2005年:つれづれ観察記
(8月)




8月30日、横浜市港北区新吉田町〜横浜キノコの森

 おかしいな?朝起きてみると雨がぽつりとも降っていない。しかも風もほとんど無いのである。大型の台風16号が九州に接近していて、今日は一日中雨のはずだったが、どうした事なのだろうか。昨日、一昨日と雨の為に自然観察及び写真撮影が出来なかったから、仕事は後回しにして車に乗った。8月最後の締めくくりは小野路町でと思っていたのだが、国道246号線を超えると雨がかなり降って来た。こんなパターンは良くある事で、仕方無しにUターンして新吉田町倉部谷戸へ行った。やっとこのところ私本来の目標が見えて来て、緑ある所なら何処だって良い、ありふれた被写体でも生き生きと美しく撮るんだと思うようになって来た。すなわち初心に戻った訳である。かつてマミフラワーデザインスクールと言う、皇室のお方にもフラワーデザインを教えた経歴の持ち主のマミ川崎さんが主催する学校の広告を頂いていた事がある。毎年銀座の松屋で開かれるフラワーデザイン展の標語は“花は生きづいている”で、“花は生きている”ではないのだ。“生きづいている”と言う言葉は国語辞典には無いので、たぶん造語だと思う。生きているよりもっとキラキラと輝いて、動いているがごとくに命のほとばしりを感ずる。すなわち、その花の持つ命のほとばしりを十全に引き出して、よりもっと眩しく輝くようにデザインした作品を展示するフラワーデザイン展と言う事になる。このように、珍品稀種では無くとも身近な緑地で、動植物キノコを生きづいているがごとくに撮影しょうと言う考えに至ったのである。例えば蝶で言ったら何処にも普通のベニシジミを、その命のほとばしりが感じられるように、生きづいてるがごとくに表現した作品を撮りたいと言う事になる。私たち人間を含めた生き物は生きているのは当り前、生きづいてこそ素晴らしい筈である。なんだか説教坊主のような、青臭い青春時代の残滓のような事を書いてしまったが、以上は到達できなくとも我が目標とするものなのだから仕方が無い。もっとも今日も平凡な写真に終わってしまったのだが、いつもそんな思いを胸に秘めていれば、幸運の女神が微笑んでくれるに違いない。
 なんだかとんでもなく長い前書きとなってしまったが、新吉田町倉部谷戸にUターンして歩き出すと、路傍にはツユクサ、カタバミ、ハキダメギク、タカサブロウ、スベリヒユ等が出迎えてくれた。日曜菜園の周りにはイチモンジセセリ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、モンシロチョウ、キタテハが舞っている。園芸品種の花としてはヒマワリ、メキシコヒマワリ、センニチコウ、ハナトラノオが咲き、野菜の花ではゴマ、ニガウリ、ナス、キュウリ等の花が咲いている。身近なフィールド何処へ行っても見られるものばかりだが、上記の目標があるからとても楽しい。一しきり撮影に専念すると丘の上の畑に上がって、ほんの少し残された雑木林の縁の小道を歩いていると、ゴマダラチョウがクズの葉に止まった。羽がやや痛んでいるが新吉田町では久しぶりの再会だ。竹林の中を下る途中、何かキノコは生えていないかと目を光らせたが何も無い。しかし、竹林を抜けるとキンミズヒキが出迎えてくれ、クズの葉上にはササキリが大人になって鎮座している。舗装道路へ下って日陰の下草の多い道端を歩い行くと、ヒオドリジョウゴの可憐な花に出会った。もう既に濃緑色の小さな丸い実を付けているものも見られる。数ある初秋の野の花の中でも、雰囲気溢れる被写体としては一番である。更に歩いて行くと、ぬめーっとした顔の持ち主であるウズラカメムシ、それとは逆の粗暴な顔つきのホオズキカメムシ、羽化してばかりのキマダラセセリがセセリチョウ独特の羽の開き方で止まっている。ふと弟六感が働いたのか、アオキの葉を見ると葉裏に大型の水色の蛾が止まっている。オオミズアオである。ずっと会いたい撮りたいと思って来た美麗な大型の蛾である。小野路町にたくさんいる筈だが昆虫食のアオバズクに食べられて残骸を見るのみだったのに、こんな自宅から近い開発の進んだ新吉田町倉部谷戸で出会うとは信じられない。しかし、生憎羽が痛んでいて撮影に値する個体でなかったのは誠に残念である。本当にこれだから身近なフィールドと言えども侮れない。犬も歩けば棒に当たる。私も歩けば被写体に当たると言う事のようだ。
 午後からは何処へ行こうかと考えたが、国道246号線を超えないと言うことで横浜キノコの森へ行った。最近、涼しくなって雨も降ったから、きっと何かしらのキノコが生えているものと思った訳である。しかも、昼食後、台風の影響で風が強くなって、風にも揺れないキノコは最適な被写体と言う訳でもある。今日は第1キノコの森にはこれといったキノコは生えていなかったが、本命場所の第2キノコの森へ行くと、たくさんのキノコが生えていた。一番多かったのはナカグロモリノカサである。しかし、足の踏み場も無いほど群生した場所で、傘が図鑑通りのねずみ色で中心部分が黒くなっているもの以外に、紅色を帯びたもの、真ん中が黒くなっていないものと様々である。家に帰って複数の図鑑で調べたが全てが傘がねずみ色で中心部分が黒くなっているものばかりであった。そこでインターネットの“すばらしいキノコ”で検索してみると、ナカグロモリノカサは雨が降った翌日に紅色に色づくとあって、その写真も出ていたので納得した。私のようなキノコ初心者には、身近なキノコだけで良いから少なくとも一種類につき10枚程度の様々な角度から撮影した写真が無いと、なかなかキノコの種名判別は難しいので、キノコ好きの方にそう言ったHPを作成して頂きたいと切に願う。次に多かったのはツチヒラタケである。ヒラタケとつくから食べられるのかな、食べられるのならこんなにあるのだから素晴らしいと思って、家に帰って詳しく調べてみると、粉臭いと書いてあるが毒ではないようである。この他、今日のキノコの森は、それ以外にノウタケ、ハリガネオチバタケ、ダイダイガサ、ホコリタケ等、梅雨の時期にも見られた里山の普通種がたくさん発生していて、いよいよ秋のキノコシーズン間近を思わせる賑やかさであった。今日は落ち葉も濡れて這いつくばる気にはなれなかったが、今度来た時には、24o超広角レンズを持参して、里山の雑木林や竹林に生きづくキノコを美しく撮影しようと思った。午後3時を回ると風が非常に強くなり、雲が勢い良く東に向かって流れて行く。いよいよ大型の台風16号が日本列島に接近したようである。

<今日観察出来たもの>花/ヒヨドリジョウゴ(写真上右)、ツユクサ、、カタバミ、ハキダメギク、タカサブロウ、ツルボ、キツネノマゴ、ヤブラン、キクイモ、ヘクソカズラ、ヒマワリ、メキシコヒマワリ、センニチコウ、ハナトラノオ、ゴマ、ニガウリ(写真上左)、ナス、キュウリ等。蝶/アゲハ、ゴマダラチョウ、ルリタテハ、キタテハ、コミスジ、モンシロチョウ、ジャノメチョウ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、キマダラセセリ、イチモンジセセリ、チャバネセセリ等。昆虫/オオミズアオ、ベッコウハゴロモ、アオバハゴロモ、クサギカメムシ、チャバネアオカメムシ、ホウズキカメムシ、ウズラカメムシ(写真下右)、オジロアシナガゾウムシ、トホシテントウ、キマワリ、オオカマキリ、ヤマトフキバッタ、ササキリ、トノサマバッタ、クルマバッタモドキ等。キノコ/スエヒロタケ、モリノカレバタケ、ツチヒラタケ、ハリガネオチバタケ、ダイダイガサ、キツネノハナガサ、イタチタケ、ムジナタケ、ナカグロモリノカサ、キチャハツ、ノウタケ(写真下左)、ホコリタケ、マンネンタケ、イグチの仲間等。


8月26日、横浜市戸塚区舞岡公園

 大型の台風が南海上にあって日本をうかがっている。風も相当強いようだから、もしも上陸したら、私の大好きな梨がそれこそ今年は無しよ等となってしまうから大変である。冗談はさておき、汗水たらして育てたものが灰燼に帰すかもしれない農家の方は、気が気では無いことだろう。また、たとえ日本に上陸せずとも、中国大陸または朝鮮半島に上陸することだろう。そう思うと複雑な思いに捉われる。このところ首都圏は台風の影響ではないと思うが、前線が南下して来て曇りがちで過ごし易い日が続く。今日行った舞岡公園のある戸塚区も、帰宅してからインターネットで今日の天気を調べてみると、最高気温が28度と、一頃の暑さが嘘のような陽気であった。今日は風も無く薄曇だから写真撮影には絶好の条件とかなり早く自宅を出たが、着いてみると見慣れた車から舞岡のKさんが降りて来た。また、瓜久保の河童池に行くと、このHPの掲示板にもたびたびご投稿下さる舞岡コウチュウさんこと日限山のMさんが、ヤマボウシの下で三脚を立てている。何がいるのかなと聞いてみると、アカスジキンカメムシの幼虫がヤマボウシの葉裏に大集合しているのだと言う。みると2齢、3齢、4齢の幼虫たちが集合して、なにやら雑談を交わし合っている。まあ、その真偽は分からぬものの、生物学では集合性は天敵対策となっているから、人間のような楽しい一杯やりながらの憂さ晴らしでは無いと思う。また、色づいたヤマボウシの実に硬い口吻を突き刺してその汁を吸っているもの、はたまた付近の下草の葉上には、美しい成虫もまだ生き残っていて鎮座しているのだから、卵や若齢幼虫を除いたアカスジキンカメムシのほとんどのステージが観察出来たのだから素晴らしい。
 日限山のMさんが、「カメムシは変身するから何度も楽しめる」と言うのだがその通りである。このHPを開設してから、「この虫は新発見の虫ではないでしょうか?」とか「各種の昆虫図鑑を調べても出ていないのですが?」等と添付写真付きで照会された事が度々あるが、このアカスジキンカメムシの幼虫がその筆頭である。カメムシの仲間は全世界で約55000種、我が国には約700種が生息し、卵から孵化して5段階の幼虫期を経て成虫となるのだから、カメムシの発育全ステージは7となり、これらの全ステージを写真に撮るとなると、1ステージ1カットでも全世界では55000×7=385000カット、我が国だけでも700×7=4900カットと膨大なものになってしまう。言い換えると日本のカメムシだけを追求しても、約5000回も楽しめると言う事になるのだ。また、日本のカメムシの最大種は25o位で、オオキンカメムシ、ニシキキンカメムシ等の美麗種がいるものの、世界に目を向けると、その大きさも美しさも素晴らしいものがたくさんいて、カメムシファンがかなりいることも頷ける。今日はどう言う訳か6月に羽化したはずの成虫を3回も見たし、その他、チャバネアオカメムシが沢山いたのだから、カメムシ達もようやく涼しくなって、草むらから這い出て来たようである。しかし、去年あんなに大発生したキバラヘリカメムシは、かなりしつこく探したつもりだが一頭だに出会えず、これはどうした事なのだろうか。天敵だってすべてを食べ尽くすことなんて不可能なのだから、病気でやられたとしか考えようが無い。
 今日の目的は舞岡公園でイトトンボの仲間を探すことになっているが、河童池には見当たらない。舞岡のKさんも日限山のMさんもウチワヤンマを見ていないと言うので、宮田池に急いだ。到着すると前回来た時に止まっていた棒杭の先にはお留守である。しかし、水面上をギンヤンマに混じってオニヤンマをやや小型にしたようなトンボが飛んでいる。野鳥撮影をしていた人があれがウチワヤンマと言うのだが、私には納得できない。確かに尾端近くに黄色い帯が目立つのだが、団扇のように広がっているようには見えないのだ。しかも待てども池の周りを旋回するだけで、棒杭に止まろうともしない。家に帰って眼裏にしっかりと焼き付けて来た姿を図鑑で調べるとオオヤマトンボに似ている。解説を読むと止水性で泥底の池に発生し、広い池の周りを飛ぶ。また、分布は日本全土とあり皇居のお堀にも記録があるので、ぴったりである。他に似ているトンボはあるものの流水性とあるので舞岡公園にいる訳が無い。また、ウチワヤンマの解説を読むと、平地の池沼や湖に発生し、水面を活発に飛び、水面から垂直に突き出たものの先に止まり縄張りを持つとある。以上の習性面から見ても、ウチワヤンマに似ているトンボはオオヤマトンボに違いない。いずれにしても確証は無い訳で、このHPの掲示板に度々ご投稿下さる森のきのこさんこと多摩市のKさんのような、飛んでるトンボを撮る名人の出現を待たなければならない。そんな訳で今日はウチワヤンマは観察出来なかったが、アジアイトトンボはたくさん発見することが出来た。アジアイトトンボはアオモンイトトンボに似るが、前者は第9節が、後者は第8節が青く、前者は後者よりやや小さいから区別がつく。
 アジアイトトンボをしっかり確認すると、ウシズラヒゲナガゾウムシとハイイロチョキリはいないかと探し回ったが、その生息の痕跡はたくさんあったが出会えず、古谷戸の里をうろうろしていると、この公園の責任者であるK女史に、ミズオオバコの咲いている場所を教えて貰った。ミズオオバコが見られると言うことは、非常に環境の良い谷戸田が残されている事を示している。ミズオオバコのピンクの美しい花をしばしうっとりと眺めて食事に瓜久保の家に戻ったら、鎌倉のNさん、舞岡のファーブルこと野庭のTさん、一人静さんこと鎌倉のOさんが集合していて、なんと野庭のTさんが今日、アカボシゴマダラの御開帳写真を撮っていたのには驚いた。今日は散策日和で様々な野の花が咲き始め、昆虫達も現れたのだから、自然好きの面々がお集まりになるのは当然である。食事が済むとまたしても一回りと散策に出かけたが、下記の今日観察出来たものの項を参照されれば分かるように、本当に数多くのものに出会えた。最後に帰路でウンカの一種で、天狗のように頭が細く突き出たテングスケバを発見した。イネ科雑草の間に生息し普通種と書いてあるものの、なかなか観察できない愛嬌者である。今日も宿題を多く残してしまった舞岡公園での一日だったが、それだけ多種多様の生き物達が生息していると言う証で、今後とも舞岡公園巡りはしばらくの間続きそうだ。

<今日観察出来たもの>花/ミズオオバコ、オモダカ、ツルマメ(写真上右)、ナンバンギセル、ワレモコウ、ツリガネニンジン、ガガイモ、ミゾカクシ、クサギ、ヘクソカズラ等。蝶/モンキアゲハ、アオスジアゲハ、ナガサキアゲハ、アゲハ、キタテハ、アカボシゴマダラ、イチモンジチョウ、クロコノマチョウ、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、ウラギンシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、コチャパネセセリ、キマダラセセリ、イチモンジセセリ、ダイミョウセセリ等。昆虫/オニヤンマ、オオヤマトンボ?、ギンヤンマ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ、アジアイトトンボ、ヨツスジトラカミキリ、オジロアシナガゾウムシ、キイロテントウ(写真下左)、アカスジキンカメムシ(写真上左)、チャバネアオカメムシ、ホウズキカメムシ、ベッコウハゴロモ、テングスケバ(写真下右)、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、クダマキモドキ、イナゴ等。その他/ハイイロチョッキリの産卵痕のついたコナラやクヌギの実、カワセミ等。


