキ、コバギボウシ、コオニユリを見て回ったが、肝心のマツムシソウが一輪だに見当たらない。こうなったら雨の中を登山客も登り始めたから、必要最低限の撮影機材をバックに詰めて傘をさして登り始める。山頂と言ったって駐車場から30分も歩けば登れるし、道も高齢者であっても大丈夫だからと気楽なものである。少し登ると草原の山となって前方に頂上が見えて来る。この辺りから時期にはレンゲツツジが見事に咲く。ありましたマツムシソウ、その他にウメバチソウ、ハナイカリが、しかし、写真撮影は来た証拠とばかりにマツムシソウを一カット撮ったのみとなった。山頂でご婦人達のグループが下山しようとしていたので「千頭星山」へは行かないのですかと訪ねると、「昨日まで強行軍で、甲斐駒から鳳凰を経て夜叉神峠に泊まって、帰る途中にちょっと寄ってみたんです」との答えが返って来た。「摩利支天にも登ったんですか」と尋ねると「もちろんですよ」と笑いながら言った。スーパーで良く出会う普通のご婦人なのに、熟年女性は恐ろしい。そんな訳で雨も止まず下山途中の雨が降っていない場所まで戻ってツリフネソウ等を撮影し、敷島町の雑木林も覗いて見たが、もうそこには夏の盛りの昆虫の賑わいは無かった。

<今日観察出来たもの>花/マツムシソウ(写真左)、ウメバチソウ、ハナイカリ、ヤナギラン、ハクサンフウロウ、ハンゴウソウ、ツリガネニンジン、クガイソウ、クサレダマ、シシウド、シモツケソウ、ヤマオダマキ、コバギボウシ、コオニユリ、ワレモコウ、ゲンノショウコ、アキノキリンソウ、ツリフネソウ(写真右)、ダイコンソウ、オトギリソウ、ヒヨドリジョウゴ等。


8月30日、神奈川県愛甲郡愛川町八菅山


 今日は高原に別れを告げるべく、今年最後の遠征に出かける初日である。例によって高速道路の渋滞と写真撮影に最適な午前中の時間を有効に活用するため、初日は自宅から比較的近い愛川町の八菅山へ行った。愛川町はそれほど面積がある町ではない。しかし、相模川の支流の中津川が真ん中を流れていて、美しい清流と豊かな緑の田んぼが広がる長閑な地域である。八菅山と言っても山に登るのではなく、山麓の棚沢という平坦な地域をぶらぶら歩くだけである。中津川にかかる八菅橋のたもとに駐車場と立派なトイレがある。そこに車を止めて上流か下流の田園地帯に行くのだが、今日は時間も少ないし下流だけを歩くことにした。もちろん、更に車で参道を登って行けば八菅神社の駐車場があり、更にその奥にも八菅山いこいの森の駐車場がある。この奥の駐車場のトイレ裏は、ハンミョウの絶好の観察場所となっている。今日は夏休み最後の週末とあって、曇り日だというの中津川は清流で遊ぶファミリーで賑やかである。もちろん、子供たちは水着姿で浅瀬で水しぶきをあげながら騒いでいる。さすがにヤンママ達は気が引けて水着姿の方はいないものの、バーベキュー前の一時を、子供たちと童心に戻ってキャーキャーと騒いでいる。川原でのアウトドアライフもとても楽しそうである。
 別に決まったコースがある訳ではないが、いつものようにいつものコースを辿る。まず最初に立ち寄るのが梅畑の傍らに植えられたカラタチである。まだ色づいていないものの果実はだいぶ大きくなった。いったいカラタチはなんの役に立つのだろう。その枝を見れば鋭い刺があるから生垣には最適で、家の周りをカラタチで囲って、大きな犬でも飼えば泥棒もおいそれとは近づけまい。しかし、図鑑を開いて見ると果実は香りは良いものの苦くて種が多く食用にはならず、乾燥して薬用に用いるとある。そういうことからかカラタチの木は最近見かけることが少なくなった。食欲という人間に最も普遍的な欲求にそぐわなければ、やはり魅力がないだろう。今年の初夏からキノコの観察を始めているが、もっと深入りしもっとキノコを極めようとするならば、色や形の面白さ以外に「食べたい」という欲求が必要ではないかと感じている。それ程までに人間の基本的な欲求は、いろいろな分野で大切なように思われるのだ。ちなみにカラタチの名の由縁は唐から渡来した橘、すなわち「唐橘」と言うことである。
 カラタチの実を撮影すると庭先に各種の花を植えている民家に立ち寄る。今日は白い色のフヨウが満開である。この家の方には怒られるだろうが、どうしてピンクの色のものを植えてくれなかったのかと言いたくなる。なんたってフヨウと言えばピンクの花色が一番である。次に栗をたくさん植えてある畑に到着する。もうすでに毬が開いて地面に落ちているものもある。かれこれもう何年にもわたって毬から美味しそうな褐色の栗の実が顔をのぞかせている写真を撮りたいと思っているのだが、これがそう簡単ではないのである。今日もたくさんの栗の木を見て回ったのだが、私のイメージに合うものは無った。カラタチ、フヨウ、クリとどちらかと言うと自然観察とは言いがたい人間が作り出したものに気をとられていたが、更に歩を進めると、この時期、この場所で大好きな野の花であるマルバルコウソウ、ゲンノショウコやコノシメトンボがたくさん現れて、思う存分シャッターを切った。簡単に食事を済ませるとトノサマバッタがたくさんいる河川敷にある棚沢運動広場へ出向いて見た。しかし、まだそれ程までに多くの個体がいるわけでもなく、草が伸びていて良い写真が撮れそうに無い。やはり地域の運動会のためにグラウンドが整備され、トノサマバッタが交尾産卵する季節にならなければと諦め、車で心地よい昼寝をした後、今日の宿泊先である甲府ハイランドユースホステルに向け出発した。

<今日観察出来たもの>昆虫/アブラゼミ、ショウリョウバッタ、トノサマバッタ、コバネイナゴ、オンブバッタ、コノシメトンボ(写真下)等。花/マルバルコウソウ(写真右)、キクイモ、ユウガギク、ゲンノショウコ、センニンソウ、シュウカイドウ、フヨウ、ホウセンカ、キバナコスモス等。その他/カラタチの実(写真左)、栗の実等。


8月29日、東京都町田市小野路町・図師町

 昨日は曇り日で涼しく絶好の自然観察日和だったが、残念なことにパソコンの修復で一日家に閉じこもっていた。そこで自然観察は順延となったのだが、炎熱地獄が舞い戻って来て大汗をかいた。これからはパソコンをいじる時は翌日が雨の日を選ぶようにしよう。サラリーマンをしていた頃は、フィールドに朝の8時前後に立ったものだが、このところ行ける回数が増えたためか、フィールドへ重役出勤となってしまった。そんな訳で五反田谷戸に近い場所に小野路号を止めて、昼食の時間まで過ごそうということになった。今日の目的は先日来た時に咲いていたワレモコウ、ツリガネニンジン、そして昆虫はトノサマバッタ、ショウリョウバッタ、ハネナガイナゴ等である。心配していた棚田の稲はたくさんの穂が出ているように見える。あぜ道を歩くとたくさんのイナゴやショウリョウバッタが飛び上がって稲の茎や穂に抱きつく。もう少し稲が実り色づいたら、秋の印象的な情景として稲穂に止まるイナゴを撮ろうと思っているのだが、まだ少し先のようである。大汗をかきながら各種のバッタを撮影していると、ここの地主さんのお爺さんが山の畑から降りて来た。「どうですか? 稲の具合は?」と訪ねると「いつもより穂の数が少ないし、出ている穂の三分の一はしいなになるだろうな」とおっしゃる。わたしのような素人目から見ると、先日行った黒川などより順調に成長しているように思えるのだが、そうではないらしい。「ところで穂のどの部分がしいなになるんですか」と聞くと、穂の先端ではなくて元の方だという。そんなことを話していたら最後に山桜の老木の方を指差して、「スズメバチがあんな所に巣を作ってしまったから気をつけて下さい」と注意されて助かった。お爺さんが帰った後で桜の老木に近づいてみると、こんもりとした芝地と棚田の間を流れる小川にかかる丸太の小橋の真上に巣があった。それにしても今年の天候と同じく、スズメバチの活動もいつもと異なっている。なんとなくせかせかしていて落ち着きがなく、凶暴になっているように思われるのだ。この所やっと夏らしくなったので、短時間で子孫繁栄の労働に殺気立っているようなのである。
 前に給料日前後の頃は自然観察に向かない月が多いと書いたことがあったと思う。8月もこの例に漏れず、夏と秋の端境期に入っているようである。昼食を済ませると、キノコと各種昆虫のストロボ撮影に向かった。息せき切ってTさん宅に通ずる小道を上がって行くと、早くもヒガンバナが一輪だけ咲いていて、羽化したばかりのキアゲハが風に揺られながらも一生懸命に吸蜜している。一輪咲いているのだから、他に花の穂が伸びて来ているのかなと思って探して見たが何処にも無い。やっはり8月の給料日から間が無いのだから仕方が無いと変な納得をして、キノコ山に向かった。前回来た時には少ないとは言え、さすが小野路のキノコ山と思わせるような大きなシロオニタケが生えていたが、今日は最悪の状況で、コガネヤマドリが再び勢いを増して見られる位だ。これでは仕方がないと美しい雑木林を目指して引き返したが、もしかしたらギンリョウソウモドキが見られるかもしれないと去年あった場所を念入りに調べて見ると、にょきにょきと蝋燭のような色と質感のキセルのような格好で伸び始めている。ギンリョウソウモドキは長い間撮影可能だから、誰かに盗掘されなければ今後楽しみである。午前中撮ったフイルムの残りをキノコかヤマホトトギスを撮ろうと残しておいたのだが、キノコはないしヤマホトトギスも花期が一段落してしまったのか絵になるものが無い。これはしまった、午前中にフイルムを撮り切るべきだったと悔やんだ後のギンリョウソウモドキ、ぱっと気分が明るくなって、色々なアングルから撮影してフイルムを使い切った。さあこれから美しい雑木林で昆虫のストロボ撮影と急いだが、あんなにいたカブトムシも消え、飛び古したサトキマダラヒカゲとせかせかとしたコガタスズメバチだけで、やっぱり8月の給料日から間が無いのだから仕方が無いと変な納得をして早上がりとなった。

