(60)落ち葉めくりは宝物探し
《オオムラサキ・ゴマダラチョウ・エサキモンキツノカメムシ》
昆虫たちの越冬場所は、樹木の幹や小枝、朽ち木や土の中、草むらや物置小屋、塀や土留めなどだけではない。落ち葉の裏側や樹木の樹皮下も、昆虫たちの格好の越冬場所である。まず初めに、何処でも誰でも出来る落ち葉めくりに挑戦してみよう。観察に好適な天候は、寒ければ寒いほど良い。なぜなら、葉の裏側に越冬する昆虫たちが寒くて動けない分、じっくりと観察できるからである。観察場所は、これまた日が当たらない北側斜面の方が良く、以上のようなことから、防寒対策を万全にしないと楽しい観察は望めない。また、手の汚れや皮膚にトゲが刺さったりしないように、また、昆虫や各種の小動物が冬眠して動かないとはいえ、時にはミミズやヤスデ、ナメクジなどの余り触れたくないものが出てくることもあるので。軍手は必携のアイテムである。
シーズン最初にまず観察してほしい昆虫は、食樹であるエノキの根際の落ち葉の裏側で越冬する、オオムラサキやゴマダラチョウの幼虫である。食樹のエノキさえ見つければ観察はとても簡単である。オオムラサキやゴマダラチョウの母蝶は、南斜面の良く陽が当たる乾燥する場所は、落ち葉が木枯らしに吹き飛ばされてしまうこと知っているのだろうか、日陰の風が吹き止まるような場所の方がたくさん発見できる。落ち葉はエノキの葉ばかりでなく、根際から半径50cm位の範囲の全ての葉をめくる必要がある。たくさんいる場所は、根際といえども温度差が少ない北側の方が多いようである。また、他の落葉広葉樹の同じような場所で、例えば、ミズキの根際に溜まっている落ち葉をめくってみると、白いオムツをはいたようで可愛いアカスジキンカメムシの幼虫やクリーム色のハートマークが印象的なエサキモンキツノカメムシなどに出会えることだろう。この他、イチモンカメムシやワカバグモ、運が良ければコロギスや大物のクビキリギリスやツチイナゴなどにも出会えるかもしれない。
落ち葉めくりと同じように、スギやヒノキ、ケヤキなどの樹皮をめくってみると、各種の冬眠している昆虫に出会える。手当たり次第に木の樹皮を剥ぐのはもちろんタブーだが、広大なフィールドで、今にも剥がれ落ちそうなものを見つけて、ちょぴり試して頂きたい。小さなマルカメムシやヤニサシガメ、やや山地に行くと大きなオオトビサシガメなどのカメムシの仲間、甲虫類ではクズノチビタマムシやヒシモンナガタマムシ、クロウリハムシ、キイロテントウ、時にはヨツボシオオキスイやヒメオビオオキノコムシなども越冬している。この他、特異な格好のミミズクも見つけたこともあり、植物の種の鞘のようなマダラマルハヒロズコガの幼虫の巣も発見出来るに違いない。このように、様々な昆虫たちが樹木の樹皮下で越冬していて、ちょっとした昆虫採集の気分に浸れることだろう。
<写真>オオムラサキの幼虫、ゴマダラチョウの幼虫、エサキモンキツノカメムシ、イチモンジカメムシ、ツマグロオオヨコバイ、ワカバグモ。