(2月)
2月27日、東京都町田市小野路町〜薬師池公園〜三輪町
今ごろの春の天気を三寒四温と表現するが、今日はさしずめ寒の部類に入るようだ。だからと言って、それ程寒い訳では無く、散策するのにちょうど良い気温と言える。本当に今年の春の訪れは異常に早い。午前中はのんびりと歩いて春をたくさん見つけようと小野路町へ出かけた。まだまだ本格的な春はずっと先の筈たが、今年のような異常気象では、そうのんびりしている訳には行かない。春のフィールドの変化は急速だから、ちょっと早いかなと思うくらいでちょうど良い。いつもの場所に車を停めると、小野路町で一番暖かい牧場への道を採った。民家の生垣の裾には、早くもオオアラセイトウの紅紫の花が咲き出している。牧場手前の梅林は満開で、今日は寒の晴れだから青空との対比に目が眩むほど見事だ。先日(25日)、舞岡公園にて今年初めてのツクシを観察したが、ここではどうかなと思って、毎年撮影する畑の傍らを丹念に探して見ると、ほんの少しでまだ伸び始めだが発見出来て嬉しくなた。もちろん、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、タネツケバナ等の早春の野の花も一杯であった。
今日は少し気温が低いから越冬明けの蝶や羽化したばかりの蝶は飛んでいないかなと思ったが、今年初めてのベニシジミが2頭弱々しく飛んでいた。15日に来た時にモンキチョウを見ているので、きっとモンシロチョウも羽化した事だろう。これからこのような気温が更に続けば、3月半ば頃には各種の蝶がひらひら飛ぶナノハナ畑が出現するだろう。ところで、いつも牧場と表現しているが、子牛が数頭いるだけの小さな牧場である。不思議なことだが、ここで成牛を見た事がない。きっと成長したら何処かに売られて行くのに違いない。よくご婦人が「とても可愛い子牛がいる」と言っているが、確かに成牛に比べれば可愛いものの、今一つ同意しかねるのは、ただ草を食んでいるだけで、愛くるしい表情を見せているとは言い難い。しかし、飼い主にはとても慣れていて、通りすがりの者には見せない表情や動作を見せるのかもしれない。
牧場を下るとサンシュユが植栽されている畑を通る。毎年、ここでサンシュユを必ず撮影するのだが、今日は撮影にもっとも相応しい開花状況であった。更に下るとY字路になって、右に下って行くと鎌倉古道、大山街道の宿場町として栄えた小野路の街へ通ずる。今年のNHKの大河ドラマは新撰組だが、ここにある小島資料館には近藤勇、土方歳三、沖田総司の遺稿や書簡等の資料があることで有名である。この資料館は常時開館しているのではないので、もし興味があって立ち寄りたい方は、開館日と開館時刻を確認してから出かけて欲しい。前記したY字路を左に上って行くのがいつもの通常コースだが、各種の春の訪れの証を熱中して撮っていたら、すぐに戻る時刻となってしまった。そこで植え溜めのネコヤナギの花とだいぶ膨らんだハクモクレンの蕾を観察してから、足早に車に戻った。
午後からは久しぶりに薬師池公園の万葉草花苑裏の野鳥のポイントに行ってみた。このところ、何処へ行っても鳥がめっきり少なくなったように感じていたので、ここなら各種の鳥も健在だろうと期待していたのだ。しかし、冬鳥のマヒワ、留鳥のシジュウカラ、ヤマガラはたくさんいるものの、人気の冬鳥のルリビタキやジョウビタキは現われなかった。午前中からルリビタキ狙いで頑張っている方に聞くと、3回お出ましになったが滞在時間も少なく、すぐに何処か行ってしまうと言う。また、ジョウビタキの雌も現われないとの事である。やはりそろそろ冬鳥達の一部は渡りに入ったのかもしれない。そんな気落ちした思いでいたら、まだ閉園中の万葉草花苑の中で「ホー、ホケキョ」とウグイスが鳴いている。これはしめたと探して見ると嘴を開いて鳴いている姿を確認した。それでは写真をとカメラを構えたら、すぐにツツジの植え込みに逃げ込んでしまった。こうなってはしばらく待っても出て来そうもないので、たくさんいるシジュウカラを思う存分撮影した。
帰りがけに三輪町の妙福寺に寄ってみた。今日は平日だしレンジャク類が現われてからだいぶ日が経つので、ほとんど人はいないだろうとの予測は見事に外れて、いつもよりたくさんの方がカメラを構えている。遠くから手を振る方がいるので誰だろうと思ったら、IさんHさん、更に驚いた事には舞岡公園のきざはしの池で度々出会うご夫婦も笑顔で迎えてくれた。これで三度目のご出張だと言うのだから驚きである。やはり独特な顔つきのレンジャク類は大人気なのだ。「出勤時間が遅いよ、今日はさんざん撮ったよ、もう現われないかもしれないよ」等とみんな満足そうな笑顔で言う。それでも待つこと一時間の間に2回お出ましになって、私にも幸運のおこぼれがいただけた。たかが野鳥なのだが、発達した冠羽を持つ厳しい顔は何べん観察しても飽きが来ない。毎年、この時期の妙福寺のレンジャク詣では、しっかりとスケジュールの中に入るに違いない。
<小野路町で今日観察出来たもの>花/オオイヌノフグリ(写真上左)、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、タネツケバナ、カントウタンポポ、タチツボスミレ、ハルジオン、ヘビイチゴ、ツクシ(写真上右)、オオアラセイトウ、ヤブツバキ、ウメ、ネコヤナギ、サンシュユ等。虫/ベニシジミ、ナナホシテントウ等。
<薬師池公園で今日観察出来たもの>鳥/ウグイス、シジュウカラ(写真下左)、ヤマガラ、マヒワ(写真下右)、ヒヨドリ、スズメ、シロハラ、アカハラ等。
<三輪町で今日観察出来たもの>鳥/ヒレンジャク等。
2月24日、神奈川県鎌倉市大船植物園〜横浜市都筑区茅ヶ崎公園
このところだいぶ春めいて来て、気温が高い日が続いている。この為、21日(土曜日)の茅ヶ崎公園生態園の里山管理のボランティアは、急遽、落ち葉掻きを中心とした林床整備の予定が、林床整備のみに変更されてしまった。植物に詳しいKさんによると、落ち葉の下で草花たちの芽が動き始めているので、落ち葉掻きをして芽を痛めてしまったら大変だということになったためだ。草花だけでなく生態園内を歩くとニワトコの芽は完全に開き、モミジイチゴの芽はぷっくりと膨らみ、ウグイスカグラの花が咲き始めている。見上げる雑木林の梢も何となくざわめいている感じだ。20日に行った森林公園ではトンボ池にニホンアカガエルの卵が見られたし、22日に緑区新治町に自然観察へ行った仲間から、早くもシマヘビに遭遇したとの報告があった。今年は雪がまだ一回しか降らないし、やはり予想通りに暖冬であった訳だが、寒くなくて良かった等と素直には喜べない。地球温暖化が着実に進行しているのではないかと言う、未来に対する漠とした不安が生じて来るからだ。
22日には春二番が吹いて夜に雨が降り、23日も風が強く、さすがに自然観察及び写真撮影を断念せざるを得なかった。それでも町田市三輪町にある妙福寺のヒレンジャク、キレンジャクが気になって,土曜、日曜の午後3時頃に行って見た。土曜日にはヒレンジャクが4羽、日曜日には両種合わせて12羽が見られた。このようにレンジャク類は元気だが、他の鳥となると厳寒期に比べるとだいぶ少なくなったように感ずる。まさか北国へ帰った訳でもなかろうが、鳥の世界にもそろそろ春が近づいているようである。しかも、冬に入ってからはフィールドにおける変化は左程無かったから感じなかったが、季節と季節の端境期、魔の給料日前後の週となった。しかし、こんな暖かな日が続くのだからきっと各種の花が咲き始め、一日中、マクロレンズで徹底的にアート出来るのではないかと、久しぶりに大船植物園に行った。
正門を入るとすぐに各種のプランターや鉢に植えられた園芸品種の花がたくさん置いてある。今日はまず第一に、サクラソウ科のブリムラ・ポリアンサとプリムラ・マラコイデスで、夢のような心地になるボケを生かした美しい写真が撮りたいと思っていたのだ。しかし、このところの強風で、だいぶ花弁が痛んでいる。夢心地を誘う美しい写真に花弁の痛みはいただけない。それならばと同所にあるデージー、キンセンカ、ジャノメギク、パンジー、ビオラ、ネモフィラ、アイスランド・ポピー等にカメラを向けたのだが、なかなか美しい絵が浮んで来ない。やはり花壇の花は、まだ時期が少々早いようである。そこで木へんに春と書いて椿だからと椿園に行ってみると、早咲きのハルサザンカと太郎冠者が見頃であった。ハルサザンカはツバキとサザンカの両方の性質を持っていると説明されていたが、大輪で明るいピンクの花である。
どうも今日は良い写真が撮れそうもないなと感じたので、決して美しいとは言えないヒイラギナンテンの花と実を撮ろうとかなり頑張った。ナンテンと付くのだから、その実は赤くまん丸と決まっていると思ったのだが、梅の実を小さくしたような格好と色である。そこで家に帰って図鑑を開いて見ると、ナンテンもヒイラギナンテンも同じメギ科だが、属を違えていることが分かった。せっかく植物園に来て何処の公園でも植栽されているヒイラギナンテンでは何だか締ままらない等という邪心が入ったためか、それともなかなか絵にしにくい植物であるためなのか、これもなかなか思うような絵が浮いて来ない。そこで各種のボケが植えられている道端へ歩みを進めた。ボケも早春の花木だから白や朱の花がちょうど咲き始めている。しかし、絵になると思ってカメラを向けると花弁が啄ばまれているものもある。これはきっとヒヨちゃん(ヒヨドリ)の仕業に違いない。鳥の撮影を開始してぼさぼさ頭のヒヨドリを可愛いと思ったが、花食いだけは止めて貰いたいものである。
