(5月)
5月30日、東京都町田市小野路町・図師町
明日の31日を残して5月のつれづれ観察記は今日でお仕舞いにするつもりである。いゃー、本当に今年の5月は例年に比べて、とても充実した月であった。初旬のゴールデンウィークがあったとはいえ、今回で17回目のつれづれ観察記となった。なんだかは知らないが、花、植物、蝶、虫、鳥、茸、風景とたくさん観察したように思えるのである。しかも、写真もまあまあ順調に撮影出来たから、本当に大満足である。身近な道端自然観察及び写真撮影でも、尽きせぬ大いなる驚きを伴った喜びと発見があるのだと、16年目に入ったというのに改めてそう思うのだから、たかが道端自然観察とは言え、自信を持って多くの方にお勧め出来る。また、このような自然大好き人間は、世間的には変わり者と思われている部分もあるようだが、今日は、なんと私を含めて10人のかつて美男美女であった面々が、図師町の桜の古木下に集まったのだから、ごくごく普通の趣味であると実感出来た。また、大嫌いのはずなのに、快速五反田号さんが作ってくれたこんにゃく玉がとても美味しく感じられたのだから実に不思議だ。これで私も普通の人の仲間入りは確実となった。ところで今日の観察記だが、昨日の寺家ふるさと村及び小野路町と、今日の小野路町・図師町を合わせて書き残すことにする。
今の季節の自然観察及び写真撮影の中心的テーマはなんと言ってもゼフィルスである。そのゼフィルスを今年はラッキーな事にウラゴマダラシジミと、また、発生期が少し遅れるミドリシジミを除いて、満足行く写真が撮れてしまったので、昨日はゴイシシジミを狙おうと考えていた。そこで久しぶりに寺家ふるさと村へ行ってみたら、これまた久しぶりに冬虫夏草に魅せられてしまった駒沢のNさんに出会った。天候はピーカンで少し風も強いから、ゴイシシジミは来週の舞岡公園で写せば良いと考え、そのNさんと午前中は一緒に散策した。本当にNさんは好き好んで私の大嫌いなフィールドのお邪魔虫たる蛇と薮蚊の巣窟巡りを毎週末繰り返しているのだ。前述した自然大好き人間は普通人と書いたが、それでも彼はやはり変人の部類に入るのかも知れない。彼に言わせると冬虫夏草には3つの楽しみがあるのだと言う。その一つは見つけることの楽しさ、次にどんな昆虫から生えているのかを知る楽しさ、そし最後に新種発見の楽しさの3つであるそうだ。
私達一般人は冬虫夏草はあらゆる昆虫から発生するのでは無いかと思っているはずだが、まだ、冬虫夏草の生えたという記録の無い昆虫がたくさんあるのだそうである。例えば、大物のカブトムシ、タマムシ、クワガタムシ、トノサマバッタ等は未記録なのだと言う。そこで私は、「もしカブトムシから発生している冬虫夏草を見つけたら、NHKや朝日新聞社に電話しなければならないね」と言ったら、Nさんはにんまりと笑った。カブトムシに生える冬虫夏草なんて絶対に無いとは言い切れない訳で、もしかしたら手の平に冬虫夏草の生えたカブトムシを乗せて微笑むNさんの写真が、新聞やテレビで報道される日が来るかもしれない。まったく戦国大名の埋蔵金や隠し金山を探し求めるような話ではあるが、私はやろうとは思わないが、興味溢れるロマンティックな趣味だとも言えるのだがいかがなものだろうか。
そんなNさんと同行すると、信じられないくらいに多数のオサムシタケが見つかった。Nさんによると、みんなアオオサムシから生えているのだと言う。しかし、この寺家ふるさと村には、オサムシの仲間は、ヒメマイマイカブリ、クロナガオサムシ、エゾカタビロオサムシ、その他、多数のゴミ虫類がいるはずだから、すべてがアオオサムシから生えているとは即断出来ない。しかし、こんなにもたくさんオサムシタケがあると、そのすべてを掘り起こして調べてみたら、フィールドはぼこぼこ穴だらけになってしまう事だろう。そんなNさんが今日探し出して喜んだ冬虫夏草は、蛾の仲間の幼虫から生えている太い糸状の冬虫夏草である。確かに蛾の幼虫の身体の中程から生えているのである。「吉田さんがいる時に発見出来て良かった。証人がいるって事ですからね」とNさんは言う。まあ、凡人の私には理解しがたいが、彼のような方がいて、学問は確かに発展して行くのである。午後からは明日の下見に小野路町へ行ったが、寺家ふるさと村と異なって環境が異なるのか、一つとしてだにオサムシタケを発見することは出来なかった。その代わりとは言っては何だが、立派なタマゴテングタケモドキを多数発見して嬉しくなった。
さて昨日の観察記はこのへんにして、今日はここに生えていました、ここで多数観察しましたとは言いがたい稀少種を数多く発見した。なにしろ10人掛ける2個の目、だから20個の目が探したことになるのだから当然の事だろう。まるで昆虫の複眼のようである。見つけ出したものは、ギンリョウソウ、イチヤクソウ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミである。殊にイチヤクソウはとても可憐な花を沢山つけていて、小さな素焼きの鉢に植えて鑑賞したくなるのが頷ける魅力溢れる植物である。そんな植物の在り処を教えたら、盗掘に合うのは火を見るよりも明らかだ。そんな訳で、どう見ても飛んだり跳ねたりするのが苦手になった年代の集団であったが、天気予報が見事に外れた高温高湿の晴天の中、飛んだり跳ねたりし通しで疲れたものの、同病相哀れむ一日はとても充実して楽しいもので、たかが道端自然観察だが、万歳三唱しての解散となった。
<今日観察出来たもの>花/イチヤクソウ、ギンリョウソウ、ノアザミ、ミヤコグサ、ドクダミ、ウツボグサ、ヤブムラサキ等。蝶/キアゲハ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ(写真下左)、キチョウ、スジグロシロチョウ、テングチョウ、ルリシジミ、イチモンジチョウ、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、ヒカゲチョウ、コジャノメ、ヒメウラナミジャノメ等。虫/ハルゼミ、ヤマトクロスジヘビトンボ、ハンミョウ、シオヤトンボ、未確認の大型トンボ等。鳥/カッコウ等。その他/アオダイショウ、シマヘビ、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダルマガエル、イタチの糞等。キノコ/オサムシタケ(写真下右)、タマゴテングタケモドキ等。
5月27日、横浜市緑区新治市民の森〜横浜キノコの森
今日は待ちに待った曇り日である。これから9月一杯位まで曇り日が最高の自然観察及び写真撮影の日和となる。もっとも、風景だとか青空に抜いた花や虫とか、ある程度のシャッター速度が必要な野鳥の写真撮影等には、晴れている方が好適なのは言うまでもない。また晴れていて気温が高いと人間様までもがくたびれてしまうのだ。また、曇り日なら巷騒がれている紫外線の量も少ないから、まるでドーランのように真っ白に日焼け止めクリームを塗ることもない。ただ、そんな日はマムシについでのフィールドのお邪魔虫である薮蚊も活発になるから、腰に蚊取り線香をぶら下げなくてはならなくなる。特に薄暗いじめじめした林内をさ迷い歩き、マムシ君が大好きなたくさん積んである朽木がポイントの一つであるキノコウォッチングには、マムシ除けの長靴と蚊取り線香は必携のアイテムとなる。
もちろん今日も午前中は新治市民の森で、花よ、蝶よ、虫よと散策した訳だが、この戦略は見事に的中して散策路から外れた栗林の入り口で、下草に止まった羽化したばかりのウラナミアカシジミを発見した。アカシジミには怒られそうだが、羽裏に黒い筋がたくさん入ったウラナミアカシジミの方が写真映えするのである。また、顔を良く注視すると、やや黄色いベレー帽を被っているように見えてとても可愛いのだ。ウラナミアカシジミもアカシジミも飛び古すと、たとえ五体満足でも鮮やかなオレンジ色が失われて黄色っぽくなってしまう。アカシジミもウラナミアカシジミも雄の方が雌よりも黄色っぽいから、雄の飛び古した個体では写欲が湧かない。しかし、今日は羽化したばかりだから本当に鮮やかで、シジミチョウ科ならではの触覚の白と黒の縞模様と白い縁取りのある黒い尾状突起が印象的であった。
ウラナミアカシジミを思う存分これでもかとばかりに三脚を立てて撮影し、雑木林の入り口へ歩いて行くと、今度は羽化したばかりのテングチョウがすっと立った細い枯れた草の先端でテリトリーを張って、しかも、羽を水平に開いているのだ。蝶の多くは羽を開いている時の方が美しいものだが、このテングチョウも羽を閉じているのと開いているのでは雲泥の差なのである。また、テングチョウが羽を開いている時は左程多くないから絶好のチャンスで、三脚を立てて至近距離まで寄り、複眼にぴったりとピントを合わせると、ファインダーに頬づりしたくなる程の美しい像が浮かび上がった。しかし、待てども待てども細い枯れた草の先端に止まっているから揺れが止まらない。カメラに納めたフィルムはISO感度50のベルビアである。だから、ぴたりと止まらないとシャッターが切れないのだ。もし、この時、デジタル一眼レフを持って来ていたなら恐らくISO感度を400にしていただろうから、かすかな揺れなら止まって撮れる筈である。「お願いだから風よ止まれ、テングチョウよ逃げるな!」と祈ったが、無常にもテングチョウは飛び立ってしまった。一昨日のキビタキについでの傑作写真は頭上高く舞上がってしまったと言う訳である。
しかし、今日は幸運が続くもので、小高くなった山頂のような開けた場所に行ってみると、なんとタヒチの澄んだ海と同色のエメラルドグリーンに輝くオオミドリシジミが羽を開いて止まっている。こんなに美しい羽化したばかりの雄に出会うのは、それこそ10年ぶり位だろう。慎重に近づき、その美しさをファインダーに捉えたが、これまた風が邪魔してシャッターが押せない。しばらく待っていると、なんとオオミドリシジミはテングチョウのように飛び立ちこそはしなかったものの、その輝く羽を閉じてしまった。付近にあった丸太に腰を降ろして、それこそ30分近くも待ち続けたが、オオミドリシジミは羽を閉じたままだ。これ以上待っても仕方が無いと、風が止んでいるので真横から鮮明に撮影した。風が無かったらテングチョウとオオミドリシジミの素晴らしい写真が撮れたのにと思うと残念だが、新鮮なウラナミアカシジミと真横からとは言え久しぶりにオオミドリシジミを撮影して、午前中の新治市民の森の散策は大満足となった。
午後からは横浜キノコの森へ行った。このところ雨が続いたし、小野路町でも弘法山でも各種のキノコが出ていたので期待していたのだ。しかし、去年はオオゴムタケ等が生えていた第1キノコの森へ行くと、何にも生えていない。本当に何も生えていないのだ。そこで本命場所である第2キノコの森へ行くと、キノコが生えている気配は無い。前回来た時に見つけたホコリタケはどうなったかと見に行くと、天辺中央に穴が開いて胞子を飛ばしている。その他、特徴ある小さなキノコを見つけたのだが、帰宅して図鑑を開いても載っていない。このままで行くと私のHPの“星のへや”は不明種だらけになりそうだ。昆虫に比べれば種類数がかなり少ないキノコなんだから、昆虫以上に完璧な図鑑があっても良いと思うのだが、昆虫のように乾燥標本が出来ないからか、はたまた愛好者が少ないからか、良い図鑑がない。またしてもネットを漁らなければならないのかと思うと気が重い。やはり本になった図鑑の方が一目瞭然にすぐ調べられるから、とても楽なのである。
それでも森の中の暗さに目が慣れて来ると、マンネンタケの幼菌やイグチ科のイロガワリ?、前回も生えていたムジナタケの幼菌を見つけてほっとする。そればかりで無く、なんとキノコでは無いがギンリョウソウを見つけて嬉しくなった。やや花期が過ぎているようだが一本立派な姿で立っている。この横浜キノコの森に来ると身体中のすべてがキノコモードにギアチェンジされるから、キノコ同様の環境を欲する植物を良く見つけることが出来る。多摩丘陵では珍稀種のイチヤクソウや各種腐生ランもかなり見つけている。キノコに興味のない方も、たまにはキノコモードにギアチェンジして森の中をさ迷い歩く事をお勧めする。見えなかったものが見え、出会えなかったものに会えるからだ。しかし、くれぐれも薮蚊対策を徹底しないと、これからの季節、たったの10分でも薄暗い森の中にじっとしてはいられない。その点は充分肝に命じて欲しい。特に柔肌のご婦人の多数の薮蚊に刺された腕などを見たら、それこそ可哀相にと同情するどころか、気持ち悪くなって卒倒してしまからである。
<今日観察出来たもの>花/ギンリョウソウ、コバンソウ、キショウブ、ニワゼキショウ、ハコネウツギ、ヤマボウシ、スイカズラ、オカタツナミソウ、オオキンケイギク(写真上左)、ムシトリナデシコ等。蝶/ウラナミアカシジミ(写真上右)、オオミドリシジミ(写真下左)、テングチョウ、ルリシジミ、イチモンジチョウ、コジャノメ、ヒメウラナミジャノメ等。虫/ヤマサナエ、カワトンボ、シオカラトンボ等。キノコ/アミスギタケ、ムジナタケ、ホコリタケ、ダイダイガサ、マンネンタケ、イロガワリ?(写真下右)、不明2種等。
5月25日、神奈川県秦野市弘法山・権現山
前回の観察記で、今の季節は気温の較差が激しいので風邪等引かぬようにと書いたら、そう書いたご本人の体調が思わしくない。肩が張って首筋が凝っているのだ。まあ、これは一種のカメラマン病なのだが、やはり日曜日の異常低温から体調を少し壊したのだろう。こんな時は家で休養しているのが一番だが、それが出来ない性分なのだから軽い機材(ペンタックスMZ3)で近場を散策しようと思っていた。しかし、今日は生憎のピーカンで、気になっていた横浜キノコの森への散策及び写真撮影は気が向かない。なぜなら木漏れ日が地面に斑模様を作っているから、キノコを美しく撮影できないからだ。そこで、前回厚い雲に覆われてシャッター速度が極端に遅くなり、やむなく早帰りした秦野市の権現山の野鳥観察施設へ行った。もちろん午前中は前回と同じく、花よ、蝶よ、虫よ、茸よと、弘法山周辺を散策した。
いざ散策開始と駐車場から歩き始めると、まるでこだまのように響き渡る音色で野鳥が鳴いている。もしかしたらホトトギスではなかろうかと耳を澄まし、本当に“テッペンカケタカ、東京特許許可局”と囀るのかと聞き入ると、“トッキョ、キョキャキョク”と聞こえて来る。何べん聞いてもテッペンカケタカとは聞こえて来ないし、東京は省かれて特許許可局と聞こえて来るのだ。でも、これは確かにホトトギスの囀りだろう。そう分かると今日は何処でもいつでも、このホトトギスの囀りを耳にした。野鳥に関しては、野鳥を知らずして里山は語れないとの事から、去年の12月から撮影を開始した訳で、以前にもこの印象的な囀りを耳にしていたのだが、これはウグイスの鳴き声と思っていたのである。注意して聞かなければ、“ホーホケキョ”と“トッキョ、キョキャキョク”は何となく似ていて、ウグイスの声変わり位に思っても不思議では無かった訳なのだ。この囀りの差は、蝶で言ったらキアゲハとアゲハ、モンシロチョウとスジグロシロチョウ等の差だと思うのだが、いかがなものだろうか?