<今日観察出来たもの>蝶/キアゲハ、クロアゲハ、ルリタテハ、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、コジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、メスグロヒョウモン、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/ハンミョウ、カブトムシ、ナガゴマフカミキリ、キマワリ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、アブラゼミ、スケバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、ショウリョウバッタ、トノサマバッタ、ハネナガイナゴ、ヤブキリ、シオカラトンボ、マユタテアカネ等。花/ツルボ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ヤマホトトギス、キクイモ、ヒヨドリバナ、ユウガギク、ヤマハッカ、ゲンノショウコ、ヒガンバナ、ギンリョウソウモドキ(写真右)、ナンテンハギ、センニンソウ、ジュズダマ、シュウカイドウ、クサギ、ヌルデ等。その他/ヤマカガシ、ヤマアカガエル、コガネヤマドリ、ヒトヨタケ等。


8月26日、横浜市緑区新治市民の森〜キノコの森

 今日は久しぶりの曇り日、曇ったらしばらく行かなかったキノコの森へ出かけようと考えていた。キノコの森は半日で充分だから、午前中は例によって新治市民の森を一回りした。曇り日と言ったて湿度が異常に高くてさほど涼しくない。しかし、クラクラするような強烈な太陽が照りつけないだけでも有り難い。車をいつもの所に停めて、ヒガンバナはどうなっているだろうかと探してみると、まだ影も形も無い。かわりに同じ仲間のキツネノカミソリが生えているが、もう盛期をとっくに過ぎていて萎れかかっている。心配していた田んぼの稲は新治に関しては順調のようで、田んぼの傍らの畑には大好きなゴマの花が風に揺れている。ゴマは一体何の仲間だろう。一見するとホウセンカ、アレチマツヨイグサ、ジギタリスの仲間に見えるが、図鑑を開いてみるとゴマ科という独立した科で、ちなみにホウセンカはツリフネソウ科、アレチマツヨイグサはアカバナ科、ジギタリスはゴマノハグサ科と言うことであった。農機具置き場の前の花の植え込みには、今年もハナトラノオが群れるように咲き、農家の庭先には目が覚めるかのように美しいピンクのフヨウ、丘の上の畑には真っ赤なケイトウ、もちろん純白のニラの花も風に揺れている。こんなに暑くとも季節は初秋、それにしても秋の花は何と風情があることだろう。
 これらの花の中で、ゴマ、ハナトラノオ、フヨウは、初夏の頃にこの観察記で紹介した、ずんぐりむっくりのフジの花が大好きなクマバチの大好物である。三脚にカメラをつけて風が止むのを待っていると、このお邪魔虫のクマバチやセイヨウミツバチが現れて、筒状の花に潜り込んだり、フヨウの立派な雌しべと戯れたりして撮影を梃子摺らせる。最近、めっきり見ることが少なくなったオオスカシバもハナトラノオが大好きだが、関東地方ではクチナシは自生していないし、クチナシを植える家も少なくなったから、オオスカシバの幼虫を養う食樹がないのである。しかし、もう少したったら何処にでもあるヘクソカズラを食草とする、やや小型のホシホウジャクが現れるから注意して欲しい。この前、ハチドリを紹介したテレビ番組を見たが、オオスカシバもハチドリのように空中でホバリング(空中停止飛行)をして、長い口吻を伸ばして花の蜜を吸う。オオスカシバの仲間はスズメガ科のホウジャク亜科に分類され、このホウジャク亜科の仲間の吸蜜する姿を見て、「日本にもハチドリがいるんだ」と思われる方もいるらしい。
 曇り日とは言えかなり汗をかいて新治市民の森を一周したが、以前に比べて格段に自然度が減ったとは言え、注意すれば観察するものは数多い。しかし、びっしょり濡れたシャツが証明するように、へとへとになるといくら好きだとは言え自然観察、写真撮影が辛くなる。そこで早々、新治市民の森を後にし、昼食を済ませてキノコの森へ行くことにした。森の中ならいくらか過ごし易いだろうと思ったからだ。最近、神奈川キノコの会の方のHPを見ても、どうやら梅雨時のキノコと秋のキノコの端境期らしく、ぱっとした報告はなされていない。しかし、そうは言ってもキノコの森なら違うだろうと期待して行ったのだが、見るべきキノコはほとんど無く、湿気は森の中にもたっぷりと充満していた。ただ、クヌギの樹液に集まっているカブトムシだけは元気で、残念ながらこの時期はキノコの森も、カブトの森と名称を変えなければならないようだ。

<今日観察出来たもの>蝶/アオスジアゲハ、クロアゲハ、キアゲハ、キアゲハの蛹(写真下)、ルリタテハ、サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、コジャノメ、ウラギンシジミ等。昆虫/カブトムシ、ショウリョウバッタ、オニヤンマ等。花/ニラ、ゴマ(写真左)、ニガウリ、ナス、オクラ、ラッカセイ(写真右)等の野菜の花。フヨウ、モミジアオイ、ハナトラノオ、ケイトウ、アスター、キバナコスモス等の花壇の花。ツルボ、クズ、ヤマホトトギス、キクイモ、ゲンノショウコ、ミズヒキ等。


8月24日、横浜市都筑区茅ケ崎公園生態園

 先週の長雨と低温で自然のサイクルがかなり異常をきたし、また、農作物の生育が心配だったが、ボランティアをしている茅ケ崎公園生態園へ行ってみると、子供たちが植えた稲の穂が出始め、遅ればせながら各種のセミがわが世の春を満喫しているかのように鳴いている。通常ならアブラゼミやヒグラシの盛期は終わったはずだがまだ元気で、ミンミンゼミにいたっては例年より多く見られる程である。今日は子供たちに昆虫を教えるということになって駆り出されたのだが、動植物採集厳禁の生態園であっても、セミの抜け殻なら採集しても問題は無いはずとセミの抜け殻調べを行った。私が良く出かける小野路町等では、台風による大風とその後の大雨で、セミの抜け殻も落下してしまって探すのに苦労したが、さすが生態園なのだろうか、それとも子供たちの目が良いのだろうか、信じられない程の抜け殻があった。
 首都圏平地で見られるセミは5種類で、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミである。最も海沿いの温暖な所ではシャーシャーと鳴く大型のクマゼミ、松林が残る丘陵地帯ではムゼー、ムゼーと初夏の頃に発生するハルゼミがいるのだが、まずもって前記した5種類が圧倒的に多いはずである。この5種類の成虫は誰でも図鑑を手にすれば見分けることが容易だが、抜け殻となるとルーペがないと難しい。まず、大きな抜け殻なのはアアブラゼミ、ミンミンゼミ、小さな抜け殻がヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミと大別される。しかし、ニイニイゼミ(写真下)は泥を身体につけいて、ずんぐむっくりだから誰でもすぐ分る。だからアブラゼミとミンミンゼミの抜け殻の見分け方と、ビグラシとツクツクボウシの抜け殻の見分け方をマスターすれば、首都圏平地のセミの抜け殻は全て分ると言う事になるのである。言葉で説明するよりイラストで見ると分り易いので、興味が湧いた方は図鑑等で見て欲しい。
 見分けるのには触覚がポイントで、身体にくっ付いている節が第1節(基節)と言い、先端に向かって順番に第2節、第3節・・・・と呼ばれている。この第2節と第3節の長さが同じなのがミンミンゼミ(写真右)、第3節の方が長いのがアブラゼミ(写真左)、ヒグラシは第4節が第3節より長く、ツクツクボウシは第4節が第3節より短いということで区別が出来る。こんな区別法で何匹か並べてみると、触覚をルーペで見なくとも一見しただけで何ゼミかが区別出来るようになるのだ。もし、時間があったら試して頂いて、自然界の不思議や種の形態の違いに驚いて、なんとはなしに少し利口になったような気がするから嬉しくなる。更に各種のセミの抜け殻がどのような場所(葉裏、小枝、幹、その他、方位、湿気等)にあったかを記録して比較すると、生態学の入り口に入れる。今日、参加した子供達とお母さんの中で、何人かがまたルーペ片手に公園へ行ってくれるだろう。ウィークエンド・ナチュラリストになるには興味があれば誰でもなれる。

<今日観察出来たもの>蝶/アオスジアゲハ、クロアゲハ、スジグロシロチョウ、キチョウ等。昆虫/オニヤンマ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、シロヒゲナガゾウムシ、ゴマフカミキリ、マメコガネ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ等。


