2005年:つれづれ観察記

(8月)


8月30日、東京都大田区東京港野鳥公園

 8月はこんなに観察記を書いているというのに、野鳥はスズメのみという有様に呆然とした。野鳥の登場なくして、道端自然観察館とは言いがたい。そこで東京港野鳥公園へ久しぶりに行った。今日は雨がぱらつくかもしれないとあるが、降っても観察小屋の中なら大丈夫、更に午後1時50分頃が干潮ということなので、とても条件が良い。シギやチドリは満潮では干潟が消えて現われないからだ。
 もちろん、午前中は一般撮影機材で自然生態園を中心として散策した。しかし、見られる花もキクイモくらいでこれといったものはなく、各種のイトトンボも小さな池の水が少なくなって見られなかった。園内は各種のセミの天国で、なんとクマゼミがシャーシャーと各所で鳴いているのだが、その姿は発見出来なかった。東京港野鳥公園は農薬は一切使わず、しかも水がある所が多いから、薮蚊の襲来にはへきへきした。
 午後からはもちろん観察小屋を目指した。しかし、今日は動きの早いシギやチドリ類が中心だからと、デジスコではなくてシグマの500ミリズームを持参した。キャノンのデジタル一眼レフに装着すると800ミリとなるのだが、それでもデジスコになれていると、なんでこんなに小さくしか撮れないのと嘆かざるを得なかった。だから、写真は全てトリミングをしている。こんな時はやはり高画素数のカメラだと本当に助かる。
 今日、一番撮りたかったのはセイタカシギである。その名の通り足が長く顔がとても可愛らしいのである。距離は遠いいが、現われてくれてほっとした。ただ、デジスコならもっと大きく撮れたのにと思うと残念だった。天気が曇り日だと、ご覧のように水面も灰色となってしまうので、今度は晴天の日にデジスコで挑戦しようと思った。

<今日観察出来たもの>花/アレチヌスビトハギ、キクイモ、ツユクサ、アカツメクサ等。蝶/キタテハ、サトキマダラヒカゲ、ルリシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/クマゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、オオアオイトトンボ等。鳥/セイタカシギ(写真上左)、ソリハシシギ(写真上右)、コチドリ(写真下左)、メダイチドリ(写真下右)、アオアシシギ、アオサギ、コサギ、ダイサギ、カワウ、カルガモ、ムクドリ等。


8月27日(午後)、東京都町田市小野路町

 午後からはもちろん小野路町へ行った。8月6日以来だから約3週間来なかった事になる。しかし、久しぶりだなという思いは、ぐるっと一回りしたがまったく感じなかった。まあ、オオブタクサの背がだいぶ伸びたなあと感じた事ぐらいである。小野路町は私が住んでいる町と同じ鶴見川流域、生まれ育って大いに遊んだ里山と同じような環境なのである。雑木林の小道を歩いていると、植生調査をしているYさんに出会った。超有名な大学の大学院を卒業して、やっと就職先が決まったという。就職先は茨城だが、毎週末、実家に帰って来て小野路にやって来るという。「茨城には里山がたくさんあるでしょう」と聞くと、「確かに茨城にはたくさんの谷戸や里山があるんだけど、少し多摩丘陵と感じが違うんですよね」と言う。私も茨城はもちろん様々な県の里山へ行っているが、多摩丘陵に比べると、なんとなく取っ付き難く感じるのである。多摩丘陵なら何処が安全で何処が危険等と言う事が、良く分かるのである。まあ、自宅にいるのと同じような感覚なのだろう。
 今日の小野路町は、そんな訳で予想したごとくに、これといったものには出会えなかった。相変わらず路傍のオオブタクサの茎には、ベッコウハゴロモ、スケバハゴロモ、アオバハゴロモが見られた。しかし、その数は逆転して、スケバハゴロモの方がベッコウハゴロモよりもかなり多かった。雑木林に入ってみると、もう雄は天国に召されたのか、カブトムシの雌がやたらと目についた。期待したキノコはコガネヤマドリ一色で、しかも撮影の時期はとうに過ぎていた。しかし、アワブキの葉に久しぶりにスミナガシの幼虫を発見して嬉しかった。本格的な小野路の道端自然観察は、やはりヒガンバナが咲いてからという事になりそうである。

<今日観察出来たもの>花/ツルボ(写真上左)、マルバルコウソウ(写真上右)、ママコノシリヌグイ(写真下右)、キクイモ、ゲンノショウコ、フジカンゾウ、ヤマホトトギス、キツネノマゴ、ミズヒキ等。蝶/ナガサキアゲハ、サトキマダラヒカゲ、ジャノメチョウ、キマダラセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/ヒメアカネ(写真下左)、シオカラトンボ、カノコガ、ヤマトトシリアゲ、ベッコウハゴロモ、スケバハゴロモ、アミガサハゴロモ、アオバハゴロモ、ヤハズカミキリ等。キノコ/コガネヤマドリ等。その他/ナガコガネグモ、コガネグモ、ジョロウグモ等。


8月27日(午前)、東京都町田市野津田公園

 8月のつれづれ観察記は10日間の夏休みの報告があったこともあって、書き過ぎ、写真の載せ過ぎで、クリックしてもなかなか開かないのではないかと心配である。ホームページビルダーでページを転送する時にも、本当に時間がかかる。寝室に布団を引いて来ても、まだ転送中という有様である。そんな訳で、もう限界だから行くのは止そうと思っていたが、やはり愛車が小野路号なのだから、行かなければなるまいと出発した。季節の端境期でもあるし、小野路町もそんなに期待出来ないだろうと予測して、午前中は野津田公園へ行った。
 駐車場に車を停めて野球場予定地の草原へ行った。何か珍しいイトトンボでも来ていないかと期待したのだが、これと言ったものは見当たらない。夏もそろそろ終わろうとしているのに、キリギリスのチョンギースという鳴き声が相変わらず聞えて来る。そろそろ草原もバッタ天国になりつつあって、ショウリョウバッタが大きく成長していた。その後、湿生植物園、ミズキ広場等を回って戻って来たが、途中、たくさんのオオトリノフンダマシの独特な卵のうが垂れ下がっていて苦笑いを浮かべた。また、今日は高原を思わせる涼しい天気で、このためかオニヤンマが近づいても逃げないので、顔をとってやろうと至近距離に近づいたら感づかれて、羽を震わせて体温を上昇させ、シャッターを切ろうと思ったら飛び去ってしまった。
 また、ススキの葉の上にツチイナゴの幼虫がちょこんと止っていたので、その可愛らしい顔を撮影した。ちょっと前まで、ご婦人達のアイドルであったササキリは生長し、「これからは君の番なんだからね」と声をかけた事は言うまでも無い。上の原広場のススキの原にはナンバンギセルがたくさん咲き、ススキの穂が出るのももうすぐだろう。

<今日観察出来たもの>花/ナンバンギセル(写真上左)、ヤマホトトギス、ヒヨドリバナ、クズ、ツリガネニンジン、センニンソウ、ツルボ等。蝶/キチョウ、ゴイシシジミ、ヤマトシジミ、ジャノメチョウ、イチモンジセセリ、キマダラセセリ等。昆虫/キスジホソマダラ(写真下左)、ツチイナゴの幼虫(写真上右)、キリギリス、ショウリョウバッタ、キバラヘリカメムシ、オニヤンマ、ハグルマトモエ等。その他/オオトリノフンダマシの卵のう(写真下右)、ジョロウグモ、ナガコガネグモ等。


8月26日(午後)、横浜市緑区三保町

 午後からは8月5日に来た時に、クヌギから出る樹液に集るオオムラサキをはじめ様々な蝶を観察出来て、とても楽しかった三保町の雑木林へ行った。オオムラサキに至っては、15年ぶり位になる再発見と記したと思う。しかし、樹液の出は少なくなり、吸汁に訪れている蝶は、サトキマダラヒカゲとルリタテハだけであった。ゴマダラチョウとアカボシゴマダラくらいは来ているだろうと思ったのだが、もうその時期は過ぎたようである。しかし、クロコノマチョウを1頭観察出来たので、その内、樹液に吸汁に来るかもしれない。そこでキノコを探してみたが、これといって写欲を誘うものには出会えなかった。そこでススキの原を下って、民家が見える所まで行った。ちょっとした空き地に様々な花が植えられているのだが、ルドベキアやサンジャクバーベナは萎れて、キバナコスモスやコスモスが咲いていた。何か吸蜜に訪れている蝶はいないかと探してみたが、アズチグモとハナグモが獲物を待ち構えている位であった。
 そこでススキの原に戻って何でも撮ろうと目を凝らした。蝶ではススキの住人であるジャノメチョウがまだ見られ、第2化となるカノコガがたくさん発生していた。しかし、やはり季節の端境期、これといったものが見られないなあと思ったら、なんと久しぶりにツノトンボに出会った。ツノトンボの仲間は我が国では他に、キバネツノトンボ、オオツノトンボがいて、黄色で美しい羽を持つキバネツノトンボばかり注目されているが、じっくり見るとツノトンボも見ごたえのある昆虫である。更にラッキーな事に、ススキの葉に産み付けられた卵も見つけた。かなり大きく淡いレンガ色をしていて、ご丁寧に二列に産み付けられているのですぐに分かった。長期の夏休みで疲れも残るが、こんな事があるからフィールド巡りは止められない。

<今日観察出来たもの>花/コスモス(写真上左)、キバナコスモス、キツネノマゴ、ツルボ、キンミズヒキ等。蝶/モンキチョウ、キチョウ、ルリタテハ、アカボシゴマダラ、サトキマダラヒカゲ、ジャノメチョウ、イチモンジセセリ等。昆虫/ツノトンボ(写真下左)、ツノトンボの卵(写真下右)、アオメアブ、ヤマトシリアゲ、カノコガ(写真上右)、ナキイナゴ等。キノコ/オオツエタケ、カワリハツ、テングタケダマシ等。その他/アズチグモ、ハナグモ、シロオビトリノフンダマシ等。


8月26日(午前)、横浜市青葉区寺家ふるさと村

 10日間の夏休みで期待したキノコがほとんど見られなかったと前述したが、野鳥と同様、キノコの無い観察記もやはり寂しい。そこで寺家ふるさと村で、キノコがかなり発生しているとのHPを見たので行ってみた。しかし、少し出遅れたようで、それ程のキノコは見られなかった。花の命が短いように、菌類の花とも言えるキノコの命も、とても短いのである。それでも、チチタケ、ニオイコベニタケ、ウスキテングタケ、テングタケ、ススケヤマドリ等が生えていた。また、茶色の袋のような小さな卵からヒナツチガキが顔を出していて、思わず微笑んでしまった。しかし、なんと言ってもその場所は、セミから出るキノコ、すなわち冬虫夏草の宝庫で、今日は至る所にツクツクボウシタケが生えていた。また、地上ではその姿が少なくなっている、ニイニイゼミから出るセミタケも僅かながら見られた。
 あっちをうろうろ、こっちをうろうろしていたら、東京に住んでいる冬虫夏草が大好きなNさんがやって来た。寺家変人会の一員である。「凄い数ですね。昆虫が大好き人間から見ると、こんなにやられたら可哀想だなあと思いますよ」と言うと、「これだけやられて、ちょうど良い自然のバランスがとれてるんでしょうね。もしやられなかったら、ツクツクボウシだらけになってしまうよ」と言う。まったくNさんの言う通りである。地中に潜ったセミの幼虫の天敵は、モグラぐらいのものだろうと思っていたが、冬虫夏草と呼ばれる菌類も大天敵なのである。まったく冬虫夏草が大好きな方々のお陰で、自然のからくりの不思議さを見せてもらえて本当に勉強になる。しかし、普通ならここに駒沢大学からやって来るN仙人がいても良い筈なのが、どうした事だろう。彼はきっと珍しいカビを探しているに違いない。