8月24日、東京都町田市野津田公園〜川崎市麻生区黒川

 日曜日にまさかマムシが取り持つ縁ではないと思うが、雨も降って来たので、野津田のKさんを車で自宅まで送ってあげた。その時に頂いた“野津田通信”に東入口調整池にクロイトトンボ、アジアイトトンボ、キイトトンボ、アオイトトンボ、マルタンヤンマ、ミルンヤンマ等が見られたと書いてあったので、今日は野津田公園へ行った。“野津田通信”とは野津田・雑木林の会が定期的に発行している機関紙である。この会の中心的なまとめ役がKさんと言う訳で、植物ならなんでものYさん、昆虫ならなんでものOさん、キノコならなんでもNさん等も仲間である。この会には誰でもたったの年間1500円の会費を払えばお仲間になることが出来るので、お近くの方に限らず、関心のある方は問い合わせてみると良いと思う。以上、そんな訳でかなり期待して野津田公園へ行ったのだが、残念ながら東入口調整池は鍵がかかっていて中に入ることが出来なかった。それならば次なる観察地である黒川へ行こうかなと思ったが、夏休みに行った高床山森林公園では池を少し離れた所でもキイトトンボが飛んでいたので、せっかく来たのだからと池の周辺を歩いてみることにした。するとクルマバッタ、クルマバッタモドキ、ショウリョウバッタが盛んに飛び立つ、そればかりでなく草原からは「チョン、ギース、チョン、ギース」とキリギリスの鳴き声が聞こえて来た。首都圏でもかなりの郊外へ行けばキリギリスに出会えるのだが、多摩丘陵での出会いは格別とばかりにトンボの事など忘れてしまって追い掛け回した。
 一通りバッタの仲間を撮影すると、またまたせっかく来たのだから、また、舞岡公園でもミョウガの植え込みに咲いていたからと、上の原広場にナンバンギセルを探しに行った。去年の観察記にも書いたと思うが、上の原広場のススキ草原は、かつては多摩丘陵の各所にあったカヤ場で、その広大さは一見に値する。特にこれから穂が出て銀色に輝く頃になると、その風情は格別である。そんな人為的に残されているカヤ場たが、夏の終わり頃になるとナンバンギセルがたくさん顔を出すのである。ナンバンギセルは皆さん御承知のようにススキの根に寄生する一年生の寄生植物で、ハマウツボ科と聞き慣れない科に属している。図鑑を紐解いて見ると、この科の仲間として他に、キヨスミウツボ、オオナンバンギセル、ヤマウツボ、ハマウツボが紹介されているが、みんな寄生植物のようで葉がついていない。一度、この仲間の他のものにも会って見たくなるような奇怪な植物ばかりである。はたして他のハマウツボ科の植物は珍稀種なのかは分からないが、ナンバンギセルはことこのカヤ場に於いては普通種である。しかし、今日は数日前の炎熱地獄からはかなり涼しくなったとは言え、昨日雨も降り、おまけにナンバンギセルがたくさん見られる所はやや窪んだ場所だから、ススキの中に入るとまるでサウナ風呂のような高温多湿で、ぽたぽたと額から汗が滴り落ちて来て、何べんとも無く眼鏡のレンズの曇りをぬぐっての撮影となった。
 午後からはカトリヤンマ、アジアイトトンボ、アゲハモドキを探しに黒川へ行った。いずれ黒川の雑木林に某大学の農学部が移転して来ると、自然度はますます減じてしまうが、今のところ工事が始まっていないので楽しく散策が出来る。何故、カトリヤンマかと言うと、日曜日に森のきのこさんにとても美しい写真を見せ頂いたので、アゲハモドキは南大沢の秀さんが掲示板に投稿なさってくれたので、また、アジアイトトンボは今日、野津田公園で会うはずだったのでと言った按配の理由があるのである。まずはいつものように谷戸奥に向かって右側の雑木林に接した日陰の道端へ行った。ここではアゲハモドキは勿論の事、様々な昆虫や野の花を撮った場所である。しかし、今日はこれと言ったものには出会えなかったが、やたらとギンヤンマとアオメアブが多く、アオメアブが咲き始めたワレモコウの花にテリトリーを張って止まっているのには笑ってしまった。しかし、道端をかなりしつこく舐める様にして歩いて行くと、ほぼ枯れたタラノキに中型のカミキリが上って来て天辺付近に静止した。センノカミキリである。センノカミキリはその名の通り、センノキ(ハリギリ)の葉や枝が大好きなのだが、同じ科のタラノキで良く見かける。舞岡公園では毎年、古谷戸の里入口のタラノキに発生していて、今年はそのためにかタラノキが枯れてしまった程、タラノキが好きなのである。だからセンノカミキリと言うよりはタラノキカミキリの方がふさわしいと思うのだが、図鑑を開いてみると、センノキ、ヤマウコギ、タラノキ、ヤツデ、カクレミノ等のウコギ科全般の樹木を好むとあるから、一番ふさわしい名はウコギカミキリなのかもしれない。
 右の谷戸の探索が終わると左の谷戸の入口にある竹林と、それに隣接する田んぼの畦の周りを見に行った。竹林は日陰になった道端でカトリヤンマに出会えるかもしれないと思っていたのである。しかし、まだ蚊が飛び始める時間では無いので、きっとカトリヤンマも竹林の中で昼寝中なのか姿は見られなかった。しかし、アジアイトトンボは沢山いて、思う存分撮影することが出来た。イトトンボの仲間は非常に身体が小さく、相手が飛んでくれないとその存在に気づかないのだが、一旦見つけて目が慣れてくると、それこそこんなにいたのかと思うほどに発見できるようになるのだ。本当に“初めチョロチョロ、中パッパ”なのには困ってしまう。谷戸を更に詰めて行くと、道端の田んぼには純白のオモダカの花がひときわ美しく、路傍にピンクのコマツナギ、日陰の道端にはタカサブロウやツユクサ、フェンスに絡んでカラスウリ、スズメウリ、ヘクソカズラ、ガガイモ、センニンソウと華やかである。蝶ではやはりイチモンジセセリがとても多く、ムラサキシジミが葉に止まって、キラキラ光る青紫の羽の表を見せてくれる。アマガエルもだいぶ大きくなり、ナツアカネ、マユタテアカネ、コノシメトンボ等のアカネ類が、もう少し涼しくなったら田んぼで飛び始めるからねと涼んでいる。今日は午後からはかなり気温が上がって湿度も高くなったが、以上のように様々なものに出会えるのだから、多摩丘陵も捨てたもんではないなと感じ入っての、今日の道端自然観察は終了となった。

<今日観察出来たもの>花/ナンバンギセル(写真上右)、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ツルボ、アキノタムラソウ、キツネノマゴ、タカサブロウ、ツユクサ、コマツナギ、オモダカ、タマアジサイ、キクイモ、ヘクソカズラ、カラスウリ、スズメウリ、センニンソウ等。蝶/キアゲハ、ヒメアカタテハ、ヒメジャノメ、ツバメシジミ、ムラサキシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/キリギリス(写真下左)、クルマバッタ、クルマバッタモドキ、ショウリョウバッタ、イナゴ、ベッコウハゴロモ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、オニヤンマ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、マユタテアカネ、センノカミキリ(写真下右)等。その他/クリ(写真上左)、アマガエル等。


8月22日、東京都町田市小野路町・図師町

 久しぶりの小野路町・図師町の多摩丘陵である。調べてみると8月2日が最後だから、何と20日ぶりとなるのには驚いた。夏は炎熱地獄となる五反田谷戸になると、最後にいつ行ったのかを調べる気にもなれない程、遥か遠い昔のようにすら感ずる。車をいつもの日陰の場所に停めると、何処にも寄らずに五反田谷戸へ一直線と考えていた。昨夜の天気予報によると今日は一日中曇りとあるから、花を求めてと思った訳である。しかし、一直線ではつまらないと考え直しニリンソウの谷に折れて歩いて行くと、木陰のクズの葉にオジロアシナガゾウムシが眠たそうに葉柄にしがみついている。オオブタクサの茎にはベッコウハゴロモ、スケバハゴロモが相変わらず吸汁している。たくさん咲き出したキツネノマゴには、たくさんのイチモンジセセリに混じって羽化したてのキマダラセセリが吸蜜に訪れている。杉林にはヤブミョウガが群落を作って咲き、早くも濃紺の実が輝いているものさえある。また、タマアジサイも今が盛りで、頭上からはミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシの鳴き声のシャワーが降り注いで来る。いつもヤブミョウガとタマアジサイを何とか作品と呼べなくとも、ごく普通に美しく撮影したいと思うのだが、上手く行かない。前者は白い花だからだが、後者はいつも煤けた感じで瑞々しく感じられる花に出会えないのである。まあ、タマアジサイは何処でもそう感ずるのだが、何とか一枚は撮っておきたい夏の木の花なのである。
 尾根に上がると右に折れて五反田谷戸へと思ったが、ことによったら何かキノコが生えているかもしれないとキノコ尾根を下って行った。するとさすがキノコ尾根と名づけただけのことはあって、多摩丘陵ではキノコは暑さと乾燥でみんな頭を垂れてしまったと思っていたのに、シロテングタケがたくさん生えているのには驚いた。本当に何かしらに出くわす懐の大きなフィールドであると、毎回感じている言葉を反芻する。五反田谷戸へ降りて行くと、快速五反田号さんと多摩美の67さんが早くも来ていて、中判カメラで撮影に勤しんでいた。久しぶりに見る姿は今年の暑さにやつれ果てているかのようであったが、ファィンダーを覗くと目がキラキラ光りだすのはさすがだ。快速五反田号さんが谷戸奥の棚田で見つけた花を指差して、「この花はじつに美しいですね」と言うので、覗いて見てみると、なんとミズオオバコの薄ピンクの花が形良く咲いている。「この花は自然度が高くないと見られない花で、鎌倉の一人静さんなんか是非見たいと思っている花だと思いますよ」と、しばしその美しさを鑑賞する。「今日はツルボを撮りに来たのに、まだ咲いていませんね」と、棚田と雑木林の間の芝地に目をやるのだが、やっと背が伸びて来ている状況で、舞岡公園等に比べると開花期が遅れている。それでも咲き始めたものがあったから、今日の最大の目的はクリアーしてヤマザクラの古木の下で、しばしの親睦会及び昼食会となった。
 食事をしていると、森のきのこさんこと多摩市のKさんもやって来た。最近は多摩川へ行くことが多く、トンボにはまり込んでしまったのだから、「ハンドルネームを変えなくてはいけませんね」等と言いながら最新作のトンボの写真を見せてもらった。デジタル一眼レフによる撮影、プリンターによる印刷とは思えない美しい艶のある仕上がりである。「年末の写真展はトンボで決まりですね。蝶の方はたくさんいるから、やっぱり僕はキノコになるのかな」等と言って笑い合った。さすが歳が若いだけあって森のきのこさんは元気だ。私たちがだべっている間も、休耕田の方へ行って美しいアオスジアゲハの吸水中のものを撮って来る。全般的に蝶の撮影は難しいが、特にアオスジアゲハはなかなか撮影出来ない。どれどれと休耕田に行ってみるとやたらとハンミョウが多く、この夏の間に沢山の子供達が成長したようである。早くもエンマコオロギが終齢幼虫となり、草原に足を踏み入れるとクルマバッタ、ショウリョウバッタ、イナゴ等のバッタの仲間がたくさん飛び立ち、なんとオオカマキリまで棒の先で獲物を待ち構えている。これからの五反田谷戸はとても面白そうで、暑ささえ遠く南海上に退いてくれさえすれば、道端自然観察の最高のフィールドになることは間違いない。しかし、ヒガンバナが咲く頃まではかなりの暑さが見込まれるから、やはり花の谷戸でもあるし、曇り日を選んでしっとりとした花の写真を手に出来る時に行くことをお勧めする。
 みんなと別れてオニヤンマを求めて神明谷戸へ行ったが姿が見えない。どうやら今年の小野路町、図師町のオニヤンマは不作のようだ。そこでキノコ尾根にキノコが生えていたのだから、キノコ山も期待できるぞと寄ってみたのだが何も生えていない。もう時期的には遅いとは思ったが美しい雑木林に行ってクヌギの樹液巡りをしたものの、スミナガシはもちろんのこと、これと言った昆虫には出会えなかった。車を停めてある場所に戻る途中、ダイミョウセセリやスケバハゴロモを撮り、まだ形の残っているカラスウリの花も撮った。車に戻って一息入れて時計を見ると、まだ3時になっていない。久しぶりに来たのだからと万松寺谷戸へ行くと、Tさん達が草刈作業に励んでいる。みるとモンペ、地下足袋姿のご婦人もいて、近づいてみると野津田のKさんであった。「やっぱり谷戸にはモンペと地下足袋が似合いますね」等と冗談を言いながら、Tさん達が今日捕らえたマムシを見せてもらった。お腹が膨らんでいる部分に子供がいるのだと言う。他の蛇は卵を産むのだが、マムシは胎生だから子供を生む。「子供は口から出て来るのでしょう?」等と、ウィークエンドナチュラリストらしからぬ質問をしてしまって皆に笑われてしまった。「子供は産道から生まれて来ると決まっているの。シラスのような大きさと色の子供が生まれて来るんだ」とTさんのお仲間が言う。しばらくするとTさんは慣れた手つきで一升瓶にマムシを尻尾の方から入れようとしたが、膨れたお腹が邪魔になって入らない。そこで今度は頭から入れると無事にマムシは一升瓶の家の中に鎮座した。最後のマムシとの対面は、私の苦手なおでんのコンニャクと同じで、それ程気持ちの良いものではなかったものの、とっても充実して楽しい一日となったのは言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/ミズオオバコ、オモダカ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ツルボ(写真下左)、キツネノマゴ、タマアジサイ、ヤブミョウガ、ヤブラン、キクイモ、ミゾカクシ、ミソハギ、ハス、クサギ、ヘクソカズラ、カラスウリ等。蝶/アオスジアゲハ、コミスジ、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、キマダラセセリ、ダイミョウセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/クロカナブン、ヒメスズメバチ、スケバハゴロモ(写真下右)、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ヒメアカネ、オジロアシナガゾウムシ、オオカマキリ、クルマバッタ、オンブバツタ、ショウリョウバッタ、イナゴ、ヤマトフキバッタ等。キノコ/シロテングタケ(写真上右)、シロオニタケ等。