8月22日、神奈川県川崎市麻生区黒川

 まるでサウナ風呂に入ったような異常な高温と湿気だ。田んぼに咲いている真っ白いオモダカの花の揺れを待っていると、滝のように汗が流れ落ちて来る。今年になって久しぶりの夏の快感なのだが、下を向いているのでメガネに大粒の汗が落ちてファインダーが見えなくなる。それでもかなり行ける写真になるはずなので、メガネを拭いては何べんも挑戦を繰り返す。今日は昨日、キクイモの花を見たので同じ場所というのも感心しないから、川崎市麻生区黒川にやって来た。黒川は雑木林は今一だが、田んぼや畑の周辺に咲く花を観察するには平坦だからもってこいである。もちろん、以前にも書いたが雑木林に沿った農道で、梢がかかる下草に注意していればかなりの昆虫が見られるはずだが、この暑さのためか昆虫は少ない。昨日、今年は秋の花の咲くのが早いなと思ったので、ピンクのハナトラノオや畑のニラ、オクラ、ゴマの花も咲いているかも知れないと期待した訳である。しかし、この暑さと異常な湿気はなんだ。普通ならこの時期、暑くとも湿気は無いはずだが、まるで二度目の梅雨明けのように湿度が高い。農家の方もこの暑さにはたまらんとばかりに木陰で休んでいる。「今日は異常に蒸し暑いですね」と挨拶すると、「これが普通なんだけど、涼しさの後だからこたえるね」とフィールド仕事にかけては慣れている筈の農家の方も、かなりこたえているようだ。 「もうニラの花が咲いてますね」と畑の縁に白い花をつけて風に揺れているニラを指して言うと、「そうなんだよ、作物もこの異常気象に混乱したようだ」と、飽きれた様な表情で言った。
 先日、舞岡公園で田んぼのボランティアをしている方と電話で話をしたが、「今年は稲刈りではなく芝刈りになりそうだ」と笑って言っていた。稲の出来が直接お財布に影響しないから笑って済ませるが、農家の方は暗い気持ちになっているのではなかろうか。黒川の田んぼも穂が出て順調に成育している田んぼは数える程で、まだ、穂が出ていなかったり病害虫や大雨や風にやられた田んぼが見受けられる。しかし、とっても可愛い案山子が一つ立っていて、これからの晴天による実りを期待しているかのように微笑んでいた。もう一枚オモダカの花を撮ろう、出来れば青紫のコナギの花もと田んぼ沿いの道を注意して歩いていると、稲の葉の先端近くになにやら変な物がついている。一見すると小さなカタツムリかタニシのようにも見える。何だろうともっと近づいてみると、褐色のカマキリの顔の部分だけ残ってくっ付いているようにも見える。更に近づいて冷静になって見ると頭胸部と足があり、蜘蛛である事が分った。これは久しぶりに見るオオトリノフンダマシ(写真右)という愛嬌溢れる蜘蛛である。こんなカマキリの顔のように見えるのだから、天敵である野鳥も逃げ出すのではなかろうか。今日は晴天でしかも湿気が充満しているから最悪の日和だが、来れば必ず何らかの発見があるのだから止められない。いよいよ昼食時間に近づいて、汗を多量に流したことと空腹から疲れが出て足取りが重くなった。車を停めてある所まで戻る途中、ノコンギク、ゲンノショウコ、ミズヒキが日陰に、日が当たる農道横には屈強なコマツナギが咲いているのだが、さすがカメラを向ける元気は消え失せてしまった。

<今日観察出来たもの>蝶/カラスアゲハ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ等。昆虫/ベッコウハゴロモ、ショウリョウバッタ、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ等。花/オモダカ、コナギ、タカサブロウ、ツルボ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ヤマハッカ、センニンソウ、クズ、イヌゴマ、ヤマホトトギス、キクイモ、ノコンギク、ゲンノショウコ、ミズヒキ、コマツナギ、ハナトラノオ、キバナコスモス、ニラ(写真左)、オクラ等。


8月21日、東京都町田市小野路町・図師町

 お盆休みを利用した長期の遠征が終わると、毎年気が抜けるのが通例である。もう夏が終わったと感ずるのである。しかし、まだ甲子園球場では全国高校野球大会も繰り広げられているし、なんたって今日から前線が北上して夏が舞い戻って来ると天気予報で言っていた。そこで長期遠征後のはじめての近場における自然観察と写真撮影は、ここから始めなければ罰が当たるとばかりに、多摩丘陵の小野路町・図師町に行った。雑木林の小道には信じられない位に樹木の小枝が散乱している。きっと台風10号の大風が吹いた後に長雨が続いたので、大風の傷痕が癒えてないのだろう。荒れた小道も風情はあるにはあるが、ここは静まり返って清らかな小道こそ相応しい。
 まず、最初にいつも車を停める道端を念入りに調べてみた。ことしはどういう訳かハゴロモの仲間が大発生している。特にオオブタクサという植物の茎にスケバハゴロモ、ベッコウハゴロモがたくさん見られる。ハゴロモとはセミの仲間で、スケバハゴロモは透明な美しい羽を持ち、ベッコウハゴロモはその名の通りベッコウ色の羽を持つ。この他、シラカシにつくアミガサハゴロモもかなり見られた。少し形が異なり系統的にはごく近縁のハゴロモと名がつく薄緑色の羽を持つアオバハゴロモや、少し遠縁のツマグロオオヨコバイ、シロオビアワフキもいるのだから、この道端を歩くだけで、セミの親戚の小さい仲間にたくさん会える。
 次にもうそろそろ発生していても良いオオムラサキの弟分のゴマダラチョウはいないかと美しい雑木林に行った。樹液には気持ち悪い位にサトキマダラヒカゲが集まり、ルリタテハ、クロヒカゲ、コジャノメ、ジャノメチョウ等は入る隙間がないと言った混雑具合で、「仲間に入れてよ」とウロウロしている。しかも、今年は異常気象のために少なくて助かったと思ったコガタスズメバチも今日は多く、更に図体の大きいカブトムシが強引に割り込んで特等席を占領しているのだから、樹液酒場は遅まきながらも夏本番と言った具合である。
 雑木林から出て畑に接する小道に至るとピンク色の美しいツルボが見頃である。車を停めた道には黄色いキクイモや付近の民家の生垣にあるシュウカイドウも咲いていたから、花暦から言ったら晩夏ないし初秋と言った感じだが、樹液酒場の繁盛具合は夏本番と実にちぐはぐだ。こんなにツルボが咲いているのだから、花の谷戸である五反田谷戸はピンクのジュータンを敷き詰めたようにツルボが咲いているに違いないと期待して行ったのだが、なんとなんと去年と異なって農家の方が草刈をしてしまって、つんつるてんでがっかりした。あのヤマタノオロチのようなアオダイショウが昼寝をしないようにと配慮されたのかもしれない。しかし、ワレモコウやツリガネニンジンはたくさん咲き、昆虫ではバッタの天国でショウリョウバッタ、クルマバッタ、トノサマバッタ、クルマバッタモドキ、イナゴ等なんでもいますよと言った具合である。更にまだ夏眠から目覚めない筈のメスグロヒョウモンまでいたのだから、やっぱりもう秋なのだろうか?
 それではキノコも期待できるかもしれないと、キノコ尾根に登ってからキノコ山に向かったが、ドクツルタケ、シロテングタケ、コテングタケモドキが少し見られるくらいで、キノコに関してはまだ秋ではないようだ。キノコ山から引き返して万松寺谷戸に下りると、久しぶりの青空を歓迎するかのごとくにジャコウアゲハが緩やかな舞を各所で繰り広げていた。

<今日観察出来たもの>蝶/ルリタテハ、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、ジャノメチョウ、ヒメキマダラセセリ、コジャノメ、ジャコウアゲハ、メスグロヒョウモン、ベニシジミ等。昆虫/カブトムシ、コクワガタ、ノコギリカミキリ、ナガゴマフカミキリ、キマワリ、トウキョウヒメハンミョウ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、スケバハゴロモ(写真右)、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、アオバハゴロモ、シロオビアワフキ、ショウリョウバッタ、クルマバッタ、トノサマバッタ、クルマバッタモドキ、イナゴ、ヤマトフキバッタ、クダマキモドキ、トビナナフシ、ヒシバッタ、ネキトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ等。花/ツルボ(写真左)、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ヤマホトトギス、キクイモ、シュウカイドウ、クサギ等。


8月18日、群馬県吾妻郡嬬恋村バラギ湖

 長かったお盆休みの遠征も今日で終わりである。ずっと天気が悪く思う存分に自然観察及び写真撮影が出来たとは言いがたいが、お隣の長野県や新潟県が曇りの日が多かったので助かった。今日は雨でもフシグロセンノウを見てこようと、バラギ湖へ寄ってから帰ることにした。オレンジ色の5枚の花弁を持つ端正な姿が忘れられないのである。確か青春を表わす花言葉であったように記憶しているのだが、ざっと本を調べてみたが出て来ない。私がこの花にはじめて会ったのは、青春真っ盛りの大学1年の夏の大菩薩峠である。そんな訳で毎年必ず会いたくなる花なのだ。バラキ湖へ行く途中は雨が止んでいた。いつもなら途中で各種の園芸品種の花を撮るのだが、曇り空をバックにした雨に濡れたヒマワリでは情緒に欠ける。また、整然と並んだトウモロコシも撮りたいのだが、これも青空でなければ仕方が無い。等々と苦笑しながら走っていると、毎年花盛りの農協関係の事務所の裏に、やや紫がかったピンク色のムラサキバレンギクとボリジが美しく咲いている。毎年半日割いて撮るヒャクニチソウ、アスター、ムギワラギク、ハナワギク、ハナトラオノ等を今年は撮らなかったので、車を停めて撮影する。それにしても高原に咲く花は、野の花に限らず園芸品種の花も色鮮やかで美しい。
 バラギ湖が近くなるとやはり雨が降って来た。しかし、雨の中でも2カットは撮るんだと意気込んで、傘をさして湖を一周する小道に入った。一番目立つのはツリフネソウである。たまにキツリフネも咲いている。しかし、雨にべっとり濡れた花弁では撮る気が起きない。メタカラコウやオタカラコウは時期が少々遅すぎたようである。フシグロセンノウが見られる所まで来ると、ベットリと濡れた各種の下草の濃い緑の葉の中に、一際目立って鮮やかに咲いている。しかし、例年より少ないこともあって、また、虫に食われていたり、形が良くても一輪だけ咲いていたりと撮影意欲を湧かせるものが無かった。これは残念と思いつつ湖を半周回ると雨が止んだ。雨の中でも吸蜜活動を繰り返していたミドリヒョウモン、ウラギンスジヒョウモン、ジャノメチョウ、ヒメキマダラヒカゲ、アサギマダラといった蝶達がいっせいに飛び始めた。もちろん、私もうきうきしてコオニユリ、コバギボウシ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、クサレダマ等を撮影した。
 高原に咲く花を撮るのには時間がかかる。今日は風が無い状態のように思えるのだが弱く風が吹いて来る。高原に風はつきもののだから、辛抱強く花の揺れが止るのを待つしか無い。そんな訳であっと言う間に昼飯の時間になってしまった。まだラッキーなことに雨は降って来ない。このままバラギ湖で昼食をとって撮影しようかとも考えたが、鹿沢高原の「民宿わたらせ」のおばちゃんに「また、山菜てんぷら定食を食べに来るからね」と約束したのを思い出した。毎年、必ず食べるのだが、前述したように前回はお腹の具合を考えて山女魚の塩焼き定食を食べたのである。そこで民宿わたらせに寄ってから東部町の雑木林を見回って帰ることに決めた。今日の山菜てんぷら定食は、定番のヤマウド、タラノメに、なんと甘酸っぱい山葡萄の若芽が出て来た。さてお次は東部町と地蔵峠を越えたのだが、雨はますます強くなって来た。「しまった。バラギ湖にいれば良かった」とも思ったが、年に一度の民宿わたらせの山菜てんぷら定食も食べたことだし「悔いは無し」と上信越自動車道に乗って帰途に着いた。