野の花はやはり今日は給料日だけあって、クサノオーが相変わらず頑張って咲いている以外は、これと言って写欲を誘うものは無ったが、ドクダミ、ナワシロイチゴと並んで、今の季節ならではの花のユキノシタが日陰に咲いていたので慎重に撮影した。また、山野草マニアにはこたえられないのだろうが、ピンク色のサイハイランがかたまって美しく咲いていた。しかし、どのように撮影しても図鑑的な写真となってしまうので、希少種とは知りながらもシャッターを切らなかった。寺家ふるさと村をメインフィールドにしているNさんは、このサイハイランはもとより、タシロラン、クロムヨウラン等の腐生ランが大好きだが、本当に絵として撮影するのはとても難しい花である。
今日の弘法山は野の花こそ少ないものの昆虫に関しては大賑わいで、蝶ではアサギマダラを何頭も確認した。ゼフィルス類は、アカシジミ、ウラゴマダラシジミが発生していて、ウラゴマダラシジミがアジサイの葉に静止していて、これは頂きと頑張ったのだが、風が止まずに無念のシャッターを切らずとなってしまった。また、とても新鮮で羽化したばかりのテングチョウも見られた。前回来た時に見つけたコナラの切り株に、今日は何が来ているかなと思って行って見ると、蝶ではサトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、それにクロヒカゲも仲間入りをしていた。しかし、なんと言ってもホソアシナガタマムシと思われるナガタマムシが、交尾したり産卵したりしているのには驚いた。エノキの丸太にはシラホシナガタマムシも見られたし、ゴマフカミキリもいたから、タマムシやカミキリムシの仲間もいよいよ発生の季節となったようである。
午後からはもちろん撮影機材を野鳥用に代えて、権現山の野鳥施設に行った。今日のお仲間は私を入れて4人となった。前回来た時にお仲間だった川崎のHさんこそ来ていないものの、顔を見知った地元の方がいたので、「キビタキ来ています?」と質問したら、今日も現れたらしく、「あともう一回くらいは現れるよ」と言うので嬉しくなった。しかし、待てども水浴びに来るのは常連さんのヒヨドリ、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラだけだ。どうしてこんなに多いのだろうと疑問に思う程にヒヨちゃんが現れる。ことによったら同じ個体が何回も水浴びに現れるのかもしれない。いくらお風呂が好きだって、ここは湯池場ではないのだから少しご遠慮願いたい。また、今日のヤマガラは色が淡くて何だか変だなと思ったら、今年生まれた幼鳥ではないかとの事である。
みんな待つのにかなり疲れて、背後にある階段で休んでいる。しかし、私は憧れのキビタキに会いたくて、棒立ちのままだ。すると背後で良い音色で囀る野鳥がやって来た。「ガビチョウですか?」と聞くと、「キビタキだよ」と言う。「何処にいるんですか?」と私が真顔で質問するので、「すいません。これです」と、テープレコーダーを見せる。「こうなったら最後の手段で、キビタキを誘い出そうと思うんですよ。縄張りを張っているキビタキが同じ仲間の囀りを聞くと、このやろうとやって来るんです」とその方は言う。するとどうだろう、私が置きピンしてある小枝に本当にキビタキがやって来た。喉元のオレンジ色と黄色い眉は、このHPの掲示板に相模原のぶんちゃんが送ってくれた写真や図鑑で見知ったものと同じだ。夢中になってピントを合わせシャッターを切り続ける。こうすれば、その内の一枚くらいはものになる写真が撮れている筈である。本当に一瞬の事だったが、5回もシャッターを切った。私は夢中だったから気づかなかったが、キビタキがなんと3羽も現れて、しかし、私が狙っていた小枝が一番絵になる場所だったとの事である。
おそるおそるカメラの液晶ディスプレイで撮影したキビタキを確認してみると、何とか見られるようにピンが合っている。それを見て、もう他人には見せられない程に顔はくしゃくしゃになっていた事だろう。もちろんテープレコーダーでキビタキの囀りを流してくれた方にお礼を言った。しかも、「これでキビタキは撮れたから違う鳥を呼んで下さい」等とちゃっかりリクエストをする。「どんな鳥を誘き出して欲しい?」と聞かれたので、「オオルリ、サンコウチョウ、ホトトギスだな」と言うと、オオルリなら可能性があると言うので、オオルリの囀りを流すのだが、そう簡単には二番煎じは通じないようである。もっともいくら野鳥を誘き出す名人でも、テープレコーダーから流れる囀りが聞き取れる範囲に野鳥がいなければ駄目らしい。まあ今日は近くにオオルリがいないのだろう。有難いことに憧れのキビタキが撮影できて、これだから体調不良といえどもフィールド巡りは止められない。
<今日観察出来たもの>花/サイハイラン、クサノオー、ユキノシタ(写真上左)、タツナミソウ、ドクダミ、ナワシロイチゴ、ノアザミ、ニワゼキショウ、スイカズラ、イボタ、ウツギ等。蝶/アサギマダラ、テングチョウ、アカシジミ、ウラゴマダラシジミ、ツマグロヒョウモン、モンキアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、イチモンジチョウ、コミスジ、キタテハ、サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、クロヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、ダイミョウセセリ等。虫/ホソアシナガタマムシ、シラホシナガタマムシ、オオヒラタシデムシ、ゴマフカミキリ、オバボタル、ジョウカイボン、トホシオサゾウムシ、ヨツボシケシキスイ、ヨツボシオオキスイ、ヨコヅナサシガメ、エサキモンキツノカメムシ、イチモンジカメノコハムシ、ヒメカメノコハムシ、トビサルハムシ、アトボシハムシ、クロハナムグリ等。キノコ/アミスギタケ(写真上右)、アラゲキクラゲ、ベニタケの仲間等。鳥/キビタキ(写真下右)、ホトトギス、キジ、コジュケイ、ヒヨドリ(写真下左)、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラ等。
5月22日、東京都町田市野津田公園〜小野路町
このところ野山ばかりずっと散策していたので、本格的に園芸品種の花を撮影して来なかった。そう思うと何だかすごく寂しくなった。どうやら禁断症状が出て来たようである。昨日、このHPの掲示板に度々ご投稿頂いている一人静さんこと鎌倉のOさんが、「大好物の食べ物だって食べ続けると飽きるように、自然観察及び撮影対象だって、たまには他の分野で息抜きしないとね」と言っていたが、それは私の場合には大いに当て嵌まっている。多摩丘陵の野の花やキノコは言わば日本料理だから、たまには中華料理や西洋料理を食べたくなるのだろう。もっとも、コンニャク、ゼリー、プリン、ウイロウ、マシュマロ等の寒天質やふにゃふにゃした物が嫌いな私には、何だか同じ雰囲気の蛇等の爬虫類は苦手だが、他には食べ物に好き嫌いが無いだけあって、蛇、ナメクジ、芋虫、毛虫以外の自然観察及び写真撮影なら何でも来いである。この様に料理に例えるなら園芸品種の花は西洋料理で、殊に今日撮影に行ったバラはフランス料理なのではなかろうか。もっともそんな高貴なフランス料理であるバラの撮影に、長靴姿で行くというのもだいぶエチケットに反しているように思われるのだが、慣れた格好が気楽で、高級料理を充分に消化するにはその方が良いはずである。
初夏の代表的な花壇の花と言ったら何が頭に浮かぶだろう。色々頭に浮かんで来るだろうが、やはり何と言ってもバラに尽きるのではなかろうか。そのバラが東京都の神代植物公園や鎌倉の大船植物園等に行かなくとも、なんと私のメインフィールドである小野路町の隣の野津田公園に、たくさん美しく咲いているのだから嬉しくなる。このバラの園は小野時屋敷の裏側にあって、去年からバラが植栽されて花を付け、今年は更に種数、本数も増えて、バラ園と呼んでも恥ずかしくない規模となった。しかも、まだ知られていないから殆んど人が来ないので、のんびりと撮影に専念できるのだから有難い。私にとってバラとはもう既に去年の観察記で書いたと思うが、デパートの高島屋の包装紙の綺麗に花びらが巻いた大輪なのだが、中小の花をつけた品種もとても見事である。小さな花はまるで野生のノイバラの花弁に、様々な色合いの透明絵の具を塗ったようである。ここに咲いているすべてのバラを写して、このHPに“薔薇のへや”を作りたくなったが、やはり好みの大輪2種を写して終わりにした。どんな美味しいフランス料理だって食べ過ぎには注意が必要だから。
野津田公園はその気になってあちこち散策すると、道端自然観察にも絶好な公園だが、バラの園からの雑木林の入り口で、早々となんとウラナミアカシジミに出会った。普通、ウラナミアカシジミはアカシジミより発生が遅いはずだが、今年の多摩丘陵でのゼフィルス類初見となった。蝶の愛好家ならゼフィルスと言えば、すぐにどのような蝶を指すのか誰もが知っているが、何処かで詳しく書いたと思うが、知らない方の為にもう一度説明しておこう。その前に本立てへ行って岩波新書を一冊持って来て欲しい。表紙をめくると扉と呼ばれているページとなるが、その扉の左下にゼフィルス(Zephyrus)と言うギリシア神話の西風の神様が載っていると思う。この神様の名をとって、かつては広義のシジミチョウ科のミドリシジミの仲間をゼフィルス属と呼んでいたのだ。しかし、分類学が伸展するにつれて、よりもっと属が細分化され、ゼフィルス属は発展的解消となってしまったのである。だから、図鑑を見てもゼフィルスと言う項目は無いはずである。しかし、蝶の愛好家はそんな分類なんて糞食らえで、この広義のミドリシジミの仲間を未だにゼフィルスと呼んでいるのである。
そのゼフィルスだが、多摩丘陵には平地産ゼフィルスと呼ばれている、ウラゴマダラシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、オオミドリシジミ、ミドリシジミの合計6種類が生息していて、この6種類すべてに出会いたいと、毎年フィールド詣でを繰り返している人間が私を含めて数多くいるのである。どうしてゼフィルスに固執するのかは定かでは無い。私のこの観察記の“今日観察出来たもの”のコーナーでも、蝶は昆虫の一種であるにもかかわらず、蝶として分離して扱っているが、どう説明しても難しいのだが、蝶は動植物・キノコと言う地球上のすべての命あるものの中でも特別な存在なのである。「そんな事は無いでしょう。もっと美麗で興味深々の生き物がたくさんいる筈ですよ」と反論される方も多いと思われるが、よろず生き物愛好家の私にとっても、そんな事はないはずと何べんも否定してみるのだが、「やはり蝶は良い。ゼフィルスは良い」となってしまうのである。舞岡公園に来る蝶好きのTさんに、「なぜ蝶が好きなんですか?」と質問したら、「ひらひら飛ぶから」と言う答えが返って来たが、これ以上追求しても仕方がないので、その答えは「ひらひら飛ぶから」と蝶好きの結論としておこう。ついでに、蝶のようにひらひら飛ぶ人生って、かなり素敵だとは思いませんか?
