2005年:つれづれ観察記
(3月)


3月31日、神奈川県相模原公園〜町田市小山田緑地

 昨日の夜は大量に雨が降った。この雨はまさに慈雨で、これから何処を見渡しても本格的な春がやって来るだろう。3月はずっと、自然度の高いフィールドぱかりに出かけていて、花壇の花と戯れ遊ばなかったから、今日は相模原公園へ行った。本来的にはこのHPは自然観察がメインだから、人工的な花壇の花は相応しくないのだが、この園芸品種の花壇の花をも撮影するところが、私の私らしいところではなかろうか。花壇の花と言えども生き物であるし、花壇の花とカメラで戯れ遊ぶのはアートとして面白いばかりでなく、写真撮影の腕前を上げるのにも最適な被写体なのである。おそらく人間が自生する植物から作出した園芸品種の花は、あらゆる色と様々な形を持っている。最近、パソコン処理で多少の露出の過不足は簡単に補正できるし、トリミング等はホイホイミュージックスクールだが、ポジフィルムを使って様々な反射率の花色を撮影することによって、一番難解な露出補正、すなわち反射率18%の色を適正に再現しようとするカメラに内蔵された露出計についての理解が深まるのである。また、一眼レフタイプのカメラでないと難しいかもしれないが、ノートリミングを心がければ、写真撮影の醍醐味とも言える構図の勉強にもなる。
 前書きが説教調で長くなったが、横浜の家を出た時は快晴であったのだが、相模原公園に近づくにつれて雲が厚くなって来た。しかし、風は弱いから花の撮影にはベストコンディションと言える。花壇の花が思う存分撮影出来る場所は、決まって風が強い所に多い。例えば大船植物園は海に近いし、この相模原公園は相模川に近い。だから風が本当に弱い日に来ないと、さんざんな目にあってしまう。今日は平日だから駐車場は無料である。前回来た時は駐車場に車はまばらだったが、今日はたくさん駐車している。雲ってはいるものの気温も高く風も無く、それに桜が6分程度に咲いているから、たくさんの方がやって来ているのだ。園内に入るとプランターに植栽されている様々な花色のビオラが目に入った。以前にも書いたと思うが、ビオラは大好きな花である。105mmマクロレンズを向けて、前ボケ、後ボケ等をたくさん入れてファンタスティックに撮影出来るから、やって来た春の喜びを表現するにはとっても得難い花なのである。広大な花壇には早くもブルーのネモフィラが咲いている。その隣の花壇にはパンジーが、その隣にはナノハナがと言った具合でとても美しい。
 去年の冬に珍鳥のヤツガシラが飛来してたくさんの方々が集まった辺りには、純白のスノーフレーク、薄紅色の可憐なアルメリア、様々な花色のデージー、クリスマスローズも咲き残り、ラッパスイセンが一面に咲いた辺りは、曇り日でもまるで日向のように明るく華やかである。今が盛りのややブルーがかった純白のハナニラを囲むように、濃紺のムスカリが小さな針葉樹のように直立して縁取っている。本当にいつ来ても相模原公園の花壇の花の植栽はお見事で、これからしばらくは春爛漫の言葉通りの花散歩が楽しめそうである。今日の目的の最大のものはサクラである。もちろんヤマザクラでもオオシマザクラでもなくソメイヨシノである。長い間、花の写真を撮り続けているが、ソメイヨシノの写真は僅少である。ことにサラリーマンをしていた頃は、週末にしか撮影に出かけられなかったから、その日に少しでも風があったらお手上げで、翌週には早くも散っていたなんてざらであった。花の命は短いけれど等と表現される人間の女性なら、心を美しく磨いてその命を永らえる事は可能だが、サクラは散ってしまえば、ザ、エンドなのである。今日も曇り日となって、イメージ通りのソメイヨシノを撮影できなかったが、様々な花壇の花を撮って、あっと言う間の正午となった。
 午後からは何処へ行こうかと悩んだが、町田市の小山田緑地にコツバメの偵察に行った。曇っているものの気温が高いので発生していれば撮影出来ると思ったからだ。多摩丘陵では希少種となっているコツバメだが、小山田緑地にはヤマツヅジやサツキがたくさん植えられ、その蕾や花を幼虫が食べるコツバメの宝庫なのだ。園内に入って行くと、まず最初にお出迎えしてくれたのはルリタテハだ。木道に止って日光浴をしながらテリトリーを張っている。もっとも日が射さない曇り日だから後者のみなのだろう。ルリタテハはいつみても綺麗で感動的だ。撮影しようかどうかと遠くから見守っていたら、なんと可憐なルリシジミがやって来て、ルリタテハは目ざとく見つけると飛び立って追い立てた。まさにルリ、ルリとなって、もしルリビタキでもいたら、ルリ、ルリ、ルリと喜ばしい瑠璃色トリオが同時に勢ぞろいしたのにな等と、たわいもない有り得ない空想をして苦笑する。
 コツバメがたくさん見られるヤブカンゾが生える開けた場所に行ってみるが見られない。それでは管理事務所の方はどうかなと行ってみるが、やはり見られない。しかし、道路を隔てた先にスモモやミツマタの花が満開である。帰宅途中に梨畑の傍らを通ったが、梨も咲き始め、美麗なカリンの花も開き始めたようである。これから果実の花もたくさん咲き始めるが、モモに次いでのスモモの花をこぼれんばかりに撮影した。どうもまだ発生していないか曇り日なのでとコツバメを諦め、チョウセンレンギョウや銀ネズミような微毛に覆われたコナラの若葉を撮っていたら、巡回警備の若者がやって来た。彼は動植物が大好きで、双眼鏡とデジカメをぶら下げて巡回している。「コツバメはまだ?」と尋ねると、「一週間ばかり前に見たんですけど、その後、寒くなっちゃて」と言う。どうやらヤブカンゾウの伸び具合からしても、本格的な発生は来週からのようである。それでは帰宅と駐車場の方へ石畳みの道を歩いて戻る途中、雑木林の傍らでセンチコガネが蠢いている。何回も飛ぼうとするのだが、羽化したばかりでうまく飛べないようである。昆虫は両親が飛び方を訓練してくれないから大変である。もう、センチコガネも発生したし、晴れの日が続けば一挙に生き物の賑わいが全開となるに違いない。

<相模原公園で今日観察出来たもの>花/ビオラ(写真上左)、パンジー、デージー(写真上左)、ネモフィラ、ナノハナ、ムスカリ(写真下左)、ハナニラ、アルメリア、クリスマスローズ、チューリップ、ラッパスイセン、スノーフレーク(写真下右)、シャガ、タチツボスミレ、ハナモモ、ユキヤナギ、ソメイヨシノ、オオシマザクラ等。蝶/モンシロチョウ、ツマキチョウ等。
<小山田緑地で今日観察出来たもの>花/カントウタンポポ、キランソウ、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、モミジイチゴ、タチツボスミレ、ノジスミレ、ニオイタチツボスミレ、スモモ、ミツマタ等。蝶/ルリタテハ、ルリシジミ等。昆虫/センチコガネ等。


3月27日、東京都町田市小野路町・図師町

 今日は何処へ行っても何があっても、この“つれづれ観察記”は書かないぞと心に決めていた。なぜなら去年、まるで気が狂ったように20回も書いてしまった月があったのだ。こんなに書いたら「あの人、相当暇人ね。そんなに野山を歩いて楽しいのかしら、ちょっと気が変じゃない」なんて思われてしまうからである。でも、そのように洞察された方はとても頭が鋭く、本当に暇人で、毎日でも野山を歩いて楽しいという変人なのである。そこで今年に入ってから、一月に16回以上の観察記を書くことを禁じていたのだが、3月の観察記は今日で15回目になってしまった。3月は長いから、あと4日もある。もう1回書かなければ超スピードで変化するフィールドの模様をお伝え出来なくて困った事になるので、もう1回は書くだろうから、なんと3月は16回となって禁を破ってしまうことになる。まあ、それ程までに3月は変化が激しい月で、見るもの撮るものがたくさんあったということの証明にもなるし、また、今日はお伝えしなければ気がすまない程、とっても楽しい散策、観察、撮影が出来たからだ。
 今日は昨日や一昨日と異なって、風も無く穏やかな晴天の日となり、気温はぐんぐんあがって、スーパー稲毛屋で買った薄手の1900円の防寒服でも汗をかく陽気となった。昨日は木の花と芽吹きを中心に撮影したから、今日は美しい雑木林へ行って、風景的な雑木林の写真を撮ろうと思っていた。また、タチツボスミレ、ニオイタチツボスミレ、クサボケ、シュンラン等も撮影したいと思ったのである。雑木林の中に入ると気の早いマユミ、イボタ、エゴノキ等は芽吹いているものの、雑木林の主役たるクヌギやコナラは芽吹いていないから林床はとても明るい。雑木林の春一番の蝶であるミヤマセセリが地面すれすれを軽やかに飛んでいる。眩い真黄色の花をつけたキジムシロには、アブの仲間だと言うのに、ずんぐりむっくりのまるで縫いぐるみのような格好をしたビロードツリアブが吸蜜に現われている。もちろん目的の草花はすべて咲いていて、こんなに楽しい雑木林は真夏以降久しぶりの事である。まるで自分自身がスプリングエフェメラルの蝶になって、一日中、柔らかい春の陽や草花と戯れ遊んでいたいな等という衝動に駆られる位、とっても明るく軽やかで素晴らしい光景なのだ。
 そればかりで無く、今日は20mm超広角レンズを持ってきたから、背景に春の軽やかな雑木林を入れて撮影出来る。まず、最初に目に止ったのはシュンランだ。山掃除された時に葉が鋭い刃物で切られて短くなっているが、仲良く2本並んで咲いている。雑木林の中に咲く花は何でも撮影が難しいが、シュンランはその筆頭格である。なんと言っても盗掘につぐ盗掘で、探し出すのに苦労する。しかも、葉が細く長いので図鑑的に撮影するのならまだしも、雰囲気溢れるように撮るとなるととても難しい。しかも、今日のような晴天では、陰影がくっきり現われて雑然としたものになってしまうのだ。葉が鋭い刃物で切られて短くなってはいるが、そんな過酷な運命にも負けずに美しい花を咲かせているという状況写真として、綺麗に山掃除された雑木林を入れて広角接写した。シュンランのすぐ横にはヤマユリの芽が出ている。子供の頃、ヤマユリ集めに凝った事があるからすぐ分かる。芽が伸びて葉が開いたものを採集して来て庭に植えても、葉や茎は枯れてしまうから、その年の夏に花は咲かない。そこで地面に顔を出した時が採集の適期なのである。もちろん、そんな遊びもいくらでも雑木林が広がっていた時代の事で、これを読んでいざ採集等という気は絶対に起こさないで欲しい。どんなに上手に管理しても、庭に植えたのでは数年して跡形も無く消えてしまう。ヤマユリも他の山野草と同じく、山にあってこそ、その命が美しく続くのだ。
 ヤマユリの横にはアマドコロの葉が、その横には小さなハリギリが葉を広げ、またその横にはモミジイチゴの芽生え、そしてタチツボスミレ、ノジスミレ、クサボケといった具合で、それぞれをみんな20mm超広角レンズで背景を広く取り入れて撮影するとともに、105mmのマクロレンズで図鑑的に撮影した。そんなことをしていたら、すぐにフイルム1本はたちまちの内に撮りきり、時計を見ると11時を回っていた。後ろ髪を引かれる思いで雑木林を後にし、五反田谷戸、神明谷戸と回ったが、ヤマザクラの芽はまだ固く、ニオイタチツボスミレ、ケキツネノボタン、ムラサキサギゴケ等を撮影したが、雑木林に比べると見るもの撮るものが無く、またしてもトガリアミガサタケの生えている場所に行った。形の良いものを見つけたので、早速20mm超広角レンズをつけて覗いたら、それはそれは雰囲気溢れる背景が広がって、這いつくばって撮影した。今日は暖かい春の光りが降り注ぐ雑木林の中で各種の植物や昆虫と戯れる事が出来てとても楽しかった。明日は絶対につれづれ観察記は書かないけれど、早起きして黒川の美しい雑木林へ行って、今日の楽しさをまた味わいに行こう。そう考えて、午後2時になると早々と帰宅の途に着いた。