<今日観察出来たもの>花/フシグロセンノウ、メタカラコウ、オタカラコウ、ツリフネソウ、キツリフネ、ヤナギラン、マルバダケブキ、シシウド、ヤマオダマキ、コオニユリ(写真左)、ツリガネニンジン、ノアザミ、ウツボグサ、オカトラノオ、クサレダマ(写真右)、クサフジ、チダケサシ、コバギホウシ、ワレモコウ、ヒツジグサ等。蝶/アサギマダラ、ミドリヒョウモン、ウラギンスジヒョウモン、ジャノメチョウ、ヒメキマダラヒカゲ等。


8月17日、長野県佐久市平尾山公園

 群馬県に泊まっているのだから、群馬県内の道端自然観察をしたいと思っているのだが、今日も雨。天気予報によると長野県も雨。新潟市まで行けば曇のようだがちょっと遠い。そこで、一日中、家に閉じこもっているのも耐えられないから、何処かの博物館でも見学して来よう。ことによったら長野県は曇っている所があるかもしれないと、鳥居峠をまたまた越えた。真田町に降りて行くと佐久市の方面の雲が薄く明るい。そこで「これは有難い」とばかりに上田菅平から上信越自動車道に乗って佐久まで行き、地図を見ると平尾山公園という所がインターチェンジからも近いし良さそうに思えたので、今日の目的地と決めた。途中、形がアケビの実に似ていて色が青黒い実が、桃のような木の枝にたわわになっている。これは撮影しなければと車を止めて、作業中の農家の方に断って撮影させてもらった。この実は「プルーン」だそうである。そう言えばプルーンヨーグルトというものが発売されている。プルーンを撮影し終わって辺りを見回すと、同じ畑にモモやプラム、ソルダムもある。そこでまた断って撮影していると、なんとなんと「持って行きなさい」と、大好きなモモを6つもくれた。昨日といい今日といい本当に心優しい方々だ。
 今日も一日中頂きと思っていたが、撮影が終わると雨が降って来た。今日は降ったり止んだりのようである。平尾山に上がって行くとコナラとクヌギが混じった林を見つけた。更にその横には切り出した各種の樹木が置いてある。キャンプ等の時に使う薪をつくる作業場のようである。これはまたしても有難い。少し位の雨なら林の中に入ってしまえばなんとかしのげる。雨が止んだら薪を見回れば何がしかの昆虫に出会えるだろう。しかも、少しだが樹液が出ている木もあるし、シロスジカミキリの産卵痕もたくさんある。そんな訳で林の中に入るとキノコも生えていたので、形の良い黄色いアンズタケ(写真下)を撮影した。樹液はあまり出ていないのだが、大きなコナラに昆虫達が作った穴がたくさん空いている。ことによったら何か隠れているかもしれないと思って覗くと、ゴキブリがたくさんいたが、ウスバカミキリが2匹も隠れていた。雨が小降りになったので薪を見回りに行くと、ルリボシカミキリ、ゴマフカミキリ、ナガゴマフカミキリ、ウスイロトラカミキリが産卵にやって来ていた。付近の畑の棒の先には、身体が真っ赤で羽の先端が茶色いコノシメトンボや身体が褐色のノシメトンボも見られた。また雨が強くなって来たので、各種レジャー施設のあるレストハウスで昼食をとることにした。メニューを見ると佐久名物の「鯉丼」があったので迷わず注文した。

<今日観察できたもの>果実/プルーン(写真左)、モモ(写真右)、プラム、ソルダム、洋ナシ。昆虫/ウスバカミキリ、ノコギリカミキリ、ルリボシカミキリ。ゴマフカミキリ、ナガゴマフカミキリ、ウスイロトラカミキリ、ノシメトンボ、コノシメトンボ等。


8月16日、長野県小県郡真田町〜東部町

 本当にどうしてしまったのだろう。関東地方は5日続けて雨である。天気予報によると太平洋高気圧の勢力が弱くて、梅雨の頃に逆戻りしてしまったと言う。なるほど天気図を見ると、日本列島の太平洋沿岸にそって前線が延びている。今日もまたしても高原は厚い雲に包まれ小雨が降って来る。しかし、長野県は一日中曇とあるので、例によって鳥居峠を越えて真田町と東部町へ行って来た。今年は高原巡りから里山巡りへと予定が変更されてしまったようだが、長野県の里山もとても面白いのである。まず最初にどうしても撮りたかったものがリンゴである。後で農家の方に聞いて分かったのだが信州だが「津軽」という品種で、ようやく色づき始めている。しかし、他の果物もそうだが、なかなか絵になるものを見つけるのが難しい。果樹園の中に入って行けば良いのだろうが、農家の方が丹精込めて作っている言わば工場だから、もちろん無断立入り禁止である。
 どうにかリンゴを撮影するとクルミが近くに生えている。信州上田地方と言えば、かつてはクルミの産地として有名だったが、今では自家用に僅かばかり作っているようで、あまり手入れがされていない。三脚をたてて風が止むのをじっと待っていたら、農家の方が現れて色々教えてくれた。このクルミはカシグルミで、さっき撮影したリンゴは津軽、あそこには洋ナシがあるしカリンもあるといった按配である。しかも、しばらく農道沿いで各種の果実を撮影していたら、「食べなさい」とリンゴ3つにモモ1つを差し出してくれた。有難いことである。前述した信綱寺のご婦人といい真田の人は本当に心が優しい。「真田って何でも出来るんですね」と言うと「南に向いてて緩やかに傾斜している地形が良いらしい」と言う。そう言えば甲府盆地のブドウをはじめ各種の果樹園も、このような地形にあったなと納得する。また、両地方とも空は青く日照率が非常に高い。
 そんな訳でたくさんの果実を午前中は目一杯撮影してしまった。いつも行く安くて早くて旨い「駅前食堂」へ行くとお盆休みとある。たくさんの観光客も来るのだから稼ぎ時と思うのだが、さすが地元に密着した食堂である。しかし、駅が無いのになぜ駅前食堂と不思議がるかもしれないが、その昔、上田から電車が真田まで走っていて、食堂は本当に駅前にあったという訳である。仕方無しにコンビニで昼食をすませると、今度は昆虫観察に真田町の御屋敷公園と東部町の雑木林に行った。御屋敷公園には真田一族の資料館があり、ぜひ一度は訪ねて欲しい公園である。今日の昆虫観察での特筆すべきこととしては、ヒメカマキリモドキに会えたことである。ウスバカゲロウ等と同じ仲間なのだが、姿格好、特に前肢がカマキリと同じような鎌となっているのである。腐っても鯛ではないが、高原は雨でも信州の里山は最高である。

<今日観察できたもの>果実/リンゴ(写真左)、カリン、カシクルミ(写真右)、洋ナシ、ナシ。昆虫/ムモンアカシジミ、ルリタテハ、ルリシジミ、ヒメヒカゲ、ヒメカマキリモドキ(写真下)、ルイスアシナガオトシブミ、カシワマイマイ、アキアカネ、ノシメトンボ等。


8月15日、新潟県新井市高床山森林公園

 昨日はとても寒かった。防寒具を上下着こんで、一日中テレビを見ていた感じである。天気予報によると今日も雨だという。一日ぐらいなら何とか我慢できるが、二日連続となると耐えられない。そこで唯一曇の予報の新潟県を目指して、上田菅平から高速道路に乗った。県境近くの野尻湖辺りまで行けば雨は止んでいると踏んでいたのだが、まだ降っている。新潟県に入り妙高高原まで来るが、雨は止んでいるものの空がどんよりと暗い。そこで更に先の中郷で降り、新井市の高床山森林公園へ行った。見知らぬ土地へ行った時、○○森林公園等と地図に書かれてあったら、まずそこへ行ってみることにしている。しかも高床山森林公園には池がたくさんある。かなり平地に近いから珍しいものには出会えないだろうが、各種のトンボやイトトンボがいるかもしれないと心が弾んだ。
 林道を車で上って行くと、新潟県独特の形の良い杉林に囲まれた山の田んぼ(写真右)が見えて来る。更に上ると上越市街が見え、その向こうに日本海、更に佐渡島が見える。本当に遠くに来たものである。高床山森林公園にはキャンプ場があって、オートキャンプやバンガロー、テントにかなりの人がやって来ていた。金沢に住んでいる方の話によると、金沢周辺で最も普通に見られるクワガタムシはヒラタクワガタという事なので、ここまで来たのだから樹液に、もしかしたら関東地方の者には憧れのヒラタクワガがいるのではないかと、子供達が来そうにない城跡の方へ行ってみた。しかし、標高が高いこともあってコナラが多く、なんとミズナラやブナの巨木も現れたのには驚いた。特にブナは巨木で、幹の途中から太い枝が何本も分かれて見事である。世界遺産である白神山地にはこう言った巨木が何本もあるのだろうかと考えると、身震いするようなブナの魅力に取り付かれてしまった。やはりここは日本海側の雪の多い新潟県なのである。
 こういう環境ではなかなか樹液酒場を見つけることは不可能と考え、案内板にあるジュンサイ池にトンボを探しに行ってみると、3種類のイトトンボが飛んでいた。一番多いのがキイトトンボ、続いてモノサシトンボ、あまり多くないがアオイトトンボも見られた。また、キャンプ場内を歩いてみると、多摩丘陵ではもう終わっているはずの各種のキノコが最盛期で、コオニベニタケ、アイタケ、ツルタケ、オキナクサハツや各種のイグチの仲間がたくさんあった。私のような撮るものの対象が広いと、雨さえ降っていなければ楽しい自然観察が出来るのだから幸せである。