8月21日、横浜市緑区新治市民の森

 今日は晴天だが大陸の高気圧に覆われたため、だいぶ過ごし易い天気となった。このまま残暑がぶり返すことなく続いてくれたらと思うのだが、暑さに関してはもう一山二山はやって来ることだろう。最近、トンボが大好きな方がにわかに増えて来て、それに煽られた訳ではないが、今日はトンボの日と決めて新治市民の森に行った。厳密には雑木林に行かなかったのだから、新治市民の森と言うよりか新治町と言った方が良いのかもしれない。車をいつもの所に停めて歩き出すと、田んぼにはシオカラトンボとショウジョウトンボが沢山いて、田んぼ脇の用水路に横に渡したコンクリートの柱にたくさん止まっていた。人工物にトンボと言うのも情緒に欠けるが、とり合えず絵になるように撮影した。ショウジョウトンボやシオカラトンボは、中途で刈られた枯れた葦に止まっているのが一番風情がある。特にショウジョウトンボは太陽光線が強いと腹部を上げて、まるで倒立したような格好で暑さを凌ぐから、そんな時が一番絵になる写真となるのだ。しかし、シオカラトンボはどのように工夫してもなかなか上手く撮れない被写体で、平地で最も普通に見られるトンボの割には良い写真を撮っていない。ショウジョウトンボの様に腹部を上げる事も無いので、いつもべったりと止まっているような感じなのだ。今日もかなり頑張ったつもりだったが、平凡な写真だらけとなってしまった。平凡なるものをいかに美しく撮影するかが私の一つのテーマなのだから、シオカラトンボでも、そのテーマでしばし挑戦して行こうと思う。
 今日の第一の目標はオニヤンマだから、旭谷戸の方へ行って見ることにした。農家の私道には旧盆の送り火を焚いた跡が残っていて、先祖の方々が乗るキュウリで作った馬とナスで作った牛が置かれている。先祖の供養を兄貴に一切任せて、夏休みを嬬恋村で気楽に過ごしていたが、良く出来た兄を持つと弟はとても落ちんな人生が送れると言う訳である。いつもならオニヤンマが行き来する小川沿いの小道に分け入ったが、どうやら様子が変である。オニヤンマの姿が見えないばかりか、去年、たくさんのオニヤンマの脱皮殻がついていた民家の土留めにも、脱皮殻が一つとしてだについていない。もっとも去年見たのは7月9日だから、もうほとんど落ちてしまったものとも考えられるのだが、一つとして無いと言う事は今年の発生数が少ないことを物語っているようである。それでも谷戸を詰めれば飛び交っているものと思い、更に歩みを進めて日曜菜園の傍らを通ると、地面に突き刺してある竹の棒の先に赤いトンボが止まっている。羽の根元が橙色に色づいているのでネキトンボだとすぐに分かった。最近、多摩丘陵で度々見かけるようになったが、それ程、個体数が多いトンボとは言えず、腹部を上げて止まっている姿は青空に浮かんでなかなか美しい。今日も観察を開始してすぐの田んぼで、淡い色をしたショウジョウトンボの未成熟個体が棒に止まっていたが、似てはいるものの、前者は羽が透明だからまず間違うことは無いと思う。
 新治市民の森で唯一残されている棚田を過ぎてしばらく行くと、お目当てのオニヤンマが木から垂れ下がったクズの蔓に止まっていた。しかし、絵になるような止まり方では無い。そこであたりを歩き回って、オニヤンマが好みそうな棒を探してみたのだが何処にも落ちていない。そこでクズの蔓を思いっきり引っ張ってみたら長く一直線に垂れ下がった。そこで更に風に揺れないようにと下に石で重石をした。後はオニヤンマが止まってくれるのを待つばかりである。するとオニヤンマより早く、顔見知ったつきみ野のIさんがやって来た。本当に久しぶりの出会いである。去年の観察記でも書いたと思うが、Iさんは毎週土曜日に新治市民の森へ、日曜日に大和市の公所の森へ通っていて、長年にわたって蝶のモニタリング調査を行っているのである。手帳を見せてもらうと、その日に目撃した蝶とその個体数がびっしりと書き込まれている。以前は珍品稀種を求めて遠出したこともあったそうだが、今は近場で充分に満足していると言う。今まで数多くの方にフィールドで出会っているが、このIさん程に素晴らしいナチュラリストに出会ったことが無い。何事もそうだろうが自然観察の奥義も、結局のところ珍品稀種にどれだけ出あったかとか、多くの動植物キノコを見分けられるとか、はたまた写した写真が素晴らしいとかではなくて、いかにフィールドで自分自身が満足して楽しめるかにあるのだと思っている。まさにIさんは、もう既に30年はゆうに超えて身近なフィールドで、己にとっての楽しさを満喫しているのである。
 そんなIさんと話をしているとオニヤンマがクズの蔓に止まった。これはチャンスと近づくと車がやって来た。もちろんオニヤンマは遠くに飛び去ってしまって、その後、待てども待てども一向に現れない。今日は駄目だなと思いつつも、もう一つの今日の撮影目的であるハグロトンボを求めて、新治小学校裏の梅田川へ行った。梅田川はここが日本で人口第2の横浜市と疑ってしまう程の清流である。最初、岸辺に沿った道を歩いていたのだが、夏草が繁茂して遮られた為に、やむなく川に下りて見ることにした。上州屋で購入した長靴は長い夏休みに極使したから水が漏れるかなと心配したが、どうやら穴が開いていないらしく水は入って来ない。気温は上昇し始めたが、足だけは水に浸かっているからとても冷たくて気持ちが良い。ハグロトンボを求めて川を行ったり来たりしていると、アブラッパヤ、オイカワ、クチボソ等の魚が逃げ惑う。アメリカザリガニも尾を丸めてとても素早く逃げて行く。後ろ向きに泳いでいて、どうして方向が分かるのかと不思議に思う。障害物に当たらないのかと心配にもなるが甲羅が硬いから関係ないのだろう。目指すハグロトンボはたくさん飛んでいるが、今日は川の水面に露出する石の上にはなかなか止まらない。また、止まってもすぐに飛び立ってしまう。清流の石の上に止まってこそハグロトンボなのだが仕方が無い。きっと石の上はハグロトンボの細い足には熱過ぎる程に焼き上がっているのだろう。それでも何とかハグロトンボをカメラの中に納める事が出来たのはラッキーであった。しかも、久しぶりに子供の頃に楽しんだ小川での水遊びが出来て、今日は貧果ではあったが、とっても楽しい自然観察となった。またいつの日にか、梅田川で水遊びをしようと考えての早上がりの帰宅となった。

<今日観察出来たもの>花/ツルボ、キクイモ、オミナエシ、ミソハギ、ヘクソカズラ、ハナトラノオ(写真上右)、ケイトウ、ニラ、ゴマ、ラッカセイ等。蝶/モンキアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、アゲハ、コミスジ、ウラギンシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/オニヤンマ、ギンヤンマ、ネキトンボ(写真下左)、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ハグロトンボ(写真下右)、アオメアブ等。その他/ハイイロチョッキリの産卵痕のついたコナラの実、旧盆の送り火の跡(写真上左)、アブラッバヤ、オイカワ等。


8月19日、横浜市戸塚区舞岡公園

 10日間の夏休みを雨にも会わずにすべて道端自然観察及び写真撮影が出来たために、残りの8月は軽く流せば良いな等と考えていたのだが、このHPの掲示板に度々ご投稿下さる五箇山男さんが最初に発見し、その後、やはりこのHPの掲示板に度々ご投稿下さる鎌倉のNさんが再確認している、舞岡公園のウチワヤンマを見に行った。しかも、一回だけだがチョウトンボも飛んでいたというので、これは行くしかないなと思った訳である。舞岡公園は自宅から高速を使えば短時間で行けるから、夏休みの疲れを癒すために遅く起きて、さあ出発と思ったところ、愛車小野路号がうんともすんとも言わなくなった。イグニッションキーを回してもセルモーターが回らないのである。どうやらバッテリーがいかれてしまったようである。そこでロードサービスを呼んで、新品と交換してもらうこととなってしまった。なにしろ2年半で48000キロも走っているし、今度の長期の夏休みも文句も言わずに活躍してくれたのだから、ご苦労さんと新品をプレゼントとしたと言う訳である。しかし、休暇中に例えば標高2000mの林道等で、しかも携帯電話が通じない所でバッテリーがダウンしていたらと思うと、ぞっとしたが、自宅の駐車場で発病してくれたのだから、ますます愛車小野路号の素晴らしさを感じたと言う次第である。
 そんな思わぬアクシデントがあった為に、舞岡公園に着いたのは午後1時を回っていた。いつも駐車する場所に、コナラの実がついた小枝がたくさん落ちている。どうやら舞岡公園にもハイイロチョッキリがいるようで、かなりの小枝とドングリが散乱していた。毎年秋になると、「どうしてコナラやシラカシは、あんなに沢山のドングリを実らせるのだろう」と不思議に思っていたのだが、このハイイロチョッキリだけでなく小鳥や小型哺乳類もドングリが大好きだから、たくさん実のらせても食べられてしまうし、また芽生えても一人前になるのは極少だから、鈴なりに実のらせてちょうど良いのかも知れない。そんな事を思うとずいぶん無駄が多いなあとも思ったが、かつてサラリーマン時代に営業をしていたが、成約にこぎつけるのはほんの僅かだから、いつも種まき(新規勧誘)をしておかなければならないと言われた事が懐かしい。いつまでもあると思うな金と客という訳なのである。ハイイロチョッキリは夏休みに坂城町のびんぐしの里公園で写しているものの、舞岡公園や多摩丘陵で撮ってこそ価値があるので、頭上を見上げてみたらかなり高い所に実がなっていた。今日は目的が別だから各所を探し回らなかったが、きっと何処かに手の届く所があるに違いないから、舞岡のKさんに探しておいて貰おう。
 ウチワヤンマ探索とまず最初に瓜久保の河童池に行った。ここで五箇山男さんが最初に観察した事になっている。ウチワヤンマは水面の広いやや深い池が好きなトンボと聞いていたので、河童池では狭すぎると思ったいたのだ。行って見るとコシアキトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマが見られ、オニヤンマよりやや小型だが似ているトンボも飛んでいる。あれがウチワヤンマかと思ったが何となく違う。色彩や斑紋は似ているのだが、ウチワヤンマの特徴である尾端近くに黄色っぽい団扇形したものがついていない。それに飛び回っているだけで何処にも止まろうともしない。もっとも枯れたアシが岸辺に生えているものの、止まりやすい棒などが水面中央付近に無いので、そこで子供達がザリガニ釣りで使用したアズマネザサの棒があったので、出来るだけ水面中央付近に立てたのだが止まらない。止まるのはシオカラトンボだけである。ことによったらウチワヤンマは太い棒が好きだからと、道端にあった直径2cm程の木の棒をやや斜めに刺して待っていたのだが、これにも目もくれずに水面を行ったり来たりしている。このため確認は出来ないもののウチワヤンマでもオニヤンマでもないトンボのようである。そんな訳でどうやら河童池にはウチワヤンマはお留守のようであった。
 そんな事をしていたら、今日、私がウチワヤンマ探索に舞岡公園へ来る事を知っていた鎌倉のNさんから電話がかかって来て、「宮田池の杭の所にいましたよ」との事であった。宮田池は河童池に比べると3倍程の広さがあるから、こちらの方がウチワヤンマが好きな筈であると思っていたので、納得して大急ぎで歩いて行った。平地の夏の午後ってこんなに暑かったかな等と思いながら、久しぶりの平地の夏を充分堪能しながら歩いた。なにしろ夏休みは涼しい所ばかりだったので、汗もあまりかかずに体重は増え、ウエストが1cm程太くなったのだから、ダイエットのためにもちょうど良い。宮田池に行ってみると、写真のようなやや天辺が朽ちた杭にウチワヤンマが止まっていた。これが私のイメージするウチワヤンマの姿だ。この杭に近づくにはクズが繁茂した土手状の所を少し歩かなければ駄目だ。今日は長靴ではなくスニーカーだからかなり躊躇したが、良い写真を撮るためには仕方が無いとブッシュ越えを敢行した。今まで例えば甲府市の千代田湖等でウチワヤンマを観察しているのだが、みんな岸からかなりの距離に立つ棒杭である。そんな事もあって、今日は野鳥撮影用の機材で来たし、ブッシュ越えをしたからかなり近づけるので、鮮明度は落ちるものの思う存分撮影することが出来た。
 ウチワヤンマが撮れたので他にも何かないかと古谷戸の里に行ってみると、ミョウガの根元からナンバンギセルが顔を出していたり、田んぼと散策路の間の斜面にはワレモコウ、ツリガネニンジン、ツルボ等が咲いていたが、午後のピーカンの陽の元ではしっとりと撮れないのでパスをした。今日は花は駄目だなと、チョウトンボも見られたと言う宮田池に戻ると、カワセミが杭の上に止まって狩の最中であった。久しぶりに見る舞岡公園のカワセミである。キラキラ夏の太陽を水面が反射する逆光の中に入れて撮るのも良いなと、玉ボケをうまく配置して撮影した。今日はなんと言っても野鳥撮影用機材で来ているからカワセミ君も容易に撮れる。いよいよ午後の陽も強くなって来て、ダイエットにはちょうど良い等とうそぶいてもいられなくなった。河童池に立てかけた棒に例のトンボが止まっていないかと見に行くと、もうすでに立てかけた棒は日陰の中にあって、これではシオカラトンボも止まる筈が無い。太陽光線の強さこそ夏だが、秋の陽は釣瓶落しと言うように、日は確実に短くなって太陽光線もやや斜光となりつつあるようである。また来週、曇り日に朝早くから舞岡公園へ行ってみようと考え、短時間の観察を充分堪能して終了とした。

<今日観察出来たもの>花/ナンバンギセル、ワレモコウ、ツリガネニンジン、ガガイモ、ミゾカクシ、クサギ、ヘクソカズラ等。蝶/モンキアゲハ、クロアゲハ、キアゲハ、アゲハ、ツマグロヒョウモン、イチモンジチョウ、ヒメジャノメ、ウラギンシジミ、ツバメシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/オニヤンマ、ウチワヤンマ(写真下左)、ギンヤンマ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ(写真下右)、ヨツスジトラカミキリ、ベッコウハゴロモ、アオバハゴロモ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ等。その他/ハイイロチョッキリの産卵痕のついたコナラの実、カワセミ(写真上右)等。


8月16日、群馬県吾妻郡嬬恋村鹿沢高原

 今日で10日間の長い夏休みは終わりである。本当に長かったようにも思えるし、あっと言う間の出来事のようにも感じられる。毎年、自宅に帰る途中、必ず鹿沢高原に寄る事にしている。朝発ってそのまま高速道路に一直線では余りにももったいないし、帰り道途中にある一番近い高原だから、最後の最後までしつこく高原を味わっていたいと言う訳なのだ。しかも、今年は連続道端自然観察10日間の珍記録がかかっているから尚更で、また、民宿兼食堂「わたらせ」の美味しい定食を味わってからでも、充分に明るいうちに帰れるからである。今朝は秋を感じさせる爽やかで清々しい空気に包まれ、空は青く澄み渡って、時間が経つにしたがって美しい鱗雲が広がり始めた。信州の主だった山々は黒々とそびえ立ち、風はひんやりするくらいに冷たく頬をかすめて行く。林道の両側にはススキの穂がたなびいて、至る所に秋がやって来ていると言った風情である。10日前に来た時に比べて、ずいぶんその様相が変わっているように感じられ、花ではマツムシソウが咲き始めていて、蝶ではあんなに沢山いたベニヒカゲが数を減じて、そのかわりに、クジャクチョウ、シータテハ、エルタテハ、キベリタテハ等の高原の蝶達がすこぶる元気に飛び回っている。高原に避暑に来ているアサギマダラやアキアカネ等は相変わらずだが、彼らの高原での生活ももうすぐ幕を閉じる事になりそうだ。
 そんな訳で、今日はまず初秋を感じさせるものをカメラに納めようと頑張ってみた。私のイメージにある初秋の高原の花と言ったら、何と言ってもマツムシソウで、これにワレモコウ、アキノキリンソウ、ツリガネニンジン等と続く。これらの花々に蝶や昆虫が来ていたら、尚更美しい作品としての写真となる訳で、特に、マツムシソウにクジャクチョウ、ワレモコウにアキアカネ等がイメージとしては最高である。昼近くになると収まったものの、風が強くてなかなかこのような写真が撮りづらい。花だけ狙っても風で揺れが止まらないから撮影にかなり時間がかかった。やや高原から沢筋に下った所が、これらの花の宝庫で、なんとか撮影して林道に戻ってみると、群馬の藤岡から一人で写真を撮影しに来たと言うご婦人が車でやって来た。「今日は風が強くて花の写真は駄目ですけど、とっても雲が美しいですね」とご婦人に声をかけると、「実はヤナギランを超広角レンズで撮ろうと思って来たんです」と言う。まだ写真撮影を始めたばかりだと言うのにコンテストに度々入選して、写真の面白さにのめり込んでしまったのだと言う。見るとカメラもレンズも三脚も一級品を揃えている。こんな所で写真の魅力にとり付かれてしまったご婦人に出会うとは思わなかったが、本当に写真って面白いのだから仕方が無い。
 早速、そのご婦人は太陽の周りに虹のような輪が出ているのを目ざとく見つけると、山を入れて超広角レンズで狙い始めた。「ゴーストやフレアーが出るでしょうけど、それはそれでまた良いんですよね」等と声をかけると、「撮らなければならないものがありますので」と言って林道をゆっくり下って行った。撮らなくてはならないものとは、もちろんキベリタテハである。10日前に来た時に比べると数が多くなったから、今日こそなんとかなるのではと頑張った。そんな熱意がキベリタテハに伝わったのか、はたまた「10日間もの夏休みに僕を1カットも撮影出来ないんじゃ余りにも可哀相」等とキベリタテハに哀れみを頂いたのか、望遠レンズを持ち出さなくともなんとかものになるカットを得る事が出来た。こうなったら後は砂利の広場にいたミヤマハンミョウを撮って今日は完璧だな、未練なく家に帰る事が出来るとばかりに引き返すと、まだ、ご婦人は熱心に山と鱗雲を撮っていた。いいなあ、本当に写真の魅力にのめり込んだご婦人がファインダーを覗いている姿は、実に様になっている。美しいものをいかに美しく撮影しようかと言う、これまた美しい心が、人間をより美しくするようである。
 ミヤマハンミョウも無事に撮影出来て、ご婦人にお別れを言ってから、次なる重要な場所へと車を発進させた。もちろん、民宿兼食堂の「わたらせ」である。今日は山菜てんぷら定食にするか山女の塩焼き定食にするかと迷ったが、帰ってから仕事に専念してお金を儲ければ良いのだと、山菜てんぷら定食に山女の塩焼きを一品追加した。するとご主人が釣って来たと言う、型は小さいが岩魚の塩焼きを二匹プレゼントしてくれた。これはこれはとんでもないご馳走となってしまって、頬は緩みっぱなしでゆっくりと噛み締めながらの食事となった。それでも会計はなんと万座プリンスホテルで食べたビーフカレーの値段より僅か60円高い1460円という値段には驚いた。今日はキベリタテハも撮影出来、民宿兼食堂「わたらせ」で山の珍味を充分堪能したし、もう夏休みに何ら悔いは無しと鹿沢高原を後にし、地蔵峠を越えて急坂を下って行った。途中、小諸インター近くで白煙を吹き上げる浅間山(写真上左)が午後の日に美しく映えていた。今年はデジタル一眼レフ中心の撮影となったが、来年は本格的装備で作品を狙ってみようと考え、小諸インターから長野道に乗った。