そんな是非とも撮影したい羽化したばかりのウラナミアカシジミであったが、頭上高くハリギリの葉に止まっていてはお手上げで、このHPに写真を紹介出来ないのはとても残念だ。その代わりとは言ってはなんだが、美味しそうな真っ赤に色づいたユスラウメの実とザクロの花で我慢して欲しい。また、野津田公園でも、午後に散策した小野路町でも様々なキノコが顔を出していて、中でもウラナミアカシジミと同色で同じくらいの大きさの、毬栗頭のダイダイガサが可愛らしかった。今日は曇り日で気温も低く蝶や昆虫は今一だったが、来週末から、いよいよ“花よ!蝶よ!茸よ!虫よ!”の絶好のシーズン間近を感じさせる散策であった。気温の較差が激しくて体調を崩しかねない季節となったが、風邪を引くなら、是非とも、6月の給料日前後の日に予約しておいてもらいたいものである。
<今日観察出来たもの>花/バラ(写真上左)、ザクロ(写真上右)、スイカズラ、イボタ、ウツギ、ハコネウツギ、コンフリー、オカタツナミソウ、ドクダミ、ナワシロイチゴ、ノアザミ、オオキンケイギク等。蝶/ウラナミアカシジミ等。キノコ/ヒトヨタケ、キララタケ、ムジナタケ、イタチタケ、ダイダイガサ(写真下右)、ホコリタケ、アミスギタケ、ヒメヒガサヒトヨタケ、イヌセンボンタケ、ヒカゲシビレタケ、クロトヤマタケ、スエヒロタケ、アラゲキクラゲ、ヒナノヒガサ、キコガサタケ、カワリハツ等。実/ユスラウメ(写真下左)、モミジイチゴ、ヘビイチゴ、クサイチゴ、ヤマグワ等。
5月21日、横浜市戸塚区舞岡公園
季節外れの台風がやって来て、今朝、関東地方に最接近して抜けて行った。とは言っても、太平洋のだいぶ沖合いを通過したから左程の雨も無く、風もやや強いかなと言う程度であった。今日は待ちに待った舞岡公園の瓜久保の家に同好者が集まって弁当を食べ、午後から一緒に散策する日である。朝起きたら雨は降っていたものの、家を出る時には曇り空となり、舞岡公園に着いてしばらく経つと、雲一つ無い台風一過の青空となった。これまで何べんも書いてきたように、抜けるような青空の日は写真撮影には不向きなのだが、皆と一緒に楽しく散策するには上天気と言えよう。ただ一つ残念なのは、純白にこぼれんばかりに咲いたウツギの花を、情緒たっぷりに撮影することが出来ない事だ。この季節、神奈川県を遠く離れて地方に行ったことが無いから分からないが、ウツギの花は今の季節忘れられない木の花なのである。もし、舞岡公園の一番美しい季節わ?と人に尋ねられたら、間違いなくウツギの咲く頃と答えるだろう。なにしろ、こんなにまでたくさんウツギが植栽されているフィールドは、ここ以外には知らないのである。
舞岡公園に着くと、まず最初に、サワグルミについている奇怪な幼虫であるミツクリハバチを見に行ったが、もうすっかり姿を消していた。そこで林の中の見事なキクラゲはどうなっただろうかと見に行くと、こちらもほとんど膠のように溶けていた。人間社会ではたった10日前の事だが、自然界では途方も無く長い期間である事を証明するかのようである。これではこの上天気も相まって今日は駄目かなと思って引き返すと、毎日、午前中と午後に散策に来るSさんがやって来た。Sさんは野鳥に詳しいから「ホトトギスはどのように囀るんですか?」と早速聞いてみた。すると「テッペンカケタカ、東京特許許可局って鳴くよ」と言う。そこで「舞岡公園にも来るんですか?」と聞くと、「良く通る声で鳴いているよ。もうすぐ来るんではないのかな、1ヶ月位はいるな」との答えであった。更に突っ込んで「綺麗な鳥ですか?」と聞くと、「それ程綺麗とは言えないけれど、花のホトトギスのような模様だよ」との事である。いったいホトトギスと言う名は、植物の方が先なのか鳥の方が先なのかは判明しないが、いづれにしても良き日本の美しい調べの名前である。
Sさんと一緒にぐるっと一周したが、これと言ったものにお目にかかれなかった。しかし、5月14日の横浜キノコの森で観察したムジナタケについで、形の良いイタチタケを見つけた。ムジナとはタヌキの事らしいから、今度はキツネタケやムササビタケ等を探して撮影すれば、野生動物名キノコ集等というコーナーが出来る等とたわいもない事を考えてほくそ笑む。更に、いっその事、カラスノエンドウ、キツネアザミ、前記したホトトギス等も加えて、野生動物名植物キノコ図鑑と拡大しようか等と考えるのだから、相当の暇人かとてつもなく幼稚な人間である。
Sさんと別れてクヌギ休憩所にあるクリの大木を見に行った。このクリの木は、南に面していることもあって、舞岡公園で一番最初に花が咲く。すると舞岡のファーブルこと蝶にすっかりはまってしまったTさんもやって来た。お目当てはもちろんアカシジミである。舞岡公園は多摩丘陵よりだいぶ南で温暖だから、このクリの花も咲き始め、そしてなんとアカシジミが数頭乱舞しているではないか。「ずいぶん高い所にいるな。降りて来ないかな」とTさんがこぼすので、「こんなピーカンの日では無く、朝早くとか、大風が吹いた後に来れば下草に降りていますよ」と経験談を披露する。なにしろTさんはすぐ近くに住んでいるのだから、いつでもやって来れるのである。そうこうしていると新百合ヶ丘の蝶大好きの大御所A夫妻もやって来て、しかも、アカシジミまでもが飛んで来て下草に止まったのである。まるでアカシジミが、蝶大好き4人集を歓迎するかのようであった。愛はすべてを救うとは本当なのだ。
正午になったので瓜久保の家へ行くが誰も来ていない。待てども待てども誰も現れない。「あれー、日にちを間違えたのかな。それにしても腹が減ったな」とぼやいていると、やっと鎌倉宇宙人ご婦人会の方々がやって来た。なにしろ市営地下鉄舞岡駅の階段を上がって地上に出ると目の前は田んぼなのだから、観察したいもの撮影したいものがたくさんあって、ちょっと古くて歳が分かってしまうが、植木等のスーダラ節のように、「分かっちゃいるけど止められない」の連続だったのだろう。今日はピーカンだからお肌の美容の為にもと瓜久保の家のお座敷で弁当を食べ、A夫妻も合流していざ散策を開始すると、俄然やる気になって次々と昆虫たちを見つけ出すのだから不思議である。午前中は何もいなくったって、皆でぶらぶらすれば良いなぁと思っていたはずなのに、目がらんらんと光り始めたようである。
まず最初に見つけたのはヒルガオの葉が大好きなピッカピカに光るジンガサハムシだ。次に何と首都圏では最も美しいアカスジキンカメムシの成虫とその5齢の幼虫だ。それからまだまだ続いてシシウドの葉にたくさんのヒメシロコブゾウムシ、ノブドウの葉に赤と緑のきんきらきんのアカガネサルハムシ、ツユクサが大好きなトホシオサゾウムシ、その他、ジョウカイボン、ホタルカミキリ、ユウマンダラエダシャク、マガリケムシヒキ等とどんどん続いた。「あっ、おばさんホタルがいる」と言ってご婦人たちにひんしゅくをかったオバボタルもいた。このオバと言う接頭語がどんな意味かも知らずに「このホタルはホタルにそっくりなのに、光らないからオバボタルって言うのでしょうね」等と説明したら、感受性の高いご婦人の一人が眉をしかめた。でも、男女30過ぎればみんなオバなのだから恨みっこ無しである。
残念な事にヌルデの古木にいるはずの奇怪なマダラアシゾウムシ君はお留守だったが、何と言っても今日のハイライトは、やはり旅行中に立ち寄ったアサギマダラだろう。南西諸島からの高原への大旅行の途中、美しくウツギ咲く舞岡公園に舞い降りて来たらしい。誰が見てもとても美しい蝶である。以上のように今日の舞岡公園は野の花こそ左程見られなかったものの、蝶や昆虫たちの天国で、一種一種を丁寧に撮影して行ったら、素晴らしいコレクションが出来上がるだろうと感じさせられた。こんな道端生き物(動植物・菌類)コレクションには、特にご婦人には、コンパクトデジテルカメラが最高である。フィルム代がかからないから、芋虫・毛虫だって撮り捲れるのである。これで愛車小野路号が時々舞岡公園号に変わる理由が分かってもらえた事だろう。
<今日観察出来たもの>花/ドクダミ、ナワシロイチゴ、ノアザミ、ニワゼキショウ、ハコネウツギ、スイカズラ、イボタ、ウツギ、コゴメウツギ、ヤマボウシ等。蝶/アサギマダラ、アカシジミ、ツマグロヒョウモン、クロアゲハ、アオスジアゲハ、イチモンジチョウ、コミスジ、キタテハ、サトキマダラヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、ダイミョウセセリ、コチャバネセセリ等。虫/アカスジキンカメムシ、チャバネアオカメムシ、クモヘリカメムシ、オバボタル、ヒゲナガハナノミ、アカガネサルハムシ、ジョウカイボン、ホタルカミキリ、アカスジキンカメムシ(写真下左)、ヒメシロコブゾウムシ(写真下右)、トホシオサゾウムシ、シオカラトンボ、ユウマンダラエダシャク、ホソオビヒゲナガガ等。キノコ/イタチタケ、アミスギタケ、キクラゲ、アラゲキクラゲ、フウセンタケの仲間等。実/モミジイチゴ(写真上右)、ウグイスカグラ、ヘビイチゴ、ヤマグワ等。その他/ヤマカカガシ、アマガエル等。
5月19日、東京都町田市小野路町・図師町
愛車を小野路号と名づけている位だから、もっと頻繁に来なければならないのだろうが、約10日ぶりの小野路町・図師町である。初夏を代表するキンラン、ギンラン、ホウチャクソウ、アマドコロと言った山野草の花やミズキ、フジ、ニセアカシア、ホウノキ等の木の花が咲き終わってしまうと、本格的な梅雨に入るまで自然度100%の小野路町・図師町と言えども寂しくなる。いわゆる初夏と梅雨の端境期に入っているのである。しかし、台風が沖縄付近にあり前線も停滞しているから明日、明後日は雨ということなので、今日は夕方まで雨は降らないと言う予報を信じて出かけた。また、去年の今頃、多摩丘陵では珍しいギンリョウソウを見つけているし、それに美味しいモミジイチゴの実をたっぷりと味わいたくなったのである。
いつもの場所に車を停めると美しい雑木林のコースをとった。春の初めから芽吹きまで明るかった林内はとても暗くなった。落ち葉だけで何も無かった地面にも下草が一杯だ。それでも昨日、弘法山で出会ったヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ、コジャノメが飛んでいる。樹木が伐採されて明るくなった箇所にフタリシズカをたくさん見つけてあったので、撮影しようと行ってみると、既に花期は過ぎていた。予想通り雑木林にはこれと言った山野草の花は咲いていない。ヤマユリが咲くまで雑木林の花はお休みのようである。それならばキノコとばかりに目を凝らすのだが、まだこれからのようである。
残念な思いで美しい雑木林を後にすると、目指すモミジイチゴがたくさん生えている場所に行った。メインルートから離れた場所にあるので、黄色い実がたわわに実っている。それでもここは多摩丘陵なのだから両手に一杯になった位の収穫量であった。そんなたわわに実ったモミジイチゴの実を見て、今日は実の日にしようと歩き回るが、ウグイスカグラ、ヘビイチゴ、クサイチゴ、ヤマグワの実等がたくさんなってはいるものの、いざ美しく撮影しようとなるとなかなか難しい被写体だ。これらの実が熟していると言う事は、春から始まった命の行進が一段落着いたという証拠でもある。蝶の世界も同様で、早くもキタテハの第1化が現れて飛び回っていたし、モンシロチョウ、ベニシジミ、スジグロシロチョウ等の第2化も始まる筈である。そして、森の精とも言われるゼフィルスももうじき飛び始めるから、フィールドはとても賑やかになるだろう。平地の蝶の世界は、6月が種数、個体数とも一番多いのである。
かなり期待してキノコ尾根を下って行くが、赤褐色のセンボンイチメガサが生えてる位だ。千本とその名につく位だから、たくさんまとまって生えていなければならない訳だが、どう見ても20本位である。去年、千本とは行かないものの百本位の見事なものを見ているので撮影はしなかった。久しぶりに白山谷戸に下って行くと、農家の方が素手で畦塗りに精を出している。先日、里山ボランティアで軍手をはめていたのに泥仕事をしたら、爪の間に泥が染み込んでいまだに取れない。ものの本によると、爪に泥をつけている男性はすべての女性から不潔とパスされるらしい。まあ、野山の散策は蛇に出会う位で女性にはめったに会わないのだから、まあその内に取れるだろうとたかを括っているが、仕事先の女性に嫌われたらまずいので、今日帰ったら爪掃除をすることにしよう。
白山谷戸の農道にはノアザミがたくさん咲いている。また、雑木林の縁に沿った小川にかぶさるように小ぶりなマルバウツギが純白に咲いて美しい。農道脇にはウツギも咲き始めていたから、いよいよ“卯の花のにおう垣根に、ホトトギス早も来鳴きて、忍び音漏らす夏は来ぬ”と言う季節になった訳である。それにしてもこの歌の歌詞は難解である。いったい“忍び音”って言うのはなんなのだろう。耳に聞こえるか聞こえないかのホトトギスの囀りなのだろうか? それとも人間の放屁のような不思議な音なのだろうか?等と疑問に思って辞書を引くと、ホトトギスの初音の事だとある。この初音とはどんな囀りなのだろうか。野鳥図鑑にあるように、テッペンカケタカとか特許許可局とかに聞こえる雄の鳴き声なのだろうか? 今度、野鳥に詳しい方に出会ったら聞いてみよう。まあ自分流に“夏は来ぬ”の歌詞を訳すと、純白のウツギの花がこぼれんばかりに咲いている垣根に、ホトトギスが早くもやって来て、特許許可局と鳴いて、早くも夏がやって来たと言う事になる。