<今日観察出来たもの>花/シュンラン(写真下左)、ニオイタチツボスミレ、タチツボスミレ、ノジスミレ、タガラシ、ケキツネノボタン、ムラサキサギゴケ、カントウタンポポ、キランソウ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、カキドオシ、アブラチャン、シキミ、キブシ、モミジイチゴ、クサボケ、ウグイスカグラ、コブシ、チョウセンレンギョウ、レンギョウ、オオアラセイトウ等。蝶/キタテハ、ベニシジミ、ルリシジミ、ミヤマセセリ(写真下右)等。キノコ/タマキクラゲ、トガリアミガサタケ等。鳥/カルガモ等。その他/ヤマユリの芽生え、ハリギリの芽吹き、ゴンズイの芽吹き等。


3月26日、横浜市戸塚区舞岡公園

 定期的に集まる4月2日まで、もう待ってられないと我慢の限界を超えてしまったので、風が強いとあるが、しだいに晴れて来ると言うので舞岡公園へ出かけた。いつもの場所に車を停めて、アンズはもう咲いたかな?と、まず一番に見に行くと、花はすでに終期を迎えていた。きっと一週間前が見頃であったのだろう。前回来たのは12日で、やっと蕾がほころび始めた状態だったのに、ほんとうに何んと早いことだろう。やはりこの時期は、一週間に一度は訪れないと見頃、撮り頃を逸してしまう。しかし、火の見櫓の下でレンギョウが今が盛りだ。最近、公園等に植栽されているのはほとんどチョウセンレンギョウで、人それぞれに好みはあろうが、上品さではレンギョウの方が上と感じている。しかし、まだ雨が止んだばかりだから筒状の花の基部に水がたまり、それはそれで風情があるのだろうが、軽やかに咲いてこそ春の花だと思っているから、撮影は戻って来たからとした。
 河童池に通ずる小道脇にはキブシやアオキがたくさん咲いている。どちらも撮りたいのだが風が強く、林床奥深くに入ると風がいくらか防げるのでアオキの花を撮影した。後で出会ったAさんによると、私が撮影した4枚のチョコレート色の花弁基部に黄色い雄しべが乗っかったように見えるのは雄花で、もちろんアオキは雌雄異株だから雄の木と言うことになる。そこでAさんに雌花わ?と尋ねると、もっと大きいと言う。そこで家に帰って図鑑を開いて見ると、雌花は薄紅色の花弁で、真中に緑色の立派な雌しべを持つ少し大きい花であることが分かった。という事は今日の舞岡公園では雌花は見ていないことになるから、今後、注意して観察せねばならなくなった。ずっと前に読んだのだが、冬でも葉がつややかな緑で、真っ赤な実がなるアオキが注目されて、ヨーロッパにたくさん植栽されたが実がならず、雄株を持って行ってやっと結実したという話を思い出した。最も身近である樹木でもこうなんだから、ウィークエンド・ナチュラリストとしての修行はまだまだ続く。
 アオキの花を撮影して小道に出ると、にこやかな顔をした小柄なご婦人がやって来る、舞岡のKさんだ。Kさんも4月2日まで、もう待ってられないと我慢の限界を超えてしまったようである。連れ立って小谷戸の里に向かって歩いて行くと、まず、美しい芽吹きのミズキ(写真下右)の前で足を止めた。各種の樹木の芽吹きはそれぞれに美しいが、みんな天を向いてふっくらとして生命力溢れるミズキは格別である。野原で一番生命力を感ずるのがツクシなら、それに劣らぬものをミズキの芽吹きに感ずるのである。このところ雨が降り続いたし、ミズキの内部では恐ろしい程までに水が行き来し、こんな時に小枝でも折ろうものなら、延々と樹液をたらし続けるに違いない。「もうご免、謝っているのだから涙を拭いて」なんて、かつて青春時代に、異性に対して一度は口に出した言葉を繰り返しても、ミズキの涙は止らない。
 次に足を止めたのは宮田池に一本あるヤナギの仲間である。前回、樹木通のOさんにも分からなかったヤナギだ。ちょうど花も咲き始めていて、赤褐色の芽、ネコヤナギを小さくしたような銀色の花序、花が開くと緑色になる。こんな点を眼にしっかり焼き付け、家に帰って図鑑を調べれば簡単に分かると思ったのだが、それに合致するものが無い、しいて言えばバッコヤナギに似ている。これも次回からの要注意樹木となった。水車小屋前を通る小道に上って、「あれはエノキ、これはミズキ、これはネムノキ」等と指差してKさんに話し掛けたら、「どうして分かるの」と聞く。道すがら様々な被写体にカメラを向けて作画すると「どうして絵になると分かるの」との質問を受けた。このような質問はとても答えるのが大変だ。「長くやっていると樹木は立ち姿で判別できるし、写真はささっと絵になるかが分かるようになるんです」と答えるより仕方が無かった。その他、ヤマグワやガマズミの芽吹き(写真下左)を撮影したらちょうど正午となった。
 Kさんと別れて瓜久保に戻り弁当をぱくついた後、ようやく花弁に着いた雨滴が蒸発したレンギョウを撮っていると、見慣れた車がやって来た。なんと新百合ヶ丘のAさんである。「今日じゃなかったの皆が集まるのわ?」と言うので、「来週ですよ」と答えたが、やはりAさんも、もう待ってられないと我慢の限界を超えてしまったようだ。そこで午後からはAさんと連れ立って歩いた。「去年、ここらへんにアミガサタケが生えていたと言うんですが、まだ早いのかな」と一面のナノハナ畑となった谷戸見の丘へ登って行った。Aさんは桜には詳しいと言うので、前方に生えている白い花の桜を指差してその名を乞うと「オオシマザクラですね」と教えてくれた。先日の港北ニュータウン茅ヶ崎公園生態園での植物観察会で講師役のKさんが「ここはオオシマザクラがヤマザクラよりたくさんあるんです。きっと良質の炭を得るために、昔の人がせっせと植えたんでしょうね」と言っていたが、舞岡公園には花より赤褐色の葉が先に出るヤマザクラもたくさん見られた。
 その後しだいに風が強まり、本日どうしても撮影したかったキブシはいくら待てども止らない。Aさんと蝶の話をたくさんしながら車の方へ戻る途中、なんとそんな話を歓迎したのか羽化したばかりのとても鮮やかなルリシジミが現われた。羽の縁に生えている白い微毛が輝いて、より羽全体の空色を引き立てている。「綺麗ですね」と私が言うと「もうやっぱり春ですね」とAさんが言う。「午前中にお見えになった舞岡のKさんが、石砂山のギフチョウを見に行きたいと言ってましたよ」と言うと、「それでは行く時には連絡して下さい。都合がつけば同行したいので」と言うことになった。今年は大々的なギフチョウツアーで、石砂山の山頂は賑やかな春の歓迎会場となるのかもしれない。

<今日観察出来たもの>花/キブシ、モミジイチゴ、クサボケ、ウグイスカグラ、コブシ、チョウセンレンギョウ、レンギョウ、アンズ、ミツマタ、オオシマザクラ、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、アオキ、ヤブツバキ(写真上左)、フデリンドウ、キランソウ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、カキドオシ、タチツボスミレ、ナノハナ、ラッパスイセン等。蝶/ベニシジミ、ルリシジミ等。鳥/ウグイス、ジョウビタキ、アオジ、ヒヨドリ、ムクドリ、コサギ等。キノコ/タマキクラゲ、カワラタケ等。


3月23日、東京都町田市野津田公園〜小野路町

 週間天気予報を見るとオレンジ色のお日様マークがどこにも見当たらない。これは一体どうしたことだろう。もっとも、このままの暖かい陽気が続いたら桜はすぐに満開となって、神奈川県藤野町にある石砂山へ、今週末にでもギフチョウを見に行かなくてはならないところだった。きっと自然の神様は、4月1日の入学式に満開となるよう調節しているのかも知れない。しかし、こう天気が悪い日が続くのは可笑しいと思って、暦を開いて見ると、今は二十四節気で言うところの春分だから、本来はモモをはじめ各種の花木が咲き、野原一面に春の野草が咲いて、各種の蝶が飛び回る暖かい日が続くはずである。だが、3月の天候の特徴という欄を読んで見ると、真冬にたち変えったような日もあり、寒暖の気温差が激しいばかりでなく、天気も激しく変わるとある。別の本を取り出してもっと詳しく調べてみると、、西高東低の冬型の気圧配置は弱まって、移動性高気圧が足早に日本列島を通り過ぎて行く北風と南風の押しくら饅頭の季節で、前線の通過回数は春が一番多いのだとある。また、東海地方では春の天気を「降る、吹く、ドン」と形容していて、雨が降ると翌日は晴天で風が強く、また次の日は曇りになると言う事らしい。その形容は関東地方でも的を得ているのだが、今週は「降る、ドン、降る、ドン」と「吹く」がないのだからやはり可笑しいと言う事になるのだろう。
 そんな訳で今日は一日中寒い曇り日である。こんな日は花さえ咲いていれば、また、芽吹きが始まっていさえすれば、陰影がはっきりと出る晴天の日より美しい写真が撮れるから、気温が低いために大歓迎とはいかないものの小歓迎位とはなる。問題は風だ。そこで地域別の詳細気象をインターネットで調べて見ると、舞岡公園のある戸塚区が風速4mで、青葉区や町田市は風速2mとある。こうなったら風の弱い町田市へ行くしかないと、午前中は野津田公園へ、午後は小野路町へ行った。野津田公園へ行くと陸上競技場や小野路屋敷周辺は期待してた程、花や芽吹きはないものの、雑木林に入るとマユミ、ガマズミの芽吹きが美しかった。また、炭焼き小屋近くにアブラチャンが咲いていて、多摩丘陵ではあまり見かけない木の花だから慎重に撮影した。何処かで書いたと思うが、今は花が咲いているからこの木はアブラチャンと簡単に見分けがつくのだが、花が終わったら伸張した葉によって区別できなければ、アブラチャンと判別できない訳で、なんだかそれでは非常に片手落ちで、また、アブラチャンに対して失礼だと思った。必要な時だけは擦り寄って来て、必要でない時は横を向いてしまう人間が多いが、いつも擦り寄ってとは言わぬものの、それなりの配慮があってしかるべきだと思う。そんな訳で花が終わってからも、しっかりとアブラチャンを観察し続けようと心に決めた。
 午後からはまたしても小野路町だ。今日は風が無いから撮り残していたキブシとモミジイチゴの花を撮ろうと思ったのである。両方とも小野路町ではちょうど撮影の適期で、やはり横浜市の舞岡公園等に比べると開花が遅い。風が無いとは言え、いくらか吹いているのだから撮影にはやはり難渋したが、いつも先送りしていて撮り逃がしていたので、かなり時間は取られたが慎重に撮影した。前回、トガリアミガサタケの生えている場所へ行ったら、4日前に生えていた形の良いものが無くなっている。まさか人が採集したのでわ?との疑問も沸いたが、数は少し少なくなったとは言え、まだたくさん生えている。キノコの命も花の命と同様に短いのだ。前回はキノコの生えてる風景を広角接写で撮影できなかったので、今日はなんとか撮ろうと思ったのだが、今一絵にならない。そこで地上に顔を出したばかりの灰色の可愛らしいちびっこキノコを撮影した。隣接する湿地にはハラタケ類のキノコがたくさん出ていたが、撮影しても種名が分かりそうもないので、これはキノコ屋さんに任せて急坂を登って行った。
 尾根に上がってTさん宅に隣接する墓地まで来ると、先日の植物観察会で教えてもらったシキミが花を付けて咲いている。シキミはモクレン科に近い仲間だと教えてもらったが、近縁だがシキミ科として分類してあるようだ。「うちの方の田舎ではいつも墓にシキミを供える」と、植物観察会に同行した方が言っていたが、小野路町においても墓場に植えられている。図鑑を開くとシキミは全体が有毒で特に果実は猛毒とある。その名の謂れは「悪しき実」がなまったものではなかろうかと書かれているが、墓前に供えるところをみると、その毒で悪霊等の邪悪なものを追い払うという意味で用いられているのだろう。花は黄白色で細い柔軟な花弁を何枚も持ち、かなり見ごたえのある花であるが、まさか墓地に入って写真をとる訳にも行かないので、撮影は断念した。
 今日の雑木林で一番美しかったのはなんとタマキクラゲと言うキノコである。キノコと言ってもキクラゲの仲間だ。キクラゲやアラゲキクラゲと同じように食べられる。最近見えなくなったが、元気の良い火曜日にバイクで来るご婦人が一生懸命タマキクラゲを集めていたのが懐かしい。冬の間は空気が乾燥していて黒く縮こまっていたのだが、前日の雨を吸ってまるで褐色の光り輝く小さなマシュマロのように美しい。このところ続いている雨は、やはり恵みの雨で、本格的な百花繚乱の前のしばしの貴重な慈雨なのである。