<今日観察出来たもの>昆虫/キンモンガ、フキヒョウタンゾウムシ、ヒメシロコブゾウムシ、ベッコウハゴロモ、オニヤンマ、シオカラトンボ、キイトトンボ、モノサシトンボ、アオイトトンボ、アブラゼミ等。その他/アイタケ(写真下)等の各種キノコが一杯。


8月13日、長野県小諸市高峰高原

 明日からしばらく雨だと言う。残念だけど今年の不順な天候からして仕方がない。身体を休めなさいという天からの声と考え、ゆっくり休養しよう。そんな訳で今日は高峰高原へ行くことにした。嬬恋村から行かれる高原はたくさんあるが、この時期にニッコウキスゲが咲き残っているのは高峰高原だけである。少し遠いが群馬県六合村の野反湖はニッコウキスゲの群落で有名だが、ここは7月一杯が見頃で、今の時期はみんな大きな種を付けている。高峰高原へは嬬恋村から直接行ける道があるが、ダートの悪路で愛車「小野路号」の健康状態を考えて舗装道路で遠回りして行くことにした。そんな思いまでして来たかいがあって、ニッコウキスゲは咲き残っていてくれた。しかし、時期的には終期であって絵になる花は少なかったが、なんとか一枚をものにした。高峰高原は標高が約2000mあり、この辺りでは一番の高山植物の宝庫で、様々な花が咲いている。一昨日の鹿沢高原とほとんど同じ種類だが、その量たるや高峰高原の方に軍配が上がる。特にクルマユリはかなりあり、咲き残っているノハナショウブも色が濃くて美しい。多分、植栽したのだろうがコマクサがしおれた花をつけていた。ここから池の平湿原の方へ平坦な林道をてくてく歩いて行けば、かなりの花に巡り合うことが出来るだろう。
 ニッコウキスゲをなんとか撮ったから、さて次は何を撮ろうかと考えたが、やはりここにも多いベニヒカゲを撮ることにした。一昨日の鹿沢高原で撮ったものは今一だったので、他の花はベニヒカゲを撮ってからということにしたのだ。そんな思いが通じたのかラッキーなことに霧が薄っすらとかかって来た。ベニヒカゲは陽が射していると活発に活動して高山植物の花の蜜を吸い、たとえ葉に止まって羽を開いても近づくとすぐ逃げる。地面に止まっているものはたいがい羽を固く閉じている。しかし、太陽が陰るとたとえ地面に止まっているものでも羽を精一杯開き、微かな太陽の光を受け止めようとするのである。しかも、霧がかかって来ると気温が低くなるので近づいても逃げないと言う訳である。有難いことに手ごたえある写真を数枚撮り、もっと撮ろうと思ったのだが、ますます霧が深くなって来た。こうなってはお手上げである。付近を見渡すと小諸市役所の観光課の方が何やら調査をしている。「オヤマリンドウの様子を見に来たんです。まだ固い蕾のようですから開花まではしばらくかかりますね」と言う。「この場所にはたくさんありますね」と言うと、「この場所が一番の群落地帯なんです」と教えてくれた。「ところでここにはシャジクソウがたくさんありますね」と質問すると、「そうなんです。こんなにたくさんの群落が見られるのは日本でもここだけのようですよ」と嬉しそうに言う。帰って図鑑を開いてみると、そこに載っていた写真は高峰高原で撮影されたものであった。

<今日観察できたもの>蝶/ヒョウモンチョウ、ベニヒカゲ(写真下)、クロヒカゲ、ヒメキマダラヒカゲ、オオチャバネセセリ。花/ニッコウキスゲ(写真左)、ノハナショウブ、ジャコウソウ、コマクサ、ヤナギラン、マルバダケブキ、シシウド、マツムシソウ、ハクサンフウロウ、クルマユリ、ヤマハハコ、ツリガネニンジン、ミネウスユキソウ、ノアザミ、アキノキリンソウ、シャジクソウ(写真右)、チダケサシ、シモツケソウ、キリンソウ等。


8月12日、長野県小県郡真田町古城緑地広場

 今日は高原は小雨ないし霧、こうなったら一か八か鳥居峠を越えて信州に行くしかない。とは言っても嬬恋村に接する真田町だからたいして時間はかからない。真田町に来るとまず最初に行くのが、古城緑地広場と名づけられた名刹信綱寺を中心とした緑地である。真田と言えば戦国時代から全国に名をはせた真田一族の発祥の地である。真田一族の中で最も知られているのが大阪冬の陣、夏の陣で徳川方を悩ませた真田幸村だろう。信綱寺は幸村の叔父さんにあたり、真田幸隆の子である信綱の墓がある。立派な山門も修理され、無料でお茶を出してくれるお休み所もある。お休み所の昔ながらの純日本家屋に、ペチュニア(写真右)がまるで盆栽のような格好で鉢に植えられて置かれている。これは撮らなくてはとカメラを構えていると、中からここを管理するご婦人が何事かと出て来た。「ペチュニアの花が盆栽のようで建物と合ってますね」と言うと、「この方が育てたんのですよ」と作者の小林婦人を紹介してくれた。その後、「お茶を飲んで行きなさいよ」と勧めるので中に入ってご馳走になった。「なんで真田一族は強かったんですかね」と質問すると、「頭が良かったんじゃない」と言う。まさにその通りなのだろう。「しかし、こんなに良いお寺だし、近くに真田一族の史跡や資料館があるのに来る人が少ないですね」と言うと、「そうなのよ宣伝しておいて」と笑顔で嘆くので、以上のようにかなり詳しく書いた。
 この古城緑地広場やその周辺の田畑は、かなり自然観察が面白く、なかなか他ではお目にかかれないゼフィルスとしては一番最後に登場するムモンアカシジミが見られ、オオムラサキ、スミナガシ、コムラサキ、ゴマダラチョウがクヌギの樹液に集まっていることも多い。また、私がオニグルミの樹液にも各種の昆虫が集まってくることを知ったのもこの公園で、今年は樹液の出は悪かったが、かつてはミヤマクワガタにも出くわしている。また、周辺の畑では各種の花の栽培も盛んで、ことにベニバナと様々な花色、花形のアスターが美しい。また、田んぼ沿いの道の脇には延々とムクゲの並木が続き、お休み所のご婦人に尋ねたところ、「よくご存知ですね。私たちが管理しているんですよ。地元じゃムクゲ街道と呼んでいるんです」と誇らしげに言った。最後にここに来るもう一つの魅力は、「蟻とキリギリス」で知られる本家本元のキリギリスに出会うためでもある。東京都町田市小野路町のフィールドで良く出会う、名を成し功を遂げた熟年の紳士が「最近、多摩丘陵ではキリギリスが見られなくなりましたね」とおっしゃっていたが、真田町では畑にも草むらにもキリギリスがたくさんいて、地元の方は「チョンギース」とその鳴き声から呼ぶのだが、私にはどう耳を澄ませて何べん聞いてもも「ジリジリー、チョン」と聞こえ、チョンから始めると「チョン、ジリジリー」になるのだが。

<今日観察できたもの>昆虫/オオムラサキ、ムモンアカシジミ、オニヤンマ、ミヤマアカネ、ノシメトンボ、キリギリス(写真下)、ツノアオカメムシ、キマワリ、アオカナブン等。花/ムクゲ、ペチュニア、アスター、ベニバナ(写真左)、ルドベキア、ヒャクニチソウ等の各種園芸品種の花とナツズイセン等。その他/リンゴ、洋ナシ、食用クルミの実等。


