横浜市戸塚区

舞岡公園散策手帳
(第2集)




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2005年4月26日、横浜市戸塚区舞岡公園

 明日は同好者と一緒に宮が瀬にウスバシロチョウを見に行く事になっているので、今日はほんのちょっと舞岡公園の瓜久保の火の見櫓で、お弁当を食べる位の軽い気持ちで出かけた。天気予報では不安定な一日で、午後から雷雨が予想されているからか、いつも車を停める場所はがらんとしている。タイワンリスに樹皮を齧られたケヤキの大木は、緑一杯に葉をつけていて一安心である。しかし、朝まで降り続いた雨が葉に残っていて重たいのか、路上に小枝が垂れ下がっていて、愛車である小野路号は車高の高いワンボックスカーだから、屋根に擦れてしまうから小枝を避けて駐車した。今日は毎度御馴染みの河童池方面には行かずに、足早に谷戸奥を登った所にあるサクラがたくさん植栽されている場所へ急行した。なぜなら、このHPの掲示板に日限山住人さんが「ありました。30本近くのサクラの木の根元を覗き込んであきらめかけた時、柵の向うに見つけました。写真をとろうとする足元にもあったりして、驚くほどの本数でした。食通が見つけたら、根こそぎはしないでしょうが狂喜乱舞するのではないでしょうか」等という、寝た子を起こすような過激なご投稿があったからである。この「30本近くのサクラ」と「柵の向う」と言う表現で、間違いなくあの場所だと推理出来た訳である。この推理は見事に当たって、足の踏み場もない程に爆生していた。このため一本とても格好の良いアミガサタケがあったのだが、三脚の脚で倒してしまった。このままにして置いたら枯れてしまうかもしれないと、穴を掘って埋め戻したことは言うまでもない。
 これで今年も舞岡公園のアミガサタケを撮影出来たとの安堵の思いに胸を撫で下ろすと、いつものように何でも屋に戻って、また谷戸に降りて来た。すると途中、アミスギタケや小型のキノコがたくさん発生していて、また日陰の斜面でもかなり多くのツチグリを発見した。いよいよキノコの世界にも春が訪れたようである。田んぼの縁の小道の花々も4月初旬の頃と比較してだいぶ様変わりがしていて、ハルジオン、オニタビラコ、スイバ等がやたらと背が高くなって咲いている。もちろん雑木林の斜面も各種の植物に覆われて、タチツボスミレはもちろん、ツボスミレも終期を迎えているようであった。春の儚い命(スプリングエフェメラル)とは良く表現したものだなあと思った。我々人間の命だって、広大無辺の宇宙から見れば同じような儚い命である。だから広大無辺の宇宙の中でも唯一つ、掛け替えの無い自分という個性を花咲かせながら、命尽きるまで星のように輝いていたいものである。
 今日観察した昆虫の中で特筆すべきものは、何と言っても各種ゾウムシやヒメクロオトシブミであろう。オジロアシナガゾウムシが路傍の禾本科の葉の上で眠たそうに日向ぼっこをしていたから、ヌルデの幹にマダラアシゾウムシもいるのではないかと注意して探してみたら、何と一本の木に3匹もいた。マダラアシゾウムシはヌルデの樹肌に擬態しているから、ここにいますよと指差しても「えっ、何処?」との声が必ず返って来るという程に、すっかりヌルデの樹肌の瘤になりすませているのである。また、ヒメクロオトシブミだが、図鑑等によるとバラ、フジ、コナラ、クヌギ等の葉を巻いて(揺籃)卵をその中に産みつけるとあるが、今のところ舞岡公園ではクマノミズキに、たくさんの揺籃が見られる。今日はなんと小さな枝に3つも揺籃が垂れ下がっていたので、きっと何処かにいるはずだと探してみたら、葉の裏にへばりついていた。にわかに黒い雲が現れて今にも雨が降りそうになって来たので、揺籃作りは一まず休憩として、葉の裏でやって来るだろう雨をしのごうとしているようである。案の定、揺籃とヒメクロオトシブミを無事に撮影し終わったら、大粒の雨が落ちて来た。ヒメクロオトシブミはとってもちびすけだが、我々が文明と引き換えに葬り去った自然の中で生きる本能を、しっかりと身につけていると言う訳である。そんな訳でカメラを衣服の中に隠して大急ぎで車に戻り、当初の計画より2時間ほど多く舞岡公園で散策したものの、それでもいつもよりかなり早くの帰宅となった。