それでもボケを何とか撮影すると、高い所に咲いているために撮影がままならない早咲きの玉縄桜を鑑賞し、各種のシナマンサクを観察しながら歩みを進めると、早くもミツマタが咲いているのに気がついた。普通、ミツマタと言うと花期がもう少し遅く、花の大きさもピンポン玉位なのだが、ここのミツマタはテニスボールをやや小さくした位の巨大な花である。もちろんそれを支える枝もとても立派だ。そこで園芸品種ではないの?と名札を見ると、ミツマタと書いてある。なんだか納得しかねるが、カメラを向けて必死に作画する。しかし、あまりにも巨大過ぎて絵にならない。ヒマワリは別格として、巨大なら良いというものでは無いと思う。以上、そんな訳でアートするんだと意気込んで来たというのに空振り続きで、午後になったら何処かへ移動しようと足を早めたが、今が盛りのウメとクリスマスローズはしっかりと撮影した。ウメはすでにたくさん撮影しているが、大好きな鹿児島紅は別格だ。やや盛期は過ぎ平凡な構図となったが、鹿児島紅はシャターを切る気にさせる。
午後は港北ニュータウンの公園を巡り歩いて野鳥を撮影しようと考えたものの、野鳥の姿は少なく、今度来た時に撮影しようと思っていたチャンチン(写真下右)の冬芽と葉痕を慎重に撮影した。こんな暖かい日が続けば冬芽と葉痕の撮影の季節は終わることだろう。今年は鳥撮り病に罹ってあまり熱が入らなかったが、シーズン最後に人気のチャンチンを撮っておこうとする気持ち、この道に入った事のある方なら納得が行くはずである。可愛らしい子供たちが顔を重ねたように見える冬芽直下の葉痕は独特なのだ。最後に、まだいくらか残る風に悩ませながらも、咲き始めたウグイスカグラを撮影した。ウグイスが鳴き始める頃に開花するからそう名づけられたとあるが、花は可憐で美しく、実は透き通るような紅色で、グミと呼んで子供の頃口にした方も多いことだろう。毎年いつも、ウグイスカグラとオオイヌノフグリの頃は風に悩まされる。しかし、この風こそ、草木にやって来た春を告げ回っているのだからいたし方あるまい。これからは春風との我慢比べの花の撮影本番に入る。
<今日観察出来たもの>花/プリムラ・ポリアンサ、プリムラ・マラコイデス、クリスマスローズ(写真上右)、デージー、キンセンカ、ジャノメギク、パンジー、ビオラ、ネモフィラ、アイスランド・ポピー、ツバキ(ハルサザンカ/写真上左)、ウメ(鹿児島紅/写真下左)、シナマンサク、ミツマタ、ボケ、玉縄桜、ヒイラギナンテン、コブシ等。鳥/ムクドリ、ツグミ、アオジ、シジュウカラ等。
2月20日、埼玉県比企郡滑川町国営武蔵丘陵森林公園
「こんなに可愛らしい鳥がいたんだ」とカメラのファイダーの中の像を見ながらそう感じた。ミヤマホウジロの雌である。冠羽が三角形に尖がっていて、何となくおむすびの形をした頭であり、何処か外国にこんな形の帽子を被る民族があったのを思い出す。もちろん顔が黒と黄の鮮やかな雄を撮影したいと思って出かけて来た訳だが、こんな可愛らしい雌の顔を見て、しかも撮影できたのだから、早起きして遠路はるばる埼玉県の武蔵丘陵森林公園まで遠征した甲斐があった。去年の12月から野鳥観察および写真撮影を始めて、もう、60種類以上の野鳥を観察したが、なにしろ初心者のミーハーだから、冠羽が発達した鳥に気を奪われると何べんも書いたと思う。その中でもミヤマホウジロはヤマセミと並んで、本当に得意なキャラクターでとても可愛い。やはり冠羽が発達したレンジャク類はすこぶる印象的だが、厳しさはあっても可愛らしさはまるで無い。野鳥観察が昂じて来ると猛禽類が好きになるらしいのだが、今のところ、可愛らしい鳥が私には一番である。
先日、このつれづれ観察記にも書いたように、2月17日にフクジュソウに会いに森林公園に行った時に、バードウォッチングをなされている方にミヤマホウジロの情報を得て近々行こうと考えていた。しかし、善は急げ、鳥情報が入ったら信用してすぐ行けの鉄則通りに、わずか3日後の再来園となった。その時にミヤマホウジロがいたピンポイントを教えてもらった訳では無かったが、梅林で北の方を指差して「南口から登った所に数羽いましたよ。地面に降りて餌を啄ばんでいました」と教えてもらったので、見当をつけて南口から西田池の方へ歩いて行った。西田池は大きな池だし、本によると森林公園の冬の野鳥観察で最も楽しめるのはカモ類と言うことなので、期待していたのだがカイツブリがいるくらいで何もいないのには拍子抜けしてしまった。西田池を過ぎて“ふれあい広場”に着く。左手にトンボ池、右手に小鳥が水を飲んだり水浴したりするのに好適な細い流れがある。しかも、ここだけススキ等の雑草は刈ってなくて、小鳥たちの大好きな環境である。
まず最初に現われたのが芝地に餌を求めにやって来たツグミだ。樹上のツグミはたくさん撮ったから、ツグミの最もツグミらしい餌を啄ばんでは何歩か歩いては胸をそらす格好を撮ろうとカメラを構えると、シロハラがやって来てツグミと喧嘩を始めた。舞岡公園ではこれにアカハラも加わって縄張り争いが見られると聞いている。いずれにしてもツグミ、シロハラ、アカハラは近縁の鳥で、その習性もすこぶる似ているようである。この喧嘩はどうも両者引き分けで、ツグミは空けた芝地に、シロハラは細流沿いの道端にと、それぞれの習性に合った場所に縄張りを決めたようである。そんなシロハラとツグミの行動を見ていたら、褐色の小鳥が草むらや草むら沿いの芝地に現われた。もしやミヤマホウジロではないのと考え、近づいて見ると黒と黄の派手な取り合わせの鳥はいないが、超望遠レンズを取り付けたカメラで覗くと、3種類くらいの小鳥が混じっている。こんな場所で御馴染みのアオジがまず確認できた。そしてもう一種類が何となくカシラダカに見えるのだが、盛り上がった冠羽が立派で、やや黄色味を帯びている。それに目の周りの褐色の隈取りも濃く、図鑑で見知ったミヤマホウジロの雄の風貌に似ている。
これはきっとミヤマホウジロの雌に違いないと、ばしばしシャッターを切った。しばらくその場所で各種の鳥を撮影していると、南口を入ってすぐの場所で、シメが芝地に下りて餌を漁るのを一緒に観察したバードウォチングのグループがやって来た。「これ見て下さい。ミヤマホウジロの雌ではないですか?」と、デジタルカメラの液晶ディスプレイを見せた。こう言った場合は本当にデジカメは有り難い。「まだミヤマホウジロに出会った事は無いんだけど」と言いながらも図鑑を開いて調べてくれ、「やはりミヤマホウジロの雌のようですね」と教えてくれた。すると同行するご婦人が「ぜひ見たいわ!何処にいました」と嬉しそうに言う。そこで指差して、この細流の周りですと教えてあげた。私は更に奥まで歩いて行ったが野鳥は現われない。そこで引き返して来るとグループ全員が双眼鏡やスポッテイングスコープを梢に向けている。そして戻って来た私を見つけるや皆で両手で嬉しそうに大きな丸を作る。観察している鳥が逃げては行けないと遠回りして近づき梢を見上げると、ミヤマホウジロの雌が梢に止っていた。
昼食は前回来た時に食べたとても美味しいうどんを食べに、梅林を通って桜林の上の売店に行った。もちろんとても美しいジョウビタキの雄を撮影するのも目的である。今日はジョウビタキは梅林の中にいて、梅の小枝に止ったり、サンシュユの小枝に止ったりと大サービスである。これは季節感溢れる傑作が撮れるぞと頑張ったのだが、小枝が邪魔をしたり、絵になる所に止った時に限ってすぐに飛び立ってしまったりと、なかなか良い写真を撮らせてくれない。こんな真剣な私の姿を見てか、梅見の方が私にも撮らせてと寄って来る。こういう場合、ご夫婦だと必ず奥さんの方なのである。好奇心旺盛なのか図々しいのか、はたまた小鳥が好きなのかは定かではないが、ご主人に比べると奥さんの方が積極的だ。しかし、梅林のジョウビタキは人馴れしていて、そんな接近を関知せずに餌を見つけては地面に降りて啄ばみ、また、異なった小枝に戻る動作を繰り返してくれる。そこでベストショットとはいえないものの、まあまあの手ごたえの写真を手にすることが出来た。
森林公園は何べんも書いているようにとても広い。南口から北口まで一里もあるのだ。そこで水場のある運動広場の方へ行ってみたのだが、いたずらに疲労を溜めるだけで成果は上がらない。やはり“ふれあい広場”で頑張ろうと戻ってみたものの、野鳥の姿は全く見えない。みんな朝飯をたらふく食べて昼寝の時間のようである。やはり3時を回らなければ駄目なのかなと思って、ベンチに腰掛けて居眠りを我慢していると、ミヤマホウジロの雌が活動を再開した。ミヤマホウジロ嬢には悪いことをしてしまったが、まるでストーカーのように、一羽を徹底的にマークして追い掛け回した。しかし、それでもこの場所が大のお気に入りらしく遠くには飛んで行かない。ますます快調とシャッターを切ったのだが、閉門の4時がすぐ来てしまった。今日は梅見の来園者が多く、やはり鳥たちも落ち着かないようだから、来年は梅の咲く前の平日を選んで来ることにしよう。きっと今度は雄も含めた多数のミヤマホウジロに出会えるに違いない等と、もう一年先の夢を抱いて帰途に着いた。
<今日観察出来たもの>鳥/ミヤマホウジロ、ツグミ、シロハラ(写真下右)、ジョウビタキ(写真下左)、エナガ、シメ、アオジ、カイツブリ、カルガモ等。
2月19日、横浜市金沢区富岡総合公園〜戸塚区舞岡公園
どうしても撮りたいと言う訳では無いのだが、出来たらレンジャクを美しく撮りたいと思って、Iさんに聞いた金沢区にある富岡総合公園へ行った。ここは海釣りの行き帰りに何べんともなく通っていたのだが、一度も中に入った事が無い公園である。国道16号線なら横浜方面から来てトンネルをくぐって次の信号を左折すれば駐車場に着く。富岡総合公園にはアーチェリー場やテニスコートがあるから、駐車場はさほど広くないので、休日には車で一杯になるかもしれない。おまけに人気のレンジャクが来ているのだから、バードウォッチングの方の車も加わって、停められないかもしれないので注意しよう。
Iさんに詳しく聞いた訳では無かったので、まずは案内板を見て水場のある梅林の方から丘の上へ行って見た。小規模な梅林だが5分咲き程度で、紅梅、白梅が混植されいて美しい。ここ数日、冬は何処へ行ってしまったの?と思わせる気温が高い日が続いているので、とても賑やかで春めいた気分にさせてくれる。ツグミが一羽、枝振りの良い所に止っている。何処へ行ってもツグミを見ない日は無いが、見飽きることの無い美しさと風情を感じさせる鳥である。丘の上へ行く道にさしかかると、やはり海岸に近いだけあって、スダジイ、シロダモ、クスノキ、アオキ、ツバキ、カクレミノ、ヤツデと言った照葉樹林を構成する樹木で一杯だ。そんな濃い緑の中に咲き始めたヤブツバキの真っ赤な花はとても印象的である。