<今日観察出来たもの>花/ヤナギラン、マツムシソウ(写真下右)、アキノキリンソウ、ワレモコウ(写真上右)、ハクサンフウロウ、ヤマハハコ、シシウド、オトギリソウ等。蝶/キベリタテハ(写真下左)、エルタテハ、クジャクチョウ、シータテハ、アサギマダラ、ヒメキマダラヒカゲ、ベニヒカゲ、オオチャバネセセリ等。昆虫/ミヤマハンミョウ、ノシメトンボ、アキアカネ等。その他/コケモモの実、オオカメノキの実等。


8月15日、長野県埴科郡坂城町びんぐしの里公園

 今日は前線が南下して来て午前中は雨だと思っていた。この前線の北側は秋の高気圧だから、通過後はきっと涼しくなるに違いない。これで東京の連続真夏日の記録が40日で途切れるように、私の連続道端自然観察記録も途切れるかなと思ったら、午前9時に雨が止んだ。多分、明日は天気が良くて帰りがけに鹿沢高原に半日寄るつもりだから、連続道端自然観察の記録は、なんと10日間になることだろう。こんな事で子供っぽく喜んでいても仕方無いのだが、今年は珍品稀種も素晴らしい作品も撮れなかったので、この記録をお土産に自宅に戻れると言う訳である。この記録は恐らく今後破る事の出来ない筈で、それだけ今年の夏休みは天気が良かったと言う証拠である。今日は昨日の長野市の里山での楽しさをまた味わおうと、出発時間は遅くなったが、坂城町にある“びんぐしの里公園”行った。びんぐしとは鬢櫛で、半円形の日本髪に挿す櫛の事で、この山が丸いドームのような格好だからびんぐし山と呼ばれ、そこにあるから“びんぐしの里公園”と名づけられた訳である。坂城町は長野市に比べてやや千曲川の上流で、びんぐしの里公園は下流に向かって茶臼山自然公園と同じ左側だから同じような環境で、同じようなものが見られる筈だと期待した訳である。しかし、着いてみると最近地方へ行くと何処にでも見られる町営の日帰り温泉付きのレジャー施設であった。そのため自然度は低く柳の下にもう一匹ドジョウはいなかったのだが、雨が上がって散策できるだけでもラッキーとばかりに近くの林道へ入ってみた。 
 今日は気温が低くて本当に快適である。何しろここに来る途中、真田町まで車のヒーターを入れて来たのだ。鳥居峠の少し手前で道路の電光掲示板に「只今の気温12度」と表示されていたのだから、恐らく20度前後の気温なのだろう。林道に入って目にしたもので、一番印象的だったのはカシワの木だ。餡子の入った餅をこの葉で巻くと柏餅という訳だが、意外とカシワが自生している所は少ない。どうも乾燥した場所を好むようである。また、花ではまだ咲いてはいないがオヤマボクチとオケラが沢山あった。また、ここでもキキョウを一株発見した。曇り日で気温が低いためか蝶はあまり飛んでいないが、大きな焦げ茶のジャノメチョウ科の蝶が飛んで来て前方に止まった。ことによったらオオヒカゲと期待したのだが、ジャノメチョウの大きな雌であった。また、歩いていると何べんとも無く大きな蛾が飛び立って草むらに止まる。これはハグルマトモエである。夜に樹液を吸いに来ているものを撮った事はあるが、昼間は敏感であることと、絵になる所に止まってくれないので撮影したことが無い。羽の巴の紋様はとても印象的である。しばらく歩いて行くと、待ってましたとばかりに樹液が出ていそうなクヌギ林に入った。しかし、昨晩の雨と低温の為か、いらっしゃるのはヒメスズメバチとシロテンハナムグリだけである。どうも今日は駄目そうだなあと感じて苦笑した。
 しかし、地面を良く見ると昨日の茶臼山と同じくコナラの実がついた小枝がたくさん落ちている。しかも、手の届く高さにドングリが一杯だ。昨日撮れなかったハイイロチョッキリを撮るチャンスである。すぐにドングリにハイイロチョッキリを見つけたが、ドングリの袴に穴を開けているものや小枝を切り落とす作業をしているものは見当たらない。ただ眠っているかのようにドングリの実に身を寄せているだけだ。恐らく昨晩の雨と低温の為だろう。仕方無しに一匹捕まえてカシワの葉に放って写真を撮り、落ちている産卵痕のはっきり分かるドングリをオヤマボクチの大きな黄緑の葉の上に乗せて撮影した。これで面目躍如とばかりに、遠くに鋭く鎮座する戸隠連峰を撮影したり、美味しそうに色づいたブドウを撮った。なぜか一つの房だけ白い袋をかけずにとり残されている。まさか農家の方が袋がけを忘れた訳ではあるまいし、何らかの意味合いで袋をかけなかったのだろう。管理事務所に行って見ると、周りに様々な花が植えられていて、ベニバナを撮りたかったが時期が過ぎていた。しかし、アスターの花の上にブチヒゲカメムシが鎮座していて、フイルムカメラでばっちり作品として撮影した。お昼になったので温泉施設に付属する食堂で昼食をとろうとしたら、温泉入場料を支払ってから食堂に行って下さいとの事だったので、まさか小原庄助さんではないから止めにした。
 そんな訳で昼食をとりに戸倉上山田温泉の方へ行ったら、姨捨山へ行ける林道がある事が分かった。途中立ち寄った食堂の女将さんによると、本当に昔はお婆さんを捨てに行ったのだと言う。まあ、その真偽は定かではないが、姨捨山はあっても爺捨山は無いのだから、男尊女卑の思想だなあ等と苦笑する。でも、最近は爺捨て離婚が大いにはやっているから、まこと恐ろしや恐ろしやである。現代は昔とは逆に、爺捨山はあっても姨捨山は無いようである。とりあえず今後の為にと林道を登って行ったが、この低温と頂上近くになると霧も出始めた為に、たんなる山岳ドライブとなってしまった。仕方無しに帰路に坂城インター近くの林道に入ったが、ルリタテハやシータテハがいたくらいで、これと言った成果は得られなかった。しかし、嬬恋村に戻る途中の鳥居峠付近から北アルプス(写真上左)がはっきりと見え、車を停めて撮影し悦に入った。今日は戸隠連峰、北アルプス、その他、四阿山、浅間山等、本当に山がはっきりと見える日である。雲はあっても非常に高く、秋の高気圧に被われてとても大気が澄んでいるためだろう。明日帰る首都圏も涼しくなったと言うから、待ちに待った秋はもう手の届く所までやって来ているようだ。

<今日観察出来たもの>花/キキョウ、キツリフネ、コマツナギ、オヤマボクチ、オケラ、アスター、ベニバナ等。蝶/シータテハ、ルリタテハ、コミスジ、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/ハイイロチョッキリ(写真下左)、ハイイロチョッキリの産卵痕(写真下右)、シロテンハンムグリ、ヒメスズメバチ、ハグルマトモエ、シロヒトリ、ブチヒゲカメムシ、オニヤンマ等。その他/リンゴ、ブドウ(写真上右)、プルーン、オニグルミの実、カマツカの実、イシミカワの実、等。


8月14日、長野県長野市茶臼山自然公園

 首都圏は8月に入っても雨が降らずに厳しい真夏日が続いているらしい。こちらの方もやって来た当初の頃は、必ず午後になると夕立がやって来たが、このところの天候はとても落ち着いている。そんなこともあってか、連続道端自然観察の記録が、去年の夏休みの7日間を抜いて、8日間連続の新記録となった。こんな連続記録は誇れる訳でもなかろうが、飽きずに毎日続けているのだから、当の本人はそれなりに立派な事だと思っているのである。どうしてそんなに自然観察及び写真撮影が面白いのと言われても困ってしまうが、私の場合は、ある一つのジャンルではなくて何でも屋だから、観察対象を変える事によっていつも新鮮でいられるようである。今年はこちらも気温も高い日が続くので、里山へ降りて行くのが苦痛だったが、今日は長野市の里山である茶臼山自然公園へ行った。そろそろ天気も変わり目で、前線が降りて来て曇りがちで気温もだいぶ低くなったからとても凌ぎ易い。昨日のような高温の日であったら、長野市の里山とは言っても熱中症に罹っていたかもしれない。道路地図を見ていたら茶臼山自然公園と言う場所が目に入って来て、なんだかとっても行って見たくなったのである。きっと長野市の里山をたっぷり味わえそうな予感がしたと言う訳である。
 茶臼山自然公園に着くと、ここには動物園、植物園、博物館、恐竜園があって、かなり大きくて広い山全体が長野市の自然教育の重要な場所となっている事が分かる。今日は土曜日だから子供づれの方々でかなりの人出だ。植物園や動物園の方に行っても自然度が高そうだから、かなりの成果が得られそうに思えたが、登って来る途中、駐車場からほんの少し下った所に数本のクヌギを見ていたので、まずはそちらへ行ってみる事にした。クヌギの樹液はなんと言ったって夏の昆虫観察の要なのだ。途中に果樹園が広がっていて、リンゴ、ヨウナシ、プルーン、モモ、プラムが植えられていて、大きく成長して収穫間近なようである。また、切花用にアスターが栽培されていて、これもとても美しい。イネ科植物の生えた空き地からは、キリギリスの鳴き声が至る所から聞こえて来る。信州の里山へ降りて行って撮りたくなるものはたくさんあるものの、このリンゴ、アスター、キリギリスはいつも必ず撮影して帰る信州ならではの被写体だ。キリギリスは首都圏平地では見られなくなって久しいが、その鳴き声の「チョン、ギース、チョン、ギース」を聞きたくて、もちろん撮影したくて、暑いのは分かっていても里山巡りは欠かせないのだ。
 細い農道を更に歩いて行くと棚田(写真)が広がり、前方にはクヌギに囲まれた溜池が現れた。地元の若者がルアーキャスティングを繰り返している。小さなため池だから「釣れるの?」と聞いて見ると、「ブラックバスが釣れるよ」と言う。「でかいのが釣れるの?」と質問したら、なんと50cmオーバーのものまでいるのだと言う。50cmオーバーなら軽く1kgを越えるだろうから、それはそれはその引き応えは堪らないはずである。「ここは静かでのんびりしてとっても良い所だね」と言うと、若者はよくぞ言ってくれましたとばかりに頷く。水面を見るとヒシが浮かび、ギンヤンマ、ミルンヤンマが飛び回っている。教科書で池や沼の植物で水面に浮かぶものの代表種としてヒシが紹介されていたが、本物を見るのは今日が初めてだ。本当に菱形の葉をしている。しかも、ラッキーな事に白い小さな花が真ん中に咲いているから、飛び上がって叫びたくなった。地方に住んでいらっしゃる方なら「なんだヒシ位で」と笑われそうだが、こんなに長く道端自然観察をしていても初めて見る植物なのだから当然だ。
 また、それだけではなく池と田んぼの間の斜面にキキョウがたくさん咲いている。7月に八ヶ岳の観音平でたった一輪咲いているのに出くわして、とっても感激したと7月のつれづれ観察記で書いているはずだが、なんとここにはかなりの数のキキョウが咲いているのである。しかも、撮影しようと田んぼの畦に下りて行くと、オグルマやカワラナデシコまで咲いている。また、ウツボグサが別名である夏枯草のごとくに枯れて至る所に立っている。これは凄いと再び大きな声を出しそうになってしまった。多摩丘陵にもキキョウがあったと小野路町のTさんに聞いているか、きっと今見ているような光景が各所にあったのだろう。キキョウとカワラナデシコを撮影して、お次はオグルマと黄色い花に目を向けると、白い蝶が吸蜜している。モンシロチョウではないヒメシロチョウである。まさかこんな所でヒメシロチョウに出会うとは予想もしていなかった。そう言えば食草であるツルフジバカマがたくさん生えている。しかし、残念な事に近づくとヒメシロチョウは足を踏み入れる事が不可能なブッシュの奥に飛んで行ってしまった。
 こうなれば一旦食事に車の中に戻って弁当をぱくついた後、すぐにここに戻って来た事は言うまでも無い。オニヤンマが行き来している場所に竹の棒を立て、ギンヤンマやマルタンヤンマが棒に止まる事は無いはずだが、万が一を期待して溜池にも竹の棒を立て、更に農道を歩いて行った。きっと撮り逃がしたヒメシロチョウがわんさかいるのではないかと期待した訳である。すると棚田の脇に一本いかにも樹液が出てそうな若いクヌギが見えて来て、きっと何かいるぞと近づいてみると、ノコギリクワガタの雄が私の来訪を察知して、怒るように角をもたげていた。更に期待して歩みを進めたが道は二つに分かれて、一方は山の上の動物園に、もう一方は棚田の中を民家の方に降りて行く道であった。この両方の道も先程の溜池周辺に比べて期待は出来そうにないと引き返すと、溜池の棒には何も止まっていないが、棚田脇に立てかけた竹の棒には、エメラルドグリーンに輝く大きな複眼が煌いているオニヤンマが止まっていた。しかし、さすがトンボの王様、90mmのマクロレンズではちょいと無理で、近づくとすぐ飛び去ってしまった。
 こうなればオニヤンマとヒメシロチョウをと、農道の片隅に座って待っていると、頭上からドングリが付いた小枝の先が、一つまた一つと落ちて来る。これはハイイロチョッキリの仕業である。落ちて来たドングリの袴の部分を調べて見ると、産卵した跡である小さな穴が開いている。これはチャンスとばかりにコナラを見上げるが、頭上高くて撮影できない。付近を探し回ったが手の届く高さにドングリがなっていないので、ハイイロチョッキリのその作業風景の撮影は断念した。オニヤンマはその後一回現れて棒に止まってくれたが、近づくとやはり逃げられてしまった。ヒメシロチョウも現れるが止まってはくれない。溜池の方に行って見るとヒシの上でギンヤンマが雌雄お繋がりで産卵しているが、大きく写せる距離ではない。また、青い筋が美しいミルンヤンマがホウバリング(空中飛翔)をしているが、これも大きく捉える事が出来ない。そんな訳でずっと爪を噛み続けはしたものの、誰一人来ない長閑な棚田の溜池の傍らで撮影チャンスを待ち続けていると、遠い子供の頃の夏休みを懐かしく思い出した。これだから暑くても里山巡りは最高だと一人ごちて、撮りたいものが撮れなくとも、とっても満足した一日となった。

<今日観察出来たもの>花/ヒシ(写真中右)、キキョウ(写真下左)、オグルマ、カワラナデシコ(写真下右)、キツリフネ、ガガイモ、スズメウリ、コマツナギ、アスター(写真中左)、ハンゴウソウ等。蝶/キアゲハ、ルリタテハ、キタテハ、ゴマダラチョウ、コミスジ、ヒメシロチョウ、キチョウ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲ、オオチャバネセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/カブトムシ、ノコギリクワガタ、オニヤンマ、ギンヤンマ、マルタンヤンマ、キリギリス(写真中右)等。その他/リンゴ(写真上左)、ヨウナシ(写真上右)、プルーン、サンショウの実、オニグルミの実等。