<今日観察出来たもの>花/キリ、カラタチ、ヤマブキ、シロヤマブキ、アケビ、サルトリイバラ、アオキ、エビネ、オニタビラコ(写真中右)、ハルジオン、ヘビイチゴ、オオアマナ(写真中左)、ツボスミレ、ビオラソロリア、タチツボスミレ、ムラサキケマン、ケキツネノボタン、キランソウ、ホタルカズラ等。蝶/アゲハ、コミスジ、キチョウ、ツマキチョウ、ベニシジミ、ヤマトシジミ等。昆虫/オジロアシナガゾウムシ、マダラアシゾウムシ、ヒメクロオトシブミ(写真上左)、同揺籃(写真上右)、シモフリコメツキ、イタドリハムシ、オオアカマルノミハムシ、アトボシハムシ、ハンノキハムシ、ナナホシテントウ、ヤマトシリアゲ等。鳥/ヨシキリ、センダイムシクイ、ウグイス、カワセミ、カルガモ等。キノコ/アミガサタケ(写真下左)、ツチグリ(写真下右)、アラゲキクラゲ、アミスギタケ等。その他/アカメガシワの芽吹き、サワグルミの芽吹き、アンズの実等。


2005年4月19日、横浜市戸塚区舞岡公園

 前回来た時は冬が逆戻りしたような低温で曇天で午後から雨が降って来たが、今日は穏やかに晴れ渡った日となった。こんな日は花の撮影には陰影がはっきり出て好ましくはないが、蝶や昆虫の出現は多いに期待された。いつものように瓜久保の家周辺をうろうろすると、カラタチやナシの花が純白に今が盛りである。ウメはもちろんのことアンズもミツマタもすっかり咲き終わって、ウメには小さな可愛らしい実が実っている。河童池まで歩いて行くと写真が大好きなAさんと出会った。「なにかいましたか」と聞くと、「ここにイトトンボがいたんだけれど、カメラを取りに行ったらいなくなっていた」との事であった。「どんなトンボでしたか」と聞くと、「褐色だがやや青みがかっている」と言う。それはきっとホソミオツネントンボに違いないと推測されたが、野庭のTさんがしっかり撮影していると言うので、Tさんがやって来たら結論を出そうと言う事になった。お昼近くにTさんがやって来たので、液晶ディスプレイで見せて貰うと、間違いなくホソミオツネントンボであった。さすがTさんは舞岡のファーブルさんである。液晶ディスプレイに映し出された像を見ながら、舞岡公園にもいたんだとの感を強くした。なにしろホソミオツネントンボは、静岡県や山梨県等の低山地に行けば普通に見られるが、開発の進んだ横浜市にまだ生息しているとは思わなかったのである。この一つを取り上げても舞岡公園は素晴らしい環境が残っていることが再確認されたと言う訳である。
 瓜久保を後にして谷戸奥へ向かう途中、路傍に生えているスイバにイタドリハムシがたくさんいて、撮って下さいよとばかりに盛んにポーズをとる。ハムシの仲間はほとんどが近づくとぽとりと下に落ちるという防御方法を身につけているが、今日のイタドリハムシは何故だか落ち着きがある。イタドリハムシを撮影しいたら、付近の枯れたススキの葉にシモフリコメツキが日向ぼっこをしているのを見つけた。春に多く見られる大型のコメツキムシだ。少し歩いてだいぶ生長したセンニンソウの茎や葉に注意すると、オレンジ色の可愛らしい丸っこいオオアカマルノミハムシがたくさんいた。今日はこの他、コガタルリハムシ、ハンノキハムシ、アカガネサルハムシ、ヤツボシツツハムシ等のハムシの仲間をたくさん観察したが、芽吹いたばかりで柔らかい食べやすい若葉は今が旬なのだから当然の事である。もちろん付近にはベニシジミやモンシロチョウが舞い、時折、ツマキチョウがせわしく通り過ぎて行く。また、各所に見られるセイヨウタンポポにはヤブキリの赤ちゃんがたくさん見られた。