丘の上は樹相が変わって、大きなエノキやミズキがたくさんある。レンジャクの好きなヤドリギは生えていないかと見上げると、エノキの梢にほんの少しだが生えている。今までヤドリギが見られた樹木を列挙して見ると、ケヤキ、エノキ、サクラであるが、他の樹木には生えないのかと図鑑で調べて見ると、この他にブナ、ミズナラ、シラカバにも生えるとある。その図鑑には山梨県山中湖村のケヤキに着いたヤドリギが紹介されているが、私の持参している野鳥図鑑のヒレンジャク、キレンジャクは共に山中湖村の隣の富士吉田市で撮影されたものである。この二つの事を考え合わせると、山中湖村〜富士吉田市にかけてはレンジャク類の宝庫のように思われる。
レンジャクはいないかと丘の上をくまなく探してみたものの、カワラヒワ、モズ、ツグミ、ハクセキレイ、シメを見たのみに終わったが、シメが各所に群れをなしていて、地面に降りて餌を盛んに啄ばんでいる。最近、タゲリ、ヤマセミ、キレンジャクと独特の冠羽がついている鳥に気を奪われてファンになってしまったが、冠羽のついてない鳥で、しかも身近に見られる鳥の中ではこのシメがとても好きである。なにしろ厳しい顔が、にやけて童顔の私には望めない憧れの顔つきなのである。しかしながらシメも意外と敏感な鳥で、人の接近を素早く感知してなかなか近寄らせてくれない。それでも正確に数えたわけでは無いが、丘の上全体で30羽位いたのだから、どうにか1カットは撮らせて貰えた。
どうもレンジャクはいないようだ。少し早いが舞岡公園へ行こうと駐車場に降りて行くと、双眼鏡を首からぶら下げた方が登って来た。「レンジャクがいると聞いて来たんですが」と聞くと、「レンジャクなら管理棟の上の公園ですよ。今日は3羽いました」と教えてくれた。どうやら梅林と道路を隔てた丘の上らしい。もうすぐ12時だが、姿だけ確認してこようと行ってみると、5、6人の方が芝地に陣取って、ヤドリギがたくさん生えたエノキの方向にスポッティングスコープやカメラを向けている。「いましたか」と聞くと「いますよ」と心地よい答えである。お仲間に入れてもらって待つこと10分も経たないうちに、2羽のヒレンジャクが梢に止った。かなり遠い距離だが尾端の鮮やかな朱色が確認出来た。さらにまた10分程待つと、今度は1羽だが現われてかなり長い時間梢に止っている。「糞をしてますよ」と言うので注意して見ると、ねばねばした独特の糸状の糞が見える。
みんなが逆光だが確認写真を撮っておこうと、シャッターをばしばし切った。どうやらこの場所は、午後からの方がヒレンジャクに日が当たって、はっきりと撮れる様である。私のレンズでは小さくしか写せないが、デジスコならかなり大きく写せるに違いない。長々と糞をして止っていたヒレンジャクが飛び去ると、帰る方あり、持参した菓子パンやおにぎりを食べる方ありで、時間はちょうど12時となった。このままさらなるチャンスを待つのも良いかなとも思ったが、空腹には耐えられず、これで先日、キレンジャクを見て、今回、ヒレンジャクを見たのだから、これで良しと舞岡公園に向かった。
舞岡公園へ着くと“きざはしの池”へ直行した。今日もたくさんのヤマシギ見たさ撮りたさの方々で賑わっている。顔を見知ったご婦人がデジスコを構えていたので、「今日はヤマシギは出ましたか」と聞くと、「ほらあそこにいるじゃない」と指差して教えてくれた。ほんとうにヤマシギは落ち葉と同化していて見分けづらい。ヤマシギの撮影は10年早いと思っていたが、このHPにたびたび投稿下さるBさんも撮ったのだからと、証拠写真位は撮っておこうとカメラを構えた。すると、今日はご機嫌が良いようでいつもよりも近くに来てくれた。そこでばしばしシャッターを切って、「あと1メートルこっちに来て、ねヤマシギ君」等と通じぬおまじないのような言葉を繰り返していたら、1メートル遠くに行ってしまって動かなくなってしまった。「固まっちゃった」と皆がパソコン用語を繰り返すので笑ってしまった。パソコンが固まったら起動からやり直しとなるわけで、固まったヤマシギが動き出すにはかなりの時間が必要と言う訳である。舞岡公園もシナマンサクが咲き出し、いよいよ春間近という感じで、各種の越冬した蝶や春一番の蝶たちが飛び始めるに違いない。
<富岡総合公園で今日観察出来たもの>花/ヤブツバキ、ウメ等。鳥/ヒレンジャク、カワラヒワ、モズ、ツグミ(写真上左)、ハクセキレイ、シメ写真上右)、ムクドリ(写真下右)等。
<舞岡公園で今日観察出来たもの>花/フクジュソウ、ウメ、シナマンサク等。鳥/ヤマシギ(写真下左)、コゲラ、コサギ、ジョウビタキ、キセキレイ、アオジ、モズ、ムクドリ、カシラダカ、カワラヒワ、シロハラ、カワセミ等。
2月17日、埼玉県比企郡滑川町国営武蔵丘陵森林公園
まったく武蔵丘陵森林公園は、花虫鳥茸木実等を観察し撮影するために作られた公園のようで、いつ行っても期待が裏切られないのだから最高のフィールドである。今日はその中の花を撮りに行った。ついでに野鳥観察地を紹介している本に、憧れのミヤマホウジロが見られるとあったので、その偵察も兼ねていた。新しい年を迎えての花散歩は、第1弾のニホンスイセンを訪ねてから、しばらく間隔が空くのは例年通りである。この間は寒の内なのだから、家の中に閉じこもっていた方が風等ひかずにすむから、その方が良いのだろうが、霜や雪や氷の造形、野鳥、冬芽と葉痕、昆虫の越冬等、撮る気になればフィールドは面白い被写体で一杯である。とは言っても圧倒的に花が大好きな人間が多く、ウメやフクジュソウの開花の報を首を長くして待っていたに違いない。そんな思いを武蔵丘陵森林公園はすべて叶えてくれる。
朝5時半起床という久しぶりの早起きだが、花散歩の第2弾、黄金色に輝くフクジュソウは魅力溢れる花である。もちろん武蔵丘陵森林公園に見られるものは植栽されたもので野生のものではなかろうが、梅林の南斜面一杯に咲いているのを性懲りも無く今年も見たい撮影したいとなって、早起きなんか苦とは感じさせない。なんたってフクジュソウを皮切りに、ザゼンソウ、セツブンソウ、カタクリ、キクザキイチゲ、クマガイソウと続く花めぐりのローテーションは、とっても魅力が一杯なのである。本当に「今年も健康で良かった」等と神様に感謝したい気持ちになる。家族を起こさぬようにとひっそりと静かに家を出、最寄の駅に向かうがまだ薄暗い。それでも遠距離通勤の方や早出の方が駅に向かって歩いて行く。そんな中を好き勝手な花散歩に向かうのは気がひける。朝飯は24時間営業の吉野家さんに入ったが、牛丼がなくなってキムチ豚丼をたのむことになった。しかし、割高で牛丼ほど美味しくない。これから早出の電車での撮影行の朝飯を考えなければならなくなった。
森林公園駅へ着くと花撮りのお仲間がかなり見られる。「フクジュソウですか?」と聞くと、「梅です!」との答えが帰って来た。前述したように武蔵丘陵森林公園にはなんでもあるのだ。多分、今日はフクジソウ、ウメ以外にも、クロッカス、ソシンロウバイ、シナマンサク、マンサク、サンシュユが見られ、花壇にはラッパスイセン、クモマソウが咲いているに違いない。予定通り9時30分の開園時刻にぴったりと到着する。長年通いなれていて、手帳にびっしりと書かれた詳細なるメモが大いに役に立つのだ。フクジュソウは早春の太陽の落とし子だから、充分に太陽が昇って気温が高くならないと開かない。そこで途中、植栽されている背の低いナノハナや、プランターに植えられいているクモマソウを撮ったりしながら梅林へ向かった。
梅林は紅白交えての5分咲きで、フクジュソウはやや時期が遅いと言った感じだが、その量の多さはいつもと変わらない。それでも写欲を誘う絵になるものは少なく、ただ図鑑的に切り取るのに相応しいものでも数株で、持参したシグマMF24mmマクロに拠る、背景を広く入れた花風景的な広角接写に耐えうる株には出会えなかった。もっともロープが張ってあり、梅には案内板がかかり、人も多いからかなり難しい。やはりフクジュソウを花風景的に撮るには、遠く自生地まで旅をして撮影せねばならぬのだろう。それでもたくさんのフクジュソウに会えてとっても満足し、今が撮影しごろのシナマンサク、マンサク、サンシュユ、ウメ等を撮った。双眼鏡を下げたバードウォッチングをなさっている方に出会ったので、早速、「本に書いてあるんですが、ミヤマホウジロはいましたか」と聞くと、「南口から登ったあたりに数羽いましたよ」とおっしゃる。「雄もいましたか」と聞くと、「いましたよ」との答えが帰って来た。更に「地面に降りたりしているから、近くで見られますよ」とのことであった。こうなっては重たい野鳥撮影機材持参で、また森林公園へお邪魔しなくてはならない。
あっと言う間に時計は12時を回ったので、桜林上のとっても美味しいうどんを食べに行く。途中、ご婦人のグループが「まあ綺麗、あれカワセミではないの?」等と騒いでいる。見るとジョウビタキの雄である。絵になる枝振りの良い場所に止っている。「あれはジョウビタキの雄ですよ」とお節介にも教えてあげた。すると芝地を指差して「あの鳥は?」と聞かれたので、「あれはハクセキレイです」と教えてあげた。「とっても鳥の事が詳しいのですね」等と、ご婦人たちは顔を見合わせて尊敬した眼差しを向ける。去年の12月から始めたばかりの野鳥観察経歴ながら、高熱にうなされたような鳥撮り病にかかって、我武者羅にあちこち行って撮り捲った成果が早々現われたようだ。日ごろ“生き物の名前なんかどうだって良いんだ”と言ってる割には、すらすらと名前が出てくるのはやはり快感である。ミヤマホウジロの雄には出会えないかもしれないが、他にたくさんの鳥が生息し、しかも人馴れしているようだから、これはこれは近々また必ず来なくてはなるまい。それどころか一年間、ワンルームマンションでも借りて、毎日撮影に来れたら良いなと感じさせられた、いつも通りの魅力溢れる武蔵丘陵森林公園であった。
