(25)梅雨寒の中に夏見たり


 今朝のテレビの天気予報によると梅雨前線が南海上に下がった為に、今日は雨の降ることはありませんと報道されていた。気温も大陸の高気圧の影響で低く、おまけに昨日と異なって風もなく曇っている。この時期、こういう日が自然観察と写真撮影には絶好の日和となる。フィールドに隣接する公園のハナショウブやアジサイが咲き始めて、朝早くから見物客で一杯である。植え込みのビョウヤナギやキンシバイは、曇天にも関わらず真っ黄色に鮮やかに咲いて、晴天なら目が眩むほど眩しいことであろう。
 農家の庭先にはタチアオイがすっと伸びて各種の色の花を付けているが、やはり一重の薄い赤色が奇麗である。今日は風が無いからタチアオイの撮影にはもってこいである。誰が種を蒔いたか、荒れ地のまま放置された空き地には、オオキンケイギクは盛りを過ぎたが、朱色のオオテンニンギクやヒマワリを小さくしたような黄色のルドベキアが野生種のごとく咲いている。 日陰には引き続いてドクダミが群落をつくって咲き、ナツツバキの白い花弁は薄く透き通ってすがすがしい。
 雑木林に入ると、フィールドきってのお邪魔虫の嫌われ者である藪蚊が発生し、じっとしていると汗ばんだ皮膚に吸血にやってくる。来週からは蚊取り線香を腰にぶら下げて歩かねばなるまい。藪蚊は人間が活動する場所近くの雑木林に多く、近くに人家や日曜菜園があったりするとやたらと多い。きっと下水や溜水が発生源になっているのだろう。こんなに多いと蚊取り線香をぶら下げていても、風が無い日と煙をたやすくかいくぐってやって来る。雑木林の下草の葉上ではだいぶ大きくなったカマキリの赤ちゃんが獲物を頬張り、クヌギの樹液には多数のコクワガタや威風堂々たるオオスズメバチ、地味な色合いだがなかなかシックなヒカゲチョウ、クロヒカゲ、コジャノメ等のジャノメチョウ科の面々が、押し合いへし合いしながら樹液を夢中で吸っている。もちろん、大型で恐ろしい牙(大顎)と針を持つ力持ちのオオスズメバチが一番良い食卓に着いている。こんな光景を発見したら静かに観察しよう。意地悪しなければオオスズメバチに刺されるなんてことは絶対無い。
 この時期、前述したように多数の園芸品種の花が咲き競うが、雑木林と田んぼが接するあたりの草地には、ホタルブクロ、ウツボグサ、ツモツケ等が花の盛期を向かえる。まず、誰もが知っているホタルブクロが、細い茎が重い花を支えきれないようで、アーチ状に曲がって小道に垂れ下がって咲いている。小雨でも降っていれば風情溢れる光景に出会うことだろう。ウツボグサは、定期的に草刈をするような日当たり
の良い草地に多く、ウツボといっても海の恐ろしいウツボではなくて、弓矢の矢を入れておく靭に似ていることより来ている。最初、写真のように下のほうから咲きあがって行き、最後は花穂の天辺に花弁は行き着き、まるでたくさんの弓矢が入った靭ように見えるというわけてある。また、夏になると花穂は枯れるがそのままの形で立っているので“夏枯草”とも呼ばれている。シモツケは、雑木林の縁に多く、緑を増した下草の中で鮮やかなピンクの小花の集まりはとっても目立つ。ヤマユリの蕾もだいぶ大きくなった。今日は梅雨寒だが、もう夏はすぐそこまでやって来ている。































<写真>アジサイ、ミスジマイマイ、コクワガタの雄、コクワガタの雌、タチアオイ、ハルシャギク、ハナショウブ、オオテンニンギク、ルドベキヤ、ビョウヤナギ、シモツケ、ホタルブクロ、ウツボグサ、ナワシロイチゴ、スイカズラ、ユキノシタ。


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