<今日観察出来たもの>花/アブラチャン(写真上左)、シキミ、キブシ、モミジイチゴ(写真上右)、クサボケ、ウグイスカグラ、コブシ、チョウセンレンギョウ、レンギョウ、ユスラウメ、カントウタンポポ、キランソウ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、カキドオシ、タチツボスミレ、オオアラセイトウ等。キノコ/タマキクラゲ(写真下左)、トガリアミガサタケ(写真下右)等。


3月21日、横浜市都筑区大原みねみち公園〜茅ヶ崎公園生態園

 今日は午後から茅ヶ崎公園生態園での植物観察会及び植生報告会があるので、午前中だけの観察及び撮影となり、茅ヶ崎公園生態園に隣接する大原みねみち公園へ行った。芽吹く枝に止るカワセミを撮ろうと思ったのである。もちろん、公園内に植えられたり自生している樹木の花も、ついでに撮影しようと考えていたのは言うまでも無い。大原みねみち公園に着くと植栽されているコブシが満開である。本当は、一昨日行った小野路町の雑木林等に自生するコブシの花を撮らなければいけないのだろうけど、それはそれは非常に難しい。山野に自生するコブシの花弁は裏も表も純白だが、植栽されているコブシはほんのりと花弁の付け根近くの裏側が赤紫色を帯びているものもある。最近、近縁のシデコブシ(ヒメコブシ)が植栽されている事も多いので、花の様子を慎重に観察しないとお叱りをこうむる記述となってしまうから要注意である。コブシは厳密には外側に小さな花弁が3枚あるらしいが、やや幅広な花弁が6枚、シデコブシは細長くて縮れている花弁が12〜18枚もあるから、慣れれば見間違うことはまず無いと思われる。
 コブシの花を撮っているとカワセミが飛んで来て目の前の木に止った。しかし、どう見ても絵になる場所ではない。どうせカワセミ君は午前中はずっと大原みねみち公園にいるはずだからと、池のほとりにあるアカシデの花を撮りに行った。アカシデの属するカバノキ科クマシデ属の4種、クマシデ、サワシバ、イヌシデ、アカシデの見分け方は残念ながらしっかりと身に付けていない。いつも今年こそはと思うのだが、この4種の冬芽、葉痕、花、実、葉、樹肌等をしっかりと写真にとって頭の中に叩き込めば良いのは分かっているものの、まあその内にと先送りしてしまって、もう何年も過ぎている。もちろんその他の樹木ももちろんの事、草本植物やキノコに関しても同様である。だからいつまで経ってもウィークエンド・ナチュラリストで、なかなか学問的に深く掘り下げようとしないのだ。動植物の名前は本気にならないとなかなか頭に定着しないもので、人に教えてもらってもすぐに馬耳東風がごとくに頭から去って行く。それでも樹木に関しては、舞岡公園にて樹木通のOさん等と歩いているから、だんだんと見分けられる種類数が多くなって来た。もっとも、動植物やキノコの名前をそれ程知らなくとも、充分に里山歩きが満喫出来てしまうのだから、自慢は出来ぬものの、得難い特技の持ち主と言えよう。
 今日はあまり風は無いのだが、まるで暖簾のように垂れ下がる格好のアカシデの花は、ちょっとした風にも揺れて、待ちに待ってなんとか撮影した。お次はと辺りを見回すと、チョウセンレンギョウとヒュウガミズキが咲いている。一昨日のリベンジと、ああでもないこうでもないと作画しながら、なんとか無難なカットをカメラに納めた。雑木林に入るとウグイスカグラはやや生気を逸していて写欲がわかぬものの、エゴノキの芽吹いたばかりの小さな葉が、みんな青空に向かって枝から立つように並んでいる。逆光でみるととても美しい。芽吹きや新緑はあっと言う間に過ぎてしまい、カツラは言うまでも無く、ガマズミ、コナラ、ミズキ、イボタ等、たくさんの好きな芽吹きがあるものの撮り逃していたが、その中でもエゴノキはとっても撮りたかったから、今がチャンスとばかりに慎重に作画して撮影した。
 さてとこれでフィルムはちょうど終わったし、デジタル一眼レフカメラにしてカワセミ君を撮ろうと機材を変えて池の周りをうろつくのだが、カワセミ君の姿がどうしても発見できない。このところ日がだいぶ延びたから日の出も早く、おまけに昨日は一日中雨だったからカワセミ君はお腹をすかせていて、早起きして餌を捕り、もう満腹してしまって昼寝タイムになったのかも知れないと諦めていたら、変わりに里山からもう去ったと思っていたジョウピタキの雌が現われた。色合いは雄に圧倒的に負けるものの、その可愛さは抜群で、ご婦人に大人気のお嬢(ジョウ)さんだ。本当にまん丸の目はとっても可愛い。その他、この港北ニュータウンに常住しているオナガが多数現われたのだが、近づくとすぐに逃げてしまう本当に撮影の難しい野鳥である。しだいに気温は上がって、池の周りにはモンシロチョウが飛び、暖かい春が一杯となった。まさか春だから、春眠暁を覚えずがごとくに、カルガモがのんびりと日向ぼっこをしている。まん丸な胸が春の陽に美しく輝き、より暖かさを演出しているかのように感じられたのでパチリとシャッターを切った。
 午後からは冒頭に記したように茅ヶ崎公園生態園で植物観察会及び植生報告会に出席した。わざわざこの催し物のために新島からY先生がお見えになった。どんな植物が見られたかは大切に守り育てている場所だから割愛するが、林床にたくさん生えていた20cm程のシラカの幼樹が、なんと芽生えてから5年も経っていることを教えられてびっくりした。もちろん、年数の数え方も教えて貰い、動植物、キノコの名前を覚えるのは本人のやる気で観察会などに出ても身に付かないと思っていたが、種名を教えるだけではない興味深い話をしてくれる観察会なら、これからも参加しようと思った。何らかの興味深い話と一緒に種名を教えて貰えれば、老化現象の激しい私の頭脳だって、しっかりと種名を固定出来るに違いない。植生報告会の会場に行く途中、ヒイラギナンテンが咲いていたので、早速、舞岡公園でOさんに教えてもらった“雄しべの根元を細い小枝等でくすぐると雌しべにくっつく”という実験を披露してみた。この現象はみんな知らなかったらしく、好評を得たのは言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/タチツボスミレ、シュンラン、ヒメカンスゲ、ウグイスカグラ、モミジイチゴ、アカシデ(写真下左)、コブシ(写真上左)、チョウセンレンギョウ、モクレン、ハクモクレン、サンシュユ、ハナモモ、ツバキ、ソメイヨシノ、オオシマザクラ等。蝶/モンシロチョウ。鳥/ジョウビタキ、カワセミ、オナガ、カルガモ(写真下右)、ヒヨドリ、ムクドリ、ハクセキレイ、スズメ等。その他エゴノキの芽吹き(写真上右)等。


3月19日、横浜市青葉区元石川町〜町田市小野路町

 やはりこの時期、青葉区元石川町の小高い丘にある桃源郷を見に行かなければ気が落ち着かない。切花用のハナモモがたくさん栽培されていて、一面ピンクの花の中を散歩するのは格別である。昨日は風雨が強く、一昨日は風が強くと春独特の天候で行けずじまいとなって、ことによったら花は散ってしまったかなと思ったのだが、しっかりと枝に残り、今日が満開の最適期であった。しかし、まだ風がいくらか残っていて撮影を梃子摺らせるが、なんとか1カットは撮影出来た。ハナモモだけでは物足りないので付近を散策したが、真っ白にこぼれんばかりに咲いたユキヤナギやクリーム色のヒュウガミズキ、咲き始めたばかりのチョウセンレンギョウやカイドウ等、撮りたい花がたくさんあるのに風に揺れて止らない。ことにヒュウガミズキは16年も写真を撮ってるのに、一枚として良い写真が無いのだから、こ時期、風が強いからということだけでは無く、作画するのに難しい花なのだろう。
 そんな訳で大いに期待して来た割には成果が上がらず、早々と元石川町を後にする。午後からは生田緑地へ行って、鳥の写真を撮ろうかなとも思ったのだが、いつも同じ野鳥観察小屋からだと似たような写真しか撮れないと、またしても小野路町へ行った。小野路町の谷戸は周りを雑木林の丘で囲まれているから、だいぶ風が弱く、気温は低いものの春が一杯である。ますます春を彩る野の花が美しく盛んとなり、キランソウ、カントウタンポポ、オオイヌノフグリを撮影した。万松寺谷戸の小道に入り、谷戸奥に目を転じるとコブシが純白に咲いている。5日前に来た時には咲いていなかったから、物凄いスピードで春が進んでいることになる。
 広々とした草原に敷きものを敷いて、どっかりと腰を降ろして昼食を撮っている方がいる。その方の傍らを通り過ぎようとした時に、踏み固められて生育がいちぢるしく損なわれた草地に、一輪可愛らしいカントウタンポポが地に接するがごとくに咲いている。こんないじらしい命を見てしまうと、いつも胸がキュッと締め付けられてしまうだ。まったくいい歳こいて少女趣味も良いところであると思いながらも、絵になる部分を素直に切り取った。食事中のくつろいだ方のすぐ後ろで三脚を立てて、もぞもぞと撮影しているのは誠にすまない事だと思って、「お食事中すいませんね。写したいものがあるんで」とその中年の方に声をかけた。もちろん快い返事が帰って来たことは言うまでもない。聞くところによると世田谷からここまで何べんも足を運んでいるのだと言う。この方も自然が大好き、小野路が大好き、孤独な心を慰めにやって来ているお仲間なのだと、撮影が終わると「無事撮影が終わりました」と軽く会釈をした。
 前方谷戸奥に二人の若者が私の方を見ながら話し込んでいる姿が目に入った。生憎の乱視と今日は花粉が多く飛んでいるためか目がしょぼしょぼして誰だか判別がつかない。しかし、谷戸入り口にハンドル名「森のキノコ」さんこと多摩市のKさんとハンドル名「マムシの421」さんこと町田市のYさんの車とバイクが停めてあったので、そのお二人ではないかと近づいて行く。近づいて行くに従って、格好の良い若者に見えたお姿がお歳なりの中年に見えて来た。「やあ、お久しぶり、今日は金曜日なのにどうしたの」と聞くと有休をとってやって来たのだと言う。デジタル一眼レフカメラを買ってから、私と同じように野鳥撮影にもはまり込んだKさんと野鳥の話ばかりして、蛾と蛇がお好きなYさんには失礼と思っていたら、なんとYさんはその昔とんでもなく夢中になって野鳥観察及び撮影に嵌り込んでいたことが分かった。みんな本当に生き物が大好き、小野路が大好きなのだ。
 しばらく野鳥に関する楽しい話をした後、Kさんがトガリアミガサタケがたくさん生えていたと言うので案内してもらった。トガリアミガサタケは丸っこい格好のアミガサタケとは異なって、尖がり帽子のような格好をしている。また、フランス料理では有名な食菌だから、生えてる場所はここでは紹介できない。広大な地方のフィールドであるならば問題は別だが、ほんの僅かに残された貴重な首都圏の雑木林なのだから、人の胃袋に入ることをキノコ達ばかりでなく散策する方も望むまい。あの美しい小野路のタマゴタケも、毎年、心無い方の胃袋にしこたま飲み込まれているのである。「誰か採りに来て無くなってしまうかもしれない」とKさんが言うので、図鑑的な平凡な写真にはなるが、なるべく美しく可愛らしく撮影した。その後、一人になって雑木林を散策したが、キノコの世界でもトップバッターが現われたように、ますます各種の花が咲き、木の芽は吹いて、本当に春は急ピッチである。ますます、小野路行きの間隔を開けづらくなる季節となった。

