(44)今年最後の花盛り
フィールドは今年最後の花盛りを迎えたようである。近頃、里山近くには地元の老人会等が丹精込めて管理している花園が各所にあるものだが、この時期は何と言ってもコスモスである。不安定な気候もやっと落ち着いて、天高く馬肥ゆる秋がやって来た。抜けるような青空にコスモスは映える。昔からあるピンクの花に混じって赤いコスモス点在して植え込んであると実に素晴らしい光景となり、まるで花に包まれるかのような錯覚を覚える。
最近、黄色い花のコスモスが人気というが、八重の桜や椿と同様に余りにも人間が関与したようで好きに慣れない。何と言ったって“シンプル イズザ ベスト”である。コスモス撮影には困り者なのだが、時折吹く風は頬に気持ち良く、長袖一枚でも快適なのだから自然観察にはうってつけの季節である。
この時期もう一つ忘れられない花にセイタカアワダチソウがある。以前は日本の平地を埋め尽くす程の勢いがあったが、近頃、その勢力はいくらか衰えたかのように見える。ことによったらそれだけ開発が進んで草原が少なくなったからかも知れない。セイタカアワダチソウは一時アレルギーを引き起こす草として嫌疑をかけられて以来、ご婦人層には嫌われているようだが、決してそのようなことはないから黄色い絨毯を見に出かけて欲しい。セイタカアワダチソウは成長しすぎた大きな株は、お化けのようで風情がないが、背の低いものがびっしり生えている風情は独特で、黄色い円錐形の花が背比べをして、北方の針葉樹林帯を上空から見ているような美しさがある。また、近づいて目を凝らして見ると、一つ一つの花がとても可愛らしい。こんなことから、もともと観賞用に移入されたくらいだから、矮小化して赤などの花色が出来れば、きっと花壇の花として私たちの目を楽しませてくれるに違いない。
この頃、雑木林の良く陽が当たる南斜面に出向くと各種の野の花が咲いているが、別名をアワダチソウ(泡立草)という位だから、一見すると小型のセイタカアワダチソウと思って通り過ぎてしまう方も多いかと思うが、日本在来種のアキノキリンソウが咲いている。近づいて一つ一つの花を良く見ると、黄色いキクの花のような端正な形の花であることが分る。アキノという名を頭に持つ花では、こちらの方がポピュラーかもしれないが、薄い黄色のアキノノゲシも雑木林に接する小道の端や畑に多い。
この他、黄色い花ではヤクシソウが美しく、もちろんキク科植物だが、アキノキリンソウやユウガギク、ヨメナ、ノコンギク等の各種のノギクに比べると花の造りが異なっていて、春のフィールドを彩るジシバリやニガナ、アキノノゲシ等に近いようである。ヤクシソウは裸地にいち早く侵入し、土壌が安定すると他の植物に席を譲るパイオニア植物の一つとも言われるが、確かに雑木林の小道等の土が崩落するような場所に生えていることが多い。
また、花ではないがアキノキリンソウやヤクシソウが咲いているような場所で、センボンヤリが褐色の綿毛を伸ばして自己主張しているに違いない。センボンヤリは春と秋の2回も花を咲かせるという変わった性格の持ち主で、春は花びらのある小さなタンポポのような白い花だが、秋は花びらの無いつぼみのような閉鎖花で、綿毛は秋の花の種子の集まりで、タンポポの綿毛と同じく風に飛ばされのを待っているのである。秋風は春風とともに、植物の繁殖に欠かせない心地よい風なのだろう。
<写真>セイタカアワダチソウ、オギ、アキノキリンソウ、センボンヤリ、コスモス、オミナエシ、アキノノゲシ、ヨメナ、ノコンギク、ユウガギク、シラヤマギク、ヤクシソウ、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、アメリカセンダングサ、ヒヨドリバナ、ハキダメギク。