ずいぶん横道にまたまたそれてしまったが、イモカタバミ、ムラサキカタバミ、ジキタリス、ルピナス等が美しく咲く民家の庭先を見、また、フキの葉に鎮座するシュレーゲルアオガエルをからかったりしながら、本命の道端自然観察場所である五反田谷戸に行った。今日はノアザミが美しく咲き、レモンイエローのミヤコグサもたくさん咲いていた。この赤紫と黄色と緑の対比がとても好きで、いつ来ても五反田谷戸は素晴らしいのだが、春の山桜から始まって、紅白違えて埋め尽くすように咲くムラサキサギゴケに続き、またまた美しい谷戸の季節がやって来た。きっと、5月30日に多くの美男美女(かつて)が集まる日には、田植えも終わって、より以上に素晴らしい光景が眼前に開けている筈である。
<今日観察出来たもの>花/ミヤコグサ、タツナミソウ、ドクダミ、ナワシロイチゴ、ノアザミ、フタリシズカ、ガマズミ、ニワゼキショウ、ハコネウツギ、スイカズラ、イボタ、マルバウツギ、ウツギ、コゴメウツギ、イモカタバミ、ムラサキカタバミ、ジキタリス、ルピナス、ムラサキツユクサ(写真上左)等。蝶/クロアゲハ、イチモンジチョウ、コミスジ、キタテハ、サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、ヒメウラナミジャノメ、コジャノメ、ダイミョウセセリ、ヒメキマダラセセリ、コチャバネセセリ、イチモンジセセリ等。虫/シオヤトンボ、シオカラトンボ、オジロアシナガゾウムシ、ヒメクロオトシブミ、オオヒラタシデムシ、アオオサムシ、マドガ、各種アワフキの巣等。キノコ/ヒメカバイロタケ、ムジナタケ、イタチタケ、ダイダイガサ、アミスギタケ、キクラゲ、カワラタケ(写真上右)、ベニタケの仲間等。実/モミジイチゴ、ウグイスカグラ、ヘビイチゴ、クサイチゴ、ヤマグワ(写真下右)等。その他/シュレーゲルアオガエル(写真下左)、アマガエル等。
5月18日、神奈川県秦野市弘法山・権現山
先日、相模原のBさんがこのHPの掲示板にキビタキの写真を送ってくれたが、それを見てキビタキは無理にしても、鳥の写真が撮りたくなった。木々の葉が濃緑になるに従って、鳥の写真を撮るのが難しくなった。もちろん、河原とか干潟とかに行けば良いのだろうが、何となくシギやチドリ類に会いたいと言う気が起きない。やはり雑木林を中心とした身近に見られる里山の野鳥に、興味をそそられるのである。そんな訳で、いつも期待を裏切らない秦野市の弘法山、権現山へ行った。いきなり権現山の野鳥観察施設に出向いても、この時期、野鳥を4カット撮影するのは難しいので、午前中は花よ虫よキノコよと弘法山を散策した。それに今、ミカンの花が満開なのである。“ミカンの花が咲いている。思い出の道、丘の道。はるかに見える青い海、小船が遠く霞んでいる”と言う歌詞の歌があったと思うが、弘法山は海こそ見えないもののミカン畑が各所にある。もし、神奈川県でこのような歌詞の情景を満喫しようとしたら、大磯町の丘陵地帯へ行くのが一番である。いずれにしても濃緑の葉に純白のミカンの花は美しい。駐車場の近くに夏みかんも咲いていたが、こちらは大振りな花で、枝一杯に花を付けるミカンの方が情緒がある。
ミカン畑に通ずる農道は大好きな道端自然観察の場所で、真黄色のクサノオーがたくさん咲いている。先日、舞岡公園で鎌倉のNさんが、「クサノオーは弘法山へ行けば至る所に咲いているけど、舞岡公園には何処を探しても無い」と言っていたが、多摩丘陵でも見たことが無いから、やはりやや山地性の植物なのかも知れない。農道脇の梅林の中に積んである伐採されたやや朽ちた樹木の上を見ると、アミスギタケがたくさん生えている。多摩丘陵でもたくさん見られたから、今はアミスギタケの季節なのだろう。図鑑によるとアミスギタケはヒダナシタケ類サルノコシカケ科(多孔菌科)に属していて、普通、この科は柄が無いはずだが、アミスギタケにはれっきとした細長い柄がついている。キノコに関してはまったくの素人だが、何処にでもたくさん生えていて、しかも絵になり見分けも容易だから本当に有難いキノコである。これで美味しく食べられたら最高なのだが、手持ちのどの図鑑を見ても書いてない。と言うことは、ひとまず猛毒のキノコでは無いのかもしれない。
いつものパターン通りに山ろくを散策してから弘法山へも登って行くと、野の花ではタツナミソウ、オカタツナミが咲いている。昆虫では前羽に一個、後ろ羽に二個の白い窓を持つマドガが葉に止まっている。蛾と言うとほとんどが夜行性だが、昼間活動するものもあって、マドガは典型的な昼行性の蛾で、コゴメウツギの花等で、無心に蜜を吸っているのによく遭遇する。弘法山までの表の道は、市の公園科の方々の努力によって、オオヒラタシデムシが太いミミズの屍骸にかぶりついている以外には、さほどのものに出会わなかったが、山の裏へ下って行くと、そこは素晴らしい生き物達の道端と化した。まずは伐採されたばかりのコナラの切り株に、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ、イチモンジチョウ、ホソアシナガバチ、ヨツボシケシキスイ、ヨツボシオオキスイ等がたくさん集まって樹液を吸汁していた。この時期は、まだクヌギやコナラの幹からの樹液が湧いてはおらず、クリの幹やこのように切り株の樹皮と芯材の間の形成層から染み出てくる樹液しかないのである。
毎年、このような切り株で思わぬ素晴らしい写真を手にするのだが、イチモンジチョウが樹液にやって来るとは初めて知った。また、それぞれの蝶が美しく撮影して下さいとばかりにおとなしくじっとしているので、背景の雑木林を広く取り入れた広角接写まで試みて撮影した。なんとレンズの先端から15cm位まで接近しても、我関せずと夢中になって吸汁しているのである。こうなってはまるでペットのようで、地味なジャノメチョウ科の蝶とは言っても、実に可愛いものである。また、それほど多いとは言えないホソアシナガバチまで吸汁しているのにも驚いたのだが、ホソアシナガバチはその名の通り、細くて華奢なアシナガバチだが、一応、膜翅目スズメバチ科の昆虫だから人間を刺すのだろう。しかし、美味しい樹液に夢中で、その姿格好からそれ程獰猛とは思えないので、近づいて真正面から撮影した。それでもファインダーを通しての面構えは、この科らしくやはり眼光は鋭い。ついでにホソアシナガバチの巣であるが、こちらも細長いのだから面白い。この他、キノコでは大型のベニタケ科の仲間が2種生えていたが、写欲をそそらずこの次とした。
午後からは機材を野鳥用に変えて、権現山の野鳥観察施設へ行った。今日は平日だし空いているだろうと思ったら、なんと4人もカメラを構えている。その中に、冬にヒレンジャクの三輪町やクロジの生田緑地等でたびたびお会いしたHさんがいるではないか。「お久しぶり、この季節になってもやはり野鳥撮影なんですね。舞岡の人たちはみんな蝶になってますよ」と笑いながら言うと、「キビタキが来ているから通っているんだ。今日も午前中に現れたよ」とのことである。これはこれは憧れのキビタキに会えるかもしれないと、早速機材をセットすると、ヒヨドリ、ヤマガラ、シジュウカラ、エナガ、メジロ等が順次現れた。しかし、生憎雲が厚くなって、ISO感度1600、絞りをf5.6にしてもシャッター速度はなんと60分の1にしかならない。もうブレブレの写真ばかりだが、久しぶりに動き回る野鳥撮影の緊張感はたまらない。舞岡公園の野鳥撮影の大御所であるFさんが、この逃げられるかな上手く撮れるかなと言うハラハラドキドキの緊張感が堪らないと言っていたが、確かに動かない物を撮影するのとは大いに異なった快感がある。
3時を回るとますます雲が厚くなって来た。撮影は出来なくとも是非キビタキを見たいと思ったが、シャッター速度は15分の1等と恐ろしい数値を示し、皆が帰ると言うので、私も諦めて車に戻ると、なんと大粒の雨が降って来た。まあ、良いやこれからが6月一杯までは、ゼフィルスやヒオドシチョウを狙いにたびたび弘法山に来るつもりでいるので、一度くらいは撮影は無理でも、キビタキとオオルリに出会えることだろう。老いてますます元気のHさんは、晴れていれば必ず来ると言っていたが、えんえん国道246号線を川崎からひたすら走って来る根性には頭が下がる。きっと、キビタキやオオルリの素晴らしい写真が目の前にちらついているのだろう。たかが野鳥写真だが、されど野鳥写真、そして権現山なのである。
<今日観察出来たもの>花/ミカン(写真上左)、ナツミカン、タツナミソウ、オカタツナミ、クサノオー、ナワシロイチゴ(写真上右)、ノアザミ、フタリシズカ、ガマズミ、ニワゼキショウ、ハコネウツギ、ヤマボウシ、スイカズラ、ハルジオン等。蝶/モンキアゲハ、ジャコウアゲハ、イチモンジチョウ(写真下左)、サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、ヒメウラナミジャノメ、コジャノメ、ダイミョウセセリ等。虫/ホソアシナガバチ、ヨツボシケシキスイ、ヨツボシオオキスイ、マドガ、ジョウカイボン、オオヒラタシデムシ等。キノコ/アミスギタケ、キクラゲ、ベニタケの仲間等。鳥/ガビチョウ、ヒヨドリ、ヤマガラ、シジュウカラ、エナガ(写真下右)、メジロ等。
5月16日、神奈川県川崎市麻生区黒川
週間天気予報を見ると、来週はオレンジ色の太陽マークが一つも無く、ほとんどが傘マークである。初夏は世上問題視されている紫外線が一番多い季節だから、写真撮影にも、体力温存にも曇り日が最高なのだが、その雲マークさえも来週は一つしかないのである。これは困った。この「つれづれ観察記」も開店休業だ。もっとも連休に豪華な6日間連続の観察記を書いたつもりでいるから、まぁ、間が空いても許して貰えるかもしれないとは思うのだが、ファインダーの中に美しい絵を捉えたい、快いシャッター音を聞きたいと言う欲求は満たしたいのである。昨日は天気が良かったが、午前中の里山ボランティアが今までに無い肉体労働だった為に、午後に寺家ふるさと村に行ってはみたものの、まるで夢遊病者のようにうろうろしただけだった。昆虫では超美麗なアカスジキンカメムシが成虫となり、キノコでは小さくて可愛いイソギンチャクのようなシロキツネノサカズキ、独特な格好が面白いクロアシボソノボリリュウタケ等があったが、一回もシャッターを切らずの帰宅となった。
そんな訳で今日はいつもより早く目が覚めてしまって、やるき満々で黒川へ行ったものの、小糠雨振る多摩丘陵で、目的としていた各種の昆虫を徹底的に撮る等という考えは即座に消えうせ、傘を差しての散策となった。車を停めていざ雨の中への出陣と思ったら、小川のフェンスの支柱にコアシナガバチとその造り始めの小さな巣を見つけた。実は昨日、エブリディ未亡人化しつつある奥様が、「今日は大変な事があったのよ」とおっしゃる。どうせくだらない事だと思ったが、ここで邪険に扱ったら角が生えて来て、一週間は取れなくなるはずである。そこで神妙な顔をして聞くと、なんと布団を干すベランダの壁に蜂が巣を造っていて、それを取除くために大変だったのだと言う。そのために奥様は摩訶不思議な道具をこしらえて、それを見せてくれた。「ふん、なんだ、そんなことか」と笑いがこみ上げて来たが、それをごっくんと飲み込んで、「こんな蜂で、巣はこんな状態だった」と、以前撮影したコアシナガバチの巣作りの写真を見せたら、まさにその通りだと言うのである。
いつも携帯電話を持参しているのだから、少しは昆虫に詳しいと自認している夫に電話で相談すれば、そんな摩訶不思議な道具を作らなくとも済んだのにと思ったが、今の季節のコアシナガバチの巣の取り方について説明してあげた。それを要約すると、コアシナガバチは越冬した一匹の女王蜂が、最初はひとりで小さな巣を作る。その時は比較的おとなしいから近づいても刺されることは無い。また、巣の材料を探しにかなりの時間巣を離れるから、その時に巣を取り除いてしまえば良い。また、戻って来た女王蜂は、いつのまにか無くなってしまった巣のあったあたりを不思議そうにしばらく飛んだ後に、諦めて何処かへ行ってしまうからそれでお仕舞いと言う事になる。最も女王蜂の子供たちが羽化して来て、たくさんの働き蜂が同居する巣となったら危険だから、寝込みを殺虫剤で襲うことになる等と説明した。しかし、このHPをご覧になっても、もしご自宅にコアシナガバチの巣を発見したら、自分で取除こう等とは考えないで、即座にご亭主に相談することをお勧めする。いつも痛い目に会うのは女性でなくて男性の役目なのだから。
話がずいぶん横道にそれてしまったが、小糠雨に巣が濡れないようにと、コアシナガバチが巣の上で神妙な顔つきで鎮座していたので、絵としては平凡だったが心を込めて撮影したことは言うまでも無い。雨に濡れた農道を傘をさして歩いて行くと、草原に外来種のコンフリーの花が見事に咲いている。別名を鰭玻璃草とも呼ばれ、ビタミンB12を始め、各種の栄養素を豊富に含み、疲労回復、滋養強壮、胃腸病に効果があると図鑑では書かれているはずだが、畑で作られているものを見た事がないので、以前、健康野菜としてもてはやされ栽培されたものが逸出して、雑草化しているのかもしれない。しかし、背丈は高く葉も青々として大きく、実に見事な植物である。今日はその他、野菜の花が多く目に付き、一面に咲いた黄色い花のシュンギクが美しい。そう言えば昨日寺家ふるさと村で出会った、キノコの専門家だが植物にも詳しいKさんが、たしかベニバナボロギクと言っていたように思うが、赤い花の咲くボロギクがシュンギクの代わりになって、天ぷらにして食べたら美味しいと言っていた。