8月13日、群馬県吾妻郡嬬恋村万座

 昨日の天気予報によると東京では真夏日の連続記録が38日と更新されて、しかも今日も晴天でかなり気温が上がると予想されていた。東京の予想最高気温が35度は分かるとしても、涼しいはずの信州の県庁所在地である長野市も予想最高気温が35度で、これはこれは夏休みに入ってからの一番気温の高い日となるのではないかと思われた。こんな恐ろしい日に里山に降りて行く気にはなれない。また、8月7日に鹿沢高原へ行ってキベリタテハを一頭見たものの撮影できなかったので、今日は万座温泉から毛無峠の間の上信スカイラインを探し回ることにした。何しろ標高2000mの尾根沿いの道だから、涼しさは格別だろうし、かつて訪れた時にキベリタテハを複数観察していたのだ。嬬恋村からは“浅間白根火山ルート万座ハイウェー”と呼ばれる有料道路を使う。軽自動車だと言うのに片道1020円もとられるのだが、快適さはこのうえなく万座温泉にすぐに到達出来るからお勧めだ。万座温泉につくとぷーんと鼻をつく硫黄の臭いがして来た。この臭いはとても好きなのだが、長く吸っていると鼻の奥がおかしくなる。また、各所の岩の割れ目から白煙が昇っているが、有毒ガスである硫化水素に注意との建て看板通りに近づくと本当に危険である。かつて那須の茶臼岳で一命を落としかねなかった苦い経験があるからだ。
 有料道路の終点から左に曲がって万座プリンスホテルを過ぎると、上信スカイラインと呼ばれる通行無料の尾根道になる。逆に右に曲がって更に登れば草津白根山や志賀高原に行くことが出来るが、お盆休みに入ったので車が一杯の筈である。なにしろ標高2000mで渋滞が起こるのだからびっくりする。しかし、このあたり一帯は日本でも有数の雄大な景観が眺望出来て、一度は訪れることをお勧めしたい。志賀高原は長野オリンピックの会場となったし、観光開発に余念の無い西武王国の一つだから、花も虫も激減しているのはお隣の菅平高原と同様である。そんな中でも今日のフィールドとなった上信スカイライン沿いはこの辺りの穴場とも言える。また、この道を更に下ると上高井郡高山村に至って、長閑な山村風景が広がる道端自然観察には絶好のフィールドとなる。通常なら車も人もほとんど見られないというのに、今日はかなりの賑わいで、せっかく見つけたキベリタテハが道路上で美しい羽を開いているのだが、いざ撮影しようとすると車がやって来るといった按配で、今日も何回ものチャンスがあったと言うのに、車と上天気のために撮影することが出来なかった。キベリタテハも落ち着きを失ったのか、午後になると姿を消した。
 高原や山地での林道沿いの蝶の観察ポイントはヒヨドリバナやクガイソウ等が咲き乱れる場所は当然だが、他にも二つ程あって、一つは道路沿いにある砂利の空き地だ。こんな所にはシータテハ、クジャクチョウ、キベリタテハ、アカタテハ、ヒオドシチョウ、コムラサキ等がテリトリーを張っている。また、岩が剥き出しになった崖地もポイントで、岩から栄養分が滲み出て来るのだろうか各種のタテハチョウが吸汁している。特にエルタテハはそんな崖地が非常に好きだ。このエルタテハやシータテハは、後羽裏面の白い紋がアルファベットのLやCに見えるのでそう名付けられている。これは多分、ヨーロッパにも産するから英名の直訳かもしれないが、なんとなく情緒に欠ける種名である。私だったらエルタテハをクモマヒオドシ、シータテハをミヤマキタテハ等と命名したことだろう。昨日はキノコだったから、今日は蝶だと頑張ったのたがそうは上手くは行かなかったものの、蝶ではないが美しいヒトリガを撮影した。ヨモギの葉裏にいたのだが、てっきり休んでいるものと思って近づいて見ると産卵中であったのには驚いた。産卵場面を撮影し、草の茎でつついて飛び立たたせたら絶好の場所に着地し美しい後羽を見せてくれた。
昼食は私には場違いな万座プリンスホテルにて1400円のビーフカレーを食べて、また、上信スカイラインに戻ったが、2000mとは言っても午後の陽はきつい。ここでこんなに暑いのだから東京は炎熱地獄に違いない。こうなったら例え高原でも、暑さのために昆虫たちはみな姿を隠してしまった。もう今日はこれでお仕舞だなあと、ここの穴場中の穴場である毛無峠(写真上左)へ行った。山に樹木が一本も生えていないからそう呼ばれていて、かつて小串鉱山と言う硫黄採掘場があった所だ。まだ、かつての遺構が残っていて、また、採掘に於いて犠牲になった方々の60回忌の碑もあった。こんな高い所で危険をおかして、私たちの先輩たちが汗水流して働いていたのかと思うと両手を合わせたくなる。去年、奥只見へ行った時に素掘りのトンネルを通った時と同じ感慨である。多くの我々の先輩たちは実に偉大だったのである。毛無峠は樹木は無いが、正確にはコケモモ、ガンコウランと言う小さな樹木の原っぱで、久しぶりにガンコウランの実を口にほうばることが出来た。また、長野県と群馬県の境でもあって、所謂分水嶺だから、心地よい風が止むことなしに吹いている。車に戻って昼寝を決め込んだが、なんと1時間も眠ってしまったのには飽きれてしまった。

<今日観察出来たもの>花/ヤナギラン、クサレダマ、シシウド、ヤマハハコ、ハンゴウソウ、ヒヨドリバナ、ツリガネニンジン等。蝶/アサギマダラ、キベリタテハ、エルタテハ、シータテハ(写真下右)、クジャクチョウ、キチョウ、モンキチョウ、ヒメキマダラヒカゲ、オオチャバネセセリ等。昆虫/ヒトリガ(写真下左)、ミヤマハンミョウ、オオルレボシヤンマ等。その他/コケモモの実、ガンコウランの実(写真上右)等。


8月12日、群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢〜プリンスランド別荘地内

 夏休みも今日で6日目、いくら好きだとは言えそろそろ草臥れ果てて来た。もう自宅に帰りたいな、多摩丘陵や舞岡公園へ行きたいなとホームシックにかかって来た様である。それに冷蔵庫と電子レンジしか使わない食事メニューにも飽き飽きして来た。昨日、かなり早く新潟県荒井町高床山森林公園を後にしたつもりだったが、鳥居峠を越えたあたりから車のヘッドライトを点灯した。滞在している山の家のある別荘地内の道に入って、スピードを落として走っていると、道の両側にキノコの姿が白く浮かび上がる。4日前に探索したのだが、また新しいものが頭をもたげ始めた様である。そんなもろもろの事情から今日は遠くに行くのはよして、近場でキノコをメインとした道端自然観察をする事にした。まずは浅間山の全景をカメラの中に収めようと、独特な山容の鼻曲山への登山口でもあり倉渕村との境の二度上峠へ行った。しかし、天気は良いものの頂上付近は雲に被われていて写す気がしない。ご承知の通り浅間山は今もなお活動していて白い煙を吐いていることもあってか、全山すっきりと青空の中に浮かんだ姿はなかなか見ることが出来ない。それでも浅間山の広大な裾野が良く見え、眼下には浅間牧場の牛が横たわっているのさえ良く分かった。「丘を越え行こうよ、口笛吹きつつ、空は澄み青空、牧場を指して」と言う童謡を誰もが一度は口ずさんだ事があると思うが、その牧場は浅間牧場の事なのだ。有名な鬼押出し近くの浅間牧場駐車場の近くに、確かその歌碑が立っていたと思う。この峠を越えて九十九折の山道を下って行くと、わらび平森林公園に行けるのだが、行こうかなと思ったが、新潟の疲れも残っているし、しかも、とっても暑そうだから止めにした。
 そこで一服の涼を求めて浅間大滝(写真上左)に寄って見た。車を停めて歩き始めると一目でテングタケ科と分かるキノコが生えている。傘はキツネノカラカサの様で襞は黒く、立派なつばを持っている。こんな格調高い姿のキノコを見るのは久しぶりだ。三脚を立てて撮影していると、たくさんの観光客が後ろを通り過ぎて行く。今日から多くの方々が夏休みに入ったようで、車も人も東京並みの混雑状況となった。「カラカサタケに似てますね」と、熟年の男性が近づいて来て興味深そうにキノコを見つめて言う。「そうですね。でも少し背が低いし、傘の紋様も異なるし、襞が黒いんですよ」と言うと、頷いてカメラの中に収めている。「北軽井沢一帯はキノコが大発生してますから、興味がおありなら軽井沢高原教会のあたりが良いですよ」と勧めると、「後で行ってみます」との事だった。きっと、この男性はカラカサタケと言うキノコの名を知っている位だから、キノコや自然に興味があるのだろう。更に歩みを進めると、ざーざーと滝の音が聞こえてくる。未舗装の路上にはシータテハが吸水しているのだが、たくさんの観光客が行き来するので落ち着かない様である。浅間大滝はいつ見ても素晴らしい。この所の雷雨によって水量も豊富だから、その飛瀑も音も「おー滝」と嬉しくなる様な迫力である。もちろん涼しさも格別で、みんな立ち去りがたいようで邪魔になって、写真を撮るのに苦労してしまった。
 次は照月湖へ行った。以前来た時にキノコがたくさん生えてそうな雰囲気があったし、キノコ以外にも観察できるものがありそうに思えたからだ。しかし、照月湖は寂びれてしまってボート乗り場も食堂もおみやげ物屋も無くなり、変わって乗馬クラブが建っていた。それでもシータテハ、クジャクチョウ、スジボソヤマキチョウが飛んでいて、オニヤンマが行ったり来たりしていたが、食堂がなくなってしまっては北軽井沢の目抜き通りに戻るしかない。途中、明るいグリーンの苔が一面に生えていて小川が流れ、シラカバが点在する広大な庭をもった別荘の前を通りかかった。こんな所にキノコが生えていてくれたら素晴らしい写真が撮れるのになあと、車の窓越しに注意して見ると、なんとなんと小豆色した大きなイグチの仲間が、信じられない位に多数発生していた。まるで、プラムを一箱ばら撒いたような景観である。車を邪魔にならないように停めて、別荘の方がいらっしゃっていないので失礼させてもらって中に入ると、この他、様々なキノコが顔を出していた。多摩丘陵でも見られるテングタケダマシやニオイコベニタケ等も苔から顔を出していたので、立ち入り禁止の筈の他人の別荘の庭だと言うことも忘れて、ばんばんシャッターを切った。
 今日の最後にとプリンスランドに戻ると、目星をつけておいた軽井沢高原教会へ行った。瀟洒な建物が並び観光客も多く、また、ことによったら永遠の愛を誓う結婚式が行われているかもしれない。いつもの釣具の上州屋で買った長靴を履いて徘徊したら、それこそ怪しい者と管理事務所の方に呼び止められかねない。そこで長靴は諦めて、久しぶりにスニーカーに履き替えた。先日、舞岡公園で余りにも暑いのでスニーカーに履き替えたら、ご婦人たちが目を丸くして驚いていたが、当の本人もスニーカーだと気持ちがきりりと締まらないのだ。また、ブリンスランド施設内で働く独身寮の周辺にも様々な見応え写し応えのあるキノコが一杯で、女子の部屋を覗き回るかのような観察もやってのけてしまった。今日は他人の別荘の敷地内に無断で入ったり、神聖な教会周辺をうろついたり、はたまた女子が多い独身寮にお邪魔するやらで、皆さんには決してお勧めできない法律違反、マナー違反の一日となってしまった。しかし、様々なキノコを観察して、ここに半年間滞在してキノコの観察及び撮影をしたら、それこそとんでもない種数と美しい写真が得られるだろうと思った。もう一度、ベニテングタケの頃に来て見たくなったことは言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/フシグロセンノウ、ツリフネソウ、キツリフネ、ゲンノショウコ、シシウド、ヤマウド、コバギボウシ等。蝶/クジャクチョウ、シータテハ、スジボソヤマキチョウ、サトキマダラヒカゲ等。昆虫/オニヤンマ、ノシメトンボ等。キノコ/ヒイロウラベニイロガワリ(写真上右)、テングタケ、アカヤマドリの幼菌(写真下左)、ツルタケ、カバイロツルタケ、ドクツルタケ、ハリガネオチバタケ、キイボカサタケ、ニオイコベニタケ、ドクベニタケ、ヌメリコウジタケ、カワリハツ、その他不明種が一杯。


8月11日、新潟県新井市高床山森林公園

 今年の夏休みのハイライトと決めていたのが、新潟県新井市にある高床山森林公園である。今年は午後から夕立があるとは言え、まずまずの天候だが、去年は雨の日が多くて夜になると防寒服を着て寒さに耐えていた。そこで雨が降らないと予想される場所を選んで、あっちこっちへ行ったのだが、その一つが高床山森林公園であった。いくら愛車小野路号はスーパーチャージャーがついているとは言っても、所詮、軽自動車の1ボックスカーだから、嬬恋村から日帰りで新潟県新井市まで行くのはかなり辛い。そこで新井市にあるビジネスホテルに一泊宿をとったのである。5月のゴールデンウィーク以来の新潟県である。昨日、野尻湖を過ぎて妙高高原に至ると、周りの景色が次第に新潟となって行くので嬉しくなった。いつ来ても新潟県は杉木立が美しい。真っ直ぐ伸びるから杉で、やや濃いグリーンは青空を、もくもくとした白い夏雲を、淡いグリーンの田んぼをきりりと引き締める。中郷村から新井市に入るとますます杉木立が多くなって、新潟県へやって来たとの実感に捉われた。
 朝起きてみると青空一杯の上天気だ。妙高高原の山々がどす黒く青空に突き刺さっている。写真撮影には歓迎とは言い難い天気だが、高床山を目指して出発した。高床山はわずか300mを少し超えた位の低い山だが、頸城平野からはかなり標高が高く見え、かつて鳥坂城と言うお城があったのが頷ける堂々とした山である。県道から林道に入ると両側とも道端自然観察には格好の場所が続くのだが、ここに見られる夏の野の花や昆虫たちは、ほとんど多摩丘陵と変わらない。しかし、注意して見るとイカリソウ、ショウジョウバカマ、コシノカンアオイ等が見られるから、春にはきっと素晴らしい野の花溢れる林道となるに違いない。今日の目的は高床山森林公園内のキャンプ場に生えるアイタケと言う緑色のキノコと、ジュンサイ池周辺に見られるキイトトンボとセスジイトトンボだ。去年着ているからポイントも熟知していて、駐車場に車を停めると期待に胸膨らませて登って行った。
 しかし、去年、キャンプ場の至る所に見られたアイタケが生えていない。生えているのはナラタケモドキやアイタケと同じベニタケ科の数種類で数も極端に少ない。これは困ったと胸は急速にしぼみ始めたが、なんとか一本だけ見つける事が出来てほっとした。しかし、良く見ると傘が完全に開いていて虫の食べた跡が残っている。他にはないのかと今度は落ち着いて探し回ったはずだが、やはり生えていない。仕方無しに虫が少々食べた跡が残っていても色も形もまあまあなので、三脚を立てて構図を決め、目障りな線ボケとなる白っぽい枯れ枝等をどけて、さあ撮影と正確にピントを合わせていると、なんと小さな蟻が傘の上を歩いている。良く見ると白いアイタケの肉の欠片を咥えているではないか。どうやら小さな蟻が食べ跡の犯人だったようである。キノコを食べる昆虫と言ったら、キノコヒゲナガゾウムシ、ヒメオビオオキノコムシ、オオモンキゴミムシダマシ等が思い浮かぶが、これらはみんなサルノコシカケ科のキノコにつく。キノコらしい柄に傘のついたキノコを食べる昆虫は夜行性なのか、柄の根元に潜り込むセンチコガネ以外あまり見た事が無い。キノコを撮影していて蟻に良く遭遇したが、まさか蟻がキノコを食べるとは思わなかったのである。
 とり合えず今日の目的の一つは撮影出来たので、今度はジュンサイ池で各種のイトトンボを撮影することにした。最初に目にしたのは腹部が黄色いからすぐ目につくキイトトンボだ。キイトトンボは浅い池を好むと言われるから、ジュンサイが繁茂するこの池はぴったりと言う事になる。私がキイトトンボに初めて出会ったのは、なんと東京都文京区の小石川植物園で、かつては小野路町、鴨池公園、舞岡公園、寺家ふるさと村にも生息していたようだが、自宅周辺でキイトトンボを観察したことが無い。そんな事もあって、この美しいキイトトンボがたくさん見られる高床山森林公園が気に入ってしまったのである。アイタケは前述したような結果であったが、キイトトンボは去年と変わらぬ個体数で、その他、セスジイトトンボも数多く見られた。多分、他の種類のイトトンボも生息している筈だが、残念ながらジュンサイ池の水辺は立ち入り禁止なので、この2種以外は観察出来なかった。
 午後からは目的のものを撮影してしまった気安さから、ことによったら樹液に憧れのヒラタクワガタがいるかもしれないと、ブナの巨木を見に行く道すがら目を光らせたのだが、コナラの樹液にルリタテハとサトキマダラヒカゲを見ただけに終わった。どういう訳かは分からないが、この高床山周辺にはクヌギが一本も見られないのだ。やはり雪国新潟はブナ帯と言う事なのだろうか。管理事務所のご婦人が、「2本あるブナの巨木は夫婦ブナと呼ばれていて、戦時中、余りにも太いので材木がとれないからと切られなかったのよ」と言っていたが、その雄大さは実に素晴らしい。初めはたった一つのブナの実から芽生えた双葉だったのかと思うと、あらゆる艱難辛苦を乗り越えて今もなお勢力旺盛に自己主張する姿を前に、凡人たる私には何一つ言葉が出ない。巨木は凄まじいエネルギーと歴史の塊である。今日はいつもの道端自然観察終了時間までたっぷりと時間は残ったが、下界はとても暑そうだし、嬬恋村まで時間がかかるので、一眠りして疲れをとって高床山を下って行った。