8月11日、群馬県吾妻郡嬬恋村鹿沢高原

 昨日は家を午前11時に出て関越自動車道に乗ったのだが、ラジオの交通情報とは異なってすいすいと車は走る。しかし、長野自動車道の横川と軽井沢の間の八風山トンネルあたりはやはり毎度のことで渋滞していた。そこで当初は中軽井沢から浅間山の峰の茶屋を越えるはずだったが、渋川から中之条経由で草津を通って嬬恋村に行くルートに変更した。走ってみると草津まではかなりの距離がある。「草津良いとこ、一度はおいで」と歌われているくらいだから、昔の人は歩いて江戸から湯治に来たのかと思うと、その苦労と忍耐強さが忍ばれる。心配していた台風による大風の影響は少なかったと見え、国道左下に流れる吾妻川は濁流だが、民家の庭などに咲いているヒマワリやオニユリは倒れる事なく、田んぼの畦に咲くコバギボウシも大丈夫のようだ。3日前にお腹を壊して本調子ではないのが唯一の心配の種となった。
 夏の遠征第一日目は最も近場である鹿沢高原へ行った。もう10年近く夏の恒例となってやって来ているので、あの道この道、何処へ通じる道と頭に焼きついているので、桟敷山裏の林道への近道を知っている。すぐ近くの湯の丸高原周辺は人人の大混雑だが、ここの林道はほとんど私のプライベート・フィールドと化すのだから最高だ。もし迷わずにこの林道へ来るとしたら、地蔵峠から鹿沢温泉に向かって降りてくると右側に「民宿わたらせ」が見えて来るから、そこを右折する。心配していた高原の花々は台風の被害を受けずに咲いている。大きなシシウドなんて「何にもなかったわよ」という感じで堂々としているのだから笑ってしまう。一番心配していたヤナギランは高原の風に揺れ、マルバダケブキやコオニユリもちょうど見頃である。
 この林道は高原の花だけでは無い。今年は発生が遅れているようで見られなかったが、キベリタテハやクジャクチョウ、シータテハ等の高原の奇麗所のタテハチョウは勿論のこと、高山蝶のベニヒカゲがうんざりする程たくさんいる。しかし、今年はまだ羽化したばかりのようで、ベニヒカゲの個体数も例年より少ない。このベニヒカゲは小さい割には敏感で、また、羽を開いていないとベニヒカゲらしくなく、しかも絵になる場所になかなか止まってくれないのである。そんな訳で久しぶりに粘ったのだが、思うような写真は今年も撮れずじまいに終わった。
 そうそう、ここに来る目的は高原の花や蝶以外にももう一つあって、前記した「民宿わたらせ」の定食を食べることである。特に山菜てんぷら定食や各種の山女魚や岩魚の定食が美味しい。さらに昔懐かしい特製の「すいとん」も食べられる。しかも、値段も信じられない位に割安だから、この方面に旅行する時は必ず寄って欲しい。もちろん一泊すれば最高で、ニ食付きで6000円で泊まれる。今日は、来るといつも真っ先に山菜てんぷら定食を食べるのだが、お腹の調子を考えて山女魚の塩焼き定食にした。山女魚はご主人が下の渓流の水を引いた池で飼っているものである。

<今日観察出来たもの>蝶/キアゲハ、カラスアゲハ、アサギマダラ、エルタテハ、コムラサキ、ヒョウモンチョウ、コヒョウモンモドキ、ミドリヒョウモン、ベニヒカゲ、クロヒカゲ、オオチャバネセセリ。花/ヤナギラン(写真左)、マルバダケブキ(写真右)、シシウド、マツムシソウ、ヤマオダマキ、ハクサンフウロウ、コオニユリ、ヤマハハコ、ツリガネニンジン、ミネウスユキソウ、ヨツバヒヨドリ、コウリンカ、ノアザミ、ウツボグサ、オカトラノオ、クサレダマ、アキノキリンソウ、クサフジ、シャジクソウ、チダケサシ、シモツケソウ、キリンソウ、コケモモ(写真下)等。


8月7日、東京都町田市小野路町

 今日は本当に疲れているな、遠征前だから身体を休めていた方が良いのでは等と思いつつも、冷蔵庫の野菜も無いしな等と理屈をつけて小野路町へ行った。午前中は雑木林の中に入っての昆虫観察だから涼しいが、薮蚊対策を万全にし、樹液に来ている昆虫たちを美しく撮るために「日中シンクロ」を多用するからと、重たい三脚を持って歩き始めた。少しの坂でも青息吐息、「なんでこんな思いまでして、疲れいるのだから帰ろうか」等と頭の中をよぎるのだが、平坦な美しい雑木林の中に入ってしまうと楽しくなるのだからほとんど病気である。今日はカブトムシは一杯いるものの、みんな雌ばかりである。もう交尾も済んでいて雄は用無しになったのだろうか。あるいはアオバズクに食べられて個体数が減少したのだろうかと考えて見入っていると、バサバサと音を立てるかのようにオオムラサキも仲間に入った。飛び古した破損した雄の個体である。各種の機材を雑木林の中央に下ろすと身軽になって散策は快適である。雑木林の中から隣接する畑を見ると太陽に照らされて暑そうだが、雑木林の中は薮蚊対策に長袖を手首まで下ろしても暑くない。やっぱり夏は昨日の「木陰でのセミ」と「樹液に集まる虫」と「夜間観察」が最高だ。
 そんなことを思いながら樹液巡りを始めると、今年、多摩丘陵で初めて出会うノコギリクワガタのペアに出くわす。樹液を夢中になって吸う雌に雄が乗っかって、しっかりとガードしているのだ。私のように軟弱で女性にガードされる男性の方が多いから、こんな光景を世の女性たちに見せたら何を言われるか分ったもんじゃない。今日は樹液ではないが各種の樹木の幹で休息する、黒光りする身体のノコギリカミキリがたくさん見られた。これは女性たちが大嫌いなゴキブリの身体を固くして、鋸歯状の触覚をつければ一丁上がりという風袋だから容易に想像がつくことだろう。そうこうしていると他のクヌギの樹液に青黒いが羽の先端が白っぽく感じられる蝶が現れて、羽を開いたり閉じたりしながら樹液に近づいて行く。スミナガシである。オオムラサキ等のタテハチョウの仲間は樹液の近くに舞下りると、このような動作をしながら近づいて行くのである。ほとんどのタテハチョウは目的の樹液の泉に口吻を伸ばすと羽を閉じてしまうのだが、スミナガシは真っ平に開いて静止することが多いから撮影には最適である。遠くから観察していたが羽を開いて静止したからもう安心、樹液に夢中なスミナガシは近づいても微動だにしない。三脚にカメラを着けて近づいてみるとピッカピッカの羽化したての個体であった。
 今日は昼飯を食べた後、Tさん宅の切り通しの雨がかからない部分にあるウスバカゲロウの幼虫の巣(蟻地獄)を撮影して、この時期は期待できないもののキノコ山を少し覗いて帰る予定であった。蟻地獄を撮影していると本当に種名不明の小さな蟻が蟻地獄に落ちた。幸いなことに上部の縁の方だったので、ウスバカゲロウの幼虫が砂をかけるのだが何とか逃げ切った。そこで私が悪さをして細い枯れた草の茎を差し入れると、またまた砂をかけ始めるのだから面白い。もう何も生えてないだろうと期待しなかったキノコ山には、見事なコガネヤマドリ(写真左)が生えている。何本も生えていた中で一本倒れているのがあるので手にして見ると、とても重く固いキノコである。これはことによったらとても美味しいキノコであるに違いない。帰り道に疲れた身体を回復させようとTさん宅の丸太に座って煙草を吸っていると、顔見知りの大学院生がスコップを抱えて調査から戻って来た。「こんな陽気だから谷戸には誰もいなかったでしょう」と話していたら、何と何と例の虫めずる姫君のSさんNさんが現れた。こんな自然好きが集まるのだから、盛夏でも小野路は最高である。

<昨日、今日観察出来たもの>蝶/オオムラサキ、スミナガシ(写真右)、ルリタテハ、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、ジャノメチョウ、ヒメキマダラセセリ等。昆虫/カブトムシ、ノコギリクワガタ、ノコギリカミキリ、ナガゴマフカミキリ、キマワリ、ヒグラシ等。


8月6日、横浜市都筑区茅ケ崎公園〜大原みねみち公園

 
今でこそ最も先進的な住宅街となっている横浜市都筑区に広がる港北ニュータウンは、かつては雑木林や谷戸田や畑が続いていた多摩丘陵の南端部にあたっている。現在の町田市に残存する緑したたる丘陵地帯に似た景観で、そこをベッドタウンとして開発するに当たって、また、多くの方々の努力もあって、かつての面影を残す公園がたくさん残されている。「緑の環境を最大限に保存し、ふるさとをしのばせる街づくり」というのが、開発に当たっての基本方針であったと言われている。私のようにかなり自然に深く関わりあっている者にとっては物足りなく満ちたりはしないものの、ちょっと緑の中をお散歩に、子供達に動植物を触れさせようと言った程度なら、港北ニュータウンに点在する公園は最高に素晴らしいフィールドだと言えよう。私が知っているだけでも、都筑中央公園、鴨池公園、葛が谷公園、大原みねみち公園、茅ケ崎公園、せせらぎ公園、早淵公園があり、しかも、それらが緑道で繋がっているのである。一番広い都筑中央公園をスタートして最後の公園まで歩くと、かなり長い緑の中のウォーキングが楽しめ、もちろん、かつて生息していた国蝶のオオムラサキこそ見られないものの、意外や意外でゲンジボタル、タマムシ、オニヤンマ、カブトムシ、ミドリシジミ、ショウリョウバッタ、各種ゾウムシ等の昆虫が生息し、それぞれの公園に池があるから、カワセミが随所で獲物を狙っている。
 今日は毎年夏の恒例となっている港北ニュータウン公園巡りに行って来た。まず最初に行ったのが、私が時々ボランティアをしている生態園(土日のみ開園)を持つ茅ケ崎公園である。一昨日の猛暑は和らいで空は曇っているものの、湿度はかなり高く、気温もそれほど下がっていないから身体を動かせばすぐに汗が滴り落ちて来る。しかし、公園に残されたあるいは植栽された各種樹木の日陰の中でのセミの撮影は快適である。今日見られたセミは、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシである。これらのセミの中で特にアブラゼミとミンミンゼミは、自然度の高いフィールドよりも住宅地に近い公園の方が多く生息している。しかも、アップダウンが少なく、樹木もよく手入れされているから写真撮影には最適なのだ。誰しもが遠い幼い頃に見たことのある夏のキラキラした木漏れ日を背景にしたこれらのセミが鳴いている光景、その思い出をとっても懐かしく感じさせるような雰囲気溢れるセミの写真を撮ることが今日のテーマである。これらのセミの中で特に撮影が難しいのがミンミンゼミとヒグラシである。共に透き通った羽を持っていて美しいが、近づくとすぐに逃げてしまうのだ。しかし、一生懸命に口吻を樹木に突き刺して吸汁中の個体とかおっとりした雌の個体を見つけると、かなり近くまで接近しても逃げたりしない。しかし、昆虫写真家の海野和男氏が言うように、セミはやはり鳴いている時の方が風情がある。
 今日はラッキーなことにミンミンゼミを美しく撮影できたので、いつもの菓子パンや牛丼ではなく、茅ケ崎中学校横の家庭中華料理「嘉門」で美味しい定食を食べると、今度は大原みねみち公園へ行って池のトンボの撮影に専念することにした。池には大物のギンヤンマこそ飛んでいないものの、数の多いものからシオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボがたくさん飛んでいて、ショウジョウトンボの雄は真っ赤に色づいているものが多くなったが、まだ、褐色の未成熟の個体も見られるから、やはり長雨の影響が池のトンボの世界にもあったようである。池のトンボを観察していると場所取り争いが激しいが、どう見てもショウジョウトンボが一番強く、コシアキトカンボは弱いらし、片隅に追いやられているように感じられる。久々に池のトンボを思いっきり撮影したので、葛が谷公園から流れて来る細流横の小道を登って行くと、半日陰が大好きなオオシオカラトンボが棒の先に止り、昆虫ながらあっぱれな図体を持つオニヤンマがパトロールを繰り返していた。今日は長期遠征を控えての軽い観察だったが、充分満足して帰途に着いた。