<今日観察出来たもの>花/ユウガギク、ダイコンソウ、オモダカ、ワレモコウ、ヤマホトトギス等。蝶/クロコノマチョウ、サトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ等。昆虫/ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、ヒグラシ等。鳥/カイツブリの幼鳥等。キノコ/チチタケ(写真上左)、ニオイコベニタケ(写真上右)、ヒナツチガキ(写真下左)、ツクツクボウシタケ(写真下右)、セミタケ、カワリハツ、ススケヤマドリ、ウスキテングタケ、テングタケ等。


8月25日、横浜市戸塚区舞岡公園

 本当に久しぶりの舞岡公園である。前回来たのが3日だから、約3週間も来なかった事になる。その間、さくらなみ池に里山オールドボーイズの有志の方々が製作した浮島が進水し、「さくらとりしま」と命名され、早くも島にとり付けた木の枝に、カワセミが止まってくれたらしい。そんな情報を耳にすると、8月に入ってからデジスコの出番は一度もなかったし、鳥の写真も一枚も載せていないので、カワセミを撮ろうと期待して出かけた。しかし、今日はお留守なようで、ウチワヤンマが「さくらとりしま」の木の枝ではなく、池の中に差し込まれた竹の棒に止っていた。距離がかなりあるからデジスコにはぴったしの被写体で、久しぶりにシャッターを切った。その他の鳥も見られないので、一般撮影機材に変えて散策をしなおそうと車に戻る途中、ホオジロの群れと電線に止るスズメを見つけた。かなりシャツターを切ったのだが、ホオジロはそれ程良い写真が撮れなかった。それでもデジスコのシャターを20回は切る事が出来たので気分爽快であった。
 今日の舞岡公園は天気が曇りで気温が低く、湿度さえ高くなければ、まるで軽井沢のようであった。公園内には、ツリガネニンジン、ワレモコウ、キンミズヒキ、ナンバンギセルが見られ、やはり8月下旬で、もうすぐ秋を感じさせてくれた。蝶ではカラスアゲハが新鮮で、咲き残ったクサギの花にたくさん訪れていた。三脚を立てて長玉レンズで狙えば、きっと良い写真が撮れた事だろう。また、高原でアサギマダラをたくさん見て来たので、緩やかに舞うアカボシゴマダラを見て、「あっ、アサギマダラがいる」なんて、錯覚をしてしまった。昆虫では各種カメムシの赤ちゃんがたくさんいて、やはり舞岡公園の夏は無事に終了しようとしていた。

<今日観察出来たもの>花/ヒマワリ、スズメウリ(写真上右)、ツルボ、キツネノカミソリ、ミゾカクシ、ミズオオバコ、キツネノマゴ、アカツメクサ、ワレモコウ、オミナエシ、キンミズヒキ、アキノタムラソウ、ナンバンギセル、クサギ等。蝶/ナガサキアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハ、アゲハ、キチョウ、ルリタテハ、アカボシゴマダラ、コミスジ、サトキマダラヒカゲ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、ルリシジミ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ、コチャバネセセり、ダイミョウセセリ等。昆虫/コフキコガネ、ヨツスジトラカミキリ、キマワリ、ササキリの幼虫、ヤブキリ、ホソアシナガバチ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ミナミアオカメムシの幼虫(写真下左)、ムラサキシラホシカメムシ(写真下右)、クサギカメムシ、オニヤンマ、ギンヤンマ、ウチワヤンマ、オオシオカラトンボ、アオモンイトトンボ等。鳥/ホオジロ、スズメ(写真上左)、ホシゴイ、カルガモ等。キノコ/タマゴテングタケモドキ、ドクベニタケ、カワリハツ等。


8月24日、横浜市都筑区茅ヶ崎公園

 10日間も連続した夏休みをとって自宅に帰ってくると、仕事やら家の用事やらと、本当に溜まりに溜まっている。行く前に綺麗に草取りをした筈なのに、もう草が伸びていてやんなっちゃう。それに10日間の観察記を仕上げなければならないのだから、殺人的なスケジュールの毎日となった。しかし、やっと今日の午後にぽっかりと時間が空いたので、精神衛生上、行くしかないねと茅ヶ崎公園へ行った。また、これを撮らなければ私の夏は終わらないのである。それは各種のセミである。
 茅ヶ崎公園に到着すると、セミの鳴き声のシャワーが頭上からわんさか降って来る。夏休みの10日間はほとんどセミの鳴き声を聞かなかったんだから、涙が出るくらいに嬉しくなった。ご幼少の頃から、このセミの鳴き声とともに夏休みを過ごしたのだから当然だ。セミは木に止っているから撮影は簡単だろうと思うだろうが、このセミを美しく写せたら、いわゆる日中シンクロを理解した事となって、樹液に来る各種の蝶の撮影などにも応用出来るのだ。しかし、何故かセミはご婦人はもとより、昆虫好きの方々にもあまり写して貰えない。どうしてなのかなと考えると、あまりにも身近過ぎる存在なのかもしれない。
 この平地のセミの中で一番簡単に写せるのはアブラゼミだ。ミンミンゼミになるとかなり手ごわくなり、木の汁を吸ってお食事中の時以外は、近くによるとすぐに飛び立ってしまう。また、ヒグラシも薮蚊が多い暗い所にいるので、これもまた撮影しづらい。今日は早くから現われるニイニイゼミは見られなかったが、この5種類のセミが、首都圏の子供達のお友達なのである。里山を中心とした様々な生き物を撮っている方なら、是非、各種のセミを美しく写してやって欲しいものである。

<今日観察出来たもの>蝶/ルリタテハ、キチョウ等。昆虫/アブラゼミ(写真上左)、ツクツクボウシ(写真上右)、ミンミンゼミ(写真下左)、ヒグラシ(写真下右)、コシアキトンボ等。


8月21日、群馬県多野郡吉井町赤谷公園

 今日は長かった夏休みの最終日、自宅へ帰る日である。滞在先の親戚の山の家の掃除、車への荷物の積み込み等に時間がかかったが、午前10時に出発する事が出来た。しかし、中軽井沢駅周辺が大渋滞で、軽井沢までノロノロといった具合である。そこで小諸方面に戻って裏道を使い、やっと上信越道に乗ることが出来た。それでも、ぴったり12時に甘楽PAに到着することが出来て、食べたいと思っていたモツ煮定食にありつけた。量もあって美味しく、値段がなんと590円なのだから、全国の高速道路のPAの中でも、安い、美味い、早いの三拍子揃ったメニューであるに違いない。なお、モツ煮は上州名物だとあった。
 赤谷公園は甘楽PAからほんの少し走った吉井ICからすぐだから、午後1時少し前に駐車場に到着した。もちろん車は木陰に停めた。外へ出て歩き出すと、玉のような汗が噴き出して来た。ここ数日、暑さとは無縁な場所が多かったので、やっと下界の里山に降りて来たんだと実感したが、それにしても蒸し暑い。横浜や多摩丘陵に比べても、かなり暑いように感ずる。それでも去年、オオムラサキやスミナガシのいたクヌギに期待して足を運ぶと、スミナガシが今年も熱心に吸汁していてくれて、とても嬉しかった。しかし、とんでもなく多くのサトキマダラヒカゲが発生していて、スミナガシも落ち着いて食事が出来ないようである。そこから溜池へ雑木林の中を降りて行くと、ゴイシシジミがちらちらと3頭も見られ、時折、卍飛行をするのだから素晴らしい。最近、ゴイシシジミは舞岡公園でも多摩丘陵でも減少していて見られない年も多いが、吉井町の雑木林は本当に自然度が高いのだろう。
 溜池に下りて来ると木立がないから頭がくらくらするような暑さである。溜池とそこに流れ込む沢で、オニヤンマ、コオニヤンマ、コフキトンボ、ハグロトンボ、クロイトトンボ、オオイトトンボ等を観察したが、白い可愛らしい花をつけているヒシが浮かぶ水面では、なんとチョウトンボが優雅に舞っていた。しかし、長時間の観察で熱中症が心配となり、車に置いて来た水を飲みに戻った。もちろん、ごくごくとラッパ飲みにして一息入れ、また雑木林に入ったが、スミナガシのいたクヌギには大きなオオムラサキの雌が、また、少し降りた場所では羽化したてのオオミズアオを発見した。これだから帰宅途中に寄り道したくなるのである。一通り撮影が終わると車に戻り、濡れ雑巾のような衣服を、短パン、半袖に変え、裸足にサンダル履きで、クーラーをがんがん効かせて、「かき氷が食べたいよう」と上信越道に乗った。

<今日観察出来たもの>花/ヒシ、ハス、スイレン等。蝶/オオムラサキ、ゴマダラチョウ、スミナガシ、ルリタテハ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲ、ゴイシシジミ(写真上右)等。昆虫/オオミズアオ(写真上左)、オニヤンマ(写真中左)、コオニヤンマ(写真中右)、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コフキトンボ(写真下右)、チョウトンボ、ハグロトンボ、クロイトトンボ、オオイトトンボ(写真下左)、ミヤマアカネ、ヒグラシ、クロカナブン等。鳥/カワセミ、アオサギ等。