<元石川町で今日観察出来たもの>花/ハナモモ(写真上左)、ハクモクレン、ユキヤナギ、ツバキ、チョウセンレンギョウ、ヒュウガミズキ、カイドウ等。蝶/モンシロチョウ等。鳥/キジ等。
<小野路町で今日観察出来たもの>花/カントウタンポポ(写真下左)、キランソウ(写真上右)、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、カキドオシ、モミジイチゴ、ウグイスカグラ、コブシ、タチツボスミレ等。蝶/モンシロチョウ、ベニシジミ等。鳥/モズ等。キノコ/トガリアミガサタケ(写真下右)等。


3月16日、神奈川県平塚市土屋遠藤原〜秦野市権現山

 「今日もまたツクシ」なんて皆に笑われてしまいそうだが、丹沢や富士山や箱根連山をバックとしたツクシの撮影に、平塚市土屋の遠藤原(写真上左)に出かけてみた。しかし、晴天とは言え生憎霞みがかった空のために、大山はなんとか薄っすら見えるものの、富士山や箱根連山はまるっきり見えない。そんな訳で今日の撮影目的は着いた途端に叶えられなくなったが、雲雀囀る暖かで広大な丘の上の畑を散策するのはとても楽しい。私が一番好きなフィールドは何べんも書いているが、谷戸と雑木林で代表される小野路町、図師町であるが、その次に好きなフィールドと言ったら、この平塚市土屋周辺だろう。ことに遠藤原と呼ばれている見渡す限りに広がる丘の上の畑は、首都圏各地を歩いてもなかなか見つけられない素晴らしい景観で、こんなに素晴らしいのに訪れる方はほとんど無く、農家の方が農作業に精を出しているだけである。「どうしてそんなに遠藤原が好きなの」と質問されたら、「人間の営みの匂いがぷんぷんして、とても心が朗らかになるから」と答えるに違いない。
 冒頭に記した様に丹沢や富士山や箱根連山をバックとしたツクシの撮影は諦めたのだが、毎年、恒例となっている場所に赴いた。今日はちょうど良い具合にツクシが2本並んで伸びている。しかも、脇役とするツクシもちょうど良い位置に生えている。しかし、前方の大山は相変わらず霞んでいるから背景の中に写しこめない。このようにイメージ通りになかなか撮影できないから、写真は止める事が出来ないのだ。それでも暖かい青空をたくさん入れて撮影したのは言うまでもない。遠藤原の何処を見渡しても春が一杯で、小麦は緑にすくす伸び、ナノハナが咲き、ダイコンか咲き、ブロッコリーや小松菜までも咲いている。いつものように万民安寧の石碑の前に出ると、もう何べんも撮影しているのだが、またパチリとシャッターを切った。村民安寧では無く、万民安寧と書いてあるのが素敵で、もちろん、遠来の客とはいえこの私も入っているのである。
 これから夏野菜の種を撒くのだろう、トラクターで広大な畑が綺麗にならされている。ふと畑の傍らを見ると、鋤きこまれなかった小さなノボロギクが可愛らしく咲いている。野草好きはスミレやラン等の希少種が好きだから、ノボロギクなんて目もくれないに違いないが、そんな路傍のしかも帰化種である雑草をとても美しく撮影したくなった。ノボロギクは漢字で書くと野襤褸菊だから、野に咲くどうでもよい襤褸(ボロ)のような菊と言うことになる。ちょうど良い具合に2本並んで咲き、背景も美しいので、広角レンズを使って広々とした中に咲く姿を切り取った。ノボロギクを撮影し終わると、この世の中に生きる私も含めた多くの人々、また、過去に生きていた人々も、広大無辺の宇宙や悠久たる人類の歴史から見れば、みんな野襤褸菊なんだという思いがこみ上げて来た。人間は菊ではないから野襤褸人と呼んだ方が良いのかも知れないが、少しぐらい出世してお金持ちになったとしても、人間は多かれ少なかれ、みんな広大無辺な野に咲く野襤褸人なのである。
 もう遠い昔となってしまったが、青春の挫折を引きづって、まるで酸素不足の水槽の金魚のようにパクパクと口を空けて暮らしていた頃、取引先の小さな出版社の社長さんが、インドの大詩人であるタゴールの話を良くしてくれた。その社長さんはタゴールに心酔していて、苦労を続けながらもタゴール全集を刊行したのである。一番印象に残っているのは今も金科玉条になっている「瞬間を永遠として生きなさい」という言葉である。非常に含蓄溢れるもので、私はその時、一瞬一瞬に永遠を見、一瞬一瞬が永遠となるように生きなさいと解釈した。すなわち、どんな路傍の野襤褸人でも、永遠を見ること感じ取ることの自由は持っている訳だから、たかが野襤褸人でも、いつも永遠を呼吸する事が出来ると言う訳である。私が性懲りも無く夢中になって続けている写真は、まさに一秒の何分の一かの瞬間をシャッターで切り取る訳だが、そこに何らかの永遠性が写し込まれていれば、たかが写真と言えども、感動出来る作品が撮れるのではなかろうかと思っているのだ。
 随分長々と説教坊主になってしまったが、午後からは権現山の野鳥観察施設に行った。金目川のヤマセミにも会いたかったのだが、ブラインド無しではブラインドを張ってる方々に失礼と思ったのである。途中、ヤマセミのポイントを通った時、車から覗いて見ると、今日もヤマセミ君は元気で、やはり3人の方が迷彩のブラインドを張っていた。権現山に着くと大好きな可愛らしいヤマガラがたくさん出迎えてくれた。お出ましになった鳥達は既に撮影済みの種類ばかりであったが、心に残る写真を一枚でも撮ろうとかなり頑張った。その結果、目的のヤマガラの写真は撮れなかったが、なんとか風情溢れるツグミの写真を手に入れる事が出来た。今日は平日だからデジスコの青年が一人と、鳥見のご婦人が一人で、野鳥の話をしながら普通種だとは言え、たくさんの野鳥がお出ましになって、やはり権現山はとっても楽しい野鳥観察場所だと再認識して帰宅の途に着いた。

<遠藤原で今日観察出来たもの>花/ツクシ(写真上右)、スイバ、ノボロギク(写真下左)、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ(写真下右)、ナズナ、ハクモクレン、ユキヤナギ、ツバキ、チョウセンレンギョウ、レンギョウ、ナノハナ、ダイコンの花、ブロッコリーの花、コマツナの花、ビオラ、ラッパスイセン、スノーフレーク等。蝶/キタテハ、モンシロチョウ、ベニシジミ等。鳥/ヒバリ等。
<権現山で今日観察出来たもの>花/タチツボスミレ等。蝶/ミヤマセセリ等。鳥/ルリビタキ、ジョウビタキ、シジュウカラ、ヤマガラ(写真上)、シメ、アオジ、メジロ、ツグミ、ヒヨドリ等。


3月14日、東京都町田市小野路町・図師町

 ここ数日、里山各所を回ったから、これで今見るべきもの撮るべきものにほとんど全て遭遇したと思われるかもしれないが、そんな短時間で簡単に事が済むほど里山の生き物の多様性は低く無い。また、これからの季節、フィールドは日々急速に変化して行くので、3日空けたら大変貌を遂げていたなんて事もざらなのである。そんな訳で一週間とはたっていないももの、また、昨日行った黒川の隣のフィールドだと言うのに、所変われば品変わるの例えのように、小野路町や図師町は黒川にはない自然が溢れているので、また多摩丘陵の人となった。もっとも、地理的には黒川は多摩川水系で、小野路町や図師町は鶴見川水系だから、丘陵続きとは言うものの、感覚的にも何らかの差異があるように思われ、動植物相に於いてもいくらか異なっているのだろう。
 先日、昔勤めていた会社に遊びに行った。元同僚や元部下が、私が勤めていた頃と同じ変わり映えのしない仕事に精を出しているのを見て、どうして同じ事をずっと続けていて飽きないのだろうと不思議に思った。もっとも、家庭の主婦だって、食事作り、掃除、洗濯等の家事を結婚してからずっと飽きずに繰り返しているのだから、これまた頭が下がる事である。こう言う私も、あいも変わらずに多摩丘陵へ足を運んで、毎年、同じようなものを同じように撮影しているのだから、端から見れば、どうして同じ事をずっと続けていて飽きないのだろうかと、不思議に思われているのかもしれない。私なんぞ何でも首を突っ込むミーハーだから撮影対象がとても広く、多摩丘陵と言えども生き物全てを撮り尽くすなんてことは考えられないのに、その季節になるとどうしてもこだわってしまう被写体がある。その一つが今日のまず第一の撮影目的であるツクシン坊だ。
 先日来た時には生憎の曇り空となって、青空に抜いたツクシを撮影できなかったので、とても心残りだったのである。いままで青空に抜いたツクシを何カットも撮影しているのだが、本当に気に入っていて大伸ばしをして額に入れて飾りたいと思う写真が撮れていないのだ。また、多摩丘陵で撮影してこそ価値があると思っているので、今日もまたまた牧場周りのコースを取った。ここは段々畑となっていて、農道から見上げた形でしかも順光でツクシを撮影出来る。一口にツクシとは言うものの伸び切ったツクシではなく、伸び始めの生命力溢れるものが好きで、しかも単独で生えているものではなく、何本かが一緒に生えていないと写真として面白くないのである。何べんも書いていると思うが写真は背景処理と脇役の活用である。
 ツクシは前述したようなベストショットとは言えないものの何とか無難に撮影をこなし、辺りを見回すとスイバが生えている。このスイバの小さな赤い蕾が先端に粟粒状に集まったすーっと伸びた花穂も好きで、何本も立っている株を見つけて、これまた春風による揺れに悩ませられながらも青空に抜いて撮影した。おそらく暖かい春の青空、すーっと伸びたツクシやスイバが好きなのは、生まれ持った暗く孤独な性格とは異なった、未来に向かって逞しく伸びようとする明るい生命力に満ちた姿に、羨望と渇望の念を抱いて、思わずパチリとしてしまいたくなるのだろう。言わば私の内面とは正反対の鏡を見ているような心地になるのだ。あたりを見回すと、たくさんのスイバが各所で濃緑色の葉を広げている。こんな場所は、もちろんスイバを幼虫が食草とするベニシジミの格好の生息場所で、今日は複数の個体が互いに戯れあって飛び、やって来た春の喜びを身体一杯に表していた。
 さてとお次は丘の上の植え溜めのハクモクレンを見に行こうと腰を上げたら、携帯電話が鳴った。今日は日曜日なのに誰れだろうと電話に出ると、このフィールドに魅了されたMさんであった。「何か良い被写体がありますか」と言うので、「僕にはとっても楽しい被写体ばっかしですけど、風景派のMさんにはどうかな」と言うと、すぐ行きますということになって、Mさんがやって来た。ハンドル名を快速五反田号と称して、図師町の五反田谷戸の主なはずなのに、最近、被写体の多い牧場周辺に出没するようになった。「快速小野路号と名を変えなくては駄目ですね」等と冗談を言って、オオイヌノフグリの美しい青い海となった梅畑でしばし談笑した。Mさんによると美しい竹林ではもう竹の子が顔を出していると言う。しかも、竹林脇のサンシュユは満開で美しく、なおその先にはハクモクレンがたわわに咲いて青空に浮かんでいるのだから、風景派のMさんでも被写体にことかくことは無かろう。
 「それではお先に行きます。お昼に五反田谷戸で会いましょう」と別れを告げると、モンキチョウやスジグロシロチョウと戯れたり、遠くに咲くハクモクレン、ハナモモ、ナノハナ、サンシュユ等を鑑賞して、雑木林に入るとウグイスカグラ、モミジイチゴの花を愛で、早くも咲き出したシュンラン、ヒメカンスゲ、ニオイタチツボスミレ、クサボケ等を写し、コウヤボウキの独特な可愛らしい芽吹きに魅了されながら、五反田谷戸へ降りて行った。前回は咲いている花がちらほらだった溜め池回りのネコヤナギはほとんど満開となっていたのにはがっかりしたが、休耕田にはなんと今年初めての雑木林の住人たるミヤマセセリが2頭も軽やかに飛んでいてとても嬉しくなった。
 やがてMさんが息せき切って降りて来たので楽しく談笑しながら食事を撮ると、私はモズを撮影しに、Mさんはどうした心変わりが生じたのか定かではないが野の花を撮るのだと万松寺谷戸へ連れ立って行った。「たくさんの鳥を見て撮影しましたが、やはりカワセミとモズは良いですね」と、元野鳥撮影専門だったMさんに言うと、「自分が気に入った数種類の野鳥を追うのもいいんじゃない」と言う。その後、ファインダーの中にモズの姿をとらえる度に、モズの魅力を充分に堪能した。今回は早足の自然観察及び写真撮影となってしまったが、一日では充分に消化しきれない、本当に広大で魅力溢れる早春の小野路町、図師町であった。