<今日観察出来たもの>花/フクジュソウ(写真上左)、クロッカス(写真上右)、クモマソウ(写真下左)、ラッパスイセン、ナノハナ(写真下右)、ソシンロウバイ、ウメ、シナマンサク、マンサク、サンシュユ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ等。昆虫/ナナホシテントウ等。鳥/ジョウビタキ、ハクセキレイ等。
2月15日、東京都町田市図師町、小野路町
今日、起きて新聞を見ると、昨日の強風はやはり春一番と言うことで、関東では昨年より18日早く、ここ10年では最も早いとある。また、気温もぐんぐん上昇して、東京、横浜、千葉では4月上旬の気温、16度まで上昇したとあった。普通なら今日は、西高東低の気圧配置となって冬型が強まり、寒くて北風が強いはずなのに、昨日の暖かさがすっぽり残っているようで、おまけに風が弱い。そこで久しぶりに図師・小野路歴史環境保全地域をくまなく歩いて、風景写真も含めて、出会うもの全てを撮影しようと出かけた。最近、「花虫鳥男」等というとんでもなく光栄なニックネームを頂いているが、これらの全てを撮影しようとすると機材が相当重たくなる筈だから、楽々ウォーングなんて無理ではないの? それに最近、鳥撮り病で身体が疲れているからやめた方が良いのではないの!等と心配なさる心優しい方も多いかも知れないが、現在の発達した写真撮影機材ならそれが可能なのである。参考までに本日持参した撮影機材を以下に列挙すると、ペンタックスMZ3、シグMF90mmマクロ、シグマMF24mmマクロ、ペンタックス用ケンコーテレコンバーター1.5倍、同中間リング、キヤノンkissデジタル、キヤノン75〜300mmズーム、キヤノン用ケンコーテレコンバーター1.5倍、自由雲台付きベルボンカーボン三脚である。これに菓子パンと小ビンのペットポトルとなって、楽々ウォーキングも楽しめるという按配なのだ。
いつものように万松寺谷戸に車を止めると、もう、ネズミのモズの早にえはなくなってしまったので、牧場周りの道を選んでのんびりと歩き始めた。何でもござれが今日の撮影課題だから、とんでもなく気が楽だ。しかも身体は疲れているはずなのに、小野路町の気取らない自然は精神的回復には特効薬で、精紳が回復すれば肉体も回復するという訳で、歩調はすこぶる軽快である。確か義務教育の中学校時代に「健全な肉体に健全な魂が宿る」等と教えられたが、それは本当のようである。先日、町田市三輪町でレンジャクを待ち続け、なかなか現われないために疲れてその場にへたり込んでしまったが、いざキレンジャクが現われ確かな手ごたえの写真が撮れた瞬間から、今までの全ての疲れが霧散し去った。それに歩き始めた時点から気温がだいぶ高く、春を感じさせるのだから、心の悩みも疲れも全て吹っ飛んで行ったのだろう。「春は良い」と使い古された言葉を毎年何べんも繰り返しているが、春は何物にも変えがたい元気回復の特効薬なのだ。
小野路町でも一番暖かい南に面した雑木林に隣接する斜面は、2月半ばというのに完全なる春である。藪から越冬していたキチョウが弱々しく飛び出して、日光浴に地面に降りる。そればかりでは無い。なんと固い窮屈な蛹を割って、モンキチョウが2頭軽快に飛んでいる。時には追いかけあったり縺れあったりと、とても楽しそうである。こんなに早くお出ましになって食べるものがあるの?と心配になったが、既にコバルトブルーのオオイヌノフグリが一面に咲いて、モンキチョウは吸蜜したり日光浴をしたりととても忙しい。付近の植え溜めを見ると紅梅が赤く燃えるように咲き、満開の黄色いソシンロウバとの対比がとても鮮やかである。しかも空を見上げると厳とした冬晴れの青空ではなく、暖かさを含んだ青空で、時折、白い雲の塊がゆっくりと風に流されて行く。
雑木林の小道に至ると、地主の方々や保全に努力なされている方々によって、綺麗に山掃除がなされている。そこには昨年の秋に落果したコナラの実、ドングリが弾けて、ふっくらとした赤い双葉の子葉から、もやしのような根が地中に伸びていた。もう少しこの暖かさが続けば、シュンランだって咲き出しそうな気配すら感ずられた。シイタケのほだ木が立掛けられている雑木林に至ったので、どんな具合かと覗いて見ると、固い幹を割って可愛らしい皺の入ったシイタケの幼菌が各所に顔を出していた。このように雑木林の中にも着実に春が忍び込んでいるようである。今日一日はこれと言ったベストショットは得られなかったものの、自然観察にいそしむグループあり、犬の散歩に来る方あり、五反田谷戸では2ケ月ぶりにMさんにも会い、久しぶりに昆虫研究家のOさんにも会った。みんな一足早い春を感じて、家の中に閉じこもっていられなかったようである。越冬していたキタテハ、キチョウ、そして羽化して来たモンキチョウも飛び、もう少し経てばベニシジミも現れる事だろうから、鳥撮り病に罹っていた間に春が急速に近づいて来たようだ。最後に「今年も宜しくお願いします」とフィールドに向かって挨拶し、小野路町を後にした。
<今日観察出来たもの>花/ソシンロウバイ(写真上左)、ウメ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ等。昆虫/モンキチョウ(写真上右)、キチョウ、キタテハ、ナナホシテントウ等。鳥/ノスリ、ツグミ、モズ等。その他/シイタケの幼菌(写真下右)、コナラの実の芽生え等(写真下左)。
2月14日、横浜市港北区新吉田町〜東京都町田市三輪町妙福寺周辺
天気予報で今日は午前中は穏やかな春を感じさせる陽気だが、午後からは南よりの風が強くなって、春一番となるかもしれないと報じられていた。そこで連日の重たい機材を持っての鳥撮りに疲れ果てていたので、ぐっすり眠ってから風の無い午前中を狙って、何処かへ行こうということになった。それには車で僅か10分の新吉田町暗部谷戸が一番である。つれづれ観察記を見ると2月1日に行ったのだから、ちょうど間隔が2週間空いたことになる。もうすぐ二十四節気で言うところの雨水に入るから、水はぬるみ、草木の芽がほころび始めるはずである。そんな思いを抱いていたら、早速、ニワトコの芽がはじけ、モミジイチゴの芽がだいぶ膨らんでいた。昨日、お仲間と厚木市七沢にある県立自然保護センターへ行って、各種の冬芽と葉痕のとっても楽しい観察の余韻が残っていたからか、まだ撮影したことが無いカクレミノやマユミの葉痕を撮影した。
丘の上の畑は陽炎こそ立っていないものの春を感じさせる陽気で、アブラナの黄色い花が咲き、路傍にはオオイヌノフグリ、ホトケノザ、セイヨウタンポポはもちろんのこと、ヒメオドリコソウまで咲き始めていた。こんな日はモンシロチョウが羽化して来て、今年初めての蝶にお目にかかれるかも知れないと注意して歩いたのだが、まだ午前中だからかお出ましにはならなかった。いつものように各種の植木が植栽されている植え溜めに行くと、ジンチョウゲの蕾はやっとほころび、シナマンサクが黄色い短冊様の花弁を一杯に開き、紅梅も白梅もその中間の桃色の梅もほぼ6部程度に咲いて、暖かい気温と相まって春爛漫のような気分に浸る事が出来た。ことに梅では大好きな黒光という濃い紅色の品種やしだれ梅も見頃で、もう何べんも撮影しているというのにシャッターを切った。隣接する民家の花壇にはプリムラマラコイデス、パンジー、カレンデュラが咲き、農家の生垣から垂れるオウバイは、かなりたくさんの花をつけて咲いている。本当に何処を見渡しても春が一杯であった。
こうなったらきっと早春のなくてはならぬ野山の風物詩の一つであり、天ぷらにして食べたら、ほろ苦い早春が口一杯に広がるフキノトウが出ていないかと探しに行った。地方や低山地に行けば嫌と言う程に路傍で見つけることが出来るのだが、首都圏平地ではとっても少ない。また、その美味しさは誰からでも愛され、独特の格好からして見誤る事が無いので摘み取られてしまう。この為、たかだがフキノトウだが、風情溢れるように撮影するのは至難の事となっている。春に対するイメージは各人各様異なっていると思われるが、フキノトウとツクシは、私にとっては特別な存在である。そんな期待を込めて、やや日陰になった栗林に行って見ると、開き始めたとても可愛らしいものや、独特な格好の蕾がたくさん出ていた。かつてこの栗林の脇は湿地で、イヌコリヤナギが生えていたのだが刈り取られてしまった。それでも路傍に残るただ一本の貧弱な木を見つけて観察すると、蕾が開いて銀色の綿毛がかすかに見られるものもあって、もうすぐ独特の花が咲き始める事だろう。
フキノトウを撮影したのだから、フキノトウを小ぶりにしたようなアオキの蕾も撮影しようと思ったのだが、絵になるようには咲いていないので断念する。舞岡公園にはたくさんのアオキが見られるから、今度行った時まで取って置こう。昨日の冬芽と葉痕観察で、樹木と仲良くなるには冬芽と葉痕だけでなく、葉、花、実、樹肌と総合的に観察しなければと話が盛り上がったが、アオキはこの意味では非常に特徴のある優等生の樹木である。
正午近くになると気温はぐんぐん上がってまさに春で、昼食を済ませるとたっぷりと春の日差しが差し込む車の中で昼寝をした。午後からの狙いは、もちろん町田市三輪町妙福寺周辺のヒレンジャク、キレンジャクである。本当にラッキーな事に11日に出合って独特の横顔は撮影できたものの、図鑑にあるような尾端の色合いまではっきりと分かる写真が撮りたいと思ったのだ。すなわちヒレンジャクは尾端が赤、キレンジャクは黄と言う訳である。しかし、天気予報は見事に当たって南風が非常に強くなりつつあった。それでも前回出会えた場所まで散策しながら行ってみると、途中、日当たりのよい斜面に、今年になって始めての蝶に遭遇した。キタテハである。モンシロチョウのには会えなかったが、やはりこの暖かさが越冬している蝶を目覚めさせたのだ。野鳥用の機材でなんとか撮影すると、お目当ての場所に急いだ。いるいるHさんOさん、それに前日ここでキレンジャクに遭遇した面々が。
