(29)もうすぐ梅雨明け


 梅雨が明けそうで明けないこの時期、空には雲が立ち込めて湿度が異常に高くむっとする。少しでも日が差して来たら大変だ。まるで蒸し風呂に入ったがごとくに汗が流れて来て、不快指数100%となる。こんな日がずっと続いたら困るが、夏の太陽がギラギラ照りつける前のこんな陽気にフィールド巡りも楽しいものである。谷戸田のアマガエルもオタマジャクシから完全に変態して可愛らしいカエルとなった。こんな日はヘビも元気で、大人になったアマガエルをぱくついているのだろうか、ホトケドジョウの生態調査を続けている大学生に出会ったが、水路でヤマカガシにたくさん出会ったと言う。私でさえもシマヘビに2匹出会って脅されたのだから、同好の女性が言っていたように、こんな日はヘビ日和なのだろう。
 やや日陰になった農家の周りには、6月から咲き続けているドクダミが、盛期はとっくに過ぎたというもの、まだ白い花をつけているものが見受けられ、空き地や畑の傍らにはヒルガオやコヒルガオは引き続いて元気で、やや湿った所にはツユクサも咲き始めている。谷戸に入ると、畦や農道にオレンジ色のヤブカンゾウが至る所に見られ、若芽は食用になり薬用としても重要なので農家の人が残しておくのか、それとも繁殖力が強いのかは分らないが、緑一色に変わった水田に生えて美しい。こんな光景は、お米製造工場のように長方形に画一化された平地の水田では絶対に見られない。谷戸を詰めて棚田上になった辺りの雑木林と接するやや湿った草地に、オオバギボウシやチダケサシが群落を作って咲いている。ギボウシ属は日本に多く、東南アジアに自生する40種類以上の内の何と36種類が日本に見られるのだという。日本では大きな家や寺院等で植栽されているのが見られるものの、一般的にはあまり人気がある花とは言えないが、欧米ではとても人気があるらしく、はるばる日本の山野に変種を探しに来るマニアがいるという。図鑑によるとギボウシは雑種が出来易くて、いろいろの変わりものが見られるのだという。
 谷戸奥のこんもりと高くなった雑木林に接する草原から見渡すと、木を切った跡地に背がとても高いクリーム色のタケニグサが風に揺れている。前からタケニグサは奇妙な植物と思っていたので、帰宅して牧野富太郎植物記(あかね書房刊)を開いてみた。“世間の人は、野や山にしげる草で特に美しい花をもたないものを雑草といってけなしていますが、雑草といってもバカにならないものです。どんなつまらない雑草でも、ながめればながめるほど興味がわき、味わえば味わうほどすばらしいものであることがわかってきます。雑草のなかで、ひときわ大きく、まさに王者の風格をもっているものにタケニグサがあります。この草が野原の中に堂々とたっているすがたはまことに雄大なものです。”と博士は語っている。タケニグサは前記したような雑木林を伐採した跡地や土の崩壊したような場所に、2メートルの高さにまでなって群生する。博士のいうようにまことに雄大で、雑草などと言って片付けられない程の存在感を持っている。冬になっても固い中空の茎は残っていて、昔の子供たちは笛を作って遊んだという。この固い中空の茎が、名前の由来である竹に似ている草“竹似草”となった。
 この他、馬が引っ張っても千切れないほど強靭な茎を持つことから名づけられたコマツナギはとても可憐なピンクの花を付け、茎に刺があってとても痛い思いをさせられるワルナスビも花は純白で美





















<写真>稲が根付いた谷戸、ノカンゾウ、カキラン、アマガエル、ヤブカンゾウ、チダケサシ、タケニグサ、イヌゴマ、オオバギボウシ、コマツナギ、ワルナスビ、ビロードモウズイカ。

つれづれ里日記(30)へ



つれづれ里日記INDEXへ