8月20日(午後)、群馬県吾妻郡長野原町浅間牧場

 午後からは長野原町の浅間牧場へ初めて行ってみた。もう10年以上も嬬恋村で長期滞在の夏休みを繰返しているのだが、牧場へ行っても牧草だらけだから、花や虫は駄目だろうと思っていたのである。しかし、野鳥なら草原性のホオアカやノビタキがいるのではないかと思ったのである。観光客で賑わう駐車場で、なんとなく場違いなデジスコをセットして登って行った。途中、「丘を越えて」の碑が建っている。多分、「丘を越え行こうよ、口笛吹きつつ、空は澄み青空、牧場をさして」の碑であろうと思ったが、なんと古賀政男作曲の「丘を越えて行こうよ、霞の空もほんがらかに晴れて、楽しい心」であった。「て」が入っていたのである。
 その碑を過ぎると樹林帯に入って、こんな所に野鳥が現われてくれれば最高なのになと思いながら、ゆっくり登っていったのだが何も見当たらない。やがて、広々と広がる牧舎が建つ牧場まで来てしまった。本当に歌の歌詞のように、丘を越えて牧場に到着するのである。すると手前にかなり広いススキの原が広がっていて、ススキが穂を出し、カセンソウ、ワレモコウ、オミナエシが風に揺れていた。「ああ、もうすぐ秋だなあ」と実感するのに最適な景観であった。また、各所にノアザミも咲いていて、かなり飛び古しているが、ミドリヒョウモン、ウラギンヒョウモン、ギンボシヒョウモン、メスグロヒョウモン等が吸蜜し、鮮やかなキアゲハも舞っていた。それを見て、このまま鳥撮りをしていても仕方が無いと車に戻り、一般撮影機材に変えて、また登り返した。
 今日はアザミデーにしようと徹底的にノアザミに吸密する各種ヒョウモンチョウや、そこに止るアキアカネやコノシメトンボを狙った。また、今年はまだ撮影していなかったカセンソウも、もちろん風に苦労させられながらも撮影した。途中、皮肉なことに樹林帯で、アカゲラ、コゲラに出会ったが、例えデジスコを持っていたとしても、良い写真にはなりそうもなかった。また、帰り道ではこれらの鳥も他の鳥にも出会わなかった。ただ、駐車場近くのカラマツの天辺で、しきりに囀っている鳥がいた。なんだろうと双眼鏡で確かめてみると、お馴染みのホオジロであった。「なんだ君、こんな所にもいたんですね」と苦笑いを浮かべた。時計を見ると早や午後4時、もう一度、デジスコで野鳥に再挑戦とも思ったが、お腹も空いて来たので、今年の夏休みではじめてとなる焼きトオモロコシをほおばって帰ることとなった。以上、行ってみなければ分からないもので、浅間牧場もなかなか良い所である。特に浅間山を見るのには絶好の場所で、また、各種ヒョウモンチョウを撮るのにも最適だなあと実感した。

<今日観察出来たもの>花/クサレダマ、ワレモコウ、ツリガネニンジン、オミナエシ(写真上右)、カセンソウ(写真上左)、ノアザミ、イヌゴマ、シシウド、ススキ、ハクサンフウロ、チダケサシ、ヤマオダマキ、カワラナデシコ等。蝶/キアゲハ(写真中左)、クジャクチョウ、エルタテハ、ミドリヒョウモン(写真中右)、ウラギンヒョウモン、ギンボシヒョウモン、メスグロヒョウモン、コミスジ、ジャノメチョウ、スジボソヤマキチョウ、モンキチョウ、キチョウ等。昆虫/コノシメトンボ、アキアカネ(写真下左)等。鳥/アカゲラ、コゲラ、ホオジロ等。その他/ナワシロイチゴの実(写真下右)等。


8月20日(午前)、群馬県吾妻郡嬬恋村プリンスランド

 長かった夏休みも、いよいよ明日帰宅する日となった。どうやら天気も持ちそうなので、無事に連続10日間の道端自然観察に明け暮れる事が出来そうである。今年はこれといった大喜びの収穫があった訳ではないものの、一日も雨にやられずに散策出来た事が、何よりの収穫だろう。そこで、滞在しているプリンスランドの中を一回も散策せずに帰宅するのも情けない事だと思い、午前中だけ散策してみた。いつもなら様々なキノコが一杯で本当に楽しいフィールドとなるのだが、今年はほとんど見当たらなかった。しかし、ここしばらくだいぶ雨も降ったので、そろそろ顔を出してくれるのではないかと期待したのだが、イロガワリ、アメリカウラベニイロガワリ、オオホウライタケが僅かに生えている位で、これといったものは見られなかった。夏の嬬恋村へ行けばキノコが爆生しているのは当たり前と思っていたので、こんな年もあるんだと狐につままれたような思いがした。去年、一昨年と連続して見られた、巨大で美しいアカヤマドリを見ることが出来ないなんて、本当に残念な事である。しかし、去年、様々なキノコが生えていた場所に出向くと、乾涸びたキノコの残骸が各所に残っていたので、今年は8月の初旬辺りがキノコ発生のピークだったのかもしれない。
 それでは他のものを撮ろうと気を取り直したが、平地の里山でも普通に見られるヒメウラナミジャノメ、コミスジ、ベニシジミがいて苦笑した。しかし、カメムシの仲間は多いようで、じっくり探し回ったら面白いのではないかと感じられた。先日、山の家のテラスの外灯に、コエゾゼミが2匹も明かりに引き寄せられてやって来たので、毎年鳴き声が良く聞かれる場所に行ってみたが、見つからなかったばかりでなく、鳴き声すら聞えなかった。今年の夏休みは何処へ行ってもセミの鳴き声が聞かれなかった。発生の多い年と少ない年があるのだろうか?それとも天候不順だった為に、地上に現われるのを断念してしまったのかもしれない。高原の真っ青な夏空が広がる日々が続くと、写真撮影には不適だが、セミの鳴き声が聞かれないのもなんとなく寂しい。
 それでもウワミズザクラの実が真っ赤に熟して美しく、後日、Tさんに名前を教えて貰った小さな葡萄のようなチョウセンゴミシの実も見られた。そのうち真っ赤に熟すらしいが、きっととても美しいに違いない。また、ナンバンハコベという奇妙な植物にも出会った。図鑑には南蛮と名が付くが、我が国に自生する植物で、ハコベの仲間と同じナデシコ科だが、茎が蔓のように細く長く伸びるのは珍しいとある。そんな訳で、たとえお目当てのキノコがなくとも、プリンスランドの中をじっくり散策するのも面白そうであった。

<今日観察出来たもの>花/オタカラコウ、オオハンゴンソウ、ハンゴンソウ、キツリフネ(写真上右)、クルマバナ、シシウド、ウド、メマツヨイグサ、オトギリソウ、ヤブカンゾウ、コオニユリ、ハエドクソウ、ヌスビトハギ、ナンバンハコベ等。蝶/コミスジ、ヒメウラナミジャノメ、ベニシジミ等。昆虫/キンモンガ(写真下右)、ハサミツノカメムシ、ベニモンツノカメムシ、オオヘリカメムシ、ユウマダラエダシャク、アキアカネ等。キノコ/イロガワリ(写真中右)、アメリカウラベニイロガワリ?(写真中左)等。その他/ウワズミザクラの実(写真上左)、チョウセンゴミシの実(写真下左)等。


8月19日、群馬県吾妻郡嬬恋村鹿沢高原

 今日は待ちに待った「キベリタテハ観察会」である。私は当地に長期滞在しているから良いものの、遠方から来る方々が、もしキベリタテハを観察出来なかったらどうしようかと、昨晩は思い悩んでぐっすりと眠れなかった。すると行く途中の道に、そんな私にとっては運が良い交通事故に出会ったが、まだ動いているキベリタテハを見つけた。もちろん車を停めて大切に確保した事は言うまでも無い。散策前に集った方々に、ご披露しようという訳である。一度、その姿を見ておけば、今日の観察会に於いて、キベリタテハの発見を容易くさせるだろうし、万が一に見られなかったとしても、これで見た事になって大いに慰められるだろうと思った訳である。「キベリタテハ観察会」でキベリタテハが見られなかったら、呼びかけた私は大いに面目を逸するのだから、交通事故に遭遇したキベリタテハにはお気の毒だが、私にとってはとてもラッキーという訳なのである。
 しかし、、そんな杞憂はキベリタテハがたくさんいて霧散し去った。コンクリートの土留めで滲み出る液を夢中になって吸汁している個体は、近づいてもまったく逃げない。指で身体に触れない限り逃げないのである。また、同所にはエルタテハ、コムラサキ、サカハチチョウもいて、付近のヨツバヒヨドリの花には、メスグロヒョウモン、アサギマダラも見られたのだから、もうみんな大喜びである。他所ではアサギマダラが大サービスをしてくれて、私の指に汗を吸いにやって来て止ったりしてくれて、本当に興奮が続いた。そんな訳で、午前9時からの散策はあっという間に終わって、お昼の時間となった。もちろん民宿「わたらせ」に戻って、前回は山菜天ぷら定食だったので、迷う事無く岩魚の塩焼き定食を頼んだ。どちらも毎年必ず注文する、とっても美味しいお勧めの定食である。
 午後からはクジャクチョウを見に牧場の方へ行った。しかし、前回いた所にはエルタテハのみで姿が見えない。しかし、同行の方が羽をぴっちり閉じて獣糞で吸汁しているものを見つけてくれた。クジャクチョウは羽を閉じていたら、ただの漆黒の蝶でしかないので、何とか羽を開いてよと飛び立たせると、石の上に止って羽を開いてくれた。これでお次はベニヒカゲだと草原に戻ったが、今日はご機嫌が良いようで、アザミに吸蜜している個体やウドの葉の上で羽を開いている個体など、楽々ほいほいと撮る事が出来た。 それからは林道に戻って自由散策となったが、花ではウメバチソウ、蝶ではゴイシシジミにも出会えた。こんな訳で来年は2泊3日で、今日参加出来なかった方々も誘って、本当の夏合宿をしようということになった。そこで一句、「1ギガも、あっとなくなる、鹿沢かな」という訳である。

<今日観察出来たもの>花/ノダケ(写真上左)、ヨツバヒヨドリ、ウスユキソウ、マルバダケブキ、ハンゴンソウ、コウリンカ、ノコギリソウ、タムラソウ、ノアザミ、ヤマホタルブクロ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、アキノキリンソウ、マツムシソウ、ウメバチソウ、クガイソウ、タチコゴメグサ、ウツボグサ、シシウド、ウド、ヤナギラン、アカバナ、メマツヨイグサ、オトギリソウ、アサマフウロ、クサフジ、クララ、ダイコンソウ、チダケサシ、ヤマオダマキ、コオニユリ、ビロードモウズイカ、シモツケ、ノリウツギ等。蝶/ミヤマカラスアゲハ、キアゲハ、アサギマダラ、キベリタテハ(写真中左)、エルタテハ、シータテハ、クジャクチョウ、コムラサキ、フタスジチョウ、サカハチチョウ(写真中右)、ミドリヒョウモン、メスグロヒョウモン、ヒョウモンチョウ、ベニヒカゲ(写真下右)、クロヒカゲ、ヒメキマダラヒカゲ、オオチャバネセセリ、ゴイシシジミ等。昆虫/モンキアワフキ(写真下左)、コエゾゼミ、ミヤマハンミョウ、アカハナカミキリ、マメコガネ、セマダラコガネ、アキアカネ、コノシメトンボ、ミヤマフキバツタ、ヒナバツタ、ナキイナゴ、ヒョウモンエダシャク等。その他/オオカメノキの実(写真上右)、コケモモの実等。