<今日観察出来たもの>花/ニオイタチツボスミレ、タチツボスミレ、クサボケ、シュンラン、ヒメカンスゲ、ツクシ、スイバ(写真上左)、ヘビイチゴ、カキドオシ、レンゲソウ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、ナズナ、タネツケバナ、オオアラセイトウ、ウグイスカグラ、モミジイチゴ、ハクモクレン、サンシュユ、ハナモモ、ネコヤナギ(写真下左)等。蝶/ミヤマセセリ、ルリタテハ、キタテハ、モンシロチョウ、モンキチョウ、ベニシジミ(写真上右)等。鳥/モズ(写真下右)、ツグミ、ハシボソガラス、ムクドリ等。


3月13日、神奈川県川崎市麻生区黒川

 昨日の寒さが嘘のように、今日は暖かく穏やかな晴天である。昨日、舞岡公園で植栽された木の花をだいぶ撮ったし、元石川の桃源郷のハナモモもまだ早い。そこで富士山と丹沢をバックにしたツクシを撮りたいと思ったのだが、今日は土曜日だから帰りの渋滞が心配である。しかも、西の方を見ると、なんとなくもやっていて抜けるような青空では無いようだ。そこで黒川の美しい雑木林(写真上左)へ行くことにした。前回、田んぼが埋め立てられて変貌する黒川を嘆いたと思うが、美しい雑木林は健在だから、気の早い野の花が咲いているのではなかろうかと思ったのである。いつもの場所に車を停めていざ雑木林へと思ったものの、まだ時間も早いことだからと、ちょいと寄り道がしたくなった。
 まず最初に撮影したのはなんとキウイの葉痕である。前にも撮影していたし、またキウイとも思ったが、柔和なおかめ顔が笑っているので撮りたくなった。私が撮影している生き物達の一つのグループを取り上げて、専門的に掘り下げて研究して行く気は今のところ無い。それでもコレクター的な趣味は持っているから各ジャンルにおいて、かなりの種類数を集めているのは確かである。だから冬芽と葉痕も、もうちょっとという気はあるものの、写真と言うアートとしての被写体としても冬芽と葉痕は味わい深いものがあると感じている。そんな訳で今日もキウイを前にして、どうしたら、いつまで眺めても飽きが来ない写真として作画出来るだろうかと頑張ってしまった。撮影している時に親子連れが不思議そうな目を向けたが、男女の恋愛と同じく、他人様には到底理解できない訳だが、その魅力を他人様でもたやすく理解できるように美しく撮りたいと思っているのだ。小説と言えばなんと言っても恋愛小説だが、この理解し難い男女の恋愛を書いて、なんとなく理解出来たと思わせる訳だから、あながち不可能とは言い難い。
 キウイの葉痕の撮影が終わると、建物の影になっているためか芽生えが遅れたフキノトウが、瑞々しい姿でたくさん生えているのに気づいた。前にも何処かで書いたような気がするが、春の植物の中でフキノトウとツクシは異色の存在だ。何べん撮っても撮り飽きず、また、これが最高傑作と呼べる作品がなかなか撮れない被写体でもある。以前、新潟県でフキノトウやツクシが群生している場所に出合ったことがあるが、背景が生まれ育った横浜の丘陵地帯とは異なり、取り巻く空気や射し込む太陽光線も異なっていたためか、心に馴染む写真が撮れなかった事を思い出す。恐らくフキノトウやツクシは、幼い頃の夕焼け小焼けのような世界で、美しく撮れれば良いと言う訳でなく、撮った本人がほのぼのとした郷愁を抱けるような作品でなければならないようだ。やはり数ある春の植物の中でも、フキノトウとツクシは格別なる存在なのだ。
 今日は時間が経つにつれて気温がぐんぐん上昇して行く。雑木林の裾の小道には越冬明けのキタテハは勿論のこと、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、モンキチョウ、ベニシジミが飛んでいる。しかし、何となく今の季節のこれらのチョウ達は、飛び方がぎこちない。これは一体どうした訳なのだろうといつも思う。昆虫は親から教えてもらう訳ではなく、遺伝子に飛び方もインプットされている訳だから、すんなり飛べてしかるべき筈である。多分、私たち人間が感じている程には気温が安定した高さではないのだろう。それにしても可憐なべニシジミがオオイヌノフグリやトウダイグサ等の春の野花に囲まれて、すぐに温度が上がる褐色の乾いた落ち葉の上に止って日光浴をする姿は、いつ見ても感動的である。最も普通種であるベニシジミとは言えども、小さい身体の幼虫で、良くぞ冬を越したと拍手を送りたくなるのは、蝶好きの方の総意ではなかろうか。
 こんなにたくさんの蝶が見られたから、ことによったら美しい雑木林にミヤマセセリが現われているかなと期待したが、残念ながら飛んでいなかった。しかし、こんなに綺麗に山掃除して大丈夫なのと心配する程に地表が出た林床に、タチツボスミレは勿論のこと、可愛らしいアカネスミレがたくさん咲き始めていた。この雑木林はこの季節、一日居ても楽しくなる陽気さに満ちているが、今日はどんな花が見られるかと林床に注意して歩くと、時々、ウサギの独特な糞を見つけて苦笑する。もちろん、コナラの実は弾けて芽が伸び、早くももジュウニヒトエが立派に伸張して、春の光りをたっぷり飲み込んでいる。しかし、なによりこんなに強度に山掃除されても、もうじき弾ける小さな蕾をつけたクサボケは印象的で、刈られても刈られてもなお芽を出し花をつけるクサボケ、なぜか、いつも希望を抱いて前向きに生きるマッチ売りの少女に遭遇したようで、そんないとおしい命を素直に撮影して、今日の黒川の散策を終わりとした。

<今日観察出来たもの>花/アカネスミレ(写真下左)、タチツボスミレ(写真下右)、クサボケ(写真上右)、ツバキ、フキノトウ、ツクシ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ウグイスカグラ等。蝶/キタテハ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、モンキチョウ、ベニシジミ等。


3月12日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今日は約2週間ぶりに舞岡公園へ行った。別段、大それた目的がある訳ではないが、自然好きが月2回お昼に集まって瓜久保の家で弁当を食べ、午後からカメラ片手に散策をすると言うだけの集まりである。誰がリーダーと言うわけでもなく、皆が主役で、わいわいがやがや一回りして帰って来るという、ただそれだけのことなのだ。普通、このような集まりは自然観察会と称されるのだろうが、そんな堅苦しいお勉強会ではむろんない。舞岡公園へ行く途中、車の中でショパンのCDを聞いた。CDと言ったって100円ショップで購入したものだから音質が良好と言う訳でもないが、ショパンの繊細なピアノ曲を聞いていると、本当に大それた事だが、ショパンの曲の様な写真を撮ってみたいと思うのだから笑ってしまう。時には軽快に美しく、時には豪華絢爛に、時には物悲しく哀愁を帯びて、そんな写真が撮れたらどんなに良いかしらと夢想していたら、すぐに舞岡公園に着いた。
 今日はいつものコースと異なって、市営地下鉄舞岡駅を目指して下って行った。来る途中、虹の家周辺に様々な早春の花が咲いていたからだ。まずは瓜久保の家の脇に咲いているミツマタや、やっと咲き出したブンゴ(豊後)を撮影した。ブンゴ(豊後)は最も遅く咲く梅で、ほんのりとした薄ピンクの花は、各種のウメの品種の中でも現代的な趣のあるアンズ系の実梅である。有り難い事に瓜久保にはアンズも植えられていて、こちらはやっと蕾が膨らんで赤い花弁が見えはじめていた。虹の家の周りには鮮やかな黄色のトサミズキが咲き始め、その傍らには宝石のような輝きを持つ小さな釣鐘状の花を房状にたくさんつけたアセビが咲いている。しかも、白の花の株と淡い紅の花の株の両方が植えられている。もちろん、写真としては紅色の方が好適で、今日は曇り日だから艶やかに美しく撮影出来た。
 虹の家の周辺の草地には、特異な格好のヒメオドリコソウの群落が各所に見られる。もし、ナナホシテントウのように小さな身体だったら、ヒメオドリコソウは大きな樹木で、きっと鬱蒼としてはいるが明るい森に迷い込んだように感じられることだろう。ヒメオドリコソウの群落を見ると、いつもそんなメルヘンの世界を想像させられて、とっても楽しくなるのだ。もちろん、ヒメオドリコソウ以外にも、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、トウダイグサ、ナズナ、コハコベ等が咲いていて、何処を四角く切り取っても宝石箱の中を覗いたように綺麗である。やって来た春は至る所に見られるのだが、そんな道端の傍らの草地の野花達の宝石箱は、何ににも負けない春だと思うのは私だけだろうか? そんな煌びやかなジュータンにキタテハやベニシジミが吸蜜に現われたら、それこそ最高で、外国の春を知らないくせに、日本の春って良いなと一人ごちるのだから飽きれてしまう。
 舞岡駅目指して、途中、オウバイやブンゴやユキヤナギを撮影したりて歩いて行くと、駅のほうから「瓜久保の家で弁当を食べる会」のメンバーであるご婦人三人が歩いて来た。しかし、遠くから見ているとまるでお酒にでも酔ったような千鳥足である。それは無理もないことで、ネコヤナギ、トサミズキ、オカメザクラ等が咲き、道脇の田んぼにも様々な野花が咲いているのだから、もう見るもの一杯、撮るもの一杯で、一直線に歩いて来る等ということは不可能なのだ。「こんにちわ、お久しぶり、今日は寒いですね」と声を掛けると、「冬のような寒さでは無いから大丈夫よ」と、生憎の曇り空と寒さなど何処吹く顔で、目を輝かしてキョロキョロする。これだから自然好き、写真好きの方々と、なんにもお勉強にはならなくとも散策するのはとても楽しい。
 しかし、今日は一つだけとても楽しいお勉強をしてしまった。このHPで御馴染みの鎌倉宇宙人集団の姉御である一人静さんが、「ヒイラギナンテンの花の雄しべの根元を細い草の茎でくすぐると、雌しべに雄しべが近寄って行くって書いてあった」と言うので、弁当を食べた後、たくさんのヒイラギナンテンの植えられている水車小屋で試したところ、かなり早いスピードで雄しべが雌しべに近寄って行くのである。一人静さんによると、「細い草の茎でくすぐる振動は、ちょうどハナアブ等の昆虫がやって来たのと同じ振動で、より花粉が確実に昆虫の身体に着くようにとのヒイラギナンテンの知恵なのでわ」と言うことになった。いい歳こいた熟年グループが、ヒイラギナンテンに「虫が来たよ」と騙して喜んでいる姿は、やはり「瓜久保の家で弁当を食べる会」のメンバー達は、ちょっと宇宙人的であると言われても仕方があるまい。午後3時を回って雨が降って来たが、そんな事は些細なことで、今日もとっても楽しい散策となった。