<今日観察出来たもの>花/クズ、ゲンノショウコ、シシウド、コバギボウシ等。蝶/アカタテハ、ルリタテハ、サトキマダラヒカゲ、キチョウ、ルリシジミ等。昆虫/オニヤンマ、ギンヤンマ、シオカラトンボ、ノシメトンボ、キイトトンボ(写真下左)、セスジイトトンボ(写真下右)、タマムシ、カシワマイマイ、ヨツボシホソバ等。キノコ/アイタケ(写真上右)、カワリハツ、ナラタケモドキ、ツルタケ等。その他/ジュンサイ(写真上左)等。

8月10日、長野県更級郡大岡村聖高原

 “聖”と言う名がつくので一度は行ってみたいと思っていた聖高原へ行った。また、かなり古い蝶の採集案内にゴマシジミが見られると書いてあったので、もしかしたらお目にかかれるかも知れないとも思ったのである。滞在先から鳥居峠を越えて上田から上信越道に乗ったのだが、やはりかなり時間がかかった。途中、千曲川を越えたがその名の通り曲がりくねっていて水量がとても多い。少し上流は小諸だから、明治の文豪島崎藤村の「小諸なる古城のほとり雲白く遊子悲しむ」と言う千曲川旅情の一節を思い出した。これから向かう聖高原は霧に包まれているようだから「聖らかなる高原の小道、霧白く遊子楽しむ」とばかりに花のしっとりとした写真が撮れるぞと心が弾んだ。正確には聖湖がある麻績村の方を聖高原と呼び、峠を越えて大岡村の方を聖山高原と呼ぶらしいが、好観察地を求めて登って行ったら聖高原ではなく三和峠を越えた聖山高原に行き着いた。また、霧が発生していると思ったのだが、時折、陽が差す程度の曇り日で快適な散策日和となった。しかし、標高が1200mとさほど高くないから思ったよりは暑い。それに期待した花もツリフネソウ、キツリフネ、ヒメシャジンが咲いている位でこれといったものがなく、なんだか今日はだめそうだなと言う嫌な予感がした。
 初めに車を停めたのは切り出した丸太が積んである場所で、ハンノアオカミキリやヤツメカミキリ等の美麗種がいないかなと思ったのだ。しかし、いたのはゴマフカミキリばかりで、丸太の住人たるキマワリととも元気に這いずり回っていた。これでは仕方が無いなと車に引き返そうとすると、アオイトトンボが数匹飛んでいるのが目に入った。近くに池がある訳では無いのにとても不思議だ。また、道路に沿ってオニヤンマが行ったり来たりしている。高原でオニヤンマとも思ったが、今年はまだ撮影していないので、何処かに止まってくれないかとしばしの観察となった。オニヤンマの飛翔術は実に巧みで、素早く飛ぶのはご存知の通りだが、上へ下へ、停止したり向きを変えたりと変幻自在に飛び回って獲物を捕らえる。いつまでたってもオニヤンマは止まること無しに狩に熱中している。結局、オニヤンマを撮影することは出来なかったが、じっくりと狩の現場を観察して、改めてオニヤンマの偉大さに感じ入った。たかだかオニヤンマも虫けらの一つだが、あんなに自由自在に飛べたらどんなに楽しいことかと思ったのである。
 車を更に先に進めると片側にヤナギがたくさん現れた。ことによったらヒメオオクワガタやアカアシクワガタがいるのではと車の速度を落として進んで行くと、ヤナギの小枝に黒い物体を発見した。遠目でもクワガタムシのペアであることが分かる。これはラッキーとばかりに、道の傍らに車を停めて近づいてみるとかなり大きい。憧れのヒメオオクワガタかと胸が高鳴ったが、足の裏側が赤いのでアカアシクワガタである事が判明した。平地のクワガタ類と異なって、ヒメオオクワガタやアカアシクワガタは樹木の幹から出る樹液を吸いに来るのではなくて、ヤナギの小枝を傷つけて、そこからしみ出る樹液を吸って生活しているのである。だからこの二種類はヤナギの小枝がキーワードとなると言う訳である。かつてクワガタムシが大好きで、大菩薩峠に良く行く方と出会ったが、今日見つけたアカアシクワガタは山地に行けば普通種で、「なんだアカアシカか」と言うことになるらしい。しかし、角の先端が三つに分かれてとても凛々しいクワガタムシだ。信じられないかも知れないが、私の子供の頃には多摩丘陵にも生息していたのである。
 なんだか今日はだめそうだなと言う嫌な予感は、アカアシクワガタで一挙に霧散し、聖山パノラマホテルにてカツカレーを食べ、ホテル脇に一面に植栽されているアカソバを撮影した。ホテルのご婦人によると、アカソバはヒマラヤのもので、冷涼地を好むソバだと言う。そこで「それではこのホテルのお蕎麦はアカソバ?」と尋ねると、「収量が少ないから観賞用に植えているんです」との事であった。アカソバを撮影していると、遠くにマヒワがやって来てその花を啄ばんでいる。ソバも小鳥達の被害を受けるようだ。ホテルからすぐの所に白樺池があると言うので行って見ると、マユタテアカネがたくさんいて、ここにいるアカネ類はすべてがマユタテアカネのような賑わいであった。湖畔にある白樺の小枝ではコエゾゼミが鳴き、湖面を観察するとウチワヤンマが進入したオニヤンマやシオカラトンボを追い掛け回している。ウチワヤンマを撮りたいなと思ったら、岸からすぐ近くの湖面から突き出ている小枝の先に止まった。これはしめたとばかりに慎重に近づいて撮影する事が出来た。トンボの中でも荒くれ者のウチワヤンマは、私が近づこうが我関せずと言った堂々たる貫禄の持ち主なのである。今日はさほどの成果があった訳では無いが、アカアシクワガタとウチワヤンマを撮って、新潟に向かって聖高原を後にした。

<今日観察出来たもの>花/ヤナギラン、オオバウバユリ、ツリフネソウ(写真上右)、キツリフネ、ゲンノショウコ、シシウド、コバギボウシ(写真上左)、ヒヨドリバナ、サワギキョウ、ヒメシャジン、ツリガネニンジン等。蝶/キアゲハ、アサギマダラ、テングチョウ、サカハチチョウ、アカタテハ、ヒメアカタテハ、メスグロヒョウモン、ヒメキマダラヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ等。昆虫/アカアシクワガタ(写真下左)、オニヤンマ、ウチワヤンマ(写真下右)、シオカラトンボ、マユタテアカネ、ノシメトンボ、アオイトトンボ等。その他/ドクツルタケ、アカソバ、マヒワ等。


8月9日、長野県小県郡真田町古城緑地広場〜御屋敷公園

 昨晩、知人から携帯電話にメールが届いた。多摩丘陵は物凄く暑くて、私の知り合いが寺家ふるさと村で熱中症に罹ってしまったと言うものだった。生憎同行者がいたために大事には至らなかったようだが、首都圏平地の極暑が思いやられる。そんなメールが届くと涼しい高原で過ごすのが一番と思うはずだが、今日は群馬県と長野県の県境となる鳥居峠を越えて真田町に行った。私が大変お世話になっている写真店の奥様が、「吉田さんは里山が大好きなんだものね」等と笑いながら良く言われるが、涼しい高原に滞在していながら信州の里山へ降りて行くのだから、まさにその通りと言う事になるようだ。私と同年代の方なら、「流れる雲よ城山に、登れば見える君の家、灯かりが窓に点るまで、見つめていたっけ会いたくて」と言う出だしの“青春の城下町”と言う歌をご存知だと思う。かつて城下町だった地方の中小都市の小高い丘、そんな所が大好きで、真田町に行くとまず第一番に訪れるのが、信綱寺のある古城緑地広場(写真上右)だ。特に黒門と呼ばれる山門に登ると前述した歌を歌いたくなるのである。眼下にはもちろん恋する人の家がある訳ではなく、田んぼと町並みと山々が見えるだけである。そして蝉時雨の中、清々しい信州の風が心地よく頬を撫ぜて行くと言う訳なのだ。
 真田町について古城緑地広場で頂いたパンフレットから以下に転記すると、「大勢の群雄が割拠した戦国の時代にあって覇者、徳川家康に一度ならず二度までも苦杯をあびせた真田一族の活躍はあまりにも有名です。その真田氏の発祥の地が、ここ真田町です」と言うことで、町中、真田氏の家紋である六文銭が一杯である。また、「町内には戦国の世の真田氏にまつわる史跡が多数存在し、真田氏のふるさととして親しまれています」と言う事になる。古城緑地広場にある信綱寺もその一つで、真田信綱と昌輝の墓がある。大阪夏の陣で家康を苦しめた後に討ち死にした有名な真田幸村(信繁)の叔父さん達である。そんな由緒ある信綱寺の境内をぐるりと囲んで山があり、特に山門から続く南に面した所は小高い丘になっていて、クヌギやコナラを主体とした雑木林になっているから、信州の里山道端自然観察には最適なのだ。駐車場からこの山門に登って行く前に、道の片側に延々とムクゲ植えられているのでいつも必ず撮影する。ムクゲもヒマワリと並んで忘れられない夏の花で、特に、ここに植えられているものは、私が一番好きな花芯が赤く周りがピンクのものである。古城緑地広場を管理するご婦人たちが手入れを欠かさないのでとても美しい。
 山門へ通ずる道を登って行くと、まず最初にゴマダラカミキリを見つけた。これも懐かしい子供の頃の遊び相手だ。前にも書いたと思うがイチヂクやクワにたくさん見られたのだが、観察する機会が少なくなって久しい。山や雑木林に行っては見られないから、正真正銘の田畑と農家が点在する里の昆虫である。山門脇の雑木林ではムモンアカシジミが見られるのだが、今日は残念なことにお出ましにならない。多摩丘陵で見られるアカシジミやウラナミアカシジミの親戚だが、その発生はだいぶ遅く、ゼフィルスの中では珍しい存在だ。木陰になった下草の上には、ヒメアカネ、コノシメトンボ、ノシメトンボ等がテリトリーを張っていて、詳しく調べればこれ等に加えて、マユタテアカネ、ナツアカネ、アキアカネ等見られるだろうから、赤とんぼ(アカネ類)の宝庫とも言えそうだ。いつになったら山門からすぐ下の田んぼに降りて行くのだろう。丘の上の小道に足を進めると毎年樹液が滴るクヌギが見られるのだが、今年は枯れ果てているようだ。ふとカラマツの幹に目をやるとヤママユの繭がぶら下がっている。多摩丘陵でもそうだが羽化する前に、他の野生動物によって繭のついた小枝が切り落とされるらしい。いったいどんな動物のなせる業なのだろう。散策路にはスカシダワラと呼ばれるクスサンの繭も落ちていたから、古城緑地広場周辺はヤママユの仲間の宝庫でもあるようだ。
 これと言った昆虫にも会えずに丘を下って沢沿いの道を信綱寺に向かって歩いて行くと、いつものようにオニヤンマが忙しそうに行ったり来たりしている。様々な樹種が植栽されている場所に来ると、飛び古したオオムラサキが梢から舞い上がった。ここにはオニグルミが植えられていて樹液が滲み出ているのである。昆虫たちが集まる樹液と言ったらクヌギやコナラと相場が決まっているのだが、シラカシ等のカシ類は元より、ヤナギやオニグルミやケンポナシ等の樹液にも昆虫たちがやって来る。このHPの掲示板に度々ご投稿下さる森のきのこさんこと多摩市のKさんのメインフィールドである多摩川では、オニグルミの樹液が昆虫たちの大切な食堂兼一杯飲み屋のようである。今日は見られなかったが、かつてはミヤマクワガタもこのオニグルミで観察している。更に下って管理事務所まで来ると、地面に吸水しているスジグロシロチョウやクロアゲハが見られた。いつもなら更に付近の山裾を歩いてキリギリス等の昆虫やアスター、ベニバナ等の花を撮影したりするのだが、真田へ来たら駅前食堂でと昼食を済ませ、御屋敷公園へ回ってしばしの観察をしていたら、毎日お馴染みになった雷鳴が轟いて、心残りの夏休み3日目となった。しかし、帰路に墓地に咲くナツズイセンを撮影して溜飲を下ろした。

<今日観察出来たもの>花/ムクゲ(写真上左)、ナツズイセン(写真下右)、ガガイモ、ゲンノショウコ、コマツナギ、ヘクソカズラ、クズ、コバギボウシ等。蝶/クロアゲハ、スジグロシロチョウ、オオムラサキ、イチモンジチョウ、ミスジチョウ、コミスジ、ルリタテハ、キタテハ、ジャノメチョウ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、ダイミョウセセリ等。昆虫/トホシカメムシ(写真下左)、ゴマダラカミキリ、アオカナブン、オニヤンマ、ギンヤンマ、シオカラトンボ、ヒメアカネ、コノシメトンボ、ノシメトンボ等。その他/リンゴ、ヨウナシ等。


