梅雨末期の晴天は耐えられない程の暑さとなる。今日は北風が吹いているにも関わらずフェーン現象で太平洋側は異常な高温となった。通常、フェーン現象は太平洋側から日本海側に風が吹いた時、即ち強い南風が脊梁山脈より降り下ることによって、日本海側が高温となる現象を言うのだと思っていたら、その逆もあるようである。
 梅雨寒かと思ったら異常な高温、こんな予期せぬ高温は堪らなく、熱中症で倒れる人が出るのもこういう時である。もちろん盛夏にも今日のような暑い日があるものの、暑さに当たり前となった身体には少々の抵抗力が付いているし、梅雨末期のようなむっとする湿気は無い。いずれにしても35度前後に気温が上がる日は、フィールド行きが慣れている私であっても頭が痛くなる時がある程だから、一般の方々は炎天下での自然観察はよした方が賢明である。蚊取り線香を腰にぶら下げたり防虫スプレーで藪蚊の来襲を防いで、木陰での短時間の行動で切り止めることをお勧めする。
 谷戸ではコガネグモが大きな巣を張り、溜池では真っ赤でアカトンボと間違われるショウジョウトンボが棒の先に止り、雑木林の縁の日陰になった下草の葉上では、アリに極似することで獲物をたやすく口にできるのに違いないアリグモも元気である。しかし、こんな日は何と言ったって夜のホタルの観察に尽きるだろう。ホタルは高温多湿、無風の気候状況の時に良く飛ぶのだという。しかし、首都圏平地の雑木林では開発によって年々ホタルの見られる場所や数が減少していて、また、行きつけているとは言っても一人や少数での夜の観察は危険が一杯だから、公共機関が管理しているホタルの名所や地元のボランティアが開催するホタルの観察会に参加しょう。
 私が知っている神奈川県津久井郡城山町穴川も、地元の人たちが管理育成するホタルの名所である。とは言っても首都圏平地では希少な場所で、平日といえどもホタルの数より見物人の方が多く、私のようなホタルを撮影しようとする人間は、とっても困り者のお邪魔虫となってしまう。そんな訳もあって各種の図鑑にあるような光っているように時間をかけて撮ることは難しく、見物人の白い目を気にしながら何とか撮影出来たのが写真のゲンジボタルである。ゲンジボタルは昼間は下草の中等に隠れていて、やっと姿を現すの夜の8時頃なのだから、帰宅時間も考えると撮影チャンスは短時間となる。もちろん同所にはヘイケボタルもいるのだが、残念ながらまだ撮影にまで至っていない。
 昆虫図鑑を開くとホタルと名が付く虫がたくさん出て来る。ゲンジボタルと同じ正真正銘の甲虫目ホタル科の虫たちとベニボタル科の虫たちである。ホタル科の昆虫は世界では約2000種、日本では30種以上も知られているが、その全てが光を発するわけでは無い。全く発光しないもの、弱い光を発するもの、強い光を発するものといろいろある。ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルは強い光を発するが、姿格好が良く似ている首都圏平地の谷戸でも普通に見られるオバボタルは全く発光しない。一方、ホタルとつくがベニボタルの仲間は、ホタルとは全く別の科を違えた紅色の羽を持ったフィールドで良く目立つ甲虫である。最後に、ホタルと名が付くと言えば、年に2回発生する蛾の仲間のホタルガも忘れられない存在で、雑木林以外でもヒサカキが植えてあれば公園等でも見られ、白いストライプと幅広の羽を除けばホタルを彷彿させる配色である。


<写真>コガネグモ、ショウジョウトンボ、アリグモ、ゲンジボタル、ホタルガ、オバボタル、カクムネベニボタル、クシヒゲベニボタル。


(28)時ならぬフェーン現象


<様々なクモたち>

イオウイロハシリグモ/オニグモ/ナガコガネグモ/ジョロウグモ


ゴミグモ/サツマノミダマシ/ハナグモ/ワカバグモ


オオトリノフンダマシ/トリノフンダマシ/シロオビトリノフンダマシ/シロオビトリノフンダマシ(黒色型)


<様々なガたち>

オオミズアオ/トンボエダシャク/カノコガ/マドガ


アオスジアオリンガ/アメリカシロヒトリ/コヨツメアオシャク/モンクロシャチホコ


スジモンヒトリ/ユウマダラエダシャク/トビイロトラガ/ヨツボシホソバ


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