8月18日(午後)、群馬県吾妻郡六合村野反湖

 時計の針は、あっというまに12時を回った。丸太の上を這う各種カミキリムシは、なかなかじっとしてくれないので撮影が進まず、どんどん時間が過ぎて行ったという訳である。お腹もだいぶ空いて来たので、弁当でも食べようと思ったのだが、こんな蒸し暑い場所で食べたら、美味しいセブンイレブンの「和風御膳」もまずくなるかもしれない。そこで、もうすぐだからと、標高の高い野反湖の見える涼しい場所まで行って、昼食をとることにした。
 この季節の野反湖は、有名なニッコウキスゲやコマクサも咲き終わって、これと言った花や蝶や昆虫も見られないから、ここ数年行くのを止めていた。しかし、久しぶりに見る広大な透明度の高い湖を見ると、「やっぱり良い所だな、来てよかったなあ」と一人ごちる。人造湖といえども、これ程標高が高い所にある広大な湖は他所には無いだろう。また、交通が不便な為に俗化もされず、周囲の山々にはハイマツも見られ、各所でベニヒカゲが舞っている。野反湖から流れる川は、なんと太平洋ではなくて日本海に注ぎ、石砂山は、群馬県、長野県、新潟県の県境でもあるのだ。今日はあまり期待出来ない蝶や昆虫を追うのは止めにして、日差しも柔らかくなったので、徹底的に花を撮ろうと散策を開始した。里山では秋の花であるアキノキリンソウ、ワレモコウ、オミナエシ、ツリガネニンジンが一杯だ。更に、ヤマトリカブト、ウメバチソウまで見つけたのだから、野反湖の本格的な秋は、ほんのもう少し先にと迫っているようだ。
 バンガローの立ち並ぶキャンプ場周辺は最も安全で、花や蝶を観察するのには最適である。蝶ではアサギマダラ、エルタテハ、ヒョウモンチョウ等が見られた。また、各所にある立派なトイレの壁には、スジモンヒトリ、チズモンアオシャク、ノンネマイマイ、ヨツボシホソバ等、それこそたくさんの蛾が張り付いていた。夜間の照明に誘われてやって来た訳だが、きっと夜には、「蛾がいるから、お便所へ行きたくない」と、親を困らせる女の子が続出しているに相違ない。こんな経験が、ことによったら女の子を虫嫌いにさせるのに違いない。しかし、私なんぞそんな光景は大歓迎だから、カメラにマクロストロボをつけて一晩中やって来る蛾を中心とした昆虫を撮りまくる事だろう。次第に湖は深い霧に包まれ始めた。周囲の山々もほとんど見えなくなって、その姿は実に神秘的で、シベリア等の北方の大地に横たわる湖のような景観と化した。この光景を眼前にして、ここ数年訪れなかったのが不思議に思われる、心洗われる一級の景勝地であると再認識することとなった。いつまでも俗化する事の無い野反湖であって欲しいと願って、エンジンブレーキを効かせながら下って行った。

<今日観察出来たもの>花/タムラソウ(写真上左)、ウメバチソウ、ヤマトリカブト(写真上右)、オミナエシ、アキノキリンソウ(写真中左)、ワレモコウ、ヨツバヒヨドリ(写真中右)、ハンゴンソウ、ヤマホタルブクロ、ツリガネニンジン、シシウド、ウド、ヤナギラン、アカバナ、オトギリソウ、ハクサンフウロ(写真下左)、シモツケソウ、チダケサシ、ヤマオダマキ、オニノヤガラ、ノリウツギ等。蝶/キアゲハ、アサギマダラ、モンキチョウ、キチョウ、エルタテハ、シータテハ、ミドリヒョウモン、ヒョウモンチョウ、クロヒカゲ、ヒメキマダラヒカゲ、ベニヒカゲ、オオチャバネセセリ等。昆虫/スジモンヒトリ(写真下右)、マエアカスカシノメイガ、チズモンアオシャク、ノンネマイマイ、ヨツボシホソバ、エサキモンキツノカメムシ、アキアカネ、テントウムシ等。鳥/キジバト、ビンズイ等。その他/ウワズミザクラの実、ニッコウキスゲの実、トチバニンジンの実等。


8月18日(午前)、群馬県吾妻郡六合村和光原

 10日間の夏休みも今日で7日目となった。そんなに飛び上がる程の大成果はなかったものの、行きたい所は全て行ったし、今日は何処へ行こうかと考えていたら、切り出された丸太で各種のカミキリムシ、そしてヤナギの木でアカアシクワガタ、憧れのヒメオオクワガタという訳で、六合村に行くことにした。午前中は和光原まで、あちこちに寄り道をして気楽に散策し、午後は久しぶりに気分爽快となる野反湖まで行ってみようという訳である。今日は台風の影響も無くなって、久しぶりの一日中曇り日と言う事であったが、薄日も時折差し、とても蒸し暑い日となった。しかし、風が和らいだのだからとても有り難い。
 野反湖へ通ずる道から、なんとなく切り出された丸太が置いてありそうな臭いのする道に入ってみた。するとほんの少し走っただけで、切り出された広葉樹の丸太が2ヵ所に積んであった。各種カミキリやゾウムシ、タマムシ等は針葉樹の丸太にはほとんど見向きもせずに、様々な広葉樹の丸太が大好きなのである。そんな訳で戦後各所に植林されたカラマツは、昆虫に見向きもされないばかりか、保水力も少なくなって最悪である。おまけに格安な外国からの材木がどんどん輸入され、しかも林業を担う方々も減少して、ほったらかしになっているのだから困ったものである。話はだいぶ脱線したが、車を停めて丸太に近づいてみると、まずはルリボシカミキリが目に入って来た。更に大型のノコギリカミキリまでいるではないか。こんな丸太の積んである所は、マムシをはじめヘビ君達の大好きな場所でもあるから、慎重に各所を見回してからカメラを持って近づいた。すると小さなキスジトラカミキリ、ゴマフカミキリ、ヤツメカミキリまで見つけた。また、そんな好場所だから帰りも寄ってみると、更に、ウスイロトラカミキリ、ニイジマトラカミキリ、ホソカミキリ、エグリトラカミキリもやって来ていた。それに、ずっとヤナギの小枝に注意して探していたアカアシクワガタの雄までいるではないか。これだから切り出された丸太巡りは止められない。
 更に付近には撮りたい撮りたいと思っていたナツズイセンも咲いていた。背景が近すぎて、すかっとした写真にはならないので絞りを開放にして、なんとか背景を暈して撮影した。また、近くに良さそうな林道があったので入ってみると、所沢ナンバーの車に乗った方がいて、ヤナギやヤマハンノキの木を見つめている。きっとヒメオオクワガタ狙いのマニアの方に違いない。しかし、吸水にやって来たカラスアゲハや美しいクサボタンに出会えた。それにしても良い丸太の積んである場所に巡り合って本当に助かった。もしそんな場所に出会わなかったら、午前中は恐ろしい程の貧果に泣いた事だろう。

<今日観察出来たもの>花/ナツズイセン(写真上左)、クサボタン(写真上右)、クズ、センニンソウ、キツリフネ、ツリフネソウ、フシグロセンノウ、オオハンゴンソウ等。蝶/カラスアゲハ、サカハチチョウ等。昆虫/アカアシクワガタ(写真中左)、ルリボシカミキリ(写真中右)、エグリトラカミキリ(写真下左)、キスジトラカミキリ(写真下右)、ヤツメカミキリ、ニイジマトラカミキリ、ウスイロトラカミキリ、ホソカミキリ、ゴマフカミキリ、シロヒゲナガゾウムシ、チャイロオオイシアブ、キマワリ、ミンミンゼミ、ヒナバッタ、アキアカネ等。


8月17日、長野県上田市丸子町

 台風10号はゆっくりと九州に近づいている。どうやら上陸しそうである。遠く離れているにもかかわらず、この影響で今日も関東地方は雨が降ったり止んだりの天気のようだ。しかし、長野県は晴れ時々曇りと予報されていた。上田市を流れる千曲川はやがて梓川と合流して、その名も信濃川と変わって新潟県を経て日本海に注ぐ。関東地方の川は全て太平洋に注ぐのだから、この違いは天気にもはっきりと現われるという訳である。このため愛車「小野路号」も、このところ「信濃路号」と名称を変えて、今日も上田市側へ行くこととなった。
 午前中は、千曲ビーナスラインという粋な名前の広域農道を走りながら、好ポイントと思える場所を散策するつもりであった。そこで若々しいクヌギ林が広がっている場所を見つけたので車を停めて外へ出た。すると「ここが信州?」と疑ってしまうほどの強烈な太陽の光と、じっとりと身体にまつわりつくような異常に湿度の高い空気に取り囲まれた。更に風も昨日のようにかなりある。やはり台風の影響なのだろう。この辺りの雑木林もかなり乾燥していて、樹液が出ている木は少ないものの、それでもオオムラサキに久しぶりに出会えて嬉しかった。雄はもうぼろぼろだが雌はまだまだ鑑賞に耐えられる鮮度であった。その他、これといった見るもの撮るもののない雑木林や畑を貫く小道で、なんと舞岡公園だけの特産品かなと思っていたアカスジキンカメムシの黒化型が見られたのには驚いた。なんとか撮影したいと思ったが、かなり高い幹に止っていたので断念した。また、こんな強烈な太陽光線の為に、棒の先に止まっているノシメトンボは陽の光を受ける面積を最小限にしようと倒立姿勢で頑張っていた。マユタテアカネはそんな芸当より日陰が良いわいと涼んでいた。どういう訳か真昼間なのにヤママユが飛んで来て、やはりもうすぐ秋なのだと実感した。
 午後からは国際音楽村周辺に場所を変えたが、状況にほとんど変化は無く、多摩丘陵では希少種となっているシロスジカミキリを見つけようと頑張ったが、その独特な産卵痕はクヌギやコナラの幹にたくさん見られるものの、その姿を見つける事は出来なかった。リンゴもヨウナシもカリンもみんな実が充実して大きくなり、上空にはトビが高く輪を描いて舞い、チョウゲンボウが勇ましく横切って行った。道路際にはたくさんのキクイモが咲いていたが、風が強くて撮影するのに本当に苦労した。午後3時を過ぎると黒い雲に覆われて雨が降って来た。以上のように、今日もこれと言った成果は無かったのだが、関東地方にいれば散策出来なかったはずなのに散策出来たのだから有り難い事だと思って、充分に昼寝をした後、ゆっくりのんびりと嬬恋村への帰路に着いた。

<今日観察出来たもの>花/キクイモ(写真上左)、ユウガギク(写真上右)、ダイコンソウ(写真中右)、ガガイモ、ワレモコウ、クズ、マルバルコウソウ、セリ、メマツヨイグサ、クサフジ、センニンソウ、カワラナデシコ、ユウスゲ等。蝶/オオムラサキ、ルリタテハ、キタテハ、メスグロヒョウモン、オオミスジ、コミスジ、イチモンジチョウ、ジャノメチョウ、クロヒカゲ、ツバメシジミ、テングチョウ等。昆虫/シロテンハナムグリ、ヨツボシオオキスイ、キマワリ、キボシカミキリ、アカスジキンカメムシ(黒化型)、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ノシメトンボ(写真下右)、マイコアカネ(写真下左)、ヒメアカネ、オニヤンマ、ヤママユ、ハグルマトモエ等。鳥/トビ、チョウゲンボウ、カルガモ、スズメ等。その他/カリン(写真中左)、ヨウナシ、リンゴ等。