“歩けども歩けども、小糠雨は一向に止まず、じっとカメラの濡れ具合を見る”なんて、石川啄木が怒りそうなへたな短歌を作りたくなるが、こんな日だからと早くも咲き出したドクダミ、ナワシロイチゴ、ジャガイモの花を撮影する。これらはみんな曇り日でなくては情感が出ない花である。梅雨の季節の道端の代表種であるドクダミをピーカンの日に撮影したら、君の感性は少しおかしいのでは無いか等と言われそうだし、薄赤いナワシロイチゴは、雨に洗われた黄緑の葉に小さな水滴がたくさん残っているような時にこそ、その美しさの極みに至るのである。また、畑一面に咲いたジャガイモの花は、花弁から水滴が垂れ下がっているような時こそ、得がたいシャッターチャンスなのである。もちろんジャガイモの花は、最近各種の色の品種があるようだが、サヤエンドウと同じく、薄紫の花でなくてはならない。
農道が雑木林の縁に沿うようになると、とても美しく形の良い濃い紫のハンショウヅルを見つけたが、いつでも何処でも、このハンショウヅルは絵にしにくい所に咲いていて、今回もまた撮影を断念するに至ってとても残念だった。しかし、フタリシズカ、アマドコロ、ガマズミ、ノイバラ、イボタの花が咲いて賑やかだ。これらはみんな白い花である。この白い花の極め付きはなんと言ってもエゴノキなのだが、早くも散り始めて、時折、農道に薄っすらと白い絨毯が敷かれている。エゴノキの花は、落花も端正な5弁をつけたまま形を変えずに、そのまま落ちている。咲いても良し落ちても良しのエゴノキの花等と形容したくなる。まあ、私も若い頃も良し、今も良し、老いても良しと、少なくとも心だけはいつも新品で行きたいものだと自戒するが、雨は一向に止まぬどころか強くなって、エゴノキの花のように潔ぎ良くフィールド離れしての帰宅とあいなった。
<今日観察出来たもの>花/コンフリー(写真上右)、ジャガイモ(写真上左)、シュンギク、ハンショウズル、タツナミソウ、ナワシロイチゴ、ドクダミ、ノアザミ、フタリシズカ、アマドコロ、、ニワゼキショウ、ハルジオン、ガマズミ、ノイバラ、イボタ、エゴノキ、ハコネウツギ、ヤマボウシ、スイカズラ等。蝶/ヒメウラナミジャノメ、コジャノメ、ダイミョウセセリ等。虫/コアシナガバチ(写真下左)、ジョウカイボン、ヒメクロオトシブミの葉らん(写真下右)等。
5月14日、横浜市緑区新治市民の森〜横浜キノコの森
今日の蒸し暑さはいったいなんだ。湿度が異常に高い。まるで梅雨に入ったような天候だ。家に帰って天気図を見ると、前線が長く日本列島の南岸に沿って伸びている。これは梅雨の季節と同じ気圧配置である。そう頭では納得出来たものの異常な熱気と湿気は今も続いていて、ばてばての身体に鞭打ってキーボードに向かっている。今日は久しぶりに新治市民の森へ行った。もちろんヤマサナエを撮影するためである。かつての私のメインフィールドであるが、谷戸田が埋め立てられて環境が悪化してから、たまに自然観察へ行くフィールドとなってしまった。何処のフィールドでもそうなのだが、いくら丘陵部の森が守られていても、そこに至るアプローチの道こそ自然観察には重要なのだ。一部のものを除いて蝶や昆虫、野の花は農道脇や山裾の道が最高で、しかもこのような道は平坦だから写真撮影も非常に楽である。そうは言っても新治市民の森はまだまだ捨てがたいフィールドで、ことにトンボの仲間は数多く生息し、今日の目的たるヤマサナエも他のフィールドに比べると圧倒的に個体数が多いのだ。
今日は平日だから新治市民の森の駐車場はお休みである。そこで新治小学校近くに路上駐車して歩き始めると、満開のハコネウツギと、植栽されている青紫色のアヤメが出迎えてくれた。農家の庭先を覗くと各種のアイリスが咲いている。もちろん路傍には、こんなに小さくともアヤメ科のニワゼキショウ、小川の浅くなった場所にはキショウブも咲き、今はアヤメの仲間の季節であることが分かる。来る途中、色とりどりのバラが咲いていたし、シャクヤクもまだ咲き残っているから、大船のフラワーセンターでも行ったら、目が覚めるような花の写真を何枚も手にする事が出来るだろうと思うのだが、今年は野山を丹念に散策することになりそうである。なんと言ったて植物園と異なって、野山は蛇や蚊はいるものの人も来ず静かなのが最高である。
いつも新治市民の森へ行くと、通常の散策コースから外れて、ほんの少し残った谷戸田と広々とした明るい栗林がある、お気に入りの場所へまず最初に出向く。ここは野の花でも昆虫でも最高の観察場所なのである。今日は野の花ではタツナミソウがたくさん咲き、昆虫ではカワトンボがまずお出ましになった。透明の羽に身体が金緑色に光るから雌である。この雌もしっかり撮影しておかなければならないのだが、私のイメージするカワトンボは赤褐色の羽を持つ雄なので、毎年、この雄を美しく撮影するとカワトンボに対する興味が急速に薄れてしまうのだから困ったものである。私の知っている樹の花が大好きなHさんは、例えば早春に咲くキブシなら、しっかり雄花、雌花に分けて撮影しているが、私にとってはどちらもキブシの花なのだ。さすが東京大学医学部卒のお医者さんは違うなあ等と変なところで感心するだけなのだから、まったくノー天気な情緒派のウィークエンド・ナチュラリストである。
今日は蒸し暑いが風も無い曇り日である。スイバの穂がすっと伸びて美しい。こんな場所に昆虫が止まっていてくれたら、本当に絵になるのだが等と考えながら目をやると、いましたいました絵にはならないヤマトクロスジヘビトンボが。前回、舞岡公園にてミツクリハバチの幼虫は気持ち悪いからパスしたのだが、その後、とっても可愛いじゃんと鎌倉のNさんが撮影して掲示板に投稿してくれたが、そんな彼女だって、このヤマトクロスジヘビトンボには眉をしかめるに違いない。そうは思ったのだが、ことによったらご婦人には地球人離れした感覚の持ち主が多いから、この奇妙な昆虫も大受けかもしれないなと慎重に撮影した。そもそもこのヤマトクロスジヘビトンボが属している脈翅目の仲間の昆虫は、変梃りんで奇妙なものが多い。かつて小野路町で度々ご一緒した昆虫写真家のTさんがこの仲間を真剣に研究していたが、私にとってはカマキリモドキとツノトンボの仲間に興味をそそられる位で、他のものはどちらかと言うとパスしたい昆虫達だ。
思わぬ珍客の撮影に没頭したが、やはり新治市民の森にはヤマサナエが至る所に多い。まだ発生初期だから漆黒の身体に黄色の模様が鮮やかだ。ヤマサナエは雑木林の丘陵に囲まれた小川に発生し、北海道には生息しないが、日本各地に最も普通に見られる大型のサナエトンボで、しかも日本特産種である。おそらくあの身体から想像してかなりのスピードで飛翔可能なはずなのだが、ヤマサナエは下草や低木の葉に不器用に止まってテリトリーを張り、近づいて来る小さな昆虫を捕食する。シオカラトンボ等の多くのトンボは、かなりしっかりと差し込まれた棒の先等が大好きなのだが、大型なのにもかかわらず控えめな場所に止まるのだから奥ゆかしい。しかし、そのような場所は風があれば絶えず揺れているような所だから、頭上を飛ぶ他の昆虫を複眼で捉え難いのではないかと思うのだが、ヤマサナエは一向に気にしていないようである。
いつ来てもこのお気に入りの場所でほとんどの目的が果たされてしまうのだが、キノコもようやく顔を出したと言うので散策路を一回りしてみたが、アミスギタケがたくさん生えている以外は、図鑑による絵合わせでは到底種名が判明しそうも無いものばかりなので早々と切り上げ、昼食を摂って横浜キノコの森へ行った。横浜キノコの森なんて言う地名は地図を広げても何処にもない。ここはとてもキノコがたくさん生え、しかも写真撮影に好適な平坦な下草のほとんど無い雑木林が続いている秘密の場所なのだ。だからあえて横浜キノコの森等という名を付け、キノコを食べたい人に教えたくないのである。いつ行ってもキノコがたくさんあれば、絵合わせで確実に種名が分かるキノコを美しく撮影することが出来るからだ。今日は10種類くらいのキノコが生えていたが、ムジナタケ、イヌセンボンタケ、ホコリタケを撮影した。しかし、こんなに気温が高くて湿度が高いと藪蚊が活発で、これからは蚊取り線香をぶら下げて来なければならなくなったが、2週間位先の横浜キノコの森は、楽しさ一杯のわくわく面白キノコランドに変身していることだろう。それにしても今日は本当にくたくたになって、車のクーラーをがんがん効かせての私らしからぬ帰宅となった。
<今日観察出来たもの>花/アヤメ(写真上左)、アイリス、キショウブ、ニワゼキショウ、ハコネウツギ、ヤマボウシ、ガマズミ、エゴノキ、ノイバラ、スイカズラ、タツナミソウ、ハルジオン、オオキンケイギク、シラン、シャクヤク、バラ、ムシトリナデシコ等。蝶/モンキアゲハ、コミスジ、ベニシジミ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ、イチモンジセセリ等。虫/ヤマサナエ(写真上右)、カワトンボ、シオカラトンボ、ヤマトクロスジヘビトンボ(写真下左)、オオヒラタシデムシ、コフキゾウムシ、ウンモンスズメ等。キノコ/アミスギタケ、ムジナタケ(写真下右)、イヌセンボンタケ、ホコリタケ等。
5月11日、横浜市戸塚区舞岡公園
久しぶりの舞岡公園である。前回行ったのが4月26日だから、なんと約2週間ぶりと言うことになる。昨晩の天気予報では気温が28度まで上がり、晴天であるというから、行く前から気がめげていた。なぜなら今日は花はハコネウツギ、ヤマボウシ、そして新潟で花ばっかり撮影していたので、何としてもイチモンジチョウやコミスジ等の蝶と様々な昆虫を撮影したかったのである。いつももっとジャンルを絞って、図鑑やルーペ等も持参して、ある分野を専門的に学究しなければと考えているのだが、なにしろ身近なフィールドの道端自然観察だって、様々な生き物が目に飛び込んでくるのだから困ってしまう。今日、午後に出会って一緒に散策した鎌倉のNさんが、「いいわね新潟へ行って来て」とうらやましそうに言われたので、「舞岡公園や鎌倉のフィールドだけでも、昆虫を含めたら、それこそ撮り切れない程の被写体があるし、また、それを美しく撮るとなると一生もんだよ」と答えた。植物やキノコ等の動かない被写体なら時間さえかければなんとか撮れるかもしれないが、逃げる被写体、例えば蝶だったら、いくら時間をかけたからと言ったって、1フィールドの全種類を美しく撮影することは無理かもしれない。私もたった65種類の身近な蝶を撮影するのに、なんと10年もかかったのだ。もし違った分野で10年も費やしていたら、相当数の写真を確保出来たに違いない。そんな訳で鎌倉のNさんに「舞岡公園や鎌倉で、1種類1種類を丁寧に美しく撮影して行けば良いのではないですか。それって、すごく楽しいし大変な事なんですよ」等と先輩ぶってアドバイスした。
今日の抜けるような紫外線たっぷりの青空を見てすっかりしょ気ていたにも関わらず、カメラを持って歩き始めると、俄然元気が出て来るのはいつものパターンである。午前中に出会った舞岡のファーブルことTさんが、「こんなに良い天気じゃ家にこもってなんていられないものな」と言っていたが、まさにその通りで、自然観察は晴耕雨読が鉄則なのである。いつものように火の見櫓脇のアジサイの葉上を観察するが今日は昆虫はお留守で、河童池に向かって行くと、ヤマトクロスジヘビトンボらしきものが不器用に飛んで雑木林の中に消えた。サワグルミの葉裏には、真っ白い粉を吹いたようなミツクリハバチの幼虫がその葉を食んでいる。これは実に奇妙な幼虫で、以前、意地悪をして蝋から出来たその粉をすべて細い草で落としたら、裸のか細い幼虫となってしまって哀れだった。まるで地位がある内は大きく見えるが、それを失うと急に気の毒なようにしょ気て小さくなってしまう人間のようである。もちろん今日はそんな悪さはしなかったし、美しいとは言いがたいのでこのHPのために写真も撮影しなかった。
河童池を見ると色とりどりのスイレンが咲き、悠然と大型のヤンマが飛んでいる。一見するとギンヤマにも見えるが、クロスジギンヤンマだろう。また、おなじみのシオカラトンボも発生しいて、いよいよ池のトンボもにぎやかになった。そうそう前回、サナエトンボは両の複眼が離れていると書いたが、ヤンマの仲間は両の複眼がくっついているので見分けがつく。また、オニヤンマは一部のみくっついていて、このためサナエトンボ科、ヤンマ科、オニヤンマ科等と分けられているのだ。クロスジギンヤンマの撮影は相当な幸運、例えばアシ等に止まって休息していたり、ペアが産卵してたりしていないと撮影が難しいので、河童池奥のハコネウツギを見に行くと、昨日の雨もあって生気を失い、しかも今日のようなピーカンでは美しく撮影できないと諦める。それではいつもこの時期になると生えるフーセンタケの仲間を見に行くと、去年と同じ場所に生えているものの、雨で跳ね返った土で汚れ撮影する気になれない。しかし、雨のために瑞々しく膨らんだキクラゲを見つけて撮影した。このキクラゲは生でも食べられると聞いているが、プリン、コンニャク、ゼリーと言った寒天質のものが苦手な私の口には合いそうもないが、しかし、山葵醤油でお刺身のように食べたら実に美味そうである。
今日は予感どおりに写真はお手上げだなと思ったが、一回りしょうとのんびり歩いて行くと、植栽されたヤマボウシ、キリの花が見事で、多摩丘陵ではお目にかかった事がないオカタツナミソウがあちこちで咲いていた。また、至る所にアカツメクサ、ニワゼキショウが咲いて、小雨の後の曇り日等なら情緒溢れる写真が撮れることだろう。ことにアカツメクサの毛の生えた葉上に水滴が小さくたくさん着いている時等は最高である。ドクダミももうそろそろ咲くだろうし、ウツギの蕾も膨らんで、梅雨はもう間近に迫って来ている。今日はシャッターを余り押していないので、いつも期待を裏切らない古民家裏へ行ってみると、可愛らしいウグイスカグラの実が真っ赤に瑞々しく色づいていた。コンビになんて無い子供の頃は、グミと呼んでおやつ代わりにしていたが、今はそれほど美味しいとは思えない味である。やはり来週あたりからが食べ頃となるモミジイチゴの実が一番だ。