「やっぱり来たね」とみんなが暖かく迎えてくれる。「この間、ちゃんと撮れましたか」と聞くと、HさんOさんが早々引き伸ばしたプリントを見せてくれた。私が撮ったと同じ顔を横に向けている正面からの写真である。「後で帰っていろいろ聞いて分かったんですが、本当に珍しい鳥で、野鳥撮影を長年している方も撮ってないらしいですね」と聞くと、みんな顔を上下に動かす。そんな訳でみんな私と同じように撮れる時に、図鑑のように尾端の色まではっきり分かる写真を狙いにまた来ていることが分かった。「昨日は11時頃に7羽出たというのに、今日は風が強くて現われない」とHさんOさんが言う。それでも万が一を期待して待ったのだが、風はますます強くなって断念する。野鳥撮影を始めたばかりの人間が、図鑑と同じような写真を撮影したい等というのは、ヒレンジャク、キレンジャクに関してはかなり無理があるようだ。地主のおばあちゃんによれば、2月初旬に来て3月半ばまで見られると言うから、まだまだ挑戦する機会はあるだろう。HさんOさんは完全なるレンジャク病に罹ったようで、定年退職していることもあって、これからも日参すると言う。たかが野鳥、されど野鳥、だけど撮りたいヒレンジャク、キレンジャクと言う訳であった。
<今日観察出来たもの>花/ウメ、ツバキ、オウバイ、ジンチョウゲ(写真上左)、シナマンサク(写真上右)、セイヨウタンポポ、ホトケノザ、トウダイグサ、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、フキノトウ(写真下左)、プリムラマラコイデス、パンジー、カレンデュラ等。昆虫/キタテハ(写真下右)、ナナホシテントウ等。鳥/ヒヨドリ、ムクドリ、アオジ、モズ、ハクセキレイ等。冬芽と葉痕/マユミ、カクレミノ等。
2月11日、東京都町田市三輪町妙福寺周辺
黒川へ行った8日の日曜日の帰りに、知人の写真展の初日であったので、寺家ふるさと村の四季の家に寄った。その時、寺家ふるさと村をホームグラウンドにして野鳥撮影をなさっているOさんに出会った。「ヒレンジャクが妙福寺に来てますよ」と教えてくれた。「妙福寺って何処ですか?」と尋ねると、かつて度々行った事のある、寺家ふるさと村の隣町の三輪町にある日蓮宗のお寺であることが分かった。そのお寺は古くて立派で、道沿いにケヤキの大木がたくさんあり、ケヤキの樹皮下で越冬する昆虫を探しに行ったのだ。また、お寺の下の農家周辺はヒガンバナがとても見事に咲くので、秋になると撮影に良く出かけたものである。その妙福寺のケヤキの大木にヒレンジャクの餌となるヤドリギがたくさん寄生していて、毎年、ヒレンジャク、キレンジャクがたくさんやって来るのだと言う。野鳥に関しての知識はあまりないものの、図鑑で冠毛をたなびかせたいかめしい鳥で、なんとなく洒落た緋連雀と言う名にも魅力を感じていて、一度お目にかかりたいとずっと思っていた。そんな憧れの野鳥が良く知った場所に来ていると聞くと、これはもう見に行かなければならないと思ったのは、当然のことである。
Oさんの話によると心無いカメラマンがお寺の駐車場を無断で使ったり、墓地の中に三脚を立てたりして、住職が相当怒っていると聞いたので、車は寺家ふるさと村の水車小屋に止めて、山を越えて歩いて行くことにした。また、境内に入らなくとも観察することぐらいは可能だろう、一目でも会えれば良いのだからと水車小屋脇の山道へ向かうと、「吉田さん」と聞いた事のある声がする。振り返ると度々フィールドでお会いし、ヤマセミのいる場所等を教えて貰ったIさんだ。水車小屋で自分で描いた水彩画を販売している方に、撮影した野鳥の写真を見せている。車と車の間だったし、思いはすでにヒレンジャクだったので気づかなかったのだ。「こんにちは久しぶりです」と言うと、「ヒレンジャクが来ているよ、一昨日、至近距離で撮りました。一緒に行きましょう」と言う。そこで写真を見せ終わるまで待って一緒に出かけた。Iさんは野鳥撮影の名人で、なんとアルバムには、昨年、生田緑地で撮影したミヤマホウジロの雄まであったのには驚いた。
Iさんの情報は的確で、聞いた場所へ行けば必ず目的の鳥に出会え撮影出来るのだから有り難い。そんなIさんと一緒なのだから、今日もヒレンジャクに出会える確率は非常に高い。Iさんが一昨日、至近距離で撮った場所は、お寺の横の道路を隔てたケヤキの大木のある駐車場で、前方の畑にある柿木に止ったのだと言う。ケヤキの大木を見上げるとヤドリギがたくさんついているし、柿木なら本当に至近距離で順光で撮影出来る。「午後3時頃に6羽位出ましたよ。ヒレンジャクとキレンジャクが混じって」と言うので二人して待てども一向に現われない。「午後の方が期待大という事のようですから、車に戻って弁当を食べてまた来ます」と言うと、もうヒレンジャクのベストショットを撮っている余裕からか、「午後は生田緑地にカケスを撮りに行くので、一緒に戻りましょう」と言う事になって、また、山を越えて水車小屋に戻った。
昼食を食べると、ヒレンジャクに会える確率の高い午後3時頃までだいぶ時間があるからと、寺家ふるさと村を散策しながら、ケヤキの大木のある駐車場へ行った。するとIさんのお仲間のHさんが三脚を立てている。「午前中はIさんが来ていて、生田緑地にカケスを撮りに行きましたよ」と言うと、「まめだからなIさんは、それにばっちりヒレンジャクを撮っているしな」と言う。また、Hさんと二人してヒレンジャクを待ったのだか一向に現われない。その後、ヒレンジャクに会いたい撮影したいとたくさんの方が集まって来た。時計を見るともうすぐ3時である。するとHさんが下へ行ってみようと誘ってくれたのでついて行くと、妙福寺下の小さな流れに沿った農道である。Hさんはここで多数のヒレンジャクを見ているのだと言う。しかし、電線に止った写真ばかりなので、今日こそはと狙っているらしい。また、Hさんによれば「どんな鳥でもそうなのかもしれないが、ヒレンジャクは朝飯を食べてここで水を飲み、また、夕飯を食べてここで水を飲んで寝るから、何処のヤドリギで食べているか分からないヒレンジャクを探すより、ここに水を飲みにくるものを狙う方が確立は高いんだ」と説明してくれた。「それにヤドリギの実はとても粘っこくて、水を飲まずにはいられないのだ」とも言う。
「ここで待ってましょう」とやや広くなった畑の脇に三脚を立て、しばらく待つと、前方にかなり灰色の大きな鳥が止った。カメラを通して見るとシメのようである。しかし、なんだか変で、日産自動車のゴーン社長のような厳つい顔をしていない。「レンジャクだ」とHさんが興奮して言う。また、しっかりとピントを合わせてよく見るとロシアの元大統領のエリツィンさんのような顔つきが目に入って来た。「やったー、キレンジャクだ」と、ばしばしシャッターを切った。しかし、やや逆光で電線が邪魔をする。Hさんも撮影ポジションをどんどん変える。車が通っても人が通ってもキレンジャクは平然と小枝に止っている。そこでHさんが充分撮影したことを見届けて、キレンジャクを見上げないようにして梢の下を通り、順光で撮れる場所まで移動する。有り難い事にキレンジャクはまだ同じ場所にいる。またいつものように「横を向いてね。目が光らないと駄目だし、君は正面からはただの鳥だから」と呟きながらばしばし撮った。
するとお尻をいくらか持ち上げて粘っこい数珠のような糞をし始めた。Iさんは糞を長くお尻につけているところも風情があると言っていたが、私にはどうも頂けない。それでも何カットかを撮ると、ご婦人がやって来てキレンジャクの下を通りかかった。ご婦人も私たちに気づいて、しかも、キレンジャクを見つけ、それこそ手の届く距離でコンパクトデジタルカメラで撮影している。「あーあ、これで逃げてしまうな、残念」と思ったが、それでもキレンジャクは平然としている。やがてキレンジャクは小川に降りて水を飲むと、何処かの寝床へ向かって飛び立って行った。ヤドリギの実のご飯も食べたし、ウンチもしたし、水も飲んだし、きっとぐっすり眠れることだろう。ヒレンジャクには会えなかったが、Hさんのお陰でほとんど同じ格好のキレンジャクに会えて、悲恋とはならずに喜恋となって、それこそ喜び勇んで家路に着いた。
<今日観察出来たもの>鳥/キレンジャク(写真上)、モズ、ヒヨドリ、ツグミ、カシラダカ、カワラヒワ、キジバト、ムクドリ、スズメ等。その他/ヤドリギ(写真下)等。
2月10日、横浜市戸塚区舞岡公園
今日は一日中、二俣川にある「こども自然公園」で過ごすはずの予定であった。かつて、この地域は横浜市でも有数の蝶の採集地で、私の生まれた頃の蝶の採集案内を見ると、オオムラサキ、コムラサキ、クモガタヒョウモン、ウラギンスジヒョウモン、ミスジチョウ、ヒメシロチョウ等の蝶が産すると記してある。今、これらの蝶を見ようとしたら、大変遠くへ行かなければならない。特にヒメシロチョウは何処へ行っても少ない。幼虫がツルフジバカマを食する草原性の蝶であって、富士山麓や浅間山麓まで行かないと観察できない。そんなこともあって、また、先日買ってきた野鳥観察地案内の本にも紹介されていたので、一度は行ってみようと思っていた公園なのである。しかし、有料駐車場に車を停めて中へ入ってみると、確かに池や雑木林や田んぼはあるものの、何だかとても綺麗に掃除がなされている。また、犬の散歩の方々や野外授業の生徒たち等でとても賑やかだ。そんな中で汚い防寒作業服、泥の着いた長靴、重たい野鳥機材でうろちょろするのに違和感を感じた。それに見回したところ、これと言った野鳥はいない。そんな訳で早々引き上げるのが得策と考え、しばらく行っていなかった舞岡公園へ向かった。
やはり舞岡公園はとても居心地良い。「こども自然公園」に比べると適度に管理されているから、生き物たちはもちろんのこと、自然好きの人間が充分くつろげる公園である。それでも舞岡公園の昔を知る方々は、管理のし過ぎによって生き物たちの賑わいがだいぶ減ったと嘆いているのだ。公園とは貴重な市民の税金によってまかなわれている訳だから、来訪者の数の多さを重要視するのは分かるものの、生き物たちの賑わいを物差しとするのも大切だと思う。出来ればその両方が叶えられたら、とっても素晴らしい事だろう。
