(4)葉っぱが大好き葉虫です
《イタドリハムシ・コガタルリハムシ・ウリハムシ》



 春の野山は食用になる木の芽や野草が沢山あって、八百屋さんの野菜では味わえない独特のほろ苦さが何とも言えない。写真撮影に熱中していて山菜摘みに割く時間が無いのが残念だが、そのうち一度は山菜三昧に浸ってみたい。片側が山裾で反対側が水田になっている谷戸の小道を歩いていると、アスパラガスのような格好の美味そうな草の芽が伸びている。普通、山裾側に生えているのがイタドリで、水田側に生えているのはスイバ(スカンポ)である。イタドリの葉の汁は虫刺されに効果があり、痛みを取るから『疼取り』と名が付いたと本にある。煮たり塩漬けにして食べると美味しいらしい。また、スイバはフランスでは多くの品種が作り出されていて、ソレルという名でお店で売っているという。調理法はホウレンソウと同じ料理法で食べれば良いとあるから、試してみてはいかがだろうか。スイバもイタドリも共にタデ科の植物で、シュウ酸を含んでいて酸っぱいが、生のままで食べてもなかなかいける。
 こんなに美味しい植物なのだから昆虫が見逃すはずは無く、イタドリの葉に注意しているとテントウムシに極似した甲虫に出くわす。“あ、テントウムシだ”なんて言わないで欲しい。その名もずばりイタドリハムシである。体型もテントウムシ程丸くなく触覚も長いが黒地にオレンジ色の模様を持ち、テントウムシに変身しようと一生懸命頑張っている。実はテントウムシの赤と黒の派手な模様は“私は食べても不味いですよ”と、天敵たちに発している警戒色なのである。テントウムシを素手で捕まえると脚の関節から黄色い液が滲み出て手が汚れ、不快になった経験のある方も多いと思う。恐らく天敵が食べたら気持ちが悪くなってしまうのだろう。イタドリハムシはテントウムシにちゃっかり真似て、天敵から身を守ろうとしているのである。イタドリハムシのもう一つの特徴は、近づくと素早く接近を察知して、ポロリと地面に落ちてしまことである。小さいながらも感心するほどの防御体勢の持ち主である。
 スイバにも目がないハムシがいる。藍色の金属光沢を持つコガタルリハムシである。ス
イバの他に近縁のギシギシも大好きで、葉が開く頃は越冬した成虫が葉をほうばっているだけだが、春が進むに連れて、群れをなす幼虫に食い荒らされて葉脈だけが残り、見るも無残な茶褐色の網目状となった株に良く出くわす。幼虫は目を背けたくなるような黒い蛆虫で、このころになると成虫はほとんど姿を消してしまう。だから、心優しいご婦人達には春早くの観察をお勧めする。この他、もう少し暖かくなれば、カボチャの葉にウリハムシが、カラスウリの葉にクロウリハムシが、生け垣のサンゴジュにサンゴジュハムシ等のハムシの仲間が見られるから、目を皿のようにして探して欲しい。

<写真>スイバの葉につくコガタルリハムシ、ムナキルリハムシ、カボチャの葉につくウリハムシ、カラスウリの葉につくクロウリハムシ、イタドリハムシ、クロボシツツハムシ。

 
<各種のハムシたち>

トビサルハムシ/アカガネサルハムシ/アカクビナガハムシ/アトボシハムシ










チャバネツヤハムシ/フタホシオオノミハムシ/イモサルハムシ/カタクリハムシ










キベリクビボソハムシ/クルミハムシ/ニレハムシの仲間/オオアカマルノミハムシ










ルリマルノミハムシ/サンゴジュハムシ/ヤツボシツツハムシ/ヨツキボシハムシ











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