海の中には進出出来なかったが、地球上で最も繁栄している動物である昆虫の仲間には、奇妙な格好をしたものが多い。小さくて気を付けないと見過ごしてしまうが、亀の甲らを付けたような格好のカメノコハムシの仲間も身近に多い。日本にはカメノコハムシの仲間が25種類ほど生息していて、観察には5月のゴールデンウィークの頃からの一ヵ月間が最高である。この時期はとかく遠くに出かけたり、自然観察の適期とあって“蝶よ花よ”と大忙しであるが、たまには身近なフィールドでの1cmにも満たない足元の昆虫たちに目を向けてみるのも楽しいものだ。イタドリハムシやカメノコハムシと同じハムシ科の全身トゲだらけのトゲトゲの仲間にも出会えるかもしれない。
 前にも書いたように、名前の通りハムシは葉っぱの大好きな甲虫である。しかも種類によって好みが違うから、植物を手がかりに探すのが一番である。首都圏で見られるカメノコハムシの仲間は、イチモンジカメノコハムシ、ジンガサハムシ、カメノコハムシ、アオカメノコハムシ、コガタカメノコハムシなど種類も多く普通である。イチモンジカメノコハムシはムラサキシキブやヤブムラサキの葉を食し、ジンガサハムシはピンクの朝顔のような花を付けるヒルガオの葉を丸い穴を開けるように食べ、カメノコハムシはアカザ、アオカメノコハムシはアザミ、コガタカメノコハムシはボタンズルといった具合である。このように観察に出かける時は、昆虫図鑑で姿形を確認しておくことはもちろんのことだが、植物図鑑にも目を通しておくことが重要となる。
 上記の6種のカメノコハムシの中でジンガサハムシは、ピカピカとした光沢がある羽を持っていてとても奇麗なのだが、人の接近を敏感に察知するのかとてもせっかちで、じっくり観察しようとすると、すぐに飛び立ってしまう。それなら気温が低い時なら動作も緩慢だろうと思うかもしれないが、頭(触覚)も足も引っ込めてしまって、お皿を伏せたようでつまらない。亀だって頭や手足を引っ込めていたら石のようでつまらないのと同じである。カメノコハムシの仲間が頭や足を引っ込めている時は、6本の足の爪を葉にしっかり喰い込ませ、葉にピッタリと付いているから、葉っぱと甲らのような背面との隙間はほとんど無い。これでは天敵だってお手上げであろう。
 次にトゲハムシとも呼ばれるトゲトゲの仲間であるが、写真のように刺さるととても痛そうな小さな刺が身体中に生えている。これでは天敵も近寄ったり食べたりすることをためらうことだろう。首都圏ではススキやオギを食べるカヤノトゲトゲ、フキやアザミを食べるキベリトゲトゲ、クヌギやクリを食べるカタビロトゲトゲが見られるが、対馬には変わった形で鋭い刺を持つツシマヘリビロトゲトゲという珍虫が生息しているので、その風体を図鑑で是非一見することをお勧めしたい。

<写真>イチモンジカメノコハムシ、ジンガサハムシ、アオカメノコハムシ、カタビロトゲハムシ、キベリトゲハムシ。


(13)昆虫界の亀さんです
《イチモンジカメノコハムシ・ジンガサハムシ・キベリトゲトゲ》





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