<様々な里の春の木花たち>
アブラチャン/ミツバアケビ/クマシデ/モミジイチゴ
キブシ/ヒサカキ/コブシ/シキミ
アオキ/アカシデ/バッコヤナギ/クロモジ
ダンコウバイ/サルトリイバラ/ヤマブキ/シバヤナギ
(15)桜が咲いて木の芽開く
先週からの暖かい陽気が続いて桜の花が開花した。今年も入学式、入社式にどうやら間に合うようで何故かほっした。まだ、咲き始めたばかりだとは言え、暖冬で早く咲いてすっかり散ってしまった後の味気なさよりずっと良い。日本人にとって桜の開花は生命に満ちた季節への出発点であるのだから、期待に胸を熱くし希望に満ちた人生への出発点とも言える入学式、入社式に桜の花は良く似合う。そう思うのは私だけではないと思うがどうであろう。こうなったら、様々な工夫を凝らした防寒服や何枚もの重ね着の中で、じっと寒さに耐えて眠っていた各種の樹木の芽も目覚めないわけにはいかない。また、これまでずっと周期的に雨が降り、午後になるとザワザワと騒がしく音を発てる南よりの風が吹き、前項で紹介したように、周りは色とりどり様々な花が咲き始めているのだから、落ち着いて眠っているわけにはいかないというわけである。私たち人間もピーシャラピーシャラ、ドンドンドンとお囃子が鳴って御神輿や山車が練り歩き、屋台が軒を連ねて人でごった返すお祭りの日に、昼寝や早寝が出来ないのと同じように。
それにしても植物の芽吹き直後の若葉は可愛い。動物の赤ちゃんは例え猛獣であっても可愛いように、植物の葉の赤ちゃんもとっても可愛い。しかも実に美味しそうである。しかし、いつまでも赤ん坊でいてくれれば楽しいのにすぐに大きくなるペットのように、あっという間に大きくなってしまうのが残念である。食べられる木の芽としてはタラノキの芽(タラノメ)はスーパーでも売られているよう超有名だが、その他、私が知っているものと言えば、タラノキと同じウコギ科のヤマウコギやハリギリ、サンショウやアケビの芽位であるが、雑木林には食べられる木の芽や若葉はもっと多いに違いない。本で詳しく調べてみる価値がありそうである。東京都の高尾山の隣に影信山という山があって、そこの茶店の山菜てんぷらを食べに、わざわざ登山したことが数回あった。ここでは柿の葉やヤマウドの花や葉はもちろんのこと、秋になると紅葉したモミジの葉さえてんぷらになって登場する。これがまた実に美味しいのである。これに味をしめてか、夏になると良く出かける各地の高原の食堂で、まずたのむのは山菜てんぷら定食となってしまった。
木の芽や若葉ではないが、やまなしナチユラリストの会を主催する植原彰氏の著書“ぼくらの自然観察会”地人書館刊を読んでいたら、“野草を食べよう”という観察会が大成功だったということが報告されていた。とにかく“○○を食べよう”という名の観察会を開くと、いつもの倍以上の参加者があるのだという。自然観察会に限らずこの世の多くの人気商品やヒット商品は、何らかの形で人間の本能とも言える欲望に訴えかけるものが多いのではなかろうか。その“野草を食べよう”という観察会で、何の料理が美味しかったかを人気投票してもらった結果、第1位はタンポポの花のてんぷら、第2位はハコベの油いためとノビルの酢みそあえ、第3位がツクシの油いためと続いたのだそうである。
こんなことを書いていたら口の中に唾液が湧き出て来た。写真ばかり撮っていないで、たまには春の自然の恵みを賞味しなければなるまい。また同書では、野草摘みは除草剤も含めた農薬散布の無いたくさんある所で、あっちこっちと少しずつ場所を換えて食べられる量だけを摘み、セリはまた出て来るようにと根を必ず残して摘み、タラノメは一番芽だけにして、枯死の恐れのある二番目を摘んではいけない等と自然にやさしい野草摘みのマナーも書かれている。さすがナチュラリストならではの本である。
<写真>上白根町の芽吹き始めた雑木林、小野路町の梅の木とオオアラセイトウ、ミズキ、ウツギ、エノキ、コナラ、イボタ、マユミ、ガマズミ、アジサイ、モミジイチゴ、ハナイカダ、ハリギリ、カツラ。