テントウムシの仲間は全てアブラムシやカイガラムシ、ハムシの幼虫等を食べる益虫だと思っている方は多い。逆に、テントウムシにしょっちゅう作物の被害を受けている方の中には、テントウムシは全て害虫であると思っている方も少なからずいると思う。どうしてこのような事が起こるのかと言うと、実はあの可愛い形のテントウムシは、動物食性と植物食性の2派に分かれているのである。動物食性のテントウムシは、前述したテントウムシやナナホシテントウムシ、アカボシテントウ、カメノコテントウ、ヒメカメノコテントウ、ベダリアテントウなどが有名で、植物食性のテントウムシはニジュウヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウ、トホシテントウが有名である。前者は益虫だが後者は害虫なのである。特に、ニジュウヤホシテントウやオオニジュウホシテントウは、ジャガイモやナスの葉を食べる大害虫なのである。トホシテントウはウリ科の作物も食するが食害は僅少で、野生種のカラスウリやアマチャヅルなどが主なために、害虫からは除外されているようである。
 ジャガイモの葉に付くニジュウヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウに限ったことではないが、農作物の葉を食べる害虫の被害は甚大で、葉が食べられると葉緑素は当然のこととして減り、この為、二酸化炭素を炭水化物に変える量も減って、結果として作物の収穫量も減るのは当然のことである。もしジャガイモの葉の20%が食べられてしまったら、収穫量が20%減るとは言い切れないが、ある程度の収穫減になるはずである。その分、我々の胃袋に入る量が減ったり、値段が上がったりもするのだろうから、たかが虫と言っても馬鹿に出来ない存在だ。私たちサラリーマンの給料が20%近く減ったら、誰でも悲鳴を上げるだろう。ジャガイモ栽培農家にとって、ニジュウヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウは憎き敵となるのもうなずける。
 こんなに困った植物食性のテントウムシなのだけど、その顔つきは益虫である動物食性のテントウムシよりずっと可愛い。特にトホシテントウは身体がほぼ半球形で、羽の10個の黒紋も大きくて一番可愛い。身体が1cmにも満たないから注目されないが、カブトムシのように大きかったら子供たちのアイドルになっていたことだろう。その他、植物食性のテントウムシと動物食性のテントウムシの違いは、前者は身体に細かい毛が生えているが後者はつやつやと光っている。また、越冬も前者は幼虫越冬だが後者は成虫越冬である。以上のような事を頭に入れて野山を歩いてみたら、きっと各種のテントウムシに会えることだろう。しかも、ジガイモ畑でたくさんのニジュヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウを見つけたら、農家の方々の苦労が分かって、ジャガイモを食べ残すことが出来なくなるに違いない。



<写真>ジャガイモの葉を食べるオオニジュウヤホシテントウ、ジャガイモの花、良く似たニジュウヤホシテントウ、カラスウリの葉を食べるトホシテントウ、可愛らしい顔をしたトホシテントウ。
(12)ジャガイモ畑の嫌われ者
《ニジュウヤホシテントウ・トホシテントウ》





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