8月16日、長野県上田市菅平

 関東地方は台風10号の影響で雨が降っているようである。しかし、鳥居峠を越えて長野県に入ると、抜けるような高原の夏の青空が広がっていた。花や蝶や昆虫に関しては、ほぼ順調にカメラの中に納めているが、今年はキノコの発生が少ないから鳥を撮ろうと、また菅平に行った。一昨日、自然館で出会った鳥撮りの方が、ダボスの丘と自然館の遊歩道が面白いと教えてくれたので挑戦することとなった訳である。そこで午前中は、ホオアカとノビタキが見られるというダボスの丘へ行った。しかし、台風の影響か風もかなりあって鳥の姿は少なかった。それでも丘の天辺まで登ると、根子岳や四阿山が雄大で、反対側には戸隠連峰も見えて、景観としては一級品であった。午後は自然館へ行ったがやはり鳥影は少なく、連日の疲れを癒すかのように車の中で昼寝となった。やはり8月の鳥撮りは難しいようである。

<今日観察出来たもの>花/マツムシソウ(写真上右)、キキョウ(写真上左)、ワレモコウ、マルバダケブキ、ハンゴンソウ、キツリフネ、ツリフネソウ、ノアザミ、クルマバナ、ヒレハリソウ、オカトラノオ、シシウド、ヤナギラン、メマツヨイグサ、オトギリソウ、ユウスゲ、コオニユリ等。蝶/アカタテハ、ヒメアカタテハ、エルタテハ、ミドリヒョウモン、ヒョウモンチョウ、アサギマダラ、ジャノメチョウ、コキマダラセセリ等。鳥/トビ、モズ、コゲラ、コガラ、メジロ等。


8月15日(午後)、群馬県群馬郡倉渕村西榛名広域農道

 去年と同じ食堂で去年と同じハムエッグ定食を食べた後、西榛名広域農道へ通ずる道を上がって行った。知らない場所の食堂で変わったものを頼むより、ハムエッグとか野菜炒めのような誰が作っても味がそんなに変わらないものがベストなのである。途中、棚田の脇に数本のクヌギが生えていて、去年はスミナガシを撮ったから期待して行ってみると、今日はサトキマダラヒカゲとクロヒカゲがたくさんいたのみでがっかりしたが、それでも貧果の時を想定して、サトキマダラヒカゲを撮った。また、付近にオオハンゴンソウ、オオケタデ、それにはじめて見る白花のヒレハリソウが咲いていた。
 更に登って行くと広域農道にぶつかるが、そこに去年は炭焼きの丸太がたくさん積んであったので、ルリボシカミキリやタマムシを期待したのだが、今年は丸太の数が減っていて、なんにもいなかった。そこで去年はオオゾウムシがたくさん見られた雑木林やカブトムシがうじゃうじゃいたクヌギの若木を見回ったが、ここにも何もいず、またまたがっかりした。僅かに多摩丘陵では見られないヤマジノホトトギスが一輪咲いていた。
 その後、雑木林があれば車を止め、樹液が出ていないか確かめながら車を走らせた。去年、大きなミヤマクワガタやカブトムシがいたクヌギ林に入ってみたが、ここもすっかり樹液が涸れていた。これはこれは、またしても今日も貧果、夏休みに一番楽しみにしていた場所は、ここと鹿沢高原である。あとはまあ付け足しのようなものである。そんな期待した場所で貧果とは、泣くに泣けない。涙の後に虹が出るのではなかったのかと暗雲が立ち込め始めた。しかし、なんと最後の期待した雑木林の一本のクヌギの木に、ミヤマクワガタの雄が1匹、ノコギリクワガタのペアが2組、それにスミナガシ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲが来ていた。それを見て虹どころか極彩色の光を見たような気分となった。もちろん、これでもかこれでもかとシャッターを切った。
 人生もそうなのだろうが道端自然観察においても、このようなラッキーな事が起こって、立ち込める暗雲が一挙に霧散し去ってバラ色になる事がしばしばある。例え駄目でも気持ちがほんの少し落ち込むだけだから、外れると大枚を失う競馬やパチンコとは其処が違う。それに身体を動かして澄んだ空気が吸えるのだから、例え外れても健康というお釣りが来るという訳である。話は大いに脱線したが、その後、アカアシクワガタを探して更に先に進んだが、ヤナギの小枝にはなにもいなかった。それでも意気揚々、鼻歌混じりで嬬恋村に引き上げた事は言うまでもない。

<今日観察出来たもの>花/オオハンゴンソウ(写真上左)、オオケタデ(写真上右)、ヒレハリソウ、アキノタムラソウ、キツネノカミソリ、ナツズイセン、クズ、ツリガネニンジン、ヘクソカズラ、ウツボグサ、シシウド、メマツヨイグサ、ヤマジノホトトギス、コバギボウシ等。蝶/スミナガシ(写真中左)、キタテハ、キチョウ、クロヒカゲ(写真中右)、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメ等。昆虫/ミヤマクワガタ(写真下左)、ノコギリクワガタ(写真下右)、コクワガタ、オニヤンマ、アキアカネ等。


8月15日(午前)、群馬県群馬郡倉渕村烏川渓谷公園

 昨日は実に見事な貧果に見舞われたので、今日こそはバラ色の道端自然観察にしようと、鹿沢高原と同じように去年成果がとても上がった倉渕村の西榛名広域農道を目指して出発した。その前に北軽井沢と倉渕村の境となる二度上峠を下った所にある、烏川渓谷公園周辺を散策することにした。公園といってもかつてのバブル期のお金がたくさんあった時に造られたもので、その後は手入れもされずに寂れている。しかし、そんな観光地化されていない場所は、私のような人間には大歓迎なのである。この近くにはわらび平森林公園という、いかにも良さそうな名称の公園があるのだが、ここはキャンプ場として開けてしまって、ほとんど見るべきものが無い。
 今日はこの辺りでオトシブミを期待したのだが、去年はたくさん見られたのに残念ながら見つける事が出来なかった。きっと少し季節が遅いのであろう。しかし、昨日雨が降ったので林道の水溜りには、美しいミヤマカラスアゲハやカラスアゲハが吸水に訪れていた。こんな時は撮影の絶好のチャンスなのだが、意外と人の接近を感知してなかなか撮らせてくれないものである。また、止っている場所が綺麗でないとなんとなくシャッターを切る気にはなれない。もし美しい砂地等にでもいたのなら、望遠レンズを使って粘り強く撮った事だろう。その他、コガラの幼鳥がたくさんいて、かなり近づいても逃げないのには驚いた。
 ここまで降りてくると植物相も多摩丘陵等の里山に近くなって、タマアジサイがたくさん見られ咲き始めていた。また、トモエソウが咲いていて、良く見るとビョウヤナギの花に似た作りで、なるほどオトギリソウ科の植物であるなあと納得した。路傍にたくさん生えているイタドリの葉を見ると、第2化のイタドリハムシがたくさんいた。春に見られる第1化のイタドリハムシは斑紋がオレンジ色で美しいが、今のものは少し濁ったような黄色でちょっと冴えないが、何でも撮っておこうと顔の方から狙ってみた。草食の昆虫は顔が可愛らしいものが多いが、触覚がぴんと立っていて、なかなか精悍な面構えである。また、アザミやヨモギにつく山地性のテングアワフキにも久しぶりに出会って嬉しくなった。
 以上、これといったものには出会えなかったが、クマやサルの出現がなければ、こんな深山幽谷の林道をのんびりと歩いて、一日を費やす道端自然観察もなかなか面白そうだなあと思った。地方の植物園に行けば、その土地の珍しい植物に出会える。また、有名な昆虫などの観察地に行けば、あぶれも少ないことだろう。しかし、名も知れぬ場所を散策して何に出会えるかとわくわくするのも、道端自然観察の醍醐味なのである。、

<今日観察出来たもの>花/ハンゴンソウ、オカトラノオ、タマアジサイ(写真上左)、キツリフネ、ツリフネソウ(写真中左)、クルマバナ(写真中右)、メマツヨイグサ、ミズタマソウ、オトギリソウ、トモエソウ(写真上右)、コマツナギ、センニンソウ、ヤマジノホトトギス、ツユクサ等。蝶/ミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、シータテハ、ルリタテハ、サカハチチョウ等。昆虫/テングアワフキ(写真下左)、ヒナバッタ(写真下右)、イタドリハムシ、エサキモンキツノカメムシ、アキアカネ等。鳥/コガラ、カケス等。


8月14日、長野県上田市菅平

 今年はキノコの発生が少なく、また、東御市にある雑木林のクヌギの木も切られてしまって、これはまったく困ったなあという事になった。そこで、道端自然観察には好印象を持っていないが、久しぶりに菅平でも行ってみよう、何でも屋に徹すれば、何とかなるのではないかと思った訳である。それでもいきなり菅平へ行っても左程の期待は持てそうもないので、まずは途中の菅平湖の周辺を散策してみた。これは良さそうだなあと思える林道に入ってみると、なんとカモシカが現われてびっくりしたが、その林道はすぐに行き止まりで引き返した。そこで別荘地に至る道に入って、適当な場所に車を停めて散策してみると、ツリバナがたくさん生えていて、その実が見事に垂れ下がっていた。また、クマヤナギの実が色付いていて、その実にエゾアオカメムシが無心に吸汁していた。
 しかし、これと言ったものが見られないなあとぼやきながら、菅平の自然館を目指して登って行った。中心部に近づくにつれて、人も車も一杯である。なんと信号待ちで渋滞まで発生している。道端自然観察には不適だが、スポーツ等の若者のリゾートとしては、すこぶる魅力があるのだろう。そんな訳で、やっと自然館周辺の遊歩道を散策してキマダラモドキに出会えた時は、まことほっとした。また、超望遠レンズで鳥を撮っている方がいて、この季節のこの周辺の鳥撮りのポイントを教えて貰った。どうやら鳥撮りに関しては、再挑戦してみるべきのようだ。
 その後、一杯900円のカレーを30分以上も待たされ、「人生楽ありゃ苦もあるさ、涙の後には虹も出る」と水戸黄門の主題歌を信じて、早々と菅平を後にした。きっと明日は美しい虹が出ることだろう。

<今日観察出来たもの>花/ウドの蕾(写真上右)、ハンゴンソウ、ヤマハハコ、オカトラノオ、ツリガネニンジン、ヒヨドリバナ、ビロードモウズイカ、イヌゴマ、ヒレハリソウ、ヤナギラン、アカバナ、メマツヨイグサ、ミズタマソウ、アサマフウロ、ゲンノショウコ、クサフジ、ダイコンソウ、チダケサシ、ボタンヅル、ユウスゲ、ウバユリ、ワレモコウ等。蝶/ミヤマカラスアゲハ、キアゲハ、シータテハ、ミドリヒョウモン、ジャノメチョウ、キマダラモドキ(写真上左)、クロヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、コキマダラセセリ、キバネセセリ等。昆虫/エゾアオカメムシ(写真下左)、トノサマバッタ、ミヤマフキバッタ、ヒナバッタ、セマダラコガネ、アカハナカミキリ、ルリボシヤンマ、ノシメトンボ、アキアカネ等。鳥/コゲラ、コガラ等。その他/ザリコミの実(写真下右)、クマヤナギの実、ヒョウタンボクの実、カモシカ等。