8月8日、群馬県吾妻郡嬬恋村バラギ湖〜プリンスランド別荘地内

 今日も午後から雷雨が見込まれている。また、お隣の長野県は午後から雨で、この変わりやすい不安定な天候は、上空に寒気が居座っている事によるものだと言う。そこで昨日より早く起きて午前中勝負とばかりにバラギ湖へ行った。もちろんバラギ湖(写真上右)は人造湖であるが、かなり広い湖面が広がっている。私が始めて訪れた時に比べて開発がかなり進んで、道端自然観察には好適地とは言い難くなったものの、それでもじっくり歩いて探し求めるのなら、それなりの期待に応えてくれる所である。そんな環境変化があってもバラギ湖をどうしても外せないのは、朱色のフシグロセンノウがたくさん咲いているからである。かつて若かりし頃、高校時代の気が合う連中で「自然に親しむ会」等というものをつくって山登りに行ったものだが、大菩薩峠へ行った時に登山口の裂石からの道の各所にフシグロセンノウが咲いていて、その山野草離れした美しさに魅了されてしまった。また、このフシグロセンノウの花言葉は「青春の血潮」で、初めて出会い魅了された頃がまさに青春の血潮たぎる頃だったから、余計に忘れられない花となったのかもしれない。今は熟年となり「熟年の血潮」とばかりに、舞岡公園や多摩丘陵でお仲間と自然散策をする時もあるが、残念ながら熟年の血潮は、フシグロセンノウのような燃え立つような朱色では無く、リンドウのような渋い赤紫色のようである。
 滞在している所からバラギ湖までの道は、嬬恋名産のキャベツは勿論だがトウモロコシ等が栽培されていて、今なお噴煙を上げる浅間山を背景に取り入れて超広角レンズで写すと、とっても迫力ある写真を手にすることが出来る。また、地方へ行けば何処でもそうだが、各所に園芸品種の花が植えられていて、これまた高原の澄んだ大気の元に咲く姿はとても美しいのである。毎年この道で、夏の象徴とも言えるヒマワリを青空に抜いて撮影している。以前にも書いたと思うが、一般の方々が感ずる季節感を満足させるには園芸品種や農作物の花が第一で、野鳥や昆虫やキノコでは、それぞれの季節を感じて貰えるように撮影する事ははなはだ難しい。例えばキノコなら、厳冬期を除いて四季折々に生えるのだが、やはりキノコは秋との先入観が一般の方にはあるだろうし、キノコ程ではないが、昆虫もやはり夏と言う先入観があるはずである。しかし、園芸品種や農作物の花、良く知られた野の花は、誰もがやって来た季節を直感的に感じて貰えるのである。そんな訳でミーハーを自認する私は、誰もが夏の花と認めるヒマワリを美しく撮りたくなるのである。まさかヒマワリを春や秋や冬の花と言うひねくれた方は絶対にあるまい。最近、ピンクや赤褐色の花弁のヒマワリも作出されているが、もちろん黄色い花弁で真ん中が褐色の大輪こそ私のイメージするヒマワリである。
 上記のように今日の第一の目的はフシグロセンノウだと言うのに、ヒマワリやもくもくと成長する純白の夏雲、トウモロコシ畑等を撮影しながら、毎度お馴染みのつれづれなる気ままに目的地を目指した。バラギ湖に着くと車を涼しい木陰に停めて湖を一周する散策路に足を踏み入れた。何べんとも無くやって来ているから、すぐに目的のフシグロセンノウがたくさん咲いている場所に辿り着いた。たくさん咲いていても、花びらの一片が落ちていたり萎れていたり虫に喰われて穴が開いていたりと、写欲を誘うものはそれ程多くない。また、より美しい背景も大切だし、何より風があるとお手上げとなる。そんな様々な条件をクリアーして、日陰に咲いているものを見つけた時には嬉しくなった。HP用にデジタル一眼レフで、作品としてフイルム一眼レフでと大忙しで撮影した。早くも目的を果たしてしまったから余裕綽々と湖畔を一周した。花ではツリフネソウ、キツリフネ、ハンゴウソウ、コオニユリ、チダケサシ、クサレダマ、シシウド、コバギボウシが、また、湖面にはスイレンも咲いていた。蝶ではカラスアゲハ、キアゲハ、エルタテハ、ミスジチョウ、オオウラギンスジヒョウモンが見られたが、天気が良いために落ち着いてはくれずに撮影を断念する。バラギ湖で一番注目していたキマダラモドキを探したが出会えず、いよいよ観光開発が進んで見られなくなったようである。
 今日は午後から滞在しているプリンスランド別荘地に戻って、キノコの撮影をする事にした。いつ雷雨が襲って来るかもしれないし、やって来たらいつでも逃げ込めるから安心である。それに我が目を疑うかのように各種のキノコが別荘地内に生えているのだ。私が泊まっている親戚の山の家の周りにも、車を運転していても赤や白や黄色のキノコが目に入って来るのだ。多摩丘陵ではすっかり頭を隠してしまったのに、冷涼多雨の気候に我先にと頭を出しているのだ。多分、峰の茶屋を越した軽井沢は浅間山の南の裾野に当たるから乾燥していてそれ程ではなかろうが、嬬恋村のプリンスランド周辺は北の裾野に当たるので、こんなにたくさん発生しているのだろう。キノコはもちろん野の花でも里山以外のものはそれ程興味は無いのだが、どんなものが生えているのだろうかと興味が湧いたのだ。図鑑で念入りに調べなければ分からぬものの、私が名を知っているものだけでも、ヤブレベニタケ、ドクツルタケ、カバイロツルタケ、ニオイコベニタケ、ドクベニタケ、ミドリニガイグチ、ドクヤマドリ、オキナクサハツ等、何と20種類のキノコを撮影してしまった。もっとも絵になるものだけを撮影したのだから、種類数としては30種類位はあったのだろう。また、どう見ても多摩丘陵に於ける梅雨時のものがほとんどだったから、秋に来ればなお様々なキノコが観察出来そうである。午後からたった500m程の別荘地内道端キノコ観察でこんなに見られたのだから、林の中に入ればもの凄い種類数になるかもしれない。夏休みに嬬恋村に来てまでキノコとは思ったものの、たくさんのキノコに久しぶりに会えて、とっても楽しい道端自然観察の一日となった。

<今日観察出来たもの>花/フシグロセンノウ(写真下左)、ツリフネソウ、キツリフネ、ヤナギラン、クガイソウ、チダケサシ、クサレダマ、ハクサンフウロウ、コオニユリ、コバギボウシ、ヤマハハコ、シシウド、オトギリソウ、ヒマワリ(写真上左)等。蝶/カラスアゲハ、キアゲハ、エルタテハ、ミスジチョウ、ミドリヒョウモン、キチョウ、ヒメキマダラヒカゲ等。キノコ/ドクツルタケ、カバイロツルタケ、ヤブレベニタケ(写真下右)、ニオイコベニタケ、ドクベニタケ、ミドニガイグチ、ドクヤマドリ、オキナクサハツ等。


8月7日、群馬県吾妻郡嬬恋村鹿沢高原

 もう何年続いているのかは定かではないが、おそらく10年以上は続いてるはずの群馬県吾妻郡嬬恋村における夏休みが始まった。いつも仕事の関係上、旧盆前後に訪れるため、観察出来るものは毎年同じようなものだけど、涼しいと言うだけでもとっても有難い。昨日、仕事を済ませて午後3時半に自宅を出たものの、関越自動車道の練馬インターまで2時間以上もかかってしまった。本当に環状8号線は恐ろしく渋滞する道路である。日頃、自然大好き人間を標榜しているために、高尾山を貫く外環自動車道の建設には眉をひそめるなければならないのだろうが、なんとか早く出来てくれなければ困るなぁ等と思うのだから、まことご都合主義の軟弱な人間である。そんな訳で親戚の山の家に着いたのは夜の10時を回っていた。途中で食事をしたこともあるが、関越道に乗って群馬県に入ってから雷鳴が轟くシャワーのような雨が降って来て、そのままずっと雨模様だったので、スピードを控えめにゆっくりと走って来たのだ。軽井沢インターを降りて国道18号線に入ったあたりで、電光掲示板に「只今の気温22度」と表示されていたのだからやはり涼しいのである。山の家についても小雨が降っているので、急いで自宅から運んできた夜具を運んだ。寝る場所こそ変わったものの、毎夜大変お世話になっている敷布団、掛け布団、枕持参は、安眠はもちろんのこと、その結果の毎日健康による充実したこれから続く道端自然観察及び写真撮影にはなくてはならぬ重要なアイテムなのである。
 今日は車で広大なキャベツ畑を30分程走った所にある鹿沢高原へ行った。ほんの少し上った所が湯の丸高原で、湯の丸山にはミヤマモンキチョウも見られると言う。鹿沢高原もキベリタテハやエルタテハ等の高原の蝶はもちろんのこと、高山蝶として有名なベニヒカゲも道端にたくさん現れるのである。夏の高原や山地の蝶の見頃は2回あって、一つは梅雨明けの7月中旬で、もう一つは8月の中旬と言う事になるのだが、少し時期が早いが今日は後者に該当する訳である。もちろん山の花もこれに同じとなる。去年の観察記でも書いていると思うが、この林道は全面舗装の快適な道で、しかも知る人以外にはやって来ないと言う道端自然観察には絶好の場所なのである。しかし、今日は土曜日であることもあってか、大きな捕虫網を持った採集家が複数見られた。ずっと以前、私も昆虫採集をしていたから大きな声では言えないが、心の中では「捕られたら写真が撮れなくなるから困ったな」と思ったのは言うまでもない。特にキベリタテハは個体数が少ないから採集されてしまったら撮影チャンスがぐんと減ると言う訳なのだ。キベリタテハはビロードの様な質感のチョコレート色の羽を持ち、黄色い縁取りがなされているのでそう名づけられた蝶である。幼虫の食樹はダケカンバやシラカバだから、かなりの標高が無いと見られない訳で、また近年個体数が激減している美蝶でもある。
 そのキベリタテハが一頭道路に現れて日光浴をしているのを見つけた。去年見られなかったから久しぶりのご対面だ。それに羽化したばかりのとても新鮮で美麗な状態だから嬉しくなった。しかし、すぐ近くに大きな網を持った採集家がいる。まだキベリタテハには気づいていないようだ。「キベリ君、なんとか撮影させてね。あっちの方へ行くと大きな網で捕られてしまうから行ってはだめよ」等と心の中で念じながら近かづいたのだが、採集家に気づかれる前に撮らなければという心の焦りがキベリタテハに伝わったのか、じっとしていてはくれずに飛び立ってしまった。それでも執拗に追いかけたのだが、シラカバ林の梢の手の届かぬ場所に飛んで行ってしまった。「まあいいや、たくさん撮っているし、これで採集家に捕まることもなかろう」等と微笑んだ。なにしろこのフィールドには何回とも来ているし、キベリタテハはもちろんの事、各種の蝶を撮影しているのだから余裕があると言う訳なのだ。しかし、蝶の撮影を始めたばかりの方でキベリタテハを撮っていない方だったら、きっと地団駄踏んで悔しがった事だろう。なにしろキベリタテハは高原の綺麗どころのタテハチョウの中ではピカ一なのだから。
 今日はそれ程遅く出て来た訳でも無いのに、夏休みの初日の嬉しさのためか、あっと言う間に食事の時間となってしまった。初日に鹿沢高原を選んだ理由は前述したが、実はもう一つ理由があるのだ。去年の観察記を覚えている方がいたらすぐ思い出す事だろうが、民宿兼食堂「わたらせ」の山菜てんぷら定食を食べたかったのである。ここへ来たらこれを食べないと来た気がしないと言う変な習性は私だけのものではないと思うが、銀座へ行くとキッチンあづまの豚じゅうじゅう、神田へ行くと大越のあら煮定食を食べたくなると言った具合なのである。去年、この民宿兼食堂「わたらせ」の山菜てんぷら定食を味わいたくてやって来た、蝶の写真撮影にはまっている多摩プラのKさんが、寄ったら閉まっていたと言うので心配していたのだが、ご夫婦およびわんちゃんも元気であった。山菜てんぷらの中でも特にヤマブドウが最高で、甘酸っぱい味が口中に広がって何とも言えない。この定食を食べてもう一働きとばかりに、キベリタテハのいた場所に戻ったが、空は曇り霧が出て、しばらくすると雷鳴が轟いて雨が降って来た。しばらく車中で雨が止むのを待ったが、どうも完全には雨が上がりそうも無い。初日から頑張って疲れ果てても仕方が無いと、やや不満足の早上がりとなった。

<今日観察出来たもの>花/ヤナギラン、クガイソウ、チダケサシ、クサレダマ(写真上右)、ハクサンフウロウ、マルバダケブキ、コオニユリ、ヤマオダマキ、オオバギボウシ、ヤマハハコ、シシウド、オトギリソウ等。蝶/キベリタテハ、エルタテハ、クジャクチョウ、ウラギンヒョウモン、モンキチョウ、アサギマダラ、ヒメキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、ベニヒカゲ(写真下左)、オオチャバネセセリ等。昆虫/ミヤマハンミョウ、ノシメトンボ等。その他/コケモモの実(写真下右)、各種キノコ、高原に颯爽と姿を現した愛車小野路号(写真上左)等。


8月5日、横浜市戸塚区舞岡公園

 前回、舞岡公園に行ったのは7月14日だから、なんと20日以上もの間隔が空いてしまった事になる。こんな事は珍しいことなのだが、それだけ今年の7月の猛暑は厳しく、日陰の少ない舞岡公園を敬遠していたことになる。今日は風がかなり強いものの一日中曇り日だったために、写真撮影には梃子摺ったものの、快適な散策日和となった。まず最初に、去年至る所に見られたキバラヘリカメムシが発生しているだろうかと注意したのだが、瓜久保の河童池奥や狐久保入り口にあるニシキギでは、一匹だに見ることが出来なかった。去年の大発生の影も形も見られないのだから唖然とした。かつて学生時代に昆虫個体群生態学というものを勉強したが、個体群とはある一まとまりの場所に生息する一種類の個体の集まりを指し、舞岡公園のキバラヘリカメムシの個体群とは、舞岡公園に生息するキバラヘリカメムシのすべてと言う事になる。動植物に於ける種と言う概念は漠然として掴みづらく、個体群と言う単位で、その生態の様々な姿を把握して行くのが個体群生態学である。
 その中でも個体数変動の謎を解明して行くことが重要なものとなっていて、特に昆虫は大発生すると農作物に多大な被害をもたらすから、個体数変動の謎を解明して、昆虫が害虫とは呼ばれないレベルでの発生数を続けてもらうことが農業上とても大切な事となる。この個体数変動をもたらす要因は複雑で、気象条件と天敵の過多が2大要因であるとすぐに想像がつくと思うが、すなわち去年のキバラヘリカメムシの大発生は、キバラヘリカメムシにとっての気象条件がとても良く、おまけに天敵も少なかったから大発生に至った訳である。しかし、大発生することによって天敵が増え、病気等も発生して、今年は極端にその数が減じてしまったと言うことになるようだ。いずれにしても、キバラヘリカメムシが一番多く見られるのは秋だから、このまま舞岡公園のニシキギやマユミで発生が見られないなんて言う異常事態は無いものと考えている。
 なんだかとんでも無く堅苦しい話となってしまったが、一般の方々が見向きもしない虫けら1種類でも、個体数変動の謎を追って行くと、複雑に絡み合った生態系全体を垣間見る事が出来る。去年のNHK大河ドラマ「宮本武蔵」で、お通さんが「人は一人では生きられない」と良く言っていたが、昆虫もまた複雑に絡み合った生態系の中でしか生きられないのである。かつては日本列島と言う狭い島国の中に暮らす日本人という個体群を、いかに安定し維持して行けば良いかを考えていれば良かったのだが、現代は地球丸と言うより複雑に絡み合った巨大な経済をも含めた生態系を視野に入れないと、日本人という個体群の維持安定が図れなくなった。そんなとっても魅力溢れる生態学と言う学問を放棄して久しいが、とっても素晴らしい学問と記憶しているので、お暇な時にその分野の本を紐解いてみることをお勧めしたい。
 今日の舞岡公園で観察したものの中で、特筆すべきものは花ではキツネノカミソリであろう。別段、珍奇種でもなく何処でも見られる野の花だが、日陰に咲いている事が多く、シャッター速度が極端に遅くなって撮影が難しい花である。たまたま最近、舞岡公園の主的存在になりつつある鎌倉のNさんが来てくれたので、とっても美しく咲いている場所に案内してもらって撮影することが出来た。写真を見れば分かるように、ヒガンバナと同じ仲間だが、ヒガンバナとは逆に春に伸びた葉が花の咲く頃までには枯れてしまうのだとある。それではやはり同じ仲間のナツズイセンはどうかと調べてみると、キツネノカミソリと同じとあるから、ことによったら花が終わってから葉が出るヒガンバナの方が変わり者なのかも知れない。いずれにしても純白のヤマユリが咲き終わると咲き始める朱色のキツネノカミソリは、真夏の里山を代表する忘れられない野の花と言えよう。
 次に、今日もちらりとお見えになってくれた同好のご婦人が、掲示板に「舞岡の鳥」と名づけて送って来てくれたミゾカクシを探しに行った。何故そのご婦人がそう名を付けたかと言うと、多分雌しべだろうが首の長い黒い鳥の顔に似ていて、羽のようにも見える花弁の中央からにょきっと伸びているからなのだ。そのミゾカクシが今年は本当に別名「アゼムシロ」の如くに、田んぼの畦にびしっと生えていた。このミゾカクシは何処の田んぼでも見られるかと言うとそうでもなく、意外と近場で探し出して撮影するのが難しい花なのだ。また、図鑑を開いて見るとミゾカクシはとても興味深い植物で、ここでは割愛するが自家受粉を避けるための巧妙なシステムを持っているとあり、また、撮影するにあたって邪魔なものを千切ってみたら葉や茎から白い乳液が出て来たが、これはキキョウ科の特徴の一つなのだとある。自然のものを傷つけるあまりやりたくない事をやって、勉強になったとはまこと複雑な思いする。
 用事のあるからとそのご婦人が帰って、用事の済んだ舞岡のKさんが新たに加わって谷戸奥まで歩いて行くと、舞岡公園で初めてのカブトムシを発見した。これだけ自然度が高い舞岡公園と言えども、樹液が出ている木は少なく、また、少年達が探し回るのでカブトムシ、クワガタムシを見る機会は少なかったが、ほんのお印程度の角を持ったチビ君だったが、正真正銘のカブトムシの雄であった。しかし、なんと言っても今日の昆虫観察での一番手は、ウシズラヒゲナガゾウムシだろう。目の高さにあるエゴノキの実を見て欲しい。きっと、1mm程度の穴が中央に開いている事に気づくに違いない。これはウシズラヒゲナガゾウムシの雌が、その奥に卵を産んだ跡なのである。そんな事を本で知っていたが、観察するのは今日が始めてである。ちょうど手ごろな高さにエゴノキの実がたくさん見られ、ほとんどの実に穴が開いていたので絶好の観察チャンスとなったのだ。すると、いましたいました、その名の如くの三角形の牛の顔を持った連中が。今日はその他、多くの花や昆虫に出あって、「暑くとも我慢してやって来るに値する舞岡公園であるなぁ」と、また再認識するに至っての帰宅となった。