<今日観察出来たもの>花/ミツマタ(写真上右)、ブンゴ(写真下右)、オカメザクラ、ユキヤナギ、ネコヤナギ、ヒイラギナンテン、トサミズキ(写真下左)、アセビ(写真上左)、オウバイ、ツバキ、ハクモクレン、キブシ、キュウリグサ、ツクシ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、コハコベ、ウグイスカグラ等。鳥/コサギ、カワセミ、シメ、ヒヨドリ、ムクドリ、アオジ、ジョウビタキ等。


3月10日、神奈川県川崎市多摩区生田緑地

 昨日は寒かったことや日ごろの疲れが溜まっていたためか、朝起きたら鼻水とくしゃみが出た。これで私も普通の人間だった証拠が出来た。しかし、熱が無いからお客さん回りをして来た。なにしろ3月に入って7日までに、数えてみたら5日間も道端自然観察及び写真撮影をしていたのには我ながら驚いた。すなわち仕事は2日間しかしていなかったし、家庭サービスは何もしていなかった訳である。これではまずいと少しは仕事をし、会社をリストラされて独立して以来、週末未亡人から毎日未亡人化しつつある女房を、たまには温泉へ連れてってあげなくては等という反省が生まれたのだから大したものである。前にも書いたと思うが、私が卒業した高校のスローガンは「平凡主義」である。これはとても含蓄溢れるもので、各人各様に解釈は微妙に異なっていると思われるが、私は「平凡に徹した中から、本物の幸福を掴む事が出来る」等と勝手に解釈しているのである。
 心配していたが昨晩から鼻水が治まった。まるで極地探検に出かけるような厚着でお客様回りをし、早めに漢方薬を飲んだからかもしれない。朝起きてみると、なんとなくだるく節々は凝っているものの、今日に予定していた生田緑地に行ける体調に戻っていた。前回行った時には各種の野鳥がたくさんお出ましになって、それはそれはとても楽しい一日を過ごせたのだが、目が回る程の忙しさもあったから、今度はじっくり味わいながら一日中ゆっくりしようと考えていたのだ。今日は前回と異なってとても暖かく雲一つ無い晴天である。観察施設に行くと誰も来て居ない。しかし、隅々まで見回しても野鳥も居ない。これは一体どうした事なのだろうと、しばらく撮影機材をセットして待つが一向に現われない。たった一人で野鳥が現われない観察施設にこもっているのも、それはそれで一種独特の味わいがあって良いのだが、いつまでもそうしているのは苦痛である。
 小1時間程待っていると、何べんともなくこの観察記に登場している私の師匠格のIさんがやって来た。「また、来たんだ」と、ニコニコしながら柔和な笑みを浮かべて言う。「前の時の楽しさが忘れられないんで、でも、今日は鳥の出が悪いですよ」とこぼして言うと、いつものように「その内に出て来ますよ」とおっしゃる。何だかIさんがやって来てそう言うと、鳥がやって来るように思われるのだから不思議である。しかし、今日はそんな予感もあたらず、一向に鳥が出て来ない。しかし、その間、Iさんが撮影したオオコノハズクと言うフクロウの仲間の珍鳥の写真を見せて貰ったり、その撮影場所を教えて貰ったりして会話が弾んだ。この情報は極秘情報だから撮影場所は書けないが、一見すると褐色のどら猫が木の穴から顔を出しているような格好の鳥である。「珍鳥だから、行って来た方がいいよ」とIさんはしきりに私に勧め、鳥撮り病をもっと重くしようとしている。しかし、「これからの季節、野鳥以外にも撮りたいものが目白押しだし、珍鳥撮影はまだ早いですよ」と答えたが、こんな珍しい鳥がかなり近い所にも生息しているのには驚いた。
 全国各地を飛び回って各種の野鳥を追いかけるのも素晴らしい事だろうが、数箇所の近場のフィールドを定期的に散策して、そこで見られる野鳥を美しく撮影したり、たまにやって来る珍客に目が飛び上がらんばかりに驚いて喜ぶのも野鳥観察の一つの醍醐味とこの頃感じている。去年はこの生田緑地にもミヤマホウジロの雄が居たというし、なんと言っても、相模原公園には珍鳥の中の珍鳥たるヤツガシラも居たのである。私はこれから花、虫、茸、風景等様々な物を撮影するつもりでいるし、双眼鏡は今のところ持つつもりが無いので難しいだろうが、一度でも良いから珍鳥の第一発見者になれたら、なんと素晴らしいことであろうか。
 そんなIさんとの各種の話をしていたら、やっとソウシチョウ、クロジ、アオジ、シロハラ、シジュウカラ、メジロ、マヒワ等がやって来た。しかし、今日はいくら待てどもガビチョウ、カケス、アカゲラは来なかった。それでもその後、野鳥観察や野鳥撮影の経験の長い方も加わって、楽しい情報交換が出来た。前回に比べると種類数に於いても個体数に於いても約3割程度の野鳥しか現われなかったが、こんな時もあるのだろうし、また、それでも数多くの野鳥が目を楽しませてくれて、またまた中程度だが、とっても楽しい生田緑地であった。

<今日観察出来たもの>鳥/クロジ、ソウシチョウ(写真下左)、シロハラ、マヒワ(写真上右)、アオジ、メジロ、シジュウカラ(写真下右)、ヒヨドリ、キジバト(写真上左)等。


3月7日、横浜市都筑区大原みねみち公園〜町田市小野路町

 今日は別段どうしても撮影したいというものはないし、行きたい場所も無い。しかし、寺家ふるさと村の四季の家で蝶大好き人間のYKさんと、昆虫大好き奥様のRKさんの写真展初日(20日まで開催)である。初日に行かなくとも良いのだが、去年、大変お世話になっているし、今年はどんな写真が展示されているのかと思うと楽しみである。そんな訳で最終的には夕方に、寺家ふるさと村へという予定で家を出た。何処へ行こうかなと車の中で考えていたら、港北ニュータウンにある大原みねみち公園のカワセミ君にとても会いたくなった。去年の年末から野鳥撮影を始めていて、カワセミ君は撮影したから卒業と、その後、舞岡公園等で出会っても、「なんだカワセミか、もう撮っているからパス、パス」等という不遜な思いを抱いていたのだが、なんだか無性にカワセミ君に会いたくなったのだから不思議である。
 先だって、去年、嬬恋村で10日間仲良しだったゴールデンリトリバーの5歳の雄、R君に会いに行った。私が泊まった親戚の別荘の隣の別荘に飼われている犬である。到着した日、駐車場が草ぼうぼうだったので白い軍手をはめて草むしりをしていたら、散歩に出かけるR君が目ざとく白い軍手に興味を示したのだ。軍手をはずしてポケットに突っ込んだやいなや、散歩紐を振り切って物凄い勢いでやって来た。これにはさすがの犬好きの私もたじろいだ。なにしろ巨体で熊のような顔をした犬なのである。しかし、ポケットに突っ込んだ白い軍手を咥えると、草むらに行って、まるで子犬のように軍手と戯れ出したのだ。R君は白い軍手や白いタオルに目が無い犬だったのである。そんなR君の家は小野路町の近くで、遊びに来て下さいとの事だったので、行くつもりでいたのだが、なにしろ生まれ持った内気な性格から行きそびれていた。しかし、何だかR君に会いたくなって行ってみると、約6ケ月ぶりだというのに覚えていてくれたようで、尻尾を振って何度も飛び掛って喜んでくれた。
 動物とは世界を分ける植物やキノコだって、その季節には会いたくなって出かけるのだから、脊椎動物であるカワセミ君に会いたくなるのは当然で、野鳥の中ではずば抜けた表情を持っているのだから尚更だ。犬のR君やカワセミ君が、私たち人間と同じような感情を持っているのかは定かでは無いが、目、鼻、口を持っている動物は、やはり植物やキノコとは異なって、感情移入をしやすい存在なのは確かである。最近、主婦の大敵たるゴキブリの親戚の昆虫たちも、ご婦人たちに人気が出て来ているのは、その目、鼻、口を持っていて感情移入しやすいからに相違ない。ことに刺したり噛んだりせず、死んだ振りが得意なゾウムシ君が人気になるのは当然で、フサスグリの葉が大好きなスグリゾウムシやシロツメクサの葉が大好きなオオタコゾウムシ等なら、若い女性に「超可愛い」と叫ばせるに足るキャラクターの持ち主である。
 そんな訳で無性に大原みねみち公園のカワセミ君に会いたくなって行ってみたら、いつものように元気で餌さ捕りに励んでいた。もちろん、絵として美しい写真を撮るつもりであったが、そのような場所には止ってくれずに、ごく平凡な写真しか手に入らなかったが、何故かカワセミ君に出会うとほっとして顔がほころぶのだから得難い野鳥である。こんな私のカワセミに持つ感情は、この公園を散策する多くの方々にも共通のようで、皆さんカワセミの姿を探しながら通り過ぎ、見つけると顔がほころんで幸福な気分になるようである。本当に大原みねみち公園のカワセミ君は人気者なのだ。
 午後からは小野路町へ行って、青空を背景としたツクシを撮影したくなった。やはり春の野原の申し子たるツクシは青空が似合う。しかし、小野路町に近づくにつれて空は曇が厚くなり、しかも時たま粉雪が舞った。それでも風が弱かったので、ツクシ、ヒメオドリコソウ、ナズナ等を撮影した。丘の上の畑には菜花として栽培されていたアブラナが満開で、付近の畑で見慣れぬ野菜の花(写真上右)を発見した。十字架植物である事は花の形ですぐ分かったが、大根の花ように純白ないし明るい紫色ではなく、ややくすんだ紫がかった花弁を持っている。葉はクレソンを大型にしたようで、野菜図鑑を開けばすぐ分かると思ったのだが出ていない。最近、野菜の世界もたくさんの品種が現われて、昔買った野菜図鑑ではお手上げの場合が多い。
 今日は帰り際に小野路町、図師町のフィールドをとても愛し、写真撮影が大好きなUさんMさんに会った。休耕田にはセリ摘みに来る方の姿もちらほら見られ、散策する人の数も多くなった。いよいよ人も被写体も賑やかになる季節が近づいている。もうぐ谷戸奥のコブシが花開いて、足繁く通う日が多くなることだろう。動植物やキノコ、森や田んぼや畑、風や空や雲や太陽に話し掛けて聞き耳を立ててささやきを聞き、悩み多き孤独な心を洗い清めてくれるフィールドは、ここが何処よりも一番である。だから自然が大好きという方以外は訪れて欲しくない、何時までも静かなフィールドであって欲しい。そう願うのは私だけでなく、このフィールドを愛する全ての方の総意であるに違いない。