今日は寄り道したから舞岡公園到着はだいぶ遅れてしまった。まずは例によって河童池の方へ行ってみると、毎日、サイクリング車でやって来る野鳥好きな方が双眼鏡で熱心に雑木林を覗いている。「今日は何か見られますか」と尋ねると、「モズです」と指差す。早速、カメラで覗いて見ると可愛らしい顔をしたモズがいる。「モズにしてはとっても可愛い顔をしてますね」と言うと、どうもモズの雌らしい。「野鳥はみんな雌の方が可愛いですね」とおっしゃるので、まだ雌雄の区別などおぼつかない初心者だが、何種類かの野鳥の雌を思い出して頷いた。
今日もたくさんの方がヤマシギとアオゲラ目当てに集まっているという“きざはしの池”へ一緒に話しながら行くと、本当にいつもよりも多くの方が集まっていた。「どうしたの? 今日は重役出勤だね」と名前は知らないが良く出会う野鳥好きの方が言うので、「こども自然公園へ寄り道して来たから、でも野鳥観察には舞岡公園の方が数段上ですね」と言うと、「そうなんだよ、有名な横浜自然観察の森なんかよりもここの方が色々の鳥が見られるからね」とおっしゃる。まことに同感である。多分、池や浅い水場が各所にあって、田んぼや雑木林や生物保護区等が上手い具合に点在していて、生き物たちにはとても暮らしやすい公園なのだろう。
相変わらず寒がりの顔見知りのご婦人たちは見えないものの、今日は前回会えなかったFさん、Tさん、Sさん等も熱心にカメラを覗いている。「昨日はヤマシギが4羽もお出ましになって、とっても近くまで来たよ」とみんなが言う。もうヤマシギ狙いで10年も通っているFさんも、しつこくより良い写真を狙っているようだ。図鑑などにヤマシギの写真はあるにはあるが、優れた写真はほとんど無いとのことである。ヤマシギはどちらかと言うと夜行性だから、なかなか自然光で素晴らしい写真が撮りづらく、それだけしつこく狙うべき価値ある野鳥のようである。
そんな10年も早いヤマシギはパスして一回りして戻って来ると、FさんとTさんが小さな田んぼにカメラを向けている。なんだろうと近寄って見るとタシギがいると言う。そこでレンズの先の方を見るのだが鳥らしきものは見えない。そこで三脚を立てカメラのファィンダーでじっくり探すと、嘴のとても長い小型のシギが目に入って来た。「なんだヤマシギに比べると、とっても小さいのですね」と言うと、「でも色合いがこっちの方が綺麗だよ」とTさんがおっしゃる。タシギは機械仕掛けのおもちゃのように、長い嘴を休むことなく田んぼの水の張った土に繰り返し差し込んで餌を探している。「ちっともじっとしてくれないから、これは撮影が難しい鳥ですね」と言うと、「餌を捕まえると誇らしげな顔をして、ほんの少しの間顔を上げて停止するから、その時がチャンスなんだ」とTさんが教えてくれた。なる程、カワセミにしたってヤマセミにしたって、美味しい獲物を捕らえると嬉しそうなポーズをとることを思い出した。人間で言ったら「やったー、すごいだろー」と誇らしげに胸を張るようなものなのだろう。
なかなか絵になりにく小さなたんぼに向かって、ひとしきりタシギの撮影に熱中した後、「今日は久しぶりにさくらなみ池が、賑やかだから楽しいよ」とTさんが教えてくれたので行ってみると、アオサギ、コサギ、ダイサギ、マガモ、カワウ、カワセミ、ジョウビタキ、メジロとたくさんお出ましになって、本当に賑やかであった。話によると昨日はゴイサギが一日中木の上で寝ていたと言うし、珍鳥のミヤマホウジロの雌もいたと言う。以上のように早々と「こども自然公園」に見切りをつけて舞岡公園へ来て、とっても充実した一日となった。
<今日観察出来たもの>花/ウメ、ツバキ、フクジュソウ、オオイヌノフグリ等。鳥/ヤマシギ、タシギ(写真下右)、アオサギ(写真上右)、コサギ(写真下左)、ダイサギ(写真上左)、マガモ、カワウ、カワセミ、ジョウビタキ、メジロ、カワラヒワ、キジバト、ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリ、モズ、シロハラ、アカハラ、アオジ、スズメ等。
2月8日、神奈川県川崎市麻生区黒川
このところ色々なフィールドへ出かけて、行く所が無くなってしまった。メインフィールドである図師・小野路歴史環境保全地域は相変わらず変化が見られないし、身近なフィールドでの野鳥観察及び写真撮影も一段落ついてしまった。そこで久しぶりにアップダウンの少ない黒川へ、野鳥もその他のものも撮影しようと出かけてみた。今朝はだいぶ冷え込んだらしく、遅く着いたものの日陰にはびっしりと霜が降り、田んぼの水溜りには氷が張っている。しかし、昨日と異なって風はだいぶおさまり、立春を過ぎた太陽の光の強さはとても気持ちがよい。もうすぐ本格的な春がやって来ると予感させる程の暖かさだ。しかし、雑木林を見上げると相変わらずの紺青色の空で、梢が銀色に輝いている。この紺青色の空が霞んで、なんとはなしに梢の生命のざわめきが聞こえて来て、初めて本格的な春がやって来るのだから、これから寒の戻りが度々繰り返されるに違いない。
それでも南に面した風の当たらない斜面はもうすっかり春で、オオイヌノフグリがたくさん咲き、ホトケノザの薄い赤紫の花弁もちらほら見受けられる。あまり美しいとは言えないものの、春の路傍を彩る重要な植物であるトウダイグサの茎が四方八方に伸び、厚手の葉も伸張して、褐色の斜面に緑の量がだいぶ増え始めている。もちろん春の七草の一つであるナズナも見られ、黄色いノボロギクも勢いを取戻したかのようである。そんな小さな春を切り取ろうと、一生懸命にマクロレンズを向けていたら、ファィンダーの中で橙色のものが動いている。何だろうとファインダーから目をはずして地面を見ると、ナナホシテントウが活動しているではないか。今年に入って初めての活発に動く昆虫である。
ナナホシテントウはテントウムシ(ナミテントウ)と異なって、冬の眠りがとっても浅く、草むらの根際等で越冬している。このため気温が上がるとすぐに活動できる。ところで2月初旬にナナホシテントウの食べ物はあるの?と思われる方も多いと思うが、アブラムシ(アリマキ)も各種の草の茎や花穂や芽で越冬しているのだ。そんなアブラムシを発見したいと思ったら、やはりカラスノエンドウの花穂が一番で、また、ナナホシテントウの餌とはなりにくいものの、春一番に葉が開く低木のニワトコの芽に注意したら容易く発見できる。アブラムシも春一番の餌(植物の汁)にありつこうと、春早くから命の展開を始める植物たちを知っているのだ。
ひとしきり日溜りで春のさきがけのしるしを撮影した後、農道を歩いて行くと、またしてもほぼ野生化したキウイに出会った。今日は目線の高さだから、たくさんの様々な葉痕を観察することが出来る。前回、新吉田町で“おかめ”のような葉痕を撮ったから、今回は“いたずら坊や”のような葉痕を撮影した。このHPを暖かく見守ってくれている冬芽と葉痕が大好きな一人静さんだったら、その場から離れずに一時間以上も楽しく遊べることだろう。私はデジタル一眼レフは持っているものの、それ用のマクロレンズがないので無理なのだが、このキウイはもちろんのこと、ゴシュユやオニグルミ等の様々に変化する葉痕のコレクションは実に楽しい。しかし、それをフイルムで撮っていたら、それこそお金が飛ぶように消えて行くから、この世界はいくら撮ってもただのデジカメならではの、やり甲斐ある楽しい世界のようだ。
いつものように谷戸を奥まで歩いて行くと、田んぼがだいぶ埋め立てられている。これでは去年もほとんど見られなかったというゲンジボタルやヘイケボタルはますます数を減じて行くことだろう。もちろん、水場を失った各種の野鳥、田んぼがあるために湿度が適度に保たれていた雑木林、そこに見られる各種の山野草や昆虫たちも激減して行くに違いない。付近に居た農家の老人に、「これから黒川も変わりますね」と尋ねると、「困った事だよ、一度畑にしてしまうと田んぼには戻せんのにな」と嘆いて言う。「川崎市で唯一残った谷戸だと言うのに、川崎市はどう考えているんでしょうかね。田んぼを耕す人に助成金でも出したら良いのにね」と言うと、「市も金がないんだから仕方が無い」と吐き捨てるかのように言う。愛もお金で買えると言われる時代だが、自然度一杯のフィールドもお金次第という事のようだ。またしても貴重な道端自然観察のフィールドが身近から消えるのかと思うと、とっても寂しくなった。
<今日観察出来たもの>花/ウメ、ツバキ、セイヨウタンポポ、ホトケノザ(写真上右)、トウダイグサ(写真上左)、オオイヌノフグリ、ノボロギク等。昆虫/ナナホシテントウ等。鳥/キジバト、ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリ、オナガ、エナガ、ホオジロ、ジョウビタキ、コゲラ、スズメ(写真下左)等。冬芽と葉痕/キウイ(写真下右)等。
2月7日、神奈川県津久井郡津久井町宮ケ瀬湖
野鳥の図鑑を見ると、身体の色によって「青い鳥」、「緑色の鳥」、「黄色い鳥」、「赤い鳥」と分けられているコーナーがある。私が今まで撮影した青い鳥は、ルリビタキ、カワセミ、緑色の鳥はメジロ、アオゲラ、黄色い鳥はカワラヒワ、マヒワ、キセキレイ、赤い鳥はジョウビタキ、ヤマガラ、ホオジロと言うことになるのだが、赤い鳥の中で名前にベニ(紅)とつく鳥には、まだお目にかかっていない。ベニスズメ、ベニマシコ、ベニヒワ等だが、この中で身近なフィールドでいつも話題になるのがベニマシコだ。鳥好きの間では超有名で、是非会いたいものの一つとなっているようである。そんな訳で、図師・小野路歴史環境保全地域で良く出会う女性のIさんに教えてもらった、宮ケ瀬ビジターセンターから左手に入った林道に行ってみた。この林道は正式には早戸川林道と言い、その昔、私が大型クーラー一杯にニジマスやヤマメを釣った早戸川に伸びている林道である。この地域の林道の中で、蝶や昆虫、山野草を観察するには、水沢川に沿った伊勢沢林道が魅力的なのだが、被写体である野鳥を順光でとらえにくい林道である。地図を見るとこの地域の林道は、沢の陽が良く当たる側についている。多分、陽が良く当たる側は風化作用が盛んで、なだらかな傾斜の斜面になっていて、林道を付け易いのに違いない。しかし、早戸川林道の基部は宮ケ瀬湖に面していて、野鳥の目がきらりと光る順光線でとらえやすい北斜面に付いている。