<今日観察出来たもの>花/キツネノカミソリ(写真上左)、ガガイモ(写真下左)、ミゾカクシ(写真上右)、コケオトギリ、キキョウ、オミナエシ、アキノタムラソウ、ミソハギ、クサギ、ヘクソカズラ、カラスウリ、ヨウシュヤマゴボウ等。蝶/モンキアゲハ、カラスアゲハ、アゲハ、アオスジアゲハ、ツマグロヒョウモン、イチモンジチョウ、サトキマダラヒカゲ、ベニシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/カブトムシ、カナブン、クワカミキリ、トラフカミキリ、ヨツスジトラカミキリ、ウシズラヒゲナガゾウムシ(写真下右)、ベッコウハゴロモ、アオバハゴロモ、ナガメ、オオクモヘリカメムシ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ギンヤンマ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ等。


8月2日、東京都町田市野津田公園〜小野路町

 今週末から10日間、毎年恒例になっている群馬県吾妻郡嬬恋村に行くので、多摩丘陵とはしばしのお別れとなる。帰って来る頃にはきっと爽やかな秋風が吹いていることだろう。今日もどちらかと言うと一頃の湿度の高い極暑とは異なって、いくらか涼しい風が吹いていて、8月の割には道端自然観察には好適な天候となった。今日はまず、久しぶりに小野路町のお隣の野津田公園へ行った。これと言った目的は無かったが、最近、掲示板を賑わしていたキバラヘリカメムシが発生しているだろうかと、事務所脇に植栽されているニシキギを覗いてみたのだが見つける事が出来なかった。去年の大発生が信じられないが、じっくりと丹念に探し回れば、きっと何処かに少数だが見つけられる筈である。そんな訳ですぐに当てども無く雑木林の散策路へ歩みを進めた。以前から目星をつけておいた樹液がたっぷりとしたたるクヌギを見に行くと、オオムラサキもゴマダラチョウもスミナガシも来ておらず、いたのは寂しいかなカブトムシの雌だけだった。しかし、一本のクヌギの木に3匹、もう一本には2匹と凄い数で、みんなみんな角の生えていないお尻の大きな雌ばかりである。人間の女性達からも角が取れたら、私のようなか弱き男性には大歓迎なのだが、人類が続く限りそうなりそうも無い。毎年そうだが8月に入ると雄よりも雌の方を観察する機会が多くなる。この理由を類推すると、一つには蝶に見られるように雄のほうが雌に先んじて発生するからかもしれない。また、今日もアオバズクに腹部を食べられた雄の兜の部分が散乱していたので、アオバズクは頭が良くて、卵を産む雌を食べてしまうと来年の食料が減ってしまうからと、雌は食べないようにしているのかもしれない。もし、後者がその理由だったらとても嬉しくなる。
 今日は遅く出て来たので野津田公園でメスグロヒョウモンの雄を撮影した後、すぐに12時となって、昼食をすませて小野路町へ行った。いつも車を停める道端のオオブタクサ等の茎には、ベッコウハゴロモに続いて発生した美しいスケバハゴロモがたくさん見られた。また、早くもキクイモの花が咲き出していて、暑い暑いと言いながらも、秋の気配が漂い始めていると感じた。野津田公園の草原では、チョンギースとキリギリスが鳴いていたし、ショウリョウバッタ、オンブバッタ、クルマバッタモドキ、コバネイナゴ等がたくさんいて、「私たち(直翅目)の天下となる秋はもうすぐそこだよ」と元気に羽を開いて飛び立つ姿が見られた。今日は午後から新百合ヶ丘のAさんと散策する事になっていた。なぜなら私が使用しているマクロストロボの素晴らしさを知って、都内の中古カメラ店を探し回り電話しまくってやっと手に入れたものの試し撮りにお付き合いとなった訳である。このストロボをどんなカメラでも使用可能とするおまじないを少しして、カメラに着けて補助光として絞り優先オートで撮影すると、ほとんどの絞り値で背景とのバランスがうまくとれた美しい写真が、ホイホイ楽しくなる位に撮れるのである。その試し撮りには動き回る蝶などの昆虫ではなくて、樹液に吸汁する昆虫が落ち着いて撮れるからと、今日はAさんの奥様も来られて、ご一緒に美しい雑木林に行った。もちろん、スミナガシが見られるかもしれないとの期待もあった。
 雑木林に着くと、まるで、一頃のクーラーの宣伝にあったような「霧が峰」のような涼しい風が吹いて来て、蝶は見られなかったもののカブトムシの夫婦がちょうど良い高さの樹液で吸汁していた。雄が雌をかばうようにしている姿はやはり感動もので、夏のイメージとしてはぴったりである。Aさんは早速三脚を立てて、苦労して手に入れたマクロストロボを着けてシャッターを押すと、あーら不思議、液晶デイスプレイには美しい背景の中にカブトムシの夫婦が写し出されている。「本当ね、どうしてストロボを使うといつも背景が夜みたいに真っ暗になるのかしらと思っていたけど、そうはなりませんね」等とAさんの奥様もディスプレイを見ながら不思議そうに言う。たまに「吉田さんの写真はお上手で美しい」等とお世辞半分に言われることがあるが、理にかなった機材で撮影すれば、誰でも簡単に撮れるのだと言う事が、少なくともAさんには分かった筈である。こんな事を書くと後からお叱りのメールがたくさん届くかもしれないが、それなりの写真を撮影しようと思ったら、それなりの機材を用意して、面倒臭いなんて思わないで試してガッテンするしかないのである。これでAさんも「うん僕にも行ける」なんて思われて、ばんぱん美しい写真を量産することだろうから、好敵手出現でこれからがますます楽しくなった。
 雑木林を後にするとこれと言った気を引く撮影対象も無く、暑いだけで花も無い五反田谷戸等に降りて行く気も起こらないので、ジャコウアゲハを見に山裾の草原へ降りて行った。これをジャコウアゲハは歓迎してくれたようで、まずは羽化したての美しい雄が日陰で、写して下さいとばかりに羽を開いている。また、ウマノスズクサのある草原では終齢幼虫、前蛹、蛹と踏みつけてはと心配になる位にたくさんいた。また、時折、チョコレート色した雌が緩やかに飛んで来て、産卵するためにウマノススクサの葉裏にお尻を曲げる。「これはこれは、食草から卵、幼虫、前蛹、蛹、成虫の雄と雌とすべて撮れますね」とAさんの奥様が言うので、無心になって撮影していたら、あっと言う間に帰宅の時間となってしまった。やはり、今日フィールドに立って感じたように、秋のような澄んだ青空から射す夕方近くの太陽の光は侘しさを含んだように感じられるし、空を見上げるとやや茜色だし、雑木林ももの悲しそうに一日の終わりを告げているようにも見える。平坦な草原にはウスバキトンボが群れ飛んで、「夕焼け小焼けのアカトンボ」等と言う童謡が流れて来そうである。暦を開いてみると7日が立秋とあるから、甲子園球場の高校野球が始まり、旧盆がやって来て、いよいよ夏本番から初秋へと移行して行く時期に差掛っているようだ。嬬恋村にての毎年唯一の長期休暇が終わって、再び多摩丘陵に立った時、もうそこには秋の気配が各所にたくさん見られるに違いない。

<今日観察出来たもの>花/キクイモ(写真上左)、ミゾカクシ、ミソハギ、ハス、クサギ、ヘクソカズラ、カラスウリ、ヨウシュヤマゴボウ等蝶/ジャコウアゲハ(写真下左)、メスグロヒョウモン(写真下右)、コミスジ、ジャノメチョウ、ヒメキマダラセセリ等。昆虫/カブトムシ(写真上右)、コクワガタ、カナブン、クロカナブン、ヒメスズメバチ、スケバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシ、ニイニイゼミ、ギンヤンマ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ等。


8月1日、横浜市都筑区茅ヶ崎公園〜大原みねみち公園〜鴨池公園

 台風10号が接近していてここ数日変わりやすい天候が続いていた。かっと晴れたかと思うとスコールのような雨が降ると言った按配で、しかも風がかなり強かった。これも遠くにある台風10号の影響であるが、この台風の動きはちょっと変だ。普通、台風と言うと、ほとんどが日本列島に接近すると東や北に向きを変えて進んで行くはずだが、今度の台風は西へ向きを変えて進んで行く。なんとはなしに異常な高温も続いたし、今年の夏の天候が思いやられる。そんな事もあって、また7月の観察記を書き過ぎた事もあって、しばらくは仕事に励んだり家に蟄居しておとなしくしていた。思えば今年の7月はとんでもなく長く感じられ、まるで出口の無いサウナ風呂のトンネルの中に入ったような感じだった。しかし、いよいよ8月、お盆休みには涼しい嬬恋村に10日ばかり滞在する予定であるし、まあ、のんびりと暑さに遊んでもらいながら道端自然観察を続行する事にした。
 今日は、8月初めだからと皆さんが期待していたかもしれないが、自宅から本当に近い都筑区の公園巡りに出かけた。夏と言えば頭に浮かぶものがたくさんあるが、昆虫で言ったら甲虫類ならカブトムシ、トンボの仲間はオニヤンマ、そしてなんたってセミだ。なにしろ8月に入ると平地のセミが全種類見られるようになる。横浜市ではアブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミの僅かの5種類で、時たま稀にシュワシュワシュワとクマゼミの鳴き声を聞くのだけれど、子供の頃から一度もその御尊顔を拝見した事が無い。そんな訳で今日はセミウォッチングに出かけた訳である。これら5種類のセミはみんな普通種だから取り立てて道端自然観察の対象としては陳腐なのかも知れないが、ギラギラと焼け付くような太陽と夏空、はるか奥多摩方面にもくもくと発達した入道雲、そんな日に公園の各種の樹木に止まるセミを見なければ、夏がやって来たと言う気分になれないのだ。
 子供の頃の懐かしい夏の思い出には、この他、スダレ、風鈴、スイカ、線香花火、盆踊り等と続いて行くのだが、都市化した自宅周辺でマンション暮らしだと、すべてが遠い過去の記憶となった。しかし、ひとたび木立の多い公園に出かければ、セミ時雨の中を散策する事が可能なのだから嬉しくなる。それに最近手に入れたデジタル一眼レフカメラに野鳥撮影用のズームレンズをつけ、内蔵ストロボを活用すると、美しいセミの写真が簡単に撮れるのだから堪らない。セミはもっともありふれた昆虫だが、いざ美しく撮影しようとするとなかなか難しい昆虫である。まず、第一に近づくと逃げるし、日陰になった場所にいる時がほとんどだから、自然光で鮮明に写すことが出来ないのだ。このため、いわゆる日中シンクロと言う手法を使う。この手法を一度マスターしてしまえば、かなり多くの分野で応用が効くから、お暇な時に付近の公園へ出かけて腕を磨いて欲しいものである。今日は前述した野鳥撮影用のズームレンズをつけて来たから、もちろん、野鳥が現れたらハイ野鳥も頂きとばかりに撮影すれば良いのだと、近場だがとっても楽しみな道端自然観察及び写真撮影と思った訳だが、現れた野鳥は、ハクセキレイ、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメで、大原みねみち公園の人気者のカワセミは今日もお留守であった。
 港北ニュータウンの公園は隣接しているにも関わらず微妙な環境変化があって、むろん何処の公園にもすべての平地のセミが住んでいるのだが、種類においてのその過多は微妙に異なるようだ。例えば鴨池公園は他の公園と異なって、ミンミンゼミとツクツクボウシがやたらと多い。推測の域を出ないものの、樹木が生長してやや日陰になった池の近くにミンミンゼミが多く、また、ニイニイゼミがサクラ類がたくさん生えている所に多いように、ミンミンゼミもツクツクボウシもエゴノキがたくさん生えている所に多いように思われる。こんな身近なセミの生態的な研究は学術的に面白くないのか、各種の疑問とする点についての調査された資料を見たことが無い。きっと平地産の5種類のセミだって、幼虫の好む樹木、場所があるだろうし、成虫が止まったり吸汁したりするのに好きな樹種や場所があるに違いない。
 それにしても今年はセミの発生量が凄い。特に鴨池公園には至る所にセミの抜け殻があって、エゴノキのひこばえ一杯に、まるで褐色の花が咲いたかのように多量の羽化殻が着いているのには驚いた。また、写真(写真上右)のようにお先に羽化したミンミンゼミの抜け殻によじ登って、また、ミンミンゼミが羽化の足場と決めて羽化したらしく、抜け殻を逆さにおんぶしている抜け殻を見つけて笑ってしまった。こんな状況を見るにつけ、地中にはわんさかセミの幼虫が蠢いているのだと想像すると、なんだか足裏がむずむずして来た。セミの地中での幼虫期間は、一番短いツクツクボウシで2年、アブラゼミやミンミンゼミは5年と言われている。だから、こんなにたくさん羽化して発生しても、まだまだ、地中には赤ちゃん達が一杯と言う事になるのだ。私たちは地面の中を見る事が出来ないが、地上に類する繁茂した樹木の根があって、そこにセミの幼虫が各所で吸汁している事を想像すると複雑な気持ちになる。
 それからもう一つ気になったのは早くもツクツクボウシが発生を開始していた事である。本で調べると7月下旬から10月上旬が出現期とあるので、決して異常現象ではないようだが、ツクツクボウシは旧盆過ぎ、夏休みが終わりに近づいて山と残った宿題をどうしようかと焦りだす頃に現れてこそ、ツクツクボウシのツクツクボウシたる季節感がある。しかし、その独特な鳴き声は他のセミたちの鳴き声に打ち消されて、ほとんど聞えない。だからことによったら例年、ツクツクボウシは今頃から発生していたのかもしれない。いずれにしても順調なる夏が推移してくれる事を願って止まないのは、誰しもの切実なる思いだろう。

<今日観察出来たもの>花/ヘクソカズラ(写真上左)、カラスウリ、ヨウシュヤマゴボウ等昆虫/ミンミンゼミ(写真下右)、アブラゼミ(写真下左)、ツクツクボウシ、ヒグラシ、ニイニイゼミ等。鳥/ハクセキレイ、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメ等。



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