午後からは少し時間が空いたのでとやって来た前記した鎌倉のNさんと散策した。Nさんが「あっ、ゴミムシ」と言うので、指差す方向を見てみるとオオヒラタシデムシである。雑木林ではミミズの遺骸にかぶりついているが、腐肉を食べるお葬式屋さんの昆虫だ。ゆっくりと坂道を登って行くと、コナラ、ノイバラ、クマノミズキ、エゴノキ等にオトシブミの仲間が造った葉籃がたくさんぶら下がっている。しかし、造った本人の成虫が見当たらない。どうも今日は晴天で気温が高いから、私と同様にご機嫌斜めなようである。舞岡公園には様々な昆虫観察の好場所がひしめいているが、その中でも最高たる散策路で、キスジホソマダラ、マツアナアキゾウムシ、コフキゾウムシ、ジョウカイボン、イチモンジカメムシ、ホソヘリカメムシ等に会ったが、なんと言ってもヒルガオにたんさんいたピッカピカのジンガサハムシが一番だろう。このHPの掲示板に度々ご投稿頂いている一人静さんこと鎌倉のOさんが、高尾の多摩森林科学園にて、お仲間のイチモンジカメノコハムシを撮影していたが、今日はジンガサハムシ以外にもイノコズチの葉にヒメカメノコハムシもいた。また、超美麗なピカピカ光る緑と赤のツートンカラーのアカガネサルハムシがノブドウで見られたし、何処を見渡してもやっと本格的な昆虫達の季節がやって来たという感じで、花虫とおる(花虫撮る)の大忙しの日々が始まりそうである。
<今日観察出来たもの>花/ハコネウツギ、タニウツギ、キリ、ヤマボウシ、ガマズミ、エゴノキ、ノイバラ、テリハノイバラ(写真上右)、スイカズラ、オカタツナミソウ、アカツメクサ(写真上左)、シロツメクサ、ノアザミ、ハルジオン、ジシバリ、ニワゼキショウ、キショウブ、シャクヤク等。蝶/ジャコウアゲハ、モンキアゲハ、クロアゲハ、キアゲハ、コミスジ、ルリタテハ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ等。虫/クロスジギンヤンマ、シオカラトンボ、ヤマトクロスジヘビトンボ、オオヒラタシデムシ、マダラアシゾウムシ、マツアナアキゾウムシ、コフキゾウムシ、ジョウカイボン、ジンガサハムシ、ヒメカメノコハムシ、アカガネサルハムシ、イチモンジカメムシ、ホソヘリカメムシ、アカスジキンカメムシの終齢幼虫、ミツクリハバチの幼虫、各種オトシブミの仲間の葉籃等。キノコ/キクラゲ(写真下右)、フーセンタケの仲間等。その他/ヘビイチゴの実、ウグイスカグラの実(写真下左)等。
5月8日、横浜市都筑区大原みねみち公園〜町田市小野路町・図師町
以前仲良くしていたご婦人と著名な昆虫写真家の作品について話したことがあるが、そのご婦人は「やはり慣れ親しんだ首都圏とは異なった風景はしっくりとこないわ」等と言っていたが、確かに新潟は生き物たちの宝庫であるが、生まれ育った多摩丘陵の方がやっぱりしっくりするのは言うまでもない。今日はずっと開花時期が気になっていた花を、大原みねみち公園に寄って様子を見てから、多摩丘陵の核心部とも言える図師・小野路歴史環境保全地域に行くことにした。気になっている花とはエゴノキとハコネウツギである。この両者の樹の花がとても好きなのである。エゴノキはまるでこんなにたくさん花をつけて私たちを楽しませてくれて良いの?と言う位に清々しい純白の花をこぼれんばかりにつける。また、ハコネウツギは新潟で咲いていたタニウツギと異なって、咲き始めは白い花なのだが次第に赤い色にと変わるため、木全体を見ると白と赤の花が混在していてとても美しいのである。
大原みねみち公園に着くと、有難いことに両者とも咲いていた。また、園芸種のベニバナウツギやヤマボウシも咲いていて、おまけにしばらく姿を見なかったカワセミ君の元気な姿にも遭遇した。今日は野鳥撮影用の機材を持って来ていないのでカワセミ君は諦めて、エゴノキとベニバナウツギを撮影し、ハコネウツギは、多分来週お邪魔することになる舞岡公園での撮影にととって置いた。なにしろ舞岡公園にはハコネウツギが随所にあるのだ。
寄り道したが小野路町の万松寺谷戸のいつもの場所に車を駐車し、久しぶりの多摩丘陵の変化を味わうべく写真より自然観察だと足を速めた。農道脇のシロツメクサは花の数も増え、その大きさも立派になり、葉も背丈もぐんぐん伸びている。たかがクローバーだが、この時期になくてはならない道端の花である。そんなお馴染みの濃緑の葉の上にヒメギスの幼虫が休んでいてとても愉快だ。また、車のベンツのマークの真ん中のYの字のような独特な触覚の持ち主のアリスアブもお仲間である。午後に五反田谷戸で出会った出版社勤めのTさんに教えて貰ったのだが、アリスアブは蟻の巣に卵を産み、幼虫はその中で暮らすのだと言う。私は可愛らしい格好から不思議の国のアリスのアリスかなと思っていたら、蟻巣虻だったのである。
万松寺谷戸には早くもノアザミが咲いている。アザミの仲間の花の蜜は昆虫たちには大変美味しいご馳走で、のんびりとひらひら舞うジャコウアゲハが吸蜜に訪れていた。もう何処かで何べんも書いていると思うが、ジャコウアゲハの幼虫は有毒植物であるウマノスズクサの毒をうまく体内に溜め込んでいるから、幼虫はとても目立った色をしているし、成虫(蝶)はいたってのんびりと飛んでいる事が出来るのである。まるで「小鳥さん食べるなら食べてみなさい、死んでしまいたくなるような苦しみにあいますよ」と言わんがごとくに飛んでいるのだ。その他、蝶では、畦や休耕田や農道脇を埋め尽くすように咲く今が盛りのハルジオンに、イチモンジチョウ、コミスジ、ヒメキマダラセセリ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリが吸蜜している。時折、キアゲハが舞って来るが、こちらは発生が早かった為に羽はボロボロだ。きっと摘み残されたセリにたくさん卵を産んだ事だろう。
雑木林へ登って行くと、薄暗い場所だが木漏れ日が差し込む所にコジャノメがたくさん飛んでいる。と言うよりか、予期せぬ闖入者に驚いて飛び立ったのが正解だろう。コジャノメを見るといつも、「こんな暗い所で生活していて楽しいのだろうか」と余計な心配をしてしまう。多くのジャノメチョウ科の仲間は日陰が好きだが、コジャノメはクロヒカゲと並んで、その最たる蝶である。まあ人生、何が幸福なのかは分からないし、幸福なんてその本人の心持しだいなのだから、きっと日陰に暮らすコジャノメはとても幸福なのだろうと歩みを速めた。
もうそろそろキノコが出ても良いのではないかとキノコ山へ行くが何も無い。もちろん、微細なものを探す目と根性があれば、何かは見つけられるのかも知れないが、情緒派でミーハーな私にはそぐわない。そこで神明谷戸へ下って行くと、野の花は端境期か、オヘビイチゴがいちばんの盛りで、それより前に咲き出したヘビイチゴはすっかり赤く可愛らしい実となっている。今日は新潟遠征の疲れも取るんのだとのんびりとしたいために、五反田谷戸の芝地に行って腰を降ろした。谷戸でまず最初に現れるヤマサナエが下草に止まっている。このヤマサナエは超有名なオニヤンマに似ているから、一般の方は「あっ、オニヤンマがいる」なんて言うのが常だが、両の複眼がハッキリと離れているサナエトンボの仲間なのである。
これはいただきと105mmマクロレンズで近づくのだが逃げられてしまう。今日は疲れているので重たい200mmマクロレンズを持参して来なかったのだ。ヤマサナエはこの次に何処かで撮影出来るだろう。お昼になるとやはりここで食事をとるのが一番と、このHPの掲示板に度々ご投稿頂いている快速五反田号さんこと町田市のMさんや、仕事で大変お世話になったGKのTさんもやって来た。みんなここが大好きな仲間である。Mさんに「この谷戸に集う仲間たちと、各自、半切3枚程の写真を持ちよって、東京で写真展でもやりたいですね」と言うと、大賛成と言う声が返って来た。「鎌倉のOさんは、キャビネ判の写真をたくさん張った冬芽と葉痕かな」等ともう写真展が決まったが如くに話が進む。自然発生的に集まって、自然発生的に仲良くなり、そして写真展を皆で開き、ことによったら自然発生的に消滅するかもしれないが、自然が大好きな仲間なのだから、それも自然で良いではないか等と、ジュゲムジュゲムを繰り返す。午後からはキノコと昆虫を撮影していなかったので、古畳に生えたオオチャワンタケと、もうすぐ成虫になるアカスジキンカメムシの終齢幼虫をを撮って、来週からは一働きせねばと、いつもより早い帰宅の途に着いた。
<今日観察出来たもの>花/シロツメクサ(写真上左)、ノアザミ、ハルジオン、ニセアカシア、エゴノキ、ハコネウツギ、ヤマボウシ、ヤマフジ、ヤマツツジ、キンラン、ギンラン、アマドコロ、ミヤコグサ、タツナミソウ、アメリカフウロウ、キツネアザミ、ジシバリ、オヘビイチゴ、ムラサキサギゴケ、カキツバタ、キショウブ等。蝶/ジャコウアゲハ、キアゲハ、イチモンジチョウ、コミスジ、ルリタテハ、コチャバネセセリ、ヒメキマダラセセリ、ダイミョウセセリ等。虫/ヤマサナエ、シオヤトンボ、アリスアブ、コアシナガバチ、ジョウカイボン、アオジョウカイ、ハンミョウ、アカスジキンカメムシの終齢幼虫(写真下右)等。鳥/カワセミ、カルガモ等。その他/ヘビイチゴの実(写真上右)、オオチャワンタケ(写真下左)等。
5月6日、埼玉県大里郡寄居町花園橋〜比企郡小川町角山上
今日は連休の最後の日の大渋滞を避けての一日遅れの帰宅の日である。5日に帰るのと6日に帰るのとではそれこそ天国と地獄の差ほどの違いがあるのだ。しかし、今年の連休は天候が悪かったためか、昨日も高速道路は空いていたようで、4日が行楽帰りの大渋滞のピークであったらしい。朝起きると眩しい程の晴天で、抜けるような青空からの太陽光線は強烈で、陰影が鋭く刻まれた雪を残した八海山が美しい。今日はピーカンの暑いフィールドの中での写真撮影になるのかと思ったが、関越トンネルを抜けると曇り空に変わった。最初は霧でも出ているのだろうと思っていたが、前橋を通過しても曇り空である。どうも関東地方は一日中曇りのようである。このように上越の山々を境として日本海側と太平洋側の天気は異なる場合がままあるのだが、今日のような鮮明な差には驚きを持った。もちろん山々の樹林相は変化し、そのためそこに点在する山村、農村風景も大いに変わった。総延長11kmにも及ぶ関越トンネルはまさに不思議トンネルで、いつもわくわくとした気持ちをもって通り抜けるのだが、どちらかというと見慣れた太平洋側に出る帰りよりも、見慣れぬ雪国である日本海側に抜ける時の方が心臓の高まりが高いことは言うまでもない。
毎年恒例の花園インターで途中下車し、そこからすぐの花園橋下の荒川河川敷に立ち寄った。もう一つ上に玉淀大橋があるが、こちらの方の河川敷はアウトドアクッキングの名所で、気分が悪くなるような原宿並の場所である。どうして大自然の中に来てまで人波の中に飲み込まれなければならないのかと疑問に思うが、ウィークエンド・ナチュラリストは立ち寄らない方が無難である。その点、花園橋下はのんびりとした場所で、土手と河岸段丘の間の広大な平坦地は一面の小麦畑で、ツバメが低く飛びヒバリがにぎやかに囀っているだけである。路傍に目をやると新潟県での山野草を見てきた目には拍子抜けだが、アメリカフウロウ、ヘラオオバコ等の外来植物やハルジオン、セイヨウタンポポで一杯だ。しかし、初夏の一時を、えんえんと続くすがすがしい麦畑の中の小道で過ごすのもとても楽しいものである。はるか遠い昔の幼い頃に味わった太平洋側を代表する一情景が確実にそこにはあって、草笛を吹きなからの散策は、新潟県では味わえない平凡だが安堵の心持を伴ったものなのだ。
河川敷に降りて行くと毎年のようにニセアカシアが満開である。この花もなかなか絵にしにくい花で、カメラを引いて花風景として撮影するしかない。土手のすぐ下の草地は緑一杯で、黄色いクサノオウと紫色のキツネアザミで一杯だ。もちろん流れの近くはアシの大群落が何処までも続き、ギョギョギヨ、ケケケ等と多分オオヨシキリだと思われる小鳥の声が方々から聞こえて来る。図鑑で見るとアシの枯れ穂等に止まっている姿が載っているので、注意して観察するのだが姿は見えず、地面からしかその囀りは聞こえて来ない。蝶ではギンイチモンジセセリがアシ原の住人な筈なのだが、どんよりとした曇り空のためか姿が見えず、低温に強いヒメウラナミジャノメが弱々しく舞っているだけだ。太陽と乾燥した砂地が大好きなコニワハンミョウも、昨日の雨で砂地は濡れ太陽光線が降り注がないのだから、今日はご機嫌斜めなようである。
以上のようにどんよりとした曇り空では麦畑も河川敷もあまり魅力は無しと、早々切り上げて比企郡小川町の谷戸へ急いだ。ここは多摩丘陵に極似する丘陵地帯で、町田市にわずかばかり残る谷戸風景が各所に見られる。どうしてここに毎年来るようになったのかは忘れてしまったが、角山上にある谷戸が美しくて静かで大好きになってしまったのだ。しかも、大きなため池があって今の時期にはオツネントンボが多数見られる。今日は曇り空だから風景写真には今一だが、低温で風が無いから昆虫の撮影にはぴったりと目を凝らすと、ヤマトシジミがキツネアザミの蕾に、ツバメシジミがスイバの花に、ジョウカイボンが枯れたススキの穂に撮ってくださいというばかりにポーズを決めていた。木の花ではヤマフジ、ヤマツツジ、キリ等の花が咲き、日陰にはツクバネウツギも咲いていた。このツクバネウツギは新潟では淡い黄色であったが、ここでは純白な花色のものばかりである。