昨晩、宮ケ瀬ビジターセンターのホームページを開いてみたところ、「林道は木立の中や湖沿いに続くので、水辺の鳥や山野の鳥を数多く見ることができます。ハイキングがてら一周するのも楽しいですし、ゆっくりとバードウォッチングをしながら途中で引き返すのもいいでしょう。多くのバードウォッチャーはビジター裏から入り、金沢橋近辺で引き返してきます。夏にはオオルリ、冬にはベニマシコなどが見られます」と野鳥を見る最適なコースとして紹介されていたので、ベニマシコへの期待が否が応でも高まった。有料の駐車場に車を停めると早速ビジターセンターに行って、付近の地図が印刷された案内パンフレットをもらうと、林道を歩き始めた。陽が差さない日陰にはまだ僅かだが雪が解けずに残っていて、滑らぬように充分に注意して歩かなければならない場所も数箇所あった。しばらく行くと同好者に出くわした。「ベニマシコはいましたか?」と聞くと、デジカメの液晶モニターで林道入り口付近で撮ったベニマシコを見せてくれた。「たくさんいましたよ!」とにこにこしながらおっしゃる。「そうですか、おかしいなぁ、充分注意して歩いて来たんですがね」と言うと、「まだまだ、林道は長いからきっと出会えますよ」と励ましてくれた。
しばらく同好者と話をしながら林道を進み、野鳥がたくさん現われそうな開けた場所に至ると、「まだ一枚も写真を撮っていないので、ここで少し粘ってみます」と別れ、三脚を立てて野鳥を待った。しばらくしてジョウビタキの雄やホオジロがやって来たが、いくら待ってもベニマシコは現われない。そこで痺れをきらして先に進み、トンネルを抜け、ホームページに書いてあった金沢橋まで行ってみたが、お目当てのベニマシコには出くわさない。林道入り口辺りの方がポイントなのかなと思い、また、時計を見るとちょうど引き返すのによい時間である。もちろん帰りは来たときよりも歩調を緩めて、じっくりと木立を見回しながら戻ったのは言うまでも無い。
途中、熟年のご夫婦が熱心に双眼鏡を湖面の方に向けて野鳥を観察しているのに出会った。何だろう、ベニマシコかしらと静かに近づきその方向を見ると、大型の猛禽類の仲間が形の良い枝に止まっている。始めて出会う猛禽類である。高鳴る胸の鼓動を感じながら「逃げちゃだめだよ、じっとしていてね」と呟きながら三脚を立てて、ばしばしシャッターを切った。デジカメの液晶モニターで撮った写真を確認すると手ごたえのある出来である。そこで静かにご夫婦に近づいて「あの鳥は何ですか?」と尋ねた。「トビです」との事である。トビでは無い猛禽類と期待していたので、一瞬、「なんだトビか」と落胆したものの、ご主人が「トビは大型で、とても形の良い枝に止まってますから、粘ればきっと良い写真が撮れますよ」と言う。そこでご夫婦を見送ると、トビが飛び立つまでファインダー越しに観察した。すると近くに止った違うトビに「ピーヒョロロー」と鳴いたり、向きを変えたり、毛づくろいをしたりと、とっても楽しくトビの表情を観察することが出来た。
駐車場に戻ると食事を済ませ、他の場所へ行ってみようかなとも考えたものの、移動する時間がおしく、また同じ午前中のコースを歩いてみようと林道を歩き始めた。するとトビの名を教えてくれたご夫婦が引き返して来て、「若いですね、頑張りますな、ベニマシコはトンネル前の開けた場所にいましたよ」と教えてくれた。午前中かなり粘った場所である。午後になって風がしだいに強まり、付近の山々に薄っすら雪が積もっているから風は非常に冷たい。途中、午前中と同じ場所にトビが止っていたものの、結局、ベニマシコには会えず、ますます強さを増した風に耐え切れずに、ベニマシコに対しては無念の結果となったが、江ノ島あたりへ行って撮影しようと思っていたトビをばっちり撮影出来たのだから、今日はこれで良しと帰宅の途に着いた。
<今日観察出来たもの>鳥/トビ(写真上左)、カワウ、アオサギ、ツグミ、ルリビタキ、ジョウビタキ(写真下)、ホオジロ等。
2月5日、東京都町田市野津田公園〜小野路町
昨日は早くも立春、寒が明けた訳だが、言うまでも無く春と言っても名ばかりで寒さは当分続く。やはり3月5日の啓蟄を経て20日の春分の日を待たなければ、本格的な生き物の躍動は望めない。とは言っても各地にある梅林の花便りが新聞を賑わせ、フクジュソウ、ミスミソウ、セツブンソウ、ザゼンソウ、スノードロップ、クロッカス等も咲き出すから、今までの頑なまでに堅く閉ざされた厳寒とはかなり異なるのは言うまでもない。今日は西高東低の冬型の気圧配置が強まって、雲一つ無い紺青の空で、雑木林のクヌギやコナラの梢が銀色に輝いている。しかし、風はかなりあって撮影日和とは言いがたい。しかし、先日、マラソン大会があったために散策出来なかった野津田公園へ行った。ここは湿性植物園はあるものの水場が少なく野鳥には不向きかと思ったが、季節を感じさせる何かがあるのではないかと期待したのである。
駐車場に車を停めると、その周りに植栽されているカンツバキはほとんど散って、季節は確実に春に向かっているのだなと感じた。しかし、梅は咲き始め、シナマンサクもようやく蕾がほころびて黄色い花弁が覗けたものの、サンシュユはまだ固い蕾のままで、各所に植えられているハボタンは艶やかで元気一杯であった。やはり多摩丘陵の核心部たる町田市は気温がだいぶ低いのである。季節を感じさせるものがありそうな所を一通り回ってみたものの、これと言ったものはなく、前回も撮影したハンカチノキの冬芽を撮ったのみとなった。それでは今度は野鳥とばかりに歩いてみたものの、コゲラが樹木の幹をつつき、湿性植物園の池にカルガモとカワウが居るくらいで、カワラヒワとシメの群れに出合ったものの、写真としてはこれと言った収穫は無かった。
午後からはいつものように小野路町の万松寺谷戸へ行った。毎度のようにネズミのモズの早にえはどうなったかなと見に行くと、跡形もなく消えていた。ことによったら風によって地面に落ちているのではないかと探してみたものの、見当たらない。また、付近にあったカエルのモズの早にえ、ムカデのモズの早にえも消えている。そんなことを考え合わせると、誰か人間がネズミのモズの早にえを採集していったとは考えにくく、モズが食べるものが無くなって早にえに手をつけたのでは無いかと考えても良さそうである。しかし、その後、万松寺谷戸で野鳥観察をした訳だが、モズの数はだいぶ少なくなっているように感じられた。また、いつも見られるジョウビタキも少なく、北風吹く天候とは言え、どうも野鳥達にとっては餌が無いと言う、今が一番苦しい冬越しの正念場のように感じられた。
そん訳で今日は野鳥は期待できないと、前回来た時にはしからびていて撮影する気分になれなかったエノキタケはどうなったかと見に行ってみると、可愛らしい小指の先のような幼菌が顔を出していた。全般的に図師・小野路歴史環境保全地域は、キノコそのものは季節には多いものの、陽が差さないじめじめとした場所は少なく、今の季節はたとえ乾燥に強いサルノコシカケ科のキノコといえども干からびている。しかし、エノキタケが生えている切り出した丸太がたくさん並べてある場所だけは、スエヒロタケ、ヒイロタケ、シハイタケ(?)、カワラタケ等がびっしり生えていて、陽が差さない暗い場所なのに、信じられないほどに明るく賑やかである。
さてと何とかこの「つれづれ観察記」に載せる写真は撮れたと安堵して、野鳥機材を抱えて谷戸奥の栗畑へ向かうが、前記したように野鳥はほとんど現われない。ツグミは地面を独特な仕草で餌を探し回っているだろうと思ったのだが、葦の湿地に生える樹木の梢奥深くで、じっとこちらを見詰めているだけである。オギの枯れ穂の中にカシラダカも観察できるのだが、なかなか絵になる場所に現われてくれない。何だか今日はカラス以外は休息の日のようである。それではと、お特異の昆虫探しをしてみるものの、樹肌に擬態したキノカワガは見られず、あのべとべとして薄気味悪いヨコズナサシガメの幼虫の集団越冬を発見したのみであった。不幸と幸福は紙一重、次回はたくさん野鳥を観察し撮影出来るだろうと、早くも今週末に会いに行く予定であるベニマシコへの期待が膨らんだ。期待を裏切られたら今度こそと夢を見る、なんとも滑稽だが、ウィークエンド・ナチュラリストとは、そんなロマンチストなる人種なのである。
<今日観察出来たもの>花/ウメ、ニホンスイセン、オオイヌノフグリ等。鳥/カワウ、カルガモ、キジ、ツグミ、ヒヨドリ、シメ、ジョウビタキ、カワラヒワ、コゲラ、シジュウカラ、モズ、カシラダカ、ホオジロ等。キノコ/エノキタケ(写真上右)、スエヒロタケ、ヒイロタケ、シハイタケ?(写真上左)、カワラタケ等。その他/ハンカチノキの葉痕(写真下)等。
2月3日、大和市泉の森公園〜座間新田〜城山町葉山島〜秦野市金目川
今日は何だか色々な場所へ行ってしまったが、「終わりよければ全て良し」となって、ほっとしているどころか大満足の一日となった。前回、泉の森公園へ行った時は、北風が吹くとても寒い日であった。今日は昨日の雨の後だから低気圧がオホーツク海へ抜けて、風が強くなるものと思っていたが、天気予報によると風は弱いとある。また、真っ青な冬晴れとはならないものの曇り時々晴れと言うことで、期待して泉の森公園へ出かけた。前回、マヒワが今一の出来で、もっと鮮明に、もっと情緒溢れる写真を手に入れたかったのだ。それに1月中各所を回ってみた結果、泉の森公園は鳥の種類が多くて、しかも歩き回らなくて済むから好印象を持ったのである。そんな期待を持って出かけた訳だが、今日は鳥の数も種類も少ない。一体どうしたのだろう。2月1日に港北ニュータウンの公園巡りをしたが、やはり鳥の数が少なかった。まさか冬鳥が何処か遠くへ移動した訳でも無かろうから不思議である。先日、秦野市の権現山の野鳥観察施設に行った時も、「前の週は各種の鳥が見られたのに今日はいないな」と同好の方が嘆いていた。野鳥にしても昆虫にしても、動物は必ずそこにいるとは限らないのだから撮影が難しい。