<昨日、今日観察出来たもの>蝶/アオスジアゲハ、コミスジ、キチョウ、サトキマダラヒカゲ等。昆虫/オニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ(写真右)、ヒグラシ、ミンミンゼミ(写真左)、アブラゼミ、ニイニイゼミ等。


8月4日、山梨県甲府市帯那山〜白州町中山峠

 
昨晩の天気予報は見事に当たって、起きてみると雲一つ無い快晴である。甲府盆地も全国の例に漏れず今年最高の気温を記録するに違いない。こうなったら平地の自然観察は苦業行脚となるだけだ。私の今までの経験から、摂氏35度を越えたらフィールドでの自然観察は中止したほうが懸命である。汗が滝のように流れ頭が痛くなり歩くことが苦痛になる。こうなったら一時も早く自然観察を切り止めて、涼しい木陰で横になった方が良い。そのまま続行したら熱中症にかかって倒れてしまうことだろう。そんな今までの経験から、甲府盆地の平地の自然観察の予定は中止して、唯一、携帯電話が通じる帯那山へ行ってみることにした。標高が1700メートルあるのだから、高原の花や蝶がいるに違いないと思ったのだ。それにアヤメの時期を過ぎたから人っ子一人現れず、静かで落ち着いた写真撮影が出来るのではないかとも考えた訳である。
 しかし、頂上に着いてみるととても暑い。平地で流れる汗より爽やかだが額から滴り落ちて来る。期待していた花や蝶もさほどでは無い。飛び古した雌のアサマシジミには驚いたが、クジャクチョウや各種のヒョウモンがいくらか見られる程度、昨日の乙女高原の華やかで多数の蝶の舞いは無い。花も有名なアヤメはすっかり咲き終わり、変わって乙女高原では見られなかったがユウスゲ(キスゲ)が咲いている。ニッコウキスゲに比べると花弁の厚みや丸みが異なり、どう贔屓目に見てもニッコウキスゲの方が美しい。その名がユウスゲとあるように、夕方に咲いて夜も咲き続け、午前10時頃になると閉じる1日花である。この点でも昼に咲くニッコウキスゲとは大違いである。この他、アヤメの群落が広がるくらいだからやや湿地なのか黄色い可憐なノギクともいえるオグルマや、乙女高原では絵になるものが無くて撮影できなかったタチフウロウをカメラに納めた。フウロウソウ科の花は皆美しい。ハクサンフウロウ、グンナイフウロウ、タチフウロウ等は高原の花だが、秋になると平地でも見られるゲンノショコもお馴染みの仲間である。帯那山も到着した頃は雲が流れて来て日差しが和らぐ時もたびたびあったが、11時を回ると夏の高原の雲一つ無い青空に覆われた。こうなったら陰影がくっきりと出て、花の写真はお手上げとなる。
 さて次は何処へ行こうかと帯那山を下りながら考えた。もう、明野村のヒマワリ畑も咲き出しているに違いないと思ったが、車のラジオから流れて来るニュースでは、関東地方一円で今年の最高気温が記録され、群馬県内や埼玉県の熊谷では温度計がうなぎのぼりになっていると言う。そんな恐ろしい事を耳にしてしまったので、例によって白州町中山峠の雑木林の中にもぐりこもうと考えた。しかし、いつもなら涼しいはずの雑木林は風が無く、少し動いただけで汗が滲み出てくるほどの暑さである。ここでこんなに暑いのだから今日は熱中症でたくさんの人が倒れるに違いない等と、不謹慎なことを考えながら観察に励んだが、オニヤンマが木陰の枯れた枝で涼んでいる位だから蝶も少ない。ところが日陰になった草むらのクヌギにカブトムシがとんでもなく多く見られ、シロスジカミキリが昼寝をしていないかなと、若々しいクヌギを幹ばかりでなく小枝までくまなく観察すると、ノコギリクワガタ、カブトムシが昼寝をしていて、今日一番元気だったのは夏らしくカブトムシであった。全て捕らえると10匹は軽く超えたから、都心のデパートにでも卸せば、帰りの高速代くらいにはなった筈である。

<帯那山で観察出来たもの>
蝶/クジャクチョウ、ウラギンヒョウモン、アサマシジミ等。花/オグルマ、ユウスゲ(写真左)、オオバギボウシ、チダケサシ、シモツケソウ、タチフウロウ(写真右)等。
<中山峠で観察出来たもの>
蝶/オオムラサキ、スミナガシ、ルリタテハ、キタテハ、ヒカゲチョウ、クロヒカゲモドキ、サカハチチョウ、イチモンジチョウ等。昆虫/カブトムシ、ノコギリクワガタ、コクワガタ、アカアシクワガタ、アオカナブン、カナブン、オニヤンマ、ノシメトンボ、ヒグラシ、キンモンガ等。


8月3日、山梨県甲府市乙女高原

 
私のHPをご覧下さって掲示板にたくさんの情報や写真を送ってくれる方が、先日、アブラゼミの羽化場面の写真を送って来てくれた。そんなこともあってか、昨晩、アブラゼミの羽化の写真を絶対撮ろうと思っていたのだが、例年より発生が遅いためか、この天候に嫌気がさして「もう一年地中の中に暮らしちゃおう」等と考えている連中が多いのか、いつもに比べてアブラゼミが羽化しているのが僅かばかりだ。もちろん一カットは撮影したのだがなんだか物足らない。そんなこともあって、キンモクセイの幹に避難させたニイニイゼミを見に行ったら、絵になる場所で足場を固めている。これは連続撮影の良いチャンスとばかりに三脚にカメラをセットして撮影に取り掛かった。しかし、足場を決めて胸部の殻が裂け始めたのがだいぶ遅かったために、完全に羽が伸び終わったのが夜の9時30分。お腹は夕方に食べたから減っていないが、いつも行く竜王町にある「名取温泉」が深夜料金になると、なんと倍の1000円になってしまうのである。そんなことを気にしていたのだが、名取温泉に着いてみると改築が終わって、何時に入っても500円と言う事で拍子抜けしてしまった。ボディーシャンプー、ヘアーシャンプーは勿論常備され、高中低と温度差が様々な風呂などたくさんあるから、ゆっくり温泉に浸かって、セブンイレブンでビールとおにぎり、つまみを買って中央高速に乗り、双葉サービスエリアに着いたのが11時半を回っていた。
 そんな訳で今日は車中泊後の朝だが意外と快調である。乙女高原では昼に菓子パンをぱくつくことになるので、双葉サービスエリアで朝食はカレーライスを食べて乙女高原に向けて出発する。途中、昇仙峡を通って、独特な巨岩を頂きに据えた金峰山が青空に浮かんで美しく遠望できる林道をひたすら走る。このHPをご覧下さっている方の中に山登りが大好きな熟年のご婦人も多いから「今日は知り合いが登っているかも知れない」等と想像すると、私も急に登山がしたくなって来た。夏は何と言ったってハイマツがある所まで行かなくてはと思うのである。乙女高原に着くと8月に入ったというのに7月中旬から咲く花が主体であるが、8月中旬から咲く花も咲き始めているという変梃りんな状況である。特にややオレンジがかったキンバイソウが見頃で、薄紫のオオバギボウシ、赤に近い色合いのシモツケ、ピンクのシモツケソウ、その他、ヤナギラン、チダケサシ、ヤマハハコ、タチフウロウ、ゴマナ等が見頃で、咲き始めたばかりのコオニユリ、マツムシソウ、ワレモコウもちらほら見られ、マルバダケブキだけがまだ固い蕾といった状態であった。
 お盆休みに嫌と言う程、山の花の写真は撮れるからと見頃のキンバイソウを撮影すると、蝶や昆虫がたくさん見られる場所に移動した。私ぐらいしか来ないだろうと思われるメインルートから外れた小道を上がって平らな草原に着くと、地面に小さなバームクーヘンのような細い樹木の幹を薄く輪切りにしたような格好のものがたくさん落ちている。「まさかキノコ?」と思って近づいてみると「まさにキノコ!」なのである。あたりを見回してみると様々なキノコが一杯生えている。高原は今がキノコの旬なのかも知れない。しかし、キノコは里山に生えるものだけと撮影範囲を決めているので観察のみとなったが、このHPのために仮称バームクーヘンタケ(写真右)のみを撮影した。今晩は先日、甲府ハイランドユースホステルに泊まった時にたくさん飛んでいたヘイケボタルを撮影しようと計画していた。そこで昨晩の車中泊の疲れも考えて乙女高原を早めに切り止め、行きとは異なった巨砲で有名な牧丘町経由で甲府ハイランドユースホステルに着いてゆっくりと過ごした。夕食後の7時半に農道に見に行ったら、しめたものでたくさんのヘイケボタルが明滅を繰り返している。「しめしめ宮本武蔵を見たら撮りに来るからね」と一旦ユースに引き返し、また、9時に行って見ると、あーら不思議、ほんの僅かのヘイケボタルしか見られない。「鉄は熱いうちに打て、ホタルは明滅し始めたらすぐ撮れ」という訳であった。

