(28)近づくと跳びはねます
《ベッコウハゴロモ・アミガサハゴロモ・アオバハゴロモ》



 長かった梅雨が開けて雲一つない空が広がったが、大気は湿気を帯びていて真っ青とは言い難い。こんな日はむっとした熱気に包まれて、汗がだくだく流れるウィークエンド・ナチュラリスト泣かせの一日となる。このため太陽が西に大きく傾いて、いくらか太陽光線が減じた夕方に近くの雑木林に出かけみると、すっかり成長して大きな緑の葉を広げたクズの葉上に、各種の昆虫が夕涼み(?)としゃれ込んでいる。われわれ人間様なら縁台に茣蓙といったところだろうが、昆虫たちにとっはクズの葉上が特等席のようである。クズは我々にも栄養価の高い葛餅や葛湯を提供してくれるように、多くの昆虫たちにとってとても重要な食糧となっている。蝶ではウラギンシジミの幼虫が、カメムシではホシハラビロヘリカメムシが、甲虫ならクズノチビタマムシやオジロアシナガゾウムシ等が、そしてここで紹介するセミに近縁のベッコウハゴロモもクズの汁が大好きなようである。
 ベッコウハゴロモは最新鋭のジェット戦闘機のような三角形の羽を持つ、体長1cm程の綺麗な文様を持つ半翅目ハゴロモ科の昆虫である。雑木林のクズの葉上で見つけたらそっと近づいてみよう。じっとしているように思えたベッコウハゴロモが人の接近を感知して、羽の下に隠れた小さな6本の足を小刻みに動かして回転運動をするかのように向きを変える。そうしたら、それ以上の接近は諦めよう。強力なバネ仕掛けのおもちゃのように飛び上がって逃げてしまうからである。観察が終わったら付近のクズの葉を捲ってみたり、葉の付いている柄などに注意してみよう。一見するとタンポポやイネ科の雑草の種が飛んで来て絡まっているようにしか思えないベッコウハゴロモの幼虫がいるかもしれない。幼虫のお尻に付いている綿毛は蝋物質で出来ているらしく、跳びはねて着地する時にパラシュートとしての役割を果たすのだそうである。
 ハゴロモ科の仲間は他に、褐色の地に小さな白い紋があるとても地味なアミガサハゴロモ、透明な羽を持つスケバハゴロモ、子供のころハトと呼んで親しんだアオバハゴロモ等が平地の雑木林でも見られる。前述したようにハゴロモの仲間は、セミやカメムシに代表される半翅目に分類されるが、半翅目の仲間はこの他に、草木に泡を吹いて巣を作るアワフキムシ、得意な格好をしたツノゼミやミミズク、横に這って隠れるのがうまいヨコバイ、そして害虫の代表とも言えるウンカやアブラムシやカイガラムシ等である。
 ともに完成された精巧なストロー状の吸収型口器を持ち、このため有吻目とも呼ばれている。この特化した口器で、一部昆虫食のものもあるが、植物の各種組織から汁を吸って生活している。もしこの口吻で刺されり血を吸われたりしたらたまらないが、偶然のものを除いて人間が刺されたという話は無いから安心して欲しい。


































<写真>ベッコウハゴロモ、ベッコウハゴロモの幼虫、ベッコウハゴロモの幼虫、スケバハゴロモ、アミガサハゴロモ、アオバハゴロモ、ツマグロスケバ、テングスケバ、トビイロツノゼミ、コミミズク、マルウンカ、ツマグロオオヨコバイ、シロオビアワフキ、モンキアワフキ、マエジロオオヨコバイ、ミドリグンバイウンカ、コガシラアワフキ。



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