谷戸を更に詰めて行くと左手にとても美しい小さな谷戸が開けて来る。ここはいつまでもこのままであって欲しいと願っていたが、入り口に立て看板があって小川町の有志の手で里山管理がなされていると書かれてある。なんだかこの谷戸に魅了された者は私一人では無く地元の方もそうであったのかと思うと、嬉しくなった。私もただ花を虫を風景を愛でるだけでは片手落ちと、ほんの僅かだが里山管理のお手伝いをしているが、地元農家の方々も含めたこのような心美しき方々のお陰で貴重な里山が残されて行くのだ。そんな事を感じたからか谷戸田で最も普通種であるスズメノテッポウを敬意を表して撮影した。また、風が無いので最も手ごわい野の花であるウマノアシガタに取り組んだが、風が無いと言うのに揺れているという不思議な花で、まったく撮影者泣かせの花であるなあと改めて感じて苦笑する。この後、オツネントンボや各種のオトシブミ類を探して撮影したかったが、フイルムもちょうど撮り切ったし、疲れを癒すために静かな谷戸に停めた車の中で昼寝をし、今年も無事に連休は終わったと撮影済みのフイルムと頭の中にたくさんのお土産を積んでの帰宅の途についた。
<今日観察出来たもの>花/ニセアカシア(写真上右)、ヤマフジ、ヤマツツジ、キリ、ツクバネウツギ、ギンラン、ウマノアシガタ(写真下右)、スズメノテッポウ、レンゲソウ、アメリカフウロウ、ヘラオオバコ、キツネアザミ、ハルジオン、スイバ等。蝶/ヒメウラナミジャノメ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ(写真下左)等。虫/ジョウカイボン、ナナホシテントウ等。鳥/オオヨシキリ、ヒバリ等。その他/小麦畑(写真上左)等。
5月5日、新潟県長岡市国営越後丘陵公園〜雪国植物園
朝起きて地元紙である新潟日報の天気予報欄を見ると、六日町は一日中雨の予報である。今日は新潟での最後の自然観察及び写真撮影になるから、近場でのんびりと過ごそうと計画していた。それに1日からずっと山野草の花ばかりを撮っていたので、ペンネームが花虫とおるだから昆虫も撮りたくなっていたのだ。しかし、一日中雨ではお手上げだ。そこで長岡まで行けば曇とあるので、昨日、日本海を見に行った道をまた走るのもつまらないと思ったが、曇日で風がないから撮影日和とばかりに長岡へ急いだ。道路地図をみると国営越後丘陵公園という場所が目に入った。きっと埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園みたいな所で、花も虫も期待できると行ってみたのだが、レジャー施設に振っていて、また、時期が時期だけに、チューリップ以外は見るべき園芸品種の花はあまり咲いていなかった。
そこで園内の丘陵地帯の尾根をぐるっと一回りする自然探勝路を歩いてみることにした。昨日の雨でしかも曇日だから植物の葉はびっしょりと濡れている。回りを見回すとチゴユリとイワカガミで一杯だ。これまで歩いた新潟の何処の尾根筋もイワカガミが群生していて、新潟県を代表する山野草の一つだと実感する。期待していたその他の山野草の花はあまり咲いていないので、目をきのこモードに変えて歩いていると、まずは赤松の倒木にヒトクチタケが生えていた。多摩丘陵でも見られたのだが、アカマツが枯れてからだいぶたったら生えなくなってしまった。小さなイギリスパンを連想させるヒトクチタケはとても可愛い。その次に見つけたのは、立ち枯れにびっしりと見事に生えたウチワタケだ。かなりの高さまで生えているので、種名の判別には向かないが裏側から新緑の梢に抜いて撮影した。この他、スエヒロタケやタマキクラゲ等を見つけたが、なんと最後にツチグリを発見してとても嬉しくなった。多摩丘陵では晩秋のキノコと思っていたのだが、舞岡公園にも春の初めにあったから、いくらかは春早くに発生するようだ。
しばらく歩いて時間がたったので、露で頭を垂れていた日本海側ならではのタニウツギの花がようやく頭をもたげてくれた。じっくり観察すると多摩丘陵や舞岡公園に多いハコネウツギとはやはり異なってピンクの花ばかりである。ここは新潟県なのだ等とあたりまえのことを呟きながら自然探勝路の終点近くまで来ると、立て札に雪割草群生地と書いてある。花期は終わってはいるものの、艶やかな三葉のように見える葉をつけた株がびっしりとあり、ここはかなりの群生地であることが分かった。頂いたバンフレットによると、この国営越後丘陵公園から午後に行った雪国植物園を通って大崎雪割草の里までを、越後雪割草街道と呼んでいるようである。なんだかお伽の国に出て来るような可愛らしくてロマッチックな名称である。
ちなみに同パンフレットによると、「雪割草はキンポウゲ科ミスミソウ属の園芸名で、北半球に9種類の分布が知られ、日本にはその1種類から分かれたミスミソウ、スハマソウ、オオミスミソウ、ケスハマソウが自生している。これらの雪割草の中でも最も注目される「オオミスミソウ」は、新潟県を中心とした日本海側にある」と書いてある。私が度々行く寺家ふるさと村をマイフィールドとするお医者さんのHさんが、このオオミスミソウの大ファンだったことを思い出す。しかし、残念ながその名の通り雪を割って咲くのだから、3月下旬が見頃であるとある。
以上のように午前中はあまり満足できる自然観察および写真撮影とはならなかったが、午後から行った雪国植物園はもう感激のしどうしの広大な植物園であった。パンフレットによると「この植物園は雪国越後の山里をそのまま利用し、自然の植生を大切にしています。地域の特色ある豊かな山野草がのびのびと広がり、鳥や蝶が自由に羽ばたく楽園で、自然の息吹きを体感できます」と書いてある。多くの場合、パンフレットに偽りありが多いものだが、この雪国植物園はパンフレットをはるかに越えた山野草の宝庫であった。おまけに駐車場は無料、入園料はたったの300
円。しかも入口のご婦人がとても感じの良い上品な長岡美人で、さらに山野草に詳しいとなると、鼻の下を伸ばしてまたやって来たくなる。
とにかくこの雪国植物園はそれこそ何でもある。本当に脱帽してしまいたくなる程で、多摩丘陵の野の花が貧弱に見えてしまう。ここだけで新潟県の自然の豊かさを満喫出来ると言っても過言ではない。今日はシラネアオイ、クマガイソウ、エビネ、シライトソウ、ユキザサ、サワオグルマ、オオイワカガミ、ツクバネウツギ、レンゲツツジ、ヤマツヅジ、ケナシヤブデマリ等が咲いていたが、バンフレットを見るとヤマシャクヤク、オオミスミソウ、カタクリ、クルマユリ、イワウチワ、サンカヨウ等も見られるとあり、もちろんマキノスミレを始め各種のスミレ、キンラン、ギンラン、湿地にはミズバショウ、カキツバタ、アヤメ、ハナショウブ等も咲くとあるのだから、こんなに素晴らしい植物園は日本には他にないのではなかろうか。しかも、コシノカンアオイがたくさんあって、ギフチョウの舞う姿が容易に見られると言うのだから素晴らしい。
その他、手入れの行き届いた園内には各種の樹木も美しく繁茂しているから、昆虫層の多様性も想像できる。今日は葉上で休息するアシナガオトシブミとシリアゲムシの仲間を撮影した。いやはや連休の新潟行きは今年でお終い、足元の多摩丘陵を徹底的に観察し写真を撮りまくるのだと思ってやって来たはずだが、これからも何べんともなく行きたいという思いに変わってしまった。まさに新潟は生き物の宝庫、自然好きのワンダーランドなのである。
<今日観察出来たもの>花/シラネアオイ、クマガイソウ、エビネ、シライトソウ、ユキザサ、サワオグルマ、オオイワカガミ、タニウツギ(写真上右)、ツクバネウツギ、レンゲツツジ、ヤマツヅジ、ケナシヤブデマリ等。虫/アシナガオトシブミ(写真下右)、シリアゲムシの仲間等。キノコ/スエヒロタケ、ウチワタケ、ヒトクチタケ、ツチグリ(写真下左)等。その他/ホウノキの芽吹き(写真上左)等。
5月4日、新潟県南魚沼郡塩沢町魚沼スカイライン〜日本海
昨日、堀之内町の御嶽山で咲き終わったイワウチワとイワナシを見てしまったので、どうしても咲いている所まで行って写真を撮りたくなった。御嶽山の標高が306mだから、それ以上の標高がある所まで行けば、まだ咲いているだろうと思ったのである。今日は低気圧が接近していて、新潟地方も午後からは雨の予報である。車のラジオをつけると東京や横浜は物凄い風が吹いているらしい。まあ、午前中だけでも野山を散策できるのは幸せである。魚沼ハイウエイは、魚野川の上流に向かって右手にある低山地の峰々を繋ぐ快適な舗装道路である。六日町温泉国際ユースホステルからすぐの十日町へ抜ける道路から分岐しているので、あっというまに到着する。
さすがつづら折りの一気に標高を稼ぐ道を上がって来ただけあって、尾根筋からの越後三山(八海山、中ノ岳、駒ケ岳)や巻機山は、遮るものなく曇り空だが雪を被って雄大に聳えている。この風景を見るだけでも価値があるのに、予想していたように山麓に比べるとだいぶ春の進行が遅れているようで、カタクリこそないものの、目的のイワウチワ、イワナシが咲いていた。路傍や空地にはツクシやフキノトウが一杯で、オオバキスミレは目が覚めるような黄色の群落をつくり、可愛らしくマキノスミレが急な斜面に咲いている。樹木ではタムシバ、ユキツバキ、コヒガンザクラの仲間、ミツバツツジの仲間が咲き、イヌコリヤナギ等の各種のヤナギの花も咲き始めたばかりである。このような状況からすると、地表部は関東地方の平地の3月中旬から下旬の様相なのだが、木々の芽吹きも始まっているのだから、樹木の暦で言うと4月中旬頃と言ってもおかしくない。いずれにしても雪国の春は、地表でも樹上でも一緒に一気にやって来るようである。
目的のイワナシは比較的足場の良い所に咲いていたから簡単に撮影できたが、イワウチワは足場の悪い斜面の上部に咲いている。また、咲いている所まで行くには、マルバマンサク等の潅木が雪の重みで曲がって密生した林の中を通らなければならない。道端自然観察しか行っていない私にとっては、行くまでも咲いてる場所も大いに危険度の伴うのだが、ここまで来て引き下がるわけには行かないので、細い木の幹につかまりながらもなんとか撮影することが出来てほっとした。
ここまで上がってくると残雪が方々に残り、残雪が消えたらすぐにショウジョウバカマが花穂を伸ばして来るので、桃色や朱色の花が新鮮で美しい。しかし、このショウジョウバカマはどのようなアングルでカメラを構えても図鑑的な写真しかならないので、結局、今日もシャッターを切ることが出来なかった。やはりこのような急峻な地形ではなく、山すその平坦な部分に咲いていないとなかなか絵にすることが難しいようである。
せっかくここまで来たのだからと更に車を走らせるとブナの純林に行き着いた。ブナの幹の回りだけは残雪が溶けるのが早いために、根元付近に大きな丸い穴が開いている。残雪の上にはブナ独特の褐色の芽鱗が芽吹きとともにたくさん散ったのか、不思議な縞紋様が描かれている。今日も風が吹くと樹上から芽鱗が褐色の雪のように降って来る。いずれにしてもブナの灰白色がかった幹、既に葉を広げた美しい新緑の梢、方々に見られる残雪。これだけで普通なら小躍りしたくなる風景なのだが、あいにく空だけがどんよりと重い。晴れた日に来れば本当に素晴らしい写真が撮れるのにと思うと残念であったが、予報通りに小雨が振り出し早々と山を下った。
今日は朝から雨だったら、ユースホステルに一日いても仕方がないので、日本海を見に行くつもりであった。そこで午後からは高速道路代がだいぶかかるのもなんのそので日本海を見に行った。太平洋はもう何回ともなく見ているものの、日本海は20代に見たきりで本当に久しぶりである。生憎、どんよりとした鉛色の雲空の下の日本海であったが、このような天気のほうが日本海らしくて良いなどと傘をさして浜辺を散策する。とにかく海は広くて良い。人間社会や人間関係の各種の摩擦が遠くに飛んで行く。私の道端自然観察館の舞台はほとんどが多摩丘陵の雑木林と谷戸だが、やはり自宅に帰って落ち着いたら、海に道端自然観察に行かねばなるまいと心を新たにしてくれた日本海であった。
<今日観察出来たもの>花/イワウチワ(写真上左)、イワナシ(写真上右)、イワカガミ(写真下左)、ミズバショウ、ショウジョウバカマ、オオバキスミレ(写真下右)、マキノスミレ、フキノトウ、ツクシ、タムシバ、イヌコリヤナギ、各種ヤナギの花、コヒガンザクラの仲間、ミツバツツジの仲間等。
5月3日、新潟県北魚沼郡小出町〜堀之内町御嶽山
今日はやっと風がおさまって、しかも午後からは曇るという。これは待ちに待った撮影日和である。昨日、六日町を下見したらカタクリもまだ見られたし、新潟へ来るといつも必ずお邪魔する小出町へ行った。ここはJR小出駅から徒歩で十分とはかからぬ場所なのにもかかわらず山野草の宝庫で、さすが新潟県と叫ばずにはいられなくなる。今日見られた主なものを列挙すると、キクザキイチゲ、ミヤマカタバミ、イカリソウ、エンレイソウ、カタクリ、ショウジョウバカマ、イワカガミ、オオバキスミレ、ユキツバキ等と、山野草が好きな方なら喉から手が出る程のものである。例えばイカリソウだが、神奈川県では白色の花だけしか見られないのに、ここでは濃赤、桃色、白色と様々な花色が見られるのだから色とりどりで本当に嬉しくなる。しかし、イカリソウはいざ撮影するとなるとなかなか絵にしにくい花で、なにしろ草の丈は高く花は上部にぶら下がるように咲いている。カメラを引いて撮影すれば図鑑的な面白味のない写真となり、近づいて撮影すると花だけの写真となってしまうのである。しかし、今日は風が無いからイカリソウを撮るまたと無いチャンスで、さんざん考えた挙句に濃い赤花とすがすがしい白花を撮った。
