冬ならではの楽しみといったら、北方から越冬のために日本に飛来するカモたちも、忘れられない存在である。いつごろ日本にやって来るのかを各種の本で調べてみたが、明確な答えは書かれていない。種類や場所によっても異なるのだろうが、冬の訪れとともに、いつのまにか近くの池や沼や川になどに見られるようになる。カモたちはガンやハクチョウと親戚のガンカモ科の鳥だから、身体も大きく、散歩の途中で、双眼鏡など持たずとも識別できるのだから、天気の良い日に見に行って欲しいものである。
カモ類は日本では約30種類以上記録されていて、このうちカルガモとオシドリの二種類が日本で繁殖する以外、北方からの冬だけのお客様である。カモを間近に見たいと思ったら、何と言っても上野の不忍池へ行くのがベストである。動物園で給餌もしているし、カモの餌が売られていて一般の人も餌を蒔くので、とても人馴れしていて至近距離で見ることが出来る。私の住んでいる近くの川では、近づくと逃げ出すオナガガモが、不忍池では歩道をよちよち歩いて餌をねだるのである。首都圏に飛来するカモの種類が何種類なのかは明確ではないが、不忍池だけでもマガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、ハシビロガモ、ヒドリガモ、アカハジロ、クビワキンクロ、コスズガモ等が見られ、カモではないがバン、カイツブリ、カワウも見られるから、一度、図鑑片手にこのようなたくさんカモや水鳥が集まる場所へ行って種類を覚えてから、近くの池や沼や川に出かけるのも良い方法だと思う。そしてカモや水鳥が好きになったら、色々な池や沼や川に出かけて欲しい。カモの種類によって好きな場所があるのに気づくはずである。
もっともポピュラーでしかも美しいカモと言えばマガモである。もともと狩猟のおとりとして作られたデコイと呼ばれる木や陶器や布で出来ているカモの置物は、どこの家庭でも一つぐらい飾ってあると思うが、他のカモでは無く、マガモの雄である場合がほとんどだ。そんなことも加わってか、マガモと言えば、誰もが写真で紹介しているような光り輝く緑色の頭部を持った雄を思い浮かべるはずで、雌はお世辞にも美しいとは言えない茶褐色である。カモの場合も昆虫と同様に、雄の方がお洒落と言う訳なのだ。
何処でもいるわけではなく、やや海岸よりの大きな池にいるキンクロハジロも愛嬌がある小型のカモである。白と黒とのツートンカラーの配色もシンプルで粋であるし、垂れ下がった黒髪(冠羽)をたなびかせながら、勢い良く泳いでいる姿は格好良い若者のようである。しかも時折、潜水までしてくれるのだから楽しくなる。
そんな変化に富んだ様々なカモの仲間を観察していると、大きな池や河川だったら、漆黒のカラスの親分のようなペリカン目ウ科のカワウに出会うことだろう。カモ類のほとんどが植物を中心として昆虫や貝等を餌としているのに対して、カワウは小魚である。カワウが餌を求めて池の中に潜ったり浮き上がったりする姿は、まこと拍手喝采の名人芸だ。
小魚を餌にしている鳥と言ったら、他にもたくさんあるが、何と言ってもカワセミが忘れられない存在である。水面にかかる樹木の枝や池に突き刺さった棒杭等に止まって、餌を見つけると物凄い勢いで水面に突き刺さって、小魚を口に咥えて戻って来る。カワセミは飛ぶ宝石と呼ばれるようにとても美しい鳥だが、このハンティングを観察しているだけでも飽きの来ない存在だ。
この他、浅い池や湿田ならアオサギやコサギが小魚やエビを狙って現れる。こちらの方は決して美しいハンティングとは言い難いが、慎重に餌に近づくアオサギには感動を覚えるし、コサギは足を震わせて獲物を追い出す。両者とも別の意味での名ハンターなのである。
<写真>マガモ、オナガガモ、コガモ、ホシハジロ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、カルガモ、ハシビロガモ、オシドリ、カイツブリ。
<様々な里の鳥たち>
カワウ/アオサギ/ダイサギ/コサギ
ハシブトガラス/キジバト/セグロカモメ/ユリカモメ
ムクドリ/オナガ/ヒヨドリ/スズメ
モズ/ツグミ/ヤマガラ/ミヤマホウジロ
アオジ/ジョウビタキ/ルリビタキ/ハクセキレイ
キセキレイ/シジュウカラ/エナガ/カワラヒワ
カワセミ/シメ/キレンジャク/ヤマシギ
タゲリ/トラツグミ/アオゲラ/コゲラ
ウソ/クロジ/シロハラ/ソウシチョウ
(8)池の中は満員電車