<大原みねみち公園で今日観察出来たもの>鳥/カワセミ(写真下左)、ジョウビタキ(写真下右)、メジロ、スズメ、ヒヨドリ等。
<小野路町で今日観察出来たもの>花/ツクシ、フキノトウ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、ナズナ、タネツケバナ、カントウタンポポ、タチツボスミレ、サンシュユ、ウメ、アブラナ(写真上左)等。


3月6日、横浜市港北区新吉田町〜薬師池公園

 今日は昨晩の天気予報では大荒れの日となるはずであった。こんなことを書くとなんと贅沢なと思われるかも知れないが、雨でフィールドへ出られないことを喜んでいたのだ。サラリーマン時代には雨の週末は断腸の思いで、たびたび天気の神様を恨んだものである。今は比較的自由の身となって、出かけたくなればいつでもフィールドへ行けるとなると、持ち前の貧乏性から天気なら出かけてしまう。これでは身体も心も被写体に対する新鮮な目も疲れてしまう。つれづれ4部作である「蝶」、「花」、「虫」、「里」とテーマを持って撮り続けて来たが、それらが完成してしまうと次のテーマが見つからず、何となく撮影に力が入らない。そんな状態は一昨年の晩秋から続いているのだが、キノコと野鳥がそんな思いをしばらくの間打ち消してくれた。それではこのHPの未完の「おもしろ昆虫記」、「おもしろ花日記」、「多摩丘陵の昆虫たち」、「多摩丘陵の野花たち」を完成させるために頑張れば良いのではないのと思うのだが、今一、力瘤が入らないでいる。
 そこで今年は何にも考えずに野山を散策し、そこで出会った様々な物を純真な目で愛を持って美しく撮影しようと思うようになった。先日、寺家ふるさと村の四季の家に立ち寄った時、今は冬虫夏草にのめり込んでいるNさんに会った。四季の家にはNさんが以前撮影したキノコの写真がたくさん飾られている。「このキノコの写真は本当に心暖かく撮れていますね。構図がどうのこうの、撮影技術がどうのこうのと言ったら色々言えるだろうけど、それらを越えた暖かい心が感じられますね」と素直な感想が口をついて出て来た。するとNさんは「このような写真はもうこれから撮れないかもしれない。キノコを上手く写真として撮る自信はあるけどね」と言う。これらの写真は彼がキノコに興味を持ち始めて、ただ純粋に様々なキノコに対する新鮮な驚きや感動を素直にカメラに納めていた時代のものである。そんな会話をしていたら、その会話を耳にしたのか、四季の家のご婦人も「私もこのキノコの写真が大好きです」と嬉しそうに話し掛けてくれた。
 私の写真歴は今年で何と16年になる。今までの作品を開いて見ると、初期の頃に撮ったものに限りなき愛着を覚えるものが多い。写真は確かに撮影技術や完成され計算された厳密なる構図が大切だが、一番大切なのは美しさ、面白さ、格好良さ、可愛さ等といった感動や驚きを新鮮に感ずる純真な子供のような心と被写体に対する暖かい愛なのである。だから今年でなんと54歳にもなるのだが、もっと子供に純真に、愛溢れた人間となり、人工的な技巧は徹底的に廃して、ブレの無い精確なピント、露出、構図という写真の基本は厳守しつつ、何か新しい自分自身がとても感動する写真を一齣でも多く撮りたいと言う感情が芽生えて来ているのである。そのためには、このつれづれ観察記が間遠うになっても、今日は天気だからフィールドへ出かけなければならない等という貧乏性や、功名心や競争心、偏差値教育的な残滓は一切捨てて、“あの人、いい歳して何だか変よ、馬鹿みたいね”と言われるくらいに、純真で多感な青春時代のような人間に戻りたくなっているのである。
 とんでもなく自分の事ばかりで前書きが長くなったが、今日は悪天候と決め付けてしまったので、昨晩は夜更かしをし目覚し時計をかけずにいたために、自宅から一番近いフィールドである新吉田町倉部谷戸なのに、着いたのはなんと11時となってしまった。いつものように日曜菜園へ出向くと、モンシロチョウがナノハナの上をひらひらと飛んでいる。植え溜めのジンチョウゲの花は今が見頃かなと期待して行ってみると、盛期は既に過ぎていた。丘の上の小松菜の畑は緑濃く伸び、その周りの傍らにホトケノザやナズナが咲き、ナナホシテントウが忙しそうに歩き回っていた。ほんの少し残っている雑木林に沿った小道には、ニワトコやアケビの蕾が膨らみ、もうすぐ開花が始まろうとしていた。栗林の下のフキノトウもだいぶ大きくなり、農家に隣接する草原にはオオアラセイトウが咲き出していた。
 午後からは昨日強風の為に断念した町田市にある薬師池公園のルリビタキにお別れの挨拶に行った。ルリビタキは冬鳥だから高い山目掛けて旅立てしまえば晩秋までお目にかかれない。公園は梅見の客でごった返し、そのためからではないと思うが、待てどもルリビタキはついにお出ましにならなかった。この公園を巡回している警備の職員さんによると、午前中は3回現われたと言うから、まだ旅立ってはいないようだ。きっと、行動パターンに変化が生じているのだろう。本当に残念な事だが、野鳥の美しさ愛らしさを教えてくれた薬師池公園のルリビタキにお別れの挨拶が出来なくて残念だったが、きっと無事に夏を高い山で過ごして、再び同じ個体がこの場所に戻って来るに違いない。所詮、人間なんてそう簡単に変われるものではなかろうが、今度戻って来る時までには、少し位は変わって、より良いルリビタキの写真を撮りたいものである。

<新吉田町で今日観察出来たもの>花/オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ナズナ、フキノトウ、オオアラセイトウ(写真上左)、ツクシ、アケビ(写真上右)、ニワトコ、ボケ、オウバイ、ジンチョウゲ、ウメ、ノゲシ等。昆虫/モンシロチョウ、ナナホシテントウ等。その他/カワラタケ(写真下左)
<薬師池公園で今日観察出来たもの>鳥/ヤマガラ、シジュウカラ(写真下右)、エナガ、ヒヨドリ、カルガモ、カイツブリ、ホシハジロ等。


3月5日、東京都町田市小野路町・図師町

 今日は図師・小野路歴史環境保全地域にある、最近ご無沙汰している五反田谷戸と神明谷戸へ行きたくなった。しかし、天気は晴れだが西南西の風がとても強い。これはやはり冬の季節風なのだろう。しかし、厳冬期の寒さに比べればそれ程ではなく、何とはなしに雑木林の木々の芽に、春が近いよと告げているようなざわめきすら感ずる。どういうルートで行こうかなと思ったが、美しい雑木林経由を採った。美しい雑木林はその名の通り掃き清められたかのような様相で、地面に目をやるとコナラの実が芽生えているのは、前回同様だが、堅い果皮が裂けて顔を出した厚い双葉にみえる部分が、ますます紅色を帯びて陽を浴びて輝いている。今年も各種の昆虫はもとより、様々な野花、ノウタケ等のキノコでお世話になりますよと挨拶しながら、雑木林の中を徘徊する。頭上では風による梢のざわめきが聞こえるが、なんとはなしに懐かしささえ感ずる心地よい調べだ。
 雑木林から丘の上の畑に出ると、この美しい雑木林の持ち主である老人が畑仕事をしていた。「こんにちは久しぶりです。雑木林が綺麗に山掃除されていますね」と話かけると、「一年放っとくと来年往生するんでな」と笑いながら言う。「そうですね。あんなに綺麗にしたって、一夏で草がぼうぼうですものね。ところで今日は何をしているんですか」と尋ねると、菜花(アブラナ)のうろ抜きをしているということであった。「昔は種から油を絞ったんだが、近頃はもっとさっぱりした油が良いらしいんでね。菜花として食べるだけだよ」と言う。また、畑に撒かれた小麦が緑に芽生えて成長していたので指差すと、「家で食べるだけは、まだ作っているのさ」との答えが帰って来た。本当に、この老人は一昔前までのこの地域の伝統的な作物を作り、その農法を守っていて、とても勉強になる生き字引のような方なのだ。
 老人に別れを告げて、Tさん宅の前の切り通しの雨がかからない部分を見ると、小さな蟻地獄が出来ているのには驚いた。まさか餌が少ないこの時期に蟻地獄があるなんてとても不思議だ。そこで極細の枝を拾って底の土に触れてみると、土が僅かだが動く。やはり蟻地獄の家主であるウスバカゲロウの幼虫がいるようだ。このところ暖かい日が続いたので、蟻が活動を開始していることは分かっていたが、ウスバカゲロウの幼虫も活動を開始したのだ。ウスバカゲロウは夏に成虫となって、薄暗い雑木林の中で見られるのだが、冬はどのような越冬形態なのかと図鑑で調べて見たが載っていない。しかし、この季節に小さな蟻地獄を造るのだから、卵か若齢幼虫で越冬するのだろう。
 尾根道に差し掛かるとウグイスカグラやヒメカンスゲが咲いている。しかし、風が強くて写真撮影はお手上げである。こんな日はキノコが一番と、目線を水平以下に落として歩いていると、ハモグリバエによって描かれた常緑の幼樹の葉が目に止る。詳細には調べなかったが、樹種は枝を見るとナツグミのようである。雑木林の林床の各種の常緑の葉に注意してみると、ハモグリバエのお気に入りの葉のキャンバスは、みんな同じ樹種であったのは新しい発見である。しかし、これも風によって撮影がままならない。そこでウチワタケやカワラタケ等のサルノコシカケ科のキノコを撮って、万が一のこの観察記に写真無しを避ける。目線が野鳥と異なるから地面のものがたくさん目に入る。その筆頭はタマノカンアオイだが、良く調べた訳ではないが花はまだのようで、落ち葉の中での艶やかな濃い緑が一際印象に残った。
 五反田谷戸に降りて行くと厳冬期に比べて、棚田や畦がいくらか緑を帯びている。棚田の周りにたくさんあるネコヤナギも花を咲かせ始めている。細流を覗くとホトケドジョウが、底の土を濁らせて落ち葉の下に隠れる。季節になるとハンミョウが見られる休耕田のゼニゴケの間からは、小さなオレンジ色のキノコが生えている。このHPで御馴染みのMさんが作った藁塚も、やや変色したものの、無事に立っている。さてと今日は風景写真(写真上)を撮るのだと、いつもの定番のアングルたが、季節の変化は感じられるだろうとシャッターを切る。小高くなった芝地で昼食を摂ろうとするが、風が強くてとても寒い。そこで風の避けられる日溜りでのんびりとコンビニで買ったオニギリを時間をかけて食べた。
 午後からは尾根一つ隔てた神明谷戸へ行った。溜池にかかるアカメヤナギの大木の芽はまだ固く、幹に生えていたヒラタケは痕跡も無く消えている。溜池にはヒキガエルが数匹、産卵の為にやって来ていた。ゲロゲロと騒がしい声は聞こえないし、紐状の卵塊はいくらか見られる程度だから、本格的な交尾期の蛙合戦はこれからなのだろう。溜池の底にはこんもりとしたアカガエルの卵塊も見られるが、ほんの少しで、その生息数が減少しているのだろうか。どちらの卵塊も撮影せねばならぬのだが、このような物は蛇と同じで、いつものようにパスをする。今日の予定は図師・小野路歴史環境保全地域は早々と切り上げて、薬師池公園へ行って鳥の撮影をするつもりであったが、こう風が強くては撮影もままならぬと帰宅の途となったが、久しぶりの谷戸巡りは、心を洗い落ち着かせるには充分で、とても満足した散策となった事は言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ムラサキサギゴケ、ウグイスカグラ、ヒメカンスゲ等。昆虫/ハモグリバエの食痕、ウスバカゲロウの巣等。鳥/ツグミ、モズ等。キノコ/ウチワタケ(写真下左)、カワラタケ等。その他/ホトケドジョウ、ヒキガエル、アカガエルの卵塊、コナラの芽生え(写真下右)等。