渓流近くの杉木立ちの中は、日頃、多摩丘陵しか知らない者にとっては宝物の山で、エンレイソウが独特な葉の真ん中に小さな黒紫の花をつけ、ミヤマカタバミの純白な花が目に染みる。最初にこの花を見た時には驚いた。なにしろカタバミと言えば黄色い花、最近野性化しつつあるイモカタバミやムラサキカタバミは薄赤紫の花であるのだから当然である。白い大きな花はまるで野生種ではなく園芸品種のように美しいのである。更にもう咲き終わってしまったかと思っていた、ほんのりと青いキクザキイチゲも咲いていた。どんな花でもそうなのだが、先始めの頃の方が生命感あふれ生き生きとして瑞々しいものだが、キクザキイチゲは特にそう感ずる。しかし、そうは言っても久しぶりに見る春の貴婦人に感激し、心からの敬意を表して撮影したのは言うまでもない。
杉木立ちの中の野の花を撮影し終わると、ユキツバキ、カタクリ、ショウジョウバカマがたくさん見られる林道を登って行った。たくましく伸びているイタドリの葉にはイタドリハムシが、時折、スミレの花にギフチョウも吸蜜にやって来る。道の両側にあるユキツバキは満開だが、余りにも雪が多いためか葉も花も痛んでいるものが多くて残念だ。このため、なんとか日本海側を代表する木の花として撮影したかったのだが諦めた。林道を更に登って行くといくらか標高が増したためか、カタクリやショウジョウバカマが色づいて咲いている。その数は少ないこともあってアートとして撮影することは無理だが、形の良いものを選んで素直に図鑑的に撮影した。
午後からはまだ咲いているかもしれないと堀之内町の月岡公園先のミズバショウの郡生地に行った。残念なことに咲き終わっていたのだが、緑の大きな葉に隠れて咲いている小さな花を見つけて何とか絵にして撮影した。ミズバショウの群生地から道路に戻り付近を散策してすると、たくさんの各種のスミレが咲いている。今春、多摩丘陵でたくさんのスミレを観察したし、「日本のスミレ」と言う図鑑を買ったのだから、まだ見ぬスミレかはなんとか分かる。タチツボスミレ系でやけに距が長いスミレやスミレ系で花がとても可憐なスミレ等を見つけて撮影した。帰宅して図鑑を見ると前者はナガハシスミレ、後者はマキノスミレのようである。
御嶽山登山口まで来ると道標にブナ林まで200
mと書いてある。200
mならほんのすぐだと登って行くと、コシノカンアオイの花が至る所で咲いている。多摩丘陵のタマノカンアオイの花に比べると大きくて堂々とした花だ。確かに葉は似ているが花を見ると別種だなあ等と呟いていると、あっと言う間にブナ林に着いた。若々しい青年期のブナで、少々期待は裏切られたがブナ林を散策するのはとても気分が良い。登山道から女の子を連れた父親が降りてくる。「頂上まであとどのくらいですか?」と尋ねると20分程で着くと言う。頂上は平らで越後三山(八海山、中ノ岳、駒ケ岳)が遠望できてとても気持ちが良い所だと言う。こうなっては頂上まで行かない訳には行かなくなった。
痩せ尾根でかなり急な階段もあったが、イワカガミが咲き乱れ、ミツバツツジの仲間も咲いている。イワウチワ、イワナシ等という憧れの山野草もあったが残念ながら花期が過ぎていた。しかし、芽吹いたばかりの木々の若葉は美しく、特にマルバマンサクやオオカメノキの若葉が美しかった。花ばかりでなく、この芽吹いたばかりの各種の若葉を写真として美しく切り取ってコレクションしたらどんなにか楽しいだろう。それだけの目的のために遠路はるばる新潟まで遠征してもその価値はあるな等と感じた。頂上からは午後の薄曇りの空だったが雄大な雪を頂いた越後三山が美しく、風景を狙ってもまた来てみたいとも思った。今日は花もよし新緑もよし風景もよしの得難い充実した一日となった。
<今日観察出来たもの>花/イワカガミ、イカリソウ、キクザキイチゲ(写真下右)、ミヤマカタバミ(写真下左)、ショウジョウバカマ、カタクリ、エンレイソウ、ナガハシスミレ、マキノスミレ、オオバキスミレ、スミレ、ツボスミレ、スミレサイシン、サワオグルマ(写真上右)、ミズバショウ(写真上左)、コシノカンアオイ、ユキツバキ、ミツバツツジの仲間等。蝶/ギフチョウ、コツバメ、スジグロシロチョウ等。昆虫/ニワハンミョウ、イタドリハムシ等。
5月2日、新潟県南魚沼郡湯沢町旭原花の郷〜六日町河原沢鉱泉
今日はいきなり六日町へ行くのも例年通りのワンパターンだと湯沢町旭原に寄った。今年の新潟は春が早くてカタクリやキクザキイチゲ等の花はもう咲き終わっていると思ったので、なるべく標高の高い所へ行ってみようと思ったのである。しかし、去年もそうであったが、いくら新潟県とは言えども、標高の高い山間地に行くと野の花は少なく、わずかにフキノトウやツクシが見られる位であった。しかし、休耕している畑に伸びるツクシの群落は実に見事で、首都圏平地では想像もつかない程の数である。ほんの数分をついやせば佃煮にするくらいはすぐに採れる。背後には残雪を残した上越の山々がそびえているので、それをバックにして撮影しようとしたのだが、余りにも多いツクシの数のためなのか今一絵にはならない。多ければ良いと言うものではなく、やはりツクシは数本が地面から伸び始めた頃が、一番生命力とやって来た春の喜びを表現するのにぴったりのようである。せっかく来たのだからとミズナラの林に入ってみると、さすが雪国である、林床は下草も生えずに雪の重みに平べったく地面に張り着いた枯葉のみである。信州の高原で見られるようなクマザサも無い。いづれなにがしかの植物が生えて来るのだろうが、芽吹きの始まった梢から見え隠れする残雪を頂いた山々、抜けるような青空、雪解け水がごうごうと音を立てて流れる渓流、何処を見回しても豪雪地帯の山間部の景色であった。
ここへ立ち寄るために、昨晩は赤城高原サービスエリアにて愛車小野路号をテント代わりにビバークしたにもかかわらず、一度もシャッターを切ることも無しに湯沢町旭原を後にすると、毎年必ず欠かさずに立ち寄る六日町河原沢鉱泉へ行った。もうカタクリは咲き終わっているだろうし、ギフチョウも古びているだろうから、春に多摩丘陵で親しんだスミレを徹底的に探して写そうと思ったのだ。車を停めた農道の傍らにスミレ、ツボスミレが信じられない位に大きな群落を作って咲いているのだから、さすが新潟県である。すぐ近くの山道に入って行くと、なんと盛期は過ぎてはいるもののカタクリやショウジョウバカマがお出迎えしてくれた。今年は暖かかっったから雪解けが早いと思ったのだが、去年に比べて春の進行がいくらか遅れているようだ。これはラッキーと思い盛んにカタクリやショウジョウバカマにカメラを向けるのだがシャッターを押す気になる絵が飛び込んで来ない。ただ撮るのなら簡単なのだが、絵にしようとするとすこぶる難しい花なのである。それに昨日に続いて風が強い。まあ、明日も明後日もあるのだからと、今まで新潟でしか見たことの無い黄色いスミレであるオオバキスミレやスミレサイシン等を撮影した。
この風の強い天気では今日はかなり撮影にてこずるなと思っても、せっかく来たのだからとうろうろと散策する。いくらか登って行くと雪を頂いた雄大な八海山が実に見事だ。杉木立ちに囲まれた畑には目が覚めるようなチューリップが咲いている。新潟県はお隣りの富山県と並んでチューリップの産地なのである。更に登ると様々な木々の芽吹きが美しく、このHPの掲示板に度々ご投稿して頂いている一人静さんが、「冬芽と葉痕は芽吹きまで観察して完璧」と言っていたのを思い出して、クズ、オニグルミ、キハダ、キリ等の芽吹きを撮影した。ことにキリは葉痕を撮影していていつも何処からあんなに大きな葉が出てくるのだろうと不思議に思っていたので、今日はつぶさにじっくりと観察した。どうも靴底に見えるような葉痕の上部に、樹皮にめり込んだように冬芽がついていたのだ。これを見るとキリの樹皮は厚く柔軟性に富んでいる事が想像できた。
いずれにしてもちょいと山道を登っただけで、信じられない程の樹種がたくさん生えている。特にキハダは多摩丘陵や舞岡公園では見られないのに、路傍に撮影して下さいと言わんがごとくに幼木がたくさん生えている。様々な木々の冬芽と葉痕を撮りにわざわざ遠路はるばる新潟まで来るなんてと思ってしまうのだが、もう少し早い時期に来ればカタクリの大群落に常に囲まれて、冬芽と葉痕観察も出来き、しかも撮りたい放題なのだから一考しても良いかもしれない。また、長岡の方へ行けば憧れの雪割草(オオミスミソウ)が早春に咲くと言うし、ザゼンソウの群生地もあるのだから、その頃に来るのなら冬芽と葉痕もばっちりだなあ等と頭に浮かぶ。しかし、いずれにしてもその計画を実行に移すには、愛車小野路号に別れを告げて、4WDにしなければならないな等と苦笑する。まさに愛車を買い換えようと考えさせる程の魅力溢れる新潟の豊かな自然なのである。
<今日観察出来たもの>花/カタクリ、ショウジョウバカマ、スミレ、スミレサイシン、オオバキスミレ、エンレイソウ等。蝶/ギフチョウ、キタテハ、スジグロシロチョウ、ルリシジミ等。昆虫/シオヤトンボ等。その他/八海山(写真上左)、チューリップ畑(写真上右)、キハダの芽吹き(写真下左)、キリの芽吹き(写真下右)、クズの芽吹き、オニグルミの芽吹き等。
5月1日、神奈川県津久井郡城山町かたくりの里〜穴川
今日から待ちに待った連休である。もう今年で何回目になるのだろう? この時期に新潟県六日町に行くようになって、おそらく今年で連続して7年回目位になるのではなかろうか。静岡県芝川町のギフチョウが見られなくなって、前に勤めていた会社の蝶マニアの方に教えてもらってから行くようになったのだ。その目的たるギフチョウは毎年個体数を減らしていて、ギフチョウを見るなら、4月に行った石砂山の方が圧倒的に個体数が多いので、わざわざ新潟県まで行く必要はなくなってしまったのだが、雪を頂く八海山を見ながらの散策はこたえられないものがある。しかも、スキー客がいなくなった六日町温泉国際ユースホステルはとても空いていて、ゴールデンウィークだと言うのに予約なしで泊まれるのだから嬉しくなる。なにしろこのユースは、日本でも有数の恐ろしく大きな規模なのである。去年も書いたと思うが、以前は民宿に泊まっていたのだが、なにしろ気の良い新潟県人のおばちゃんが飲めや食えやの大もてなしで、お腹を壊してしまってから、適度の食事のユースホステルに変更した訳である。今思うと数年前に手術した胆石が、その時は手術前だったから悪さをしたのだろう。
とは言っても大渋滞の予測される関越自動車道にすぐに乗っては、大切な昼の一時を無駄にしてしまう。そこでいつものように神奈川県津久井郡城山町に寄ってから、夜になって渋滞が緩和するまで自然観察及び写真撮影をすることにした。まず最初に有名なかたくりの里へ行ってみた。カタクリは既にだいぶ前に咲き終わり、独特な実がとても大きくなっている。そんな訳で連休初日だというのに誰もいない。まるで私だけの山野草園になったようである。ここ城山町のかたくりの里は前々から知っていたのだが、カタクリが咲く頃は人で一杯だと思って来たことが無かった。しかし、今日じっくり散策してみて、ここはカタクリだけではなくて、様々な山野草が見られる事が分かった。カタクリが咲き終わって人が来なくなってからの方が、山野草好きの方にはこたえられないのではなかろうか。今日咲いていたものは、ヤマブキソウ、ホウチャクソウ、チゴユリ、イカリソウ等だが、各種のスミレ、ヒトリシズカやなんとイワウチワまであった。
でも、一番驚いたのは山野草ではなくて実である。まるでイソギンチャクのような格好をした実がたくさん付いている樹木を発見したのだ。良く見ると咲き損なった枯れた枝が付いていたから分かったのだが、ロウバイかソシンロウバイの木のようである。花は知っていたが実を見たことがなかったのである。それにしてもこんなに変梃りんの実があるとは驚いた。
午後からは毎度おなじみの穴川へ行った。数は少ないもののウスバシロチョウがふわふわと飛んで、時折、今が盛りのハルジオンの花に吸蜜に訪れる。しかし、こんな風の強い日だから撮影はままならない。予想したようにアジサイの葉はすっかり広がっていて、そこで休憩する各種の昆虫たちを撮影しようと思っていた訳だが、風が強いために葉上でのんびりとは行かないようである。例年に比べてほんの僅かの昆虫しか見られなかった。それでもジョウカイボン、オジロアシナガゾウムシ、モンカゲロウ、ヨツメトビゲラ等がいた。また、この時期の穴川の注目すべき昆虫としてのダビドサナエは発生はしているものの数は少なく、カワトンボとともに渓流沿いの葉上に止まっているもののやはり落ち着かないようであった。
以上のように連休初日は見るべきもの撮るべきものは少なかったが、明日からは動植物、キノコの宝庫である新潟県の地を踏んでいるはずと、胸をわくわくさせながら、もう空いているはずの関越自動車目指して穴川を後にした。
<今日観察出来たもの>花/イカリソウ、ヤマブキソウ、ホウチャクソウ、チゴユリ(写真上右)、ナルコユリ等。蝶/ウスバシロチョウ等。昆虫/ダビドサナエ、カワトンボ、モンカゲロウ、ジョウカイボン、オジロアシナガゾウムシ、ヨツメカワゲラ、クシヒゲコメツキ(写真下左)、ヒメギスの幼虫(写真下右)等。その他/ソシンロウバイの実(写真上左)等。