バッタやコオロギの仲間をだいぶ紹介してきたが、もう一つ後脚が発達していて良く跳びはねて鳴く虫がいる。キリギリスの仲間である。キリギリスの仲間は、バッタやコオロギととても良く似ているよに見えるが、やはり何となく異なった昆虫であると感じるに違いない。それではどこがどのように違うのだろう。一昔前の昆虫図鑑では、バッタ、コオロギ、ケラ、キリギリス、ナナフシ、ゴキブリ、カマキリの仲間はすべて直翅目に分類されていたが、現在ではバッタ、コオロギ、ケラ、キリギリスが直翅目(バッタ目)とされ、他は別に独立した目として分類されている。そして、この直翅目は、大きくバッタ亜目とキリギリス亜目の二つに分けられている。
バッタ亜目は、触覚が太くて体長より短く、その環節は30節より少なく、鼓膜がある場合は腹部の第一節側部にある。これに対して、キリギリス亜目(キリギリス、コオロギ、カマドウマ、コロギス、ケラ)は、触覚は糸状で長く、鼓膜がある場合は前脚脛節の基部にある。このように、バッタとキリギリスは分類の初期の段階で区別されているようであるが、キリギリスとコオロギはかなり縁が近いようである。以下は私の推測であるが、キリギリスは森との縁が深くて緑色で葉っぱのような形となり、コオロギは土との縁が深くて茶褐色になり、外敵から身を守っているようである。
キリギリスと言えば夏の真っ昼間に草むらで“チョンギース”と鳴くので有名だが、開発が進んで草地が少なくなった首都圏では、本家本元のキリギリスは稀となって探し出すのに苦労する。しかし、雑木林に行けば、やや小型になるもののツユムシの仲間やウマオイ、ヤブキリ、クサキリ、ササキリといったキリギリスの仲間にたくさん会える。まず最初にツユムシだが、首都圏の雑木林では身体がほとんど緑色のツユムシ、脚が黒いアシグロツユムシ、背中に筋のあるセスジツユムシが最もポピュラーな存在で、ともに良く似ているのだが、鳴き方はそれぞれ異なっているのは言うまでもない。
次に大型のヤブキリだが、脚の鋭い刺を見れば分かるように、とてもどう猛な肉食性の昆虫で、木に登ってセミなどを捕食するという。また、夜間にはクヌギの樹液を吸いにやって来て、ことによったらついでに他の昆虫を襲って食べているのかもしれない。しかし、卵から生まれたばかりの幼虫はとても可愛らしく、春にタンポポなどの各種の花にちょこんと乗って花粉を食べている。この他、やや湿った場所にいて、夜に地面から“ジー”と鳴くクサキリや、雑木林の縁の葉っぱ(特にアズマネザサ)の上で、微かに“ジリジリ”と羽をふるわしているササキリにも出会えるだろう。
<写真>セスジツユムシの雌、ウマオイ、キリギリス、クダマキモドキ、ヤブキリ、ササキリ、ツユムシ、アシグロツユムシ、セスジツユムシの雄、クビキリギリス、クサキリ。