そんな事もあってか、今日の泉の森公園はルリビタキ等に餌付けをしているグループは見当たらないものの、ご婦人も含めてかなりの方が野鳥撮影に来ていた。今日はみんなカワセミ狙いのようである。タゲリ、トラツグミ、ヤマセミと連続して大物に巡り会ってしまうと、何だか普通に見られる野鳥が色あせて来る。これはとても困ったことである。私のメインテーマは里山で見られる生き物たちを、甲乙と差別する事無く美しく撮影することにある。なんだかヤマセミに出会って、寝ても覚めてもヤマセミの顔が浮かんで、どうも「鳥撮り病」が「ヤマセミ病」に変わってしまったようである。そんな訳でカワセミの情緒溢れる一カットを撮影すると、もしかしたらヤマセミに会えるかもしれないと、早々、泉の森公園を後にした。
前回、ヤマセミを観察した金目川に行けばヤマセミに出合える確率が非常に高いのに、今度は人に教えて貰った場所では無く、自分で探し出した場所で出会って見たいと思うのだから、どうしょうもない勝気な性格である。城山町八菅山、城山町葉山島、厚木市飯山、厚木市七沢、伊勢原市日向等と泉の森公園から近いヤマセミがいそうな場所が頭をよぎる。しかし、日が少し長くなったとは言え、それ程ではないので、一番近い城山町葉山島を探って見ることにした。途中、タゲリを撮影するつもりは無かったものの座間新田は通り道だ。まさか今日はいないだろうと思っていたら、先日居た場所にタゲリが群れている。一度タゲリをしかっと観察し撮影しているからすぐ分かった。「どうしよう、今日はタゲリ狙いでは無いから通り過ぎようか」とも思ったが、よりベストショットをと車を停めて撮影を開始する。しかし、タゲリが群れている場所は前回より絵にならない場所だ。それに一度撮っているから、ほとばしる様な熱意が胸の中に湧いて来ない。かなり無造作に近づいて数カット撮影すると、止せば良いのに「逃げたっていいや」等と言うけしからん感情を抱いて至近距離まで接近する。もちろん、タゲリは「ミュー」と鳴いて遠くへ逃げて行った。なんだかタゲリを虐めてしまった様で、自分の横暴さに嫌気がさした。
葉山島に到着すると小さな沢や相模川を覗いてみたものの、あの白い大きなヤマセミは居ない。他の野鳥を撮影しようとするのだが何だか気が乗らない。やはり「もう一度ヤマセミに会いたい。撮影できなくともじっくりと観察したい」と言う、ここ数日頭をよぎる思いを断ち切れないようである。確か「君の瞳は100万ボルト」等と言う歌詞の曲があったと思うが、ヤマセミの瞳は人を魅了する潤んだ目なのである。時計を見ると1時40分である。「こうなったら金目川だ。3時には着くだろう。同好者もすでに帰ったに違いない」と、途中、中津川、小鮎川、日向川等のヤマセミが居そうな川を渡り、丘を越え街を越えて予想通り午後3時に秦野市の金目川に到着する。
田んぼ脇に車を止めて辺りを見回すが、同好者らしい車は止っていない。慎重に交通量の多い道路を渡って、小川にかかる三本の丸太を注意して渡り、川岸から遠望すると、前回、来た時と同じ場所にヤマセミが止っている。また、数メートル寄ってはシャッターを切り、また数メートル寄ってはシャッターを切って近づいて行く。前回ブラインドが2つあったが、今回は誰も見当たらない。もう顔は綻びっ放しで、どんどんヤマセミに近づいて行く。今回はとても大きくヤマセミを捕らえられる距離まで近づけた。もちろん、様々な角度からヤマセミをばっちり撮影するとともに、じっくりとヤマセミのしぐさをファィンダーを通して観察する。そんな夢中な変梃りんな人間をヤマセミは見飽きたらしく、やがて上流へ飛び立った。今度は形の良い木や石に止るヤマセミの写真をとあちこち歩いて粘ってみたものの、それにはやはりブラインドが必要のようである。しかし、丸1時間、ヤマセミとじっくりお話できたのだから大満足である。これで寝ても覚めてもヤマセミの顔がちらつくという「ヤマセミ病」も明日から和らぐに違いない。
<泉の森公園で今日観察出来たもの>鳥/バン、カワセミ、コガモ、ホシハジロ、アオサギ、ダイサギ、シジュウカラ、ハクセキレイ等。
<座間新田で今日観察出来たもの>鳥/タゲリ(写真下)、ムクドリ、ツグミ等。
<葉山島で今日観察出来たもの>鳥/カワセミ、アオジ、カシダカラ、コチドリ、ムクドリ、セグロセキレイ等。
<金目川で今日観察出来たもの>鳥/ヤマセミ(写真上)、ハクセキレイ等。
2月1日、横浜市港北区新吉田町〜茅ヶ崎公園〜大原みねみち公園
いよいよ2月に入った。早いものである。いくらか日が暮れるのが遅くなったように感じるし、太陽の力も増したように思える。2月3日は節分、翌日の4日は立春である。いよいよ待ちわびた春がすぐそこまでやって来た訳だが、油断は禁物、首都圏では立春過ぎが一番雪を見ることが多いのだ。巷では鳥インフルエンザの話題で一杯であったが、風邪こそ引かないものの「鳥撮り病」という恐ろしい病にかかって、あっという間にここまで来てしまった。何種類撮影したのかなと調べて見ると、簡単に撮影できるガンカモ類を入れて54種類にもなった。昨日はヤマセミという超大物に出会って、興奮覚めやらずに寝床についたので、熟睡できずにすっきりとした目覚めとはならなかった。そんなこともあって、今日は調布市にある神代植物公園に行く予定を変更して、近場で野鳥以外のものもしっかり撮影しようと、隣町の新吉田町へ行った。もっとも、ソシンロウバイ、ロウバイの花期は過ぎ、ウメ、フクジュソウ、シナマンサクにはまだ早いから、高い駐車場料金と入場料を払ってまで、神代植物公園に行く価値はないと思ったのである。
かなり遅く起きても隣町だから9時前に着いてしまった。鳥以外のものも撮影するんだと一般撮影用機材も持って歩くとかなりきつい。明日は仕事上でのかかせない用事があるので、ぎっくり腰にでもなったら大変である。そこで小一時間散策したのちに車に戻って、季節感溢れるものだけを撮影しょうと野鳥撮影用の機材を車に置いて、最も軽いカメラとマクロレンズだけで再び散策を開始した。まるで翼を持った鳥のように快適に歩き回れるのだから嬉しくなる。まず最初に撮影したのは、果物のキウイの葉痕である。植物の葉の跡は葉が大きければ葉柄も太いから、その結果、幹に残る葉痕も立派になる。もっとも、超大型のキリやアオギリの葉痕は間延びして目鼻立ちがはっきりとしない。葉痕においても程々がベストと言うことになる。この点、キウイの葉は程々の大きさだからと期待したのだが、幹とのお別れに未練なんか感じないようでポロリと落ちるらしく、のっぺらぼうの葉痕が多かったが、やはり人間と同じで未練がましい葉もあって、おかめのような葉痕を見つけて笑ってしまった。
新吉田町は第3京浜の都筑インターが出来るまでは素晴らしい環境で、数多くの傑作写真をものにさせてくれたと以前にも書いたと思う。また、そればかりでなく都市近郊のこともあって花の生産が盛んで、あちこちに植え溜めがあり、様々な花木も植栽されているから、ちょっと失礼させてもらっての花の撮影にも素晴らしいフィールドてあった。そんな面影がまだかなりあって、日当たりの良い斜面に様々な植木の畑が残っている。もう咲いているのではないかと思ったジンチョウゲは、後一週間もすれば綻ぶ蕾の状態で、かなり蕾が大きくふくらんでいる。かなり有名な梅林より見ごたえのある植え溜めに行ってみると、早咲きの白梅、紅梅が咲き始め、シナマンサクの蕾は弾けて黄色い細長い短冊状の花弁を伸ばし始めていた。ここに植えられているのは、小石川植物園正門を入ってすぐ右手のシナマンサクと同じで、いつまでも枯れた葉が残っている未練がましい品種である。どうもシナマンサクには、花咲く前にすっかり枯れ葉が落ちるものとそうでないものとがあるようである。
ひとしきりちょっと失礼の植え溜めの樹の花の撮影を終えて、農家の建ち並ぶ谷戸に降りて来ると、庭先にはナツミカン、ユズ、キンカンの実が陽に照らされて眩しく光っている。花壇にはバンジー、ビオラ、様々な品種のニホンスイセンが咲き、ネコヤナギの花芽も鞘から顔を出して銀色にだいぶ大きくなった。寒い寒いとは言っても、やはり春がやって来たという感じを強くする。更に、道路より一段高くなった農家の敷地から垂れ下がって、なんと真っ黄色の咲き始めたばかりのオウバイの花も目に飛び込んで来た。もちろんそれらの花を撮影した後、新吉田町の野鳥観察の最大のポイントである庄屋さん宅の池まで行ってみようと、丘の上の畑の傍らの小道を登って行くと、セイヨウタンポポ、ホトケノザ、オオイヌノフグリはもちろんのこと、カラスノエンドウまで咲いているのには驚いた。鳥撮り病にかかっている間に、季節は確実に歩みを進めていた訳である。
庄屋さんの池に到着すると、以前から見慣れた方がバードウォッチングをしている。以前なら野鳥の話などろくすっぽ出来なかったのだが、約2カ月間の特訓の成果によって話が大いに弾む。色々お話を聞くと、まだまだ新吉田町にも様々な野鳥が生息していると言う。例えばカケス、ルリビタキ、早淵川にはなんとオシドリも一羽だがやって来ていると言う。大きなドイツ製の高級双眼鏡、ニコンの高級カメラに手ブレ防止付きの望遠レンズ、身なりはとても品が良く、日本野鳥の会のかなり熱心なメンバーのようで、どうみてもお金持ちの方に思えるのだが、自宅から近い新吉田町のフィールドで、たった一人で野鳥観察に励んでいる。聞く所によると、やはりそりほどの珍鳥はいないようなのだが、毎週末、この庄屋さんの池の前にやって来ると言う。まだやり始めたばかりで何とも言えないが、珍鳥、希少種を見るだけがバードウォッチングの楽しさでは無いようだ。そんな事を考えながら昼食をとったのち、今度は野鳥撮影用の機材に変えて、じっくりと腰を据えた野鳥撮影を肝に命じて、港北ニュータウンの中の茅ヶ崎公園から大原みねみち公園を散策した。
<今日観察出来たもの>花/ソシンロウバイ、ウメ、シナマンサク(写真下左)、オウバイ(写真下右)、ツバキ(写真上右)、バンジー(写真上左)、ビオラ、ニホンスイセン、セイヨウタンポポ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウ等。鳥/カルガモ、キジバト、ツグミ、ヒヨドリ、シメ、シジュウカラ、コサギ、カワセミ等。冬芽と葉痕/キウイ、チャンチン、タラノキ等。