8月13日、群馬県吾妻郡嬬恋村鹿沢高原

 今日は本当にすがすがしいすっきりとした青空が広がった。広大なキャベツ畑の向こうに浅間山や四阿山がどっしりとそびえている。今日はきっと暑くなるぞ、ピーカンだから良い写真が撮れないぞ、とも思ったが、フィールドへ到着すると大きな雲が太陽を遮る事が多く、それ程暑くなく、またしっとりとした写真が撮れそうなのでほっとした。
 林道に入ってから要所要所で車を停めて散策しながら、徐々に登って行くという毎年のパターンを開始した。ヤナギの木がたくさん生えている場所に至ると、アカアシクワガタはいないかと小枝を見上げるのだが、今年も残念ながら見つけられなかった。しかし、幼虫がヤナギの葉を食べるコムラサキが紫色の羽を光らせて勇ましく飛んでいる。その飛び方は、オオムラサキ、ゴマダラチョウと同じで、コムラサキ亜科の蝶ならではである。
 ヒヨドリバナやヨツバヒヨドリが林道脇にたくさん見られる場所まで登って来ると、たくさんのアサギマダラが吸蜜している。本当にアサギマダラはヒヨドリバナの仲間の花が大好きである。また、大型で美しいミヤマカラスアゲハもたくさん見られるが、メマツヨイグサに吸蜜していて、なんとなく高原に相応しくないなあと苦笑いを浮かべた。コンクリートで斜面が土留めされた所や大きな岩が露出している所まで来ると、エルタテハ、シータテハ、キベリタテハが滲み出る液を吸汁している。今年も去年と変わらない風景や蝶が至る所で味わえて、「やっぱり鹿沢高原は良いなあ」とほくそ笑む。一番高い所まで登って来ると、ベニヒカゲがちらほら現われた。今年は様々な蝶の発生が遅れ気味と言われているが、ベニヒカゲの発生もこれからが本番のようである。そう言えば夏の高原を代表するヤナギランも、開花が始まったばかりのようだ。
 気ままにのんびり登って来たので、そこで早や昼食の時間となってしまった。もちろん民宿「わたらせ」へ降りて行って山菜天ぷら定食を注文した。今年もヤマブドウの芽がとても酸っぱくて美味しかった。午後からはいつもと異なって、湯の丸牧場の中の広い道に入ってみた。今日は牛が放牧されていないので、牛君に脅されることも無かろう。途中、水が滲み出ている場所があって、クジャクチョウ、エルタテハ、オオチャバネセセリ等が吸水に訪れていた。近づくと飛び立ったが、喉がとても渇いているのかすぐ近くに止ってくれる。以上、昨日は荒れ模様の天候も手伝って、とんでもない貧果に泣いたが、今日は打って変わっての上々の成果で、「山菜天ぷら定食も食べたし、今日が本当の意味での夏休み初日だよね」と心の中でつぶやいて、口笛吹いて引き上げた。

<今日観察出来たもの>花/ヤナギラン(写真上左)、オグルマ、マルバダケブキ、ヨツバヒヨドリ、コウリンカ、ノコギリソウ、ヤマハハコ、ヤマホタルブクロ、ウツボグサ、シシウド、ウド、アカバナ、メマツヨイグサ、オトギリソウ、アサマフウロ、ゲンノショウコ、クサフジ、ダイコンソウ、オニシモツケ、シモツケソウ、チダケサシ、キリンソウ、ヤマオダマキ、カワラナデシコ、コオニユリ、ワレモコウ、ツリガネニンジン、タムラソウ、シモツケ、ノリウツギ等。蝶/キアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、キベリタテハ、シータテハ、エルタテハ(写真中右)、クジャクチョウ(写真中左)、ミドリヒョウモン、ヒョウモンチョウ、サカハチチョウ、フタスジチョウ、コムラサキ、アサギマダラ、ヒメキマダラヒカゲ(写真下左)、クロヒカゲ、ベニヒカゲ、オオチャバネセセリ(写真下右)、コチャバネセセリ等。昆虫/ヒョウモンエダシャク(写真上右)、キンモンガ、アキアカネ、コノシメトンボ、ホソヒラタアブ等。


8月12日(午後)、長野県上田市上田市民の森

 午後からはどうしようかな、初日だから買い物でもして早く帰ろうかなと思ったが、鳥居峠を越えて信州へ行けば雨が止んでいるかもしれないと車を走らせた。この思惑は正解で道路は乾いていたが、期待していた東御市にある雑木林のクヌギの木は伐採されていて天を仰いだ。それならば、去年緑色のアイタケが爆生していた上田市民の森へと行ってみた。しかし、キノコの姿はまるっきり見られない。キノコが無ければ魅力の無い所だから、何でも撮ろうと気を取り直して散策を開始した。多摩丘陵では、ほとんど見られないダンコウバイがたくさん実をつけていたいたのでシャツターを切った。その他、カワラナデシコ、ボタンヅル等が咲いていたが今一で、トチノキの幹にいたツノアオカメムシを撮った。今年の夏休みは駄目そうだなと暗い思いが脳裏を掠めたが、まあ頑張ってみるしかあるまいと、雨と涙の初日は終了した。

<今日観察出来たもの>花/カワラナデシコ、ヘクソカズラ、ハエドクソウ、カセンソウ、クズ、ガガイモ、オニユリ、メマツヨイグサ、クサフジ、ダイコンソウ、ボタンヅル、ヨウシュヤマゴボウ、オオバギボウシ等。蝶/シータテハ、ルリタテハ、ジャノメチョウ、キマダラモドキ、クロヒカゲ等。昆虫/ツノアオカメムシ(写真上右)、オニヤンマ、ノシメトンボ、コノシメトンボ、アキアカネ、ミンミンゼミ、アカハナカミキリ、アオカナブン、ゴマフカミキリ等。その他/ダンコウバイの実(写真上左)等。


8月12日(午前)、群馬県吾妻郡嬬恋村バラキ湖

 昨日の夕暮れに嬬恋村に無事に到着した。もっと早く着くつもりであったのだが、環状8号線が、今まで経験したことの無いほどの混み具合であったのだ。一晩明けて、いよいよ今日が10日間の夏休みの初日である。しかし、天気予報によると曇りだが、午後から激しい雷雨がやって来るとあった。こんな日は蝶はあまり飛ばないだろうから、花を中心とした午前中だけの勝負だとばかりに、バラギ湖へ行った。
 毎年夏になると必ず会いたくなる花がある。朱赤の美しい花であるフシグロセンノウだ。これから様々な所へ出かけると思うが、上信越国境付近には少ない花である。しかし、なぜかバラギ湖には普通に見られる。フシグロセンノウが好きになったのは大学1年の頃、自然が好き山が好きという高校時代のお仲間と大菩薩峠に行った時に、たくさん咲いていて魅了されてしまったのだ。しかし、そのお仲間の女性がもう二人もあの世に召されてしまって、ほんの少し前に感ずるのだが、実は月日は膨大に過ぎ去ったのである。
 フシグロセンノウを無事に撮り終えると、キマダラモドキとクロイトトンボを撮ろうと湖に下りて行った。すると、カメラをぶら下げたお仲間らしい方に出くわした。安中市から来た地元の方で、少し話していると、「もしかしたら道端の方?」と質問されてびっくりした。まさかこんな遠い所で、私のHPをご覧下さっている方に出会うとは思わなかったのである。その方は連休に行った赤城山で、ヒメギフチョウの保護に努めている会の方でもあったのだ。
 しばし一緒に散策した後、急速に空は暗くなり雨がシャワーのように降って来た。時計を見るとほぼ12時、今日のバラギ湖はそんな訳で貧果となってしまったが、美味しいご飯の炊き方は、「始めチョロチョロ、中パッパ」と言われているからと慰めて車に乗った。

<今日観察出来たもの>花/フシグロセンノウ(写真上左)、オトギリソウ(写真上右)、シラヤマギク(写真下左)、ヨツバヒヨドリ、マルバダケブキ、オオハンゴンソウ、ハンゴンソウ、イヌゴマ、クルマバナ、オカトラノオ、クサレダマ、シシウド、ウド、コオニユリ、ミズタマソウ、トモエソウ、チダケサシ、ヤマオダマキ、ツリフネソウ、キツリフネ、コバギボウシ、ワレモコウ、ノリウツギ等。蝶/ミヤマカラスアゲハ、コミスジ、ミドリヒョウモン、ヒョウモンチョウ、アサギマダラ、ジャノメチョウ、ベニシジミ、コキマダラセセリ等。昆虫/アカハナカミキリ(写真下右)、マメコガネ、アキアカネ、イカリモンガ等。


8月10日、東京都葛飾区水元公園

 今日は台風一過の青空で、気温がぐんぐん上がる事が予想された。どうしようかな?行くのは止そうかな!とも思ったが、なんたって水が足元にまんまんとあるのだから水元公園であって、いくらか涼しい筈と電車に乗った。正門を入ってすぐの売店裏から食事の出来る涼亭にかけての、小合溜と呼ばれる大きな池のほとりの杭に、今年もウチワヤンマがたくさん止ってテリトリーを張っていた。今日は180ミリマクロを持参したので、簡単に撮影出来た。更に進んで水辺ゾーンの小川には、今日の目的であるチョウトンボがひらひらと飛んでいた。去年に比べるとその数は少ないものの、4、5匹は飛んでいる。他のトンボに比べると飛翔がゆっくりだから、撮ろうと思えば飛翔写真も撮れたかもしれないが、葦の葉に止るものを撮影した。なんだかその場所がとっても気に入ているのか、そよ風が吹いてもじっとしてくれていたので、風が止むのを待って慎重に撮影した。
 これで早くも今日の目的であるウチワヤンマとチョウトンボをゲット出来たので、心の中はにんまりとしているものの、やはり暑さでばでばてとなった事は言うまでもない。イトトンボを撮ろうとバードサンクチュアリーの方へ歩いて行ったが、もうイトトンボを撮る元気がなくなった。野鳥観察施設の窓から池を覗いて見ると、カワセミ、カワウ、チュウサギがたくさん見られた。しかし、日向は耐えられませんと、少し戻った雑木林で休んでいると、なんとコナラの樹液にコムラサキが3頭、ルリタテハが2頭、その他、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメが吸汁しているのを発見した。水元公園にコムラサキが生息している事は知っていたが、ここは東京23区内である。ばしばしシャッターを切った事は確かだが、蝶達が押しくら饅頭をしていて落ち着いてくれないから、じっくり撮る事が出来なかった。