3月3日、栃木県栃木市星野

 今年はよそうかなと思っていたのだが、早春の可憐な花であるセツブンソウに会いたくて、栃木県栃木市の星野まで行って来た。東北自動車道で利根川を渡る辺りまで来ると、那須や日光の雪をかぶった山々が見えて来る。一昨日の雨は山ではもちろん雪で、真っ白では無いが、かなりの雪をかぶっていた。広々とした田んぼの先に見える雪山を見ると、学生時代に生活を送った安曇野等の信州の風景を思い出してぐっと来る。恥ずかしながらこの歳になっても、まだまだかなりのロマンチストなのである。セツブンソウの咲く星野には、午前9時30分に着いた。空は晴れているもののいくらか風があってさすがに寒い。今年は暖かだから、もうセツブンソウは咲き終わっているかもしれないと危惧していたが、盛期は過ぎたものの被写体として充分な生き生きとした花も見られてほっとする。これで何回目のセツブンソウ巡りになるのかは定かでは無いが、5年近くは毎年同じ時期に来ていることは確かである。セツブンソウは梅林や栗林の下にたくさん自生している。しかし、リュウノヒゲ等の下草がたくさん生えていたりするから、なかなか良い写真が撮れないのだ。しかも、白い花だから快晴の日向ではしっとりとした写真とはならず、風が強ければ揺れて写真撮影がままならず、風の無い薄曇の日が最適となって、そう簡単には撮らしてくれない花なのである。
 セツブンソウは石灰岩地を好むためか、関東地方以西に点々と分布していて、何処でも見られるという植物ではないのである。関東地方では、他に埼玉県の両神国民休養地の四阿屋山周辺があるのみで、植物園に行ってもなかなかお目にかかることが出来ない。先日、兵庫県の西宮に住む花の写真を撮っている方に聞いたところ、この地域では名前の通り節分頃から咲き出すと言う。兵庫県から山口県にかけての中国地方は、秋吉洞等と言う有名な鍾乳洞があるくらいだから石灰岩の地質で、各所に群落地が見られるのかもしれない。しかし、写真撮影はともかくとしてセツブンソウを見たいと言う事だけなら、地元の方々の努力によって、かなりの花を星野では見ることが出来る。このためか、昼近くになると観光バスを連ねて大勢の観光客がやって来る場合もあるから、絵になるものを素早く探して確実にカメラの中に納めた。やはり盛期が過ぎていること、今日は晴れていること等から、被写体として写欲の湧くセツブンソウはほんの僅かだったが、今年も無事にセツブンソウに会え、傑作とは言い難いが無難な写真は撮影出来たと満足して、川の向こうの山の中腹にあるザゼンソウを見に行った。
 こんなに早くセツブンソウの群落地を切り止めて、ザゼンソウを見に行くのは始めてである。有り難いことに誰も居ない杉林の下の沢筋に、独特な格好の暗紫色のザゼンソウが数株顔を出していた。しかも、一株だけ絵になるように咲いていて、しかも至近距離だから嬉しくなった。去年は咲いてはいたものの撮りたくなるように咲いていなかったから、一齣も撮影する事が出来なかったのである。ザゼンソウはいつも同じ位置に咲くはずだが、その時の土壌や地表の状況によって、形が異なってしまうようである。星野のザゼンソウはほんの数株だから、ご機嫌悪く咲かれるとお手上げになってしまう。今年は行けなかったが、同じ栃木県の大田原のザゼンソウ群落地はかなりの株があるから、いつ行っても必ず数枚は写真になる株に巡り合える。いつの日か、セツブンソウもザゼンソウもより広大な群落地へ行って、背景を広く取り入れた広角接写で撮影したいものである。サゼンソウを無事に撮り終わると、例年通り農家の庭先のネコヤナギを撮影した。去年は花が咲いていたが、今年は咲いているものはほとんど無く、暖かいと言っても星野の花具合は、それ程までに早いと言う訳ではなく、例年並のようである。
 さあ、午後からは星野で野鳥撮影だと思ったのだが、私の携帯電話は星野では使えない。何となく今日はお客様から電話が有りそうなので、携帯電話が使える場所まで行って、思う存分野鳥撮影をしようと地図を見ると、栃木市の近くの大平山県立自然公園なら大丈夫そうなので移動する。栃木に行けば憧れのベニマシコやミヤマホウジロに会えるのではないかと期待したのだが、ポイントがつかめずに一回もシャッターを切らずに終わって、昼寝に行ったようなものとなってしまった。昨日のような神がかった野鳥撮影は、知らない土地、広大な自然の中ではなかなか難しいのである。最近、鳥撮りの神様がついているのではないか等とお世辞を頂くこともあるが、やはりただの人であった事が証明されてほっとした。所期の目的全ては果たせなかったが、可憐なセツブンソウ、独特な風情を持つザゼンソウを見て撮影出来たのだからと、早々、東北自動車道に乗って帰宅の途に着いた。

<小野路町で今日観察出来たもの>花/セツブンソウ(写真上)、ザゼンソウ(写真下左)、フクジュソウ、アズマイチゲ、ロウバイ、ソシンロウバイ、サンシュユ、ウメ、ネコヤナギ(写真下右)等。


3月2日、神奈川県川崎市多摩区生田緑地

 たびたびフィールドでお会いするIさんが「生田緑地はいいよ、クロジやガビチョウ、ソウシチョウ、カケス、アカゲラか出るからね」と、先日教えてくれた。この中には、まだ出会った事の無い鳥が4種類もいる。Iさんの情報で外れた事が無いので早速出かけてみた。今日は今までの暖かい陽気と打って変わって、とても寒い。昨日仕事で東京に出かけたが、何と雪混じりの雨が降り、その寒気がまだ残っているようなのだ。しかも曇り空の天気だから尚更だ。こんな天気では野鳥はお出ましにならないかな?また、良い写真が撮れないのでわ!と思ったが、Iさんの教えてくれたポイントに行くと、何とその本人のIさんとHさんが来ているではないか。「こんな天気だから今日は誰も来そうもないし、ゆっくり撮影出来るよ。もう色々の鳥がやって来たしね」とIさんたちがニコニコして言う。聞くところによるとHさんは朝の8時に、Iさんは9時に来たのだと言う。私が到着したのは10時だから、お二人の熱意には頭が下がる。
 川崎市の公式サイトから引用すると「多摩丘陵の一角に位置する市内最大の緑の宝庫で,四季を通じて訪れる人が絶えません。公営ゴルフ場のほか,岡本太郎美術館,日本民家園,伝統工芸館,青少年科学館,プラネタリウム,枡形山展望台などの施設が美しい自然を背景に設置されています」とある。こんな生田緑地の紹介文を読むと、管理が行き届いた公園で、野鳥撮影には向いていないのではと思われるかもしれないが、野鳥たちの水場が確保され、観察施設のあるポイントは野鳥の姿が多い。更に、地元の方が毎日野鳥に餌をやりに来るので、野鳥たちが安心して居着いているという訳である。野鳥撮影の先輩たちは「餌付けされた野鳥を写したものは、価値が下がる」と毎度のように言われるのだが、たくさんのまだ見ぬ野鳥に会えて、名前を覚えられ、しかも美しい写真が得られるのだから初心者にはまことに有り難い。今日は野鳥を撮るんだと出かけても少数の野鳥にしか出会えず、シャッターも数回しか押せないとつまらない。野鳥撮影初心者には「釣り糸を垂れているだけでも楽しい」という釣師の境地にはなかなか至れないものなのだ。
 「来ましたよ、ソウシチョウが」とHさんが言うので、目を凝らして見ると黄色い胸が印象的な可愛らしい小鳥が現われた。相模原に住むBさんが谷戸山公園で撮った美しいソウシチョウを、このHPの掲示板に送って来てくれた時から憧れていた鳥だ。ソウシチヨウは野鳥図鑑には後ほど出合ったガビチョウと同じく載っていない、籠脱けの鳥である。こんな言葉は野鳥撮影を始めるまでは知らなかったのだが、飼い鳥が籠から抜け出して野生化したものをそう呼ぶのである。このソウシチョウとガビチョウは本来は中国南部から東南アジアにかけて生息していたもので、日本に輸入されて飼われ、籠抜けして野生化した鳥なのである。野生化した経緯はむろん異なるものの、植物で言ったらアカツメクサやシロツメクサ等の外来種と同じと言うことになろう。植物図鑑ではこのような外来種がたくさん載っているのだから、そのうちこのまま生息し続ければ、ソウシチョウもガビチョウも野鳥図鑑に必ず紹介されるに違いない。
 一際美しく大きな声で野鳥が左の雑木林で鳴いた。「あの鳴き声はガビチョウだよ、とっても綺麗な鳴き声でしょう」とIさんが言い、Hさんが頷く。本当に印象に残る囀りで、このような鳥を籠の中に飼って、その囀りを近くで毎日聞いてみたいという願望が湧くのは無理からぬ事である。「もうすぐ水場近くに現われますからね」とIさんが言い終わるやいなや、さっとココアの粉のような色合いでヒヨドリ位の大きさの鳥が現われ、さっと消えた。「本当にじっとしていてくれないのだから」とHさんが嘆く、私など印象的な目の周りの白い縁取りすら確認できぬままに、さっと現われさっと消えた。しかし、Iさんは良い写真を既に撮っている余裕からか、「またすぐ現われますよ」とにこにこして言う。その後、ガビチョウは水浴びに3度程現われたのだが、瞬時に藪の中に引っ込んでしまう。こんな鳥は始めてである。カラスの行水どころではなく、どぼん、もうお終いと言った感じである。これから女房に私のお風呂の短さを「ガビチョウの行水」と呼ばせることにしよう。しかし、ついにアオキの根元に落ちた枯れ枝の中にいる餌に興味を示したらしく、かなり長い間姿を見せてくれたので何とか撮影することが出来た。
 背後の雑木林でギャーギャーと無く声がする。「カケスが来たよ」とIさんが言う。「何となくオナガの鳴き声に似てますね」と私が質問すると、「同じカラス科だからね。でもオナガはもっとゲャーゲャーと鳴くよ」と言うので、オナガの鳴き声を思い出してみると確かにもっと低音である。今度は右の雑木林上で鋭い声でキャッ、キャッと聞こえる鳴き声がする。「アカゲラも来たよ」とまたIさんが言う。こうなっては背後も右も、はたまた今までの前方の水場も注意しなくてはならなくなり、てんてこ舞いの騒ぎとなる。結局、私はカケスは確認したが撮れずじまい、アカゲラはIさんHさんはしかと確認したが、私はおぼろげの姿を見ただけで終わった。しかし、今日は実に多くの野鳥に出会え、とても寒かったが、これ程までに楽しいかったのは本当に久しぶりだ。これで撮影出来た野鳥の総数は3カ月を待たずにして63種となり、また、これぞ本物のバードウォッチングが出来て、本当にIさんHさん有難う。

<今日観察出来たもの>鳥/ガビチョウ(写真上左)、クロジ(写真下左)、ソウシチョウ(写真上右)、カケス、アカゲラ、コゲラ、シロハラ、シメ(写真下右)、マヒワ、アオジ、メジロ、シジュウカラ、ヒヨドリ、キジバト等。



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