<乙女高原で観察出来たもの>蝶/クジャクチョウ、エルタテハ、シータテハ、ミドリヒョウモン、アサギマダラ、テングチョウ、サカハチチョウ、スジボソヤマキチョウ、コムラサキ等。花/キンバイソウ(写真左)、オオバギボウシ、シモツケ、シモツケソウ、ヤナギラン、チダケサシ、ヤマハハコ、タチフウロウ、コオニユリ、マツムシソウ、ワレモコウ、シシウド等。その他/各種のキノコが一杯。


8月2日、神奈川県津久井郡城山町〜山梨県中巨摩郡敷島町

 
どうせ通り道だからと、昨日、風のためと200mmマクロレンズを持ってこなかったために、不本意に終わった下小山田町のハス田に寄ってみた。一度見たら忘れない独特の格好の「小野路号」が来たので、この場所を教えてくれた先に来ていたMさんが出迎えてくれた。さすが今日は土曜日である。昨日はほんの僅かな人しかいなかったのに、三脚にカメラを据えつけた方が大勢いる。しかし、まだ午前中の早い時間なので大賀ハスは見事に開花し、かなりの絵になる美しい状況である。しかも、大型三脚に200mmマクロレンズだから、遠く離れて咲いていてもびくともしない。とは言うものの、やはり昨日ほどではないが風が少しあって花は揺れ、おまけにハス田の暑さといったらたまらない。独特のハスの臭いと湿った泥から発する水蒸気でむっとする炎熱地獄である。Mさんが神社の木陰から離れられなくなって、ハスの花を狙っているのが良く分る。今日でやっと長かった関東地方の梅雨明けということで、8月に入ってしまったのだから何となく違和感があって苦笑する。数カット撮影するうちにますます人が増え熱気に我慢なら無くなって、Mさんに挨拶してから今日の本来の目的地である神奈川県津久井郡城山町穴川に向かった。
 城山町穴川は高尾山に近いというのにとても暑い。道端のオオバコの花穂に止っているミヤマアカネ(写真左)が、目一杯お尻を太陽のほうに向けて逆立ちしている。特にアカネ類はこの芸当が得意である。アキアカネはこの平地の暑さをしのぐなどという馬鹿げた努力なんて毛頭考えずに山や高原に避暑に出かけているが、他のアカネ類は、お尻を上げて太陽光線が当たる面積を極端に少なくしているのである。人間がこのポーズをとったら足裏とお尻の一部のみに太陽光線が当たるだけで他はセーフということになって、日焼けする部分はごく少面積で済むと想像すれば、アカネ類のこの芸当が理に叶っていると納得が行くはずである。いつものコースを一回りしてみたものの、モノサシトンボのいる浅い池も干上がり、アジサイの葉上に休息する各種の昆虫を撮影しようと思ったが、アジサイの手入れの方々が精を出しているので止めにした。こうなったらもう甲府盆地目指して一直線である。途中、どこかに寄ったとしても同じような状況と考えたからだ。それに今晩は甲府ハイランドユースホステルが団体客で満員で泊まれない。こうなったら何処かのサービスエリアか道の駅でビバークだから、今年はしないつもりでいた夜間観察を敢行しようということになった。
 今晩の夜間観察のフィールドとなる敷島町の総合運動公園には午後3時に着いた。まだ時間があるのでキノコ巡りとセミ、運がよければスミナガシやオオムラサキの撮影と公園内と周辺の雑木林を歩いて見たが、キノコは干からび長雨のためかスズメバチの発生が少ないためもあってか樹液の出も悪く、それどころか蝶の発生もずいぶんと少ないようである。そこで車に戻って甲府では超有名なスーパー「オギノ」で仕入れて来た食料をぱくついて、夜間撮影の体力回復のために遅い昼寝に入った。ほんの30分くらいだが横になって眠るとすっきりする。太陽が山々に没すると、あんなにまで暑かったのが嘘のように涼しくなる。やっぱり夏は夜間観察が快適である。大きな懐中電灯を持って公園内の植樹の中に入ると、アブラセミが穴から這い出してきて樹木の幹を登り始めている。シラカシの幹にライトをあてるとニイニイゼミが這っている。「こんな所では危ないよ」とそっと摘んでキンモクセイの幹に這わせてあげた。シラカシは甘い汁を出す木だから、クロオオアリが夜間も行ったり来たり。このクロオオアリが羽化してまだ体が固まってないニイニイゼミに喰らいつくことがあるのだ。大切な被写体が無残な姿になってしまって、連続撮影が失敗に終わった苦い経験が生きていると言う訳である。

<今日の夜間観察出来たもの>昆虫/カブトムシ、コクワガタ、ウスバカミキリ、ニイニイゼミの羽化(写真右)、アブラゼミの羽化、カマドウマ、キシタバ、コシロシタバ、オニベニシタバ、フクラスズメ等。


8月1日、東京都町田市薬師池公園〜下小山田の蓮田〜小野路町

 いよいよ8月に入った。しかし、午前中は相変わらず梅雨空で6月が続いているような錯覚を受ける。こんな日にハスが咲いているのか分らぬものの、午前中は大賀ハス巡りと決めて出発する。途中、野津田神社裏のキツネノカミソリが気になって寄ってみると、ちょうど良い咲き具合である。しかし、光が足りなく絞り開放(f2.8)でも、シャッター速度はなんと1/8秒である。おまけに風が少しあるのでこれでは駄目と諦める。野津田神社裏の畑は知る人ぞ知るのブルーベリーの摘み取り畑である。今日もたくさんのご婦人がビニール袋を下げて摘み取っていた。30日に東京港野鳥公園でブルーベリーをつぶさに見ていたので「ブドウ色になったのを摘むんですか?」と心優しそうなご婦人に聞いてみた。「そうですよ、ほら」と笑顔でビニール袋の中身を見せて嬉しそうに言う。「美味しいですか?」と更に聞くと「内緒よ」と二つぶ摘んでくれたので、口に含んでみると甘酸っぱい。このような場合のみ、私のような歳より若く見える童顔は得である。「写真家の方のようですが目に良いんですよ」と言うので、なんだか気恥ずかしくなってしまって、例によって「プロモドキ」ですよと言って笑って、逃げるように薬師池公園に向かった。
 薬師池公園のハス田は平日だというのに人がかなり来ていた。みんな大賀ハスを撮影あるいは見に来ている方々である。しかし、例年に比べると花の数が少ない。ハス田にかけられた木道は三脚使用禁止だから、絵になる花を探して見たものの、なんとか二つという有様である。しかも風が少しあって、長い柄の先に咲く花の揺れは止らない。それでも何とか我慢して一カット撮影したのだが、これだけでは欲求不満になってしまう。そこで図師町の五反田谷戸で仲良くなったMさんの言っていた下小山田のハス田に行ってみることにした。ここはちょうど小山田緑地の南口の近くで、神社の周りになんと薬師池公園のハス田の4、5倍はあろうかと思われるハス田が広がっていた。管理を任されてる方が畦に入る不届き者はいないかと自転車で見回りに来たので「凄いですね。毎年、見られるのですか?」と尋ねると、「そうですよ、今年は天気のせいか花の数が少ない」と言う。しかし、明るい300mmのレンズを持って来てしっかりした三脚を立て、風が無ければかなりの傑作が何枚も撮れる感じに咲いている。ほんの少しの風だと思うのだけれども、ハスの花の揺れはぴったりとは止らない。仕方無しに絞りを開けてシャッター速度を早くして撮ったが、何とかこのHPでお見せすることの出来る写真は撮れたと思う。お昼近くになるとハスの花が閉じ始めたので小野路町に向かった。
 実は昨日も小野路町へ短時間だがやって来た。家で月末の仕事を片付けると降っていた雨が止んだ。何処かへ昼飯を食べに行くついでに、家の冷蔵庫の野菜が尽きているというので野菜を買いがてらに小野路町へ行ったのだ。ここの無人販売の野菜が家族の大のお気に入りで、しかも1000円買うとガソリン代のみならずタイヤの磨耗代等が出てしまうのである。そんな訳で昨日と今日との合算した自然観察報告となるが、美しい雑木林や各所のクヌギの樹液には、カブトムシ、カナブン、コクワガタ、オオムラサキ、クロヒカゲ、コジャノメ等が見られ、今日はサトキマダラヒカゲの第2化が発生していた。山道脇に積んである丸太にはルリボシカミキリが数は減ったものの相変わらず見られ、美しいタマムシの雌が産卵に来ていた。触覚を下に曲げて手ごろな産卵の穴を探している。ちょうど手ごろな穴が見つかると尾端を伸ばして、ミルクのような色と粘りの粘液とともに卵を産みつける。この時はじっとしているから撮影のチャンスという訳である。ストロボを使うと美しい光沢が損なわれてしまうので、産卵のためにうんうん唸って首を伸び縮みさせて困ったものの、隙を見て撮影した。

<昨日、今日観察出来たもの>蝶/カラスアゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハ、キチョウ、オオムラサキ、クロヒカゲ、コジャノメ、サトキマダラヒカゲ、ヒメキマダラセセリ、ダイミョウセセリ等。昆虫/ルリボシカミキリ、タマムシ(写真右)、カブトムシ、カナブン、コクワガタ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ウスバキトンボ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ等。花/大賀ハス(写真左)、キツネノカミソリ、カラスウリ、ソクズ、ヘクソカズラ、ミソハギ、シュウカイドウ等。



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