<今日観察出来たもの>花/ゲンノショウコ、ワルナスビ、オカトラノオ、ヘクソカズラ、ヤブガラシ等。蝶/アオスジアゲハ、クロアゲハ、キアゲハ、コムラサキ(写真上左)、ゴマダラチョウ、ルリタテハ、ヒメジャノメ、サトキマダラヒカゲ、ヤマトシジミ、ルリシジミ、ベニシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/ウチワヤンマ(写真下左)、チョウトンボ(写真下右)、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、シオカラトンボ、コフキトンボ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ(写真上右)、ツクツクボウシ等。鳥/カルガモ、カワセミ、カワウ、チュウサギ等。


8月9日、横浜市港北区綱島公園

 上陸が心配された台風7号は進路を北東に変えて、房総半島を掠めるようなコースを通った。お陰さまで台風による被害は、ほとんど無かったようである。今日は一日中雨の筈であったが、夕方になって雨が上がった。それでも空を見上げると、台風の影響による不気味な雲が立ち込めていた。そこで美味しく夕飯を食べるために、散歩がてらに綱島公園へ行った。途中の小さな公園では、アブラゼミやミンミンゼミがうるさいほど鳴き、公園に上がる小道の脇には、キツネノカミソリが大群落をつくって咲いていた。しかし、三脚を立てて風の止むのを待っていると、薮蚊の大集団に取り囲まれてしまった。こんな雨上がりのじっとりする時は、いつもよりたっぷりと防虫スプレーを降りかけても、飢えた薮蚊の猛襲を防ぐ事が出来ない。綱島公園にはルリタテハがテリトリーを張っていて、雲間から射す陽の光に、瑠璃色の帯が美しく輝いていた。

<今日観察出来たもの>花/キツネノカミソリ(写真上左)、ヒヨドリジョウゴ、ヘクソカズラ、ツユクサ、アカツメクサ、ヤブガラシ、ノウゼンカズラ、ムクゲ、サルスベリ等。蝶/ナガサキアゲハ、クロアゲハ、アゲハ、モンシロチョウ、ルリタテハ、ヒメジャノメ、サトキマダラヒカゲ、ヤマトシジミ、ルリシジミ等。昆虫/アブラゼミ(写真上右)、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ニイニイゼミ、アオオサムシ、キマワリ、アオバハゴロモ、ベッコウハゴロモ等。


8月8日、横浜市港北区新羽町

 長期の夏休みの前に、チョウトンボとウチワヤンマ、近くの公園で各種のセミを撮ろうと思っていた。しかし、日本近海には、なんと3つの台風がある。そのうちの一つである台風7号が、東海地方に近づいている。このため、今日、明日と雨が降り続く模様だ。台風には敵いませんと、すっかり諦めていたら、午後になって雨が止んだ。そこで至近距離の新羽町へ、ほんの短時間だが出かけてみた。民家の庭先に咲いているヒャクニチソウがとても綺麗だ。近寄って見ると、なんとオンブバッタの子供が花の上に鎮座している。どうやら花弁を食べにやって来たようである。また、鶴見川の土手下にあるオオブタクサ(クワモドキ)の茎には、美しいスケバハゴロモやベッコウハゴロモ、そしてアオバハゴロモがびっしりとついていた。ガソリン代をかけて小野路まで行かなくとも、こんな近くにスケバハゴロモがいたんだと驚いた。

<今日観察出来たもの>花/ヘクソカズラ、ガガイモ、ツユクサ、アカツメクサ、ヤブガラシ、ヒャクニチソウ、キバナコスモス、ムクゲ、サルスベリ等。蝶/アオスジアゲハ、アゲハ、モンシロチョウ、ヒメアカタテハ、ヒメジャノメ、サトキマダラヒカゲ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ等。昆虫/オンブバッタの幼虫(写真上左)、アオバハゴロモ(写真上右)、スケバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、クロカナブン、カナブン、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ等。


8月6日(午後)、東京都町田市小野路町

 午後からは、これも久しぶりに小野路町へ行った。最近、自宅近辺の緑区や都筑区、そして舞岡公園へ行っていれば、撮りたいものがたいがい撮れてしまうので、足が遠のいていたのだ。お陰さまで車のガソリンはほとんど減らなかったが、今日久しぶりに給油してみると、なんと1リットルが144円となっていた。これでは益々遠くに行きにくくなるなあと眉をしかめた。
 毎年8月になると決まって小野路町にスケバハゴロモを撮りに行く。セミやカメムシの仲間が所属する半翅目の中に、ハゴロモ科という優雅な名前の科がある。きっと漢字では羽衣と書くのだろう。そこで国語辞典を開いて見ると、「天人が着たという鳥の羽で作った衣」とある。そのハゴロモ科の昆虫は数種程で、多摩丘陵では、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、スゲバハゴロモの3種類が見られる。この中でもスケバハゴロモは、ミンミンゼミのような透き通った羽を持っていて一番美麗である。このハゴロモを見たいと舞岡公園へ通って来るご婦人が毎年探しているのだが、まだ舞岡公園では未発見となっている。しかし、小野路まで来るとオオブタクサ(クワモドキ)の茎に、たくさん吸汁しているのだから堪らない。また、このハゴロモは3種の中で一番しんがりに発生し、いつも梅雨の明けたかんかん照りの8月からである。今日も幼虫がまだ見られたが、みんな成虫になったばかりのぴっかぴかのまさに羽衣の姿であった。
 今日の小野路は黒川同様に貧果に泣いたが、それでも、ネムノキの葉にキチョウの幼虫や蛹がたくさん見られて嬉しくなった。もうすぐ長期の夏休みに入る。こんど小野路を訪れる頃には、様々な秋の美しい花が咲き、多くの秋の虫が鳴いている事だろう。

<今日観察出来たもの>花/ヤマホトトギス(写真上右)、キツネノマゴ、アキノタムラソウ、ヤブミョウガ、ヤブラン、ヤブガラシ、ハス、ミソハギ等。蝶/キチョウの蛹(写真下左)、アオスジアゲハ、キアゲハ、ゴマダラチョウ、ルリタテハ、キタテハ、コミスジ、イチモンジチョウ、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、ツバメシジミ、キマダラセセリ等。昆虫/スケバハゴロモ(写真下右)、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、クロカナブン、カナブン、ヤマトフキバッタ、ササキリの幼虫、オニヤンマ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、ウスバキトンボ、コシロシタバ等。キノコ/シロオニタケ等。鳥/ホトトギス等。その他/コガネグモ(写真上左)等。


8月6日(午前)、川崎市麻生区黒川

 昨日、涼しい雑木林の中で樹液に集る蝶や昆虫を、これでもかと撮ってしまったので、これといった撮りたいものが無くなってしまった。今日もうだるような暑さだから、太陽が照りつける所なんか歩きたくない。そこで日陰の道端で何か撮ろうと、午前中は久しぶりに黒川へ行った。しかし、この思惑は見事に外れて、これといったものには出会えなかった。こう暑いとたとえ日陰でも昆虫達は姿をくらまし、また、咲いてる花も少なかった。それでも田んぼにはオモダカが純白にたくさん咲いていたが、曇り日でないとしっとりと撮れないのでシャッターを切らなかった。今日一番驚いたのはアカボシゴマダラである。黒川は多摩市に隣接する川崎の外れだから、やはり一本杉公園や長池公園へのアカボシゴマダラの進出は、これで確定的となった。野性の生命力の逞しさは本当に凄まじいものがある。

<今日観察出来たもの>花/ヘクソカズラ(写真上左)、ヤマユリ、オモダカ、ミズタマソウ、ハキダメギク、キツネノマゴ、アキノタムラソウ、セリ等。蝶/アオスジアゲハ、アカボシゴマダラ、イチモンジチョウ、コミスジ、キマダラセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、スケバハゴロモ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ、オニヤンマ等。その他/アズチグモ(写真上右)等。


8月5日、横浜市緑区三保町

 朝起きたらかんかん照り、今日も昨日以上に気温が上がりそうである。「おお暑いよ、行くのが嫌だよ、熱中症で倒れちゃうよ!」との声が聞えて来る。それとは逆に、「みんなゴマダラチョウを撮っているのに、今季、花虫さんだけはノーゲット!」なんて声も聞えて来た。そこで雑木林の中ならなんとか耐えられそうなので、緑区三保町へ出かけた。かつて自宅近辺で唯一、クヌギの樹液に来ているものを撮った所である。ここで撮れなければ長津田町へ行って、とにかく今日はゴマダラチョウと心中だと、何故か気持ちだけは意気軒昂である。
 車をいつもの所へ停めようとしたら日陰がない。久しぶりに午前中に来たし、夏の太陽は真上なのだから仕方が無い。最近購入したクラッシック名曲集CD50枚がパーとなったら困るので、開けられる窓はすべて10cm位開けた。なるべく日陰を選んで雑木林に到着すると、早くもクヌギの樹液に蝶が来ている。ゴマダラチョウ?と期待して近づいたら、アカボシゴマダラである。更に付近に数頭のアカボシゴマダラが乱舞している。噂によると、藤沢市あたりの蝶愛好家が中国産のものを誤って放蝶し、定着して勢力を拡大しているのだという。はじめ舞岡公園でこの蝶を見た時、その美しさに、「よくぞ放蝶してくれました」と手をたたいたが、我が住む近在まで勢力を伸ばして来ると、「君は湘南地方や戸塚区にいれば良いの、来ないで下さい!」と言いたくなる。しかし、それでもその美しさにシャッターを切った事は言うまでもない。
 アカボシゴマダラを撮り終えると、背後のクヌギに何か蝶が来ているのを見つけた。どうせジャノメチョウかサトキマダラヒカゲだろうと近づいてみると、なんとなんと小型だがオオムラサキの雄ではないか。横浜市内では約15年ぶりの再会である。絶滅したのではなかったの?誰かが飼育したものが来ているの?と疑問符が並んだが、逃げられないように慎重に近づき撮影した。無事に撮影が終わると、今度はお目当てのゴマダラチョウが飛んで来て、別のクヌギの樹液を吸い始めた。これまた静に近づいてシャッターを切り、再生画像を液晶ディスプレイで確認すると、美しい姿がしっかりと写っていた。これでコムラサキ以外の同じような生態を持ち、幼虫もすこぶる格好が似ているタテハチョウ科コムラサキ亜科の蝶を、ほんの短時間の内に3種もゲットしてしまったことになる。
 と言う訳で、それからは気分爽快、ルリタテハやサトキマダラヒカゲを撮り、なぜかおとなしくしているオオスズメバチまで撮影した。これだから例え暑くとも、止められない止らない道端自然観察という訳なのである。今日は以上のようにカメラも心も満腹し、お腹を満腹にした後に早々と帰宅した。

<今日観察出来たもの>花/ハエドクソウ、ツユクサ、ヒレアザミ、ヤマユリ、ムクゲ等。蝶/オオムラサキ(写真上左)、ゴマダラチョウ(写真中左)、アカボシゴマダラ(写真上右)、ルリタテハ(写真中右)、キタテハ、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ(写真下左)、アオスジアゲハ、キチョウ、コミスジ等。昆虫/ヒグラシ、オオスズメバチ(写真下右)、カブトムシ、クロカナブン、ウスバカゲロウ等。その他/ハナイカダの実等。


8月4日、横浜市都筑区茅ヶ崎公園

 今日は朝から気温がぐんぐん上がり、外へ出るとくらくらして倒れそうな陽気となった。こんな日はクーラーのきいた部屋の中にいるのが一番で、道端自然観察なんて糞食らえである。そんな訳で日頃溜まった疲れを一日中とっていたのだが、ふとナイターに出かけたくなった。ナイターと言っても野球ではなくて、セミの羽化を観察しに行くという訳である。かなり以前、セミの羽化に熱中して、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミの羽化の全過程を写真に撮ったものである。しかし、何故かその場所にはミンミンゼミがいなかったので、撮影する事が出来ずに心残りとなっていた。そこでミンミンゼミがたくさんいる茅ヶ崎公園へ行ってみた。するとミンミンゼミの羽化が一番多く観察出来て嬉しくなった。次いでアブラゼミ、そしてニイニイゼミの羽化はもう終わっているようであった。

<今日観察出来たもの>花/カラスウリ等。昆虫/ミンミンゼミの羽化(写真上)、アブラゼミの羽化、ニイニイゼミの脱殻、ナナフシモドキ?、アオバハゴロモ等。


8月3日、横浜市戸塚区舞岡公園

 先月は、ウィークエンド・ナチュラリストが、まるでエブリデー・ナチュラリスに変身してしまったかのようにフィールドへ出かけ、疲労と後悔が残った。そこで8月は、お盆の頃に群馬県嬬恋村へ長期の静養兼写真撮影に出かけるので、それ以外の日は、本来のウィークエンド・ナチュラリストに戻ろうと固く決意した。しかし、今日目が覚めてこのHPの掲示板を見ると、「舞岡公園の畑の中の桑の枯れ木で、タマムシを見つけました」なんていう衝撃的な投稿が載っているではないか。これを見て前述した固い決意も、今日は3日間の遠征の疲れをとるんだという予定も吹っ飛んで、舞岡公園へ吹っ飛んで行った。
 しかし、真っ青な夏空が広がり、ミンミンゼミの声がシャワーのように降り注ぎ、ヒマワリも僕の季節がやって来たよと、誇らしげに咲いていた。長かった梅雨は完全に明けて、日本の夏が舞岡公園全体を包んでいた。それでも、タマムシがいたという場所に急いで駆けつけ、念入りに桑の枯れ木を調べて見たが、タマムシどころか何もいない。固く乾涸びたアラゲキクラゲが張り付いているだけであった。それならば、他の花や虫を撮ろうと気を取り直して歩いてみたが、前回はあんなに多かった昆虫達の姿が見られない。みんなこの暑さと日差しに参って、草むらに隠れてしまったようである。もちろん、ナガサキアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハ、クロアゲハ等が地面に吸水に来ていたものの、人工的な砂利がひいてある上だから撮る気が起きなかった。
 しからば、クヌギの樹液に来ているアカボシゴマダラを撮ろうと雑木林に行ってみたが、今年は樹液の出がとても悪く、昆虫の姿はまったく見られなかった。お隣の鎌倉市の鎌倉中央公園では、じゅくじゅくと樹液が湧いているらしく、アカボシゴマダラの素晴らしい写真を撮られた方がいるというのに、これでは樹液に吸汁するアカボシゴマダラ等の蝶を、今年は舞岡公園では撮れそうにないと感じた。以上、午前中はとても空しく過ぎて、花虫とおるの楽園だった八ヶ岳高原の素晴らしさが甦って来た。夏の高原と平地の公園とを比べること自体ナンセンスなのだが、それ程までに貧果であったという事なのだ。
 そこで午後に期待したが、もう夕方に近い午後3時過ぎになって、やっといつもの舞岡公園が復活して、様々な昆虫が見られるようになった。ことにお惚け顔のアカハネナガウンカがたくさん見られ、ばしばしとシャッターを切った。今日はそんな訳で、やはり夏は、涼しい朝夕か、曇り日でないと成果が上がらないとの、分かりきっている教訓を噛み締めた一日となった。

<今日観察出来たもの>花/ヒマワリ(写真上左)、キツネノカミソリ、カワラナデシコ、ヤマユリ、オトギリソウ、ミゾカクシ、ヨウシュヤマゴボウ、キツネノマゴ、アカツメクサ、イモカタバミ、アキノタムラソウ、クマヤナギ、コムラサキ、ノウゼンカズラ等。蝶/キタテハの幼虫(写真下左)、キタテハの卵(写真下右)、アオスジアゲハ、ナガサキアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハ、クロアゲハ、アゲハ、キアゲハ、キチョウ、テングチョウ、アカボシゴマダラ、イチモンジチョウ、コミスジ、キタテハ、ジャノメチョウ、サトキマダラヒカゲ、ウラギンシジミ、イチモンジセセリ、コチャバネセセり、ダイミョウセセリ等。昆虫/アカハネナガウンカ(写真上右)、トラフカミキリ(写真中右)、キバラヘリカメムシの幼虫(写真中左)、カブトムシ、ヨツスジトラカミキリ、キマワリ、ハスジカツオゾウムシ、トホシオサゾウムシ、スグリゾウムシ、エゴヒゲナガゾウムシ、ササキリの幼虫、ホソアシナガバチ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、エサキモンキツノカメムシ、クサギカメムシ、キバラヘリカメムシ、ホオズキカメムシ、マドガ、オニヤンマ、ギンヤンマ、ウチワヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、ウスバキトンボ等。鳥/ウグイス、スズメ、カルガモ等。キノコ/イヌセンボンタケ、アラゲキクラゲ等。その他/アマガエル、オニグルミの実、ウツギの実等。


8月1日、長野県南佐久郡南牧村八ヶ岳高原

 朝起きたら昨日と同様に霧が立ち込めていた。また、8月に入ったというのに、信じられない位の気温の低さである。昨晩の天気予報では、午後3時頃から雨が降るとあっが、どうにか最終日も持ちこたえてくれそうである。今日は例え曇り日であっても、ここまで来たのだから八ヶ岳高原へ行こうと、清里ユースホステルを出発した。しかし、なんと運が良いことだろう、長野県に入って野辺山駅を過ぎるあたりから青空が広がって来た。キャベツやレタス等の高原野菜の広大な畑、その向こうの白樺林やカラマツ林、そして背後に黒々とそびえる八ヶ岳連峰、やっぱり高原は青空が似合うなと、ほくそ笑んだ。
 今日は海ノ口自然郷の別荘地にある美鈴池で、一日を過ごすつもりであった。午前中は蝶と花を中心に散策し、午後からはデジスコを担いで鳥撮りのつもりでいた。駐車スペースに車を停めるやいなや、其処からが蝶々一杯、花々一杯の天国のような世界である。蝶ではことにミドリヒョウモンがとても多く、オカトラノオの花に佃煮にする程群れていた。オカトラノオはその他の蝶にも好まれるらしく、スジボソヤマキチョウ、ウラジャノメも見られた。花ではシモツケが至る所にたくさん咲き、クサレダマ、コオニユリ、コウリンカ、シモツケソウ、チダケサシ、ウツボグサ等、本当に沢山の美しい花が咲いてる。別荘地回りでも、ヒヨドリバナにミドリヒョウモンは勿論の事、美麗なアサギマダラやメスグロヒョウモン、ヒメキマダラヒカゲが吸蜜に訪れていた。その他、蝶ではなく蛾であるが、トンボエダシャクがもういいよというばかりに群れていた。本当に、夢のような世界に浸って夢遊病者のように散策し、午前中はあっと言う間に過ぎてしまった。まさに「花虫とおる」の為に用意されているが如くで、高原だから薮蚊も御出ましにならないから、ほほいのほいと口笛を吹きたくなる位快適であった。
 午後からは花虫に未練たっぷりだったが、折角、遠路遥遥デジスコを持って来たのだからと、鳥撮りを始めた。しかし、一番の野鳥のポイントと踏んでいた美鈴池の周りには、鳥の姿はまったく無かった。去年、6月下旬に来た時には、バーダーの方もたくさんいたのになあと不思議に思った。きっと、夏休みに入って大勢の別荘の方々がやって来ているのだから、当然の事なのかもしれない。そこで標高を下げて、人のほとんど来ない海ノ口牧場のレンゲツツジが点在する草原へ行ってみた。ここではカッコーが鳴き、小鳥の囀りが聞えるものの、なかなか鳥の姿を目にすることが出来ない。姿を確認出来たものは、平地でもおなじみのカワラヒワとホオジロだけであるからシャッターを切る気にもなれない。しばらくデジスコを担いで散策したが、ふと目に止ったミズナラの幹に、キマダラモドキが乱舞していた。どうやら樹液が出ているようで、この他に、エルタテハ、ジャノメチョウも吸汁に訪れていた。そこで、このまま鳥撮りを続行するより、蝶に的を絞った方が得策だと判断し、一般撮影に切り変えて散策したら、やはりヒヨドリバナに各種の蝶が訪ずれていて、久しぶりにミヤマカラスシジミやヘリグロチャバネセセリの可愛らしい姿をカメラの中に納める事が出来た。
 しばらく我を忘れて撮影に徹したが、時計を見るとなんと早や午後3時、帰宅する時間である。もちろん後ろ髪を引かれる思いがしたが、潔く機材を畳んで八ヶ岳高原を後にした。この例年とは違った少し遅い3日間の遠征だったが、とっても面白く、これからこのコースを毎年の恒例の遠征にしようかなあと心に決めた。

<今日観察出来たもの>花/コオニユリ(写真上左)、クサレダマ(写真上右)、コウリンカ、ノコギリソウ、ノアザミ、ヤマホタルブクロ、ミヤコグサ、クガイソウ、ヤマオダマキ、ウツボグサ、ツリフネソウ、キツリフネ、オカトラノオ、シシウド、ウド、アレチマツヨイグサ、クサフジ、シモツケソウ、シモツケ、チダケサシ、キリンソウ、ボタンズル、フシグロセンノウ、ノハナショウブ、ヒヨドリバナ、ノコンギク、マツムシソウ、ワレモコウ、カワラナデシコ等。蝶/カラスアゲハ、アサギマダラ(写真中上右)、コムラサキ、シータテハ、エルタテハ、フタスジチョウ、ミドリヒョウモン(写真中上左)、メスグロヒョウモン、ウラギンヒョウモン、ジャノメチョウ、ウラジャノメ(写真中下右)、キマダラモドキ、ヒメキマダラヒカゲ、スジボソヤマキチョウ(写真中下左)、ミヤマカラスシジミ(写真下左)、ヘリグロチャバネセセリ?(写真下右)、イチモンジセセリ等。昆虫/アキアカネ、セマダラコガネ、イカリモンガ、トンボエダシャク等。鳥/アカハラ、カッコウ、ホオジロ、カワラヒワ等。



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