 水車小屋に到着すると、顔なじみの野鳥撮影の方々がアシ原に超望遠レンズを向けている。ノビタキが昨日から見られるのだと言う。ノビタキはまだ見た事がないのでしばらくアシ原を見詰めていると、いましたいました頭部と羽が黒くて、胸周りが白っぽい一見するとツバメのような色合いの鳥である。撮影している方々が、胸をこちらに向けないかなと盛んに言うので、後で聞いてみると、ノビタキの胸にはオレンジ色の紋があるのだと言う。しばらく見ていると、私が持っている野鳥撮影用のレンズでも撮れる距離のアシの枯れた茎の天辺に止った。もちろん撮りたいなと言う思いが込み上げて来たが、野鳥撮影はしばし休憩としたので機材は持って来ていなかったのだ。
 今日も舞岡公園での目的の一とつとしてアミガサタケがあったので、足早に谷戸を詰めてサクラがたくさん植栽されている場所まで行ったが、アミガサタケは一本だに生えていなかった。おかしいな去年は確か今頃生えていたのにと思って、また踵を返して戻って来ると、ほしみすぢさんがやって来た。二人して瓜久保まで戻ると、今度は鎌倉のNちゃんがやって来た。なんだか石砂山のメンバーがまた揃ったような按配である。みんなで河童池にホソミオツネントンボの探索に行って見ると、AさんTさんも探している。しかし、ホソミオツネントンボはとうとう発見する事が出来なかった。昼食をみんなで一緒にとると、アミガサタケを探しながら久しぶりに三角畑方面へ行ってみた。するとアミガサタケは生えていなかったが、羽化したばかりのキアゲハを見つけた。これは千載一遇のチャンスとばかりに、やらせとは知りながら写真栄えする所に止らせて思う存分美しい羽化したばかりのキアゲハを撮影した。その後、下記に記した様な様々な花や昆虫と遭遇して、今日も思い出一杯、収穫一杯の舞岡公園での一日となった事は言うまでもない。

<今日観察出来たもの>花/オオシマザクラ、シダレザクラ、ヤエザクラ、カラタチ、ナシ、ヤマブキ、シロヤマブキ、モクレン、ボケ、アケビ(写真上右)、ミツバアケビ、サルトリイバラ、アオキ、フデリンドウ、ヒトリシズカ、マルバスミレ、ツボスミレ、ビオラソロリア、タチツボスミレ、オオアマナ、ムラサキケマン、ケキツネノボタン、キランソウ等。蝶/キアゲハ(写真中左)、アゲハ、クロアゲハ、ルリタテハ、キタテハ、モンシロチョウ、キチョウ、ツマキチョウ、ベニシジミ、ルリシジミ等。昆虫/ホソミオツネントンボ、シオヤトンボ、ヒメシロコブゾウムシ(写真下右)、ヒメクロオトシブミ、シモフリコメツキ(写真中右)、イタドリハムシ、オオアカマルノミハムシ(写真下左)、コガタルリハムシ、ハンノキハムシ、アカガネサルハムシ、ヤツボシツツハムシ、ナナホシテントウ等。鳥/ノビタキ、ウグイス、ツグミ、ムクドリ等。その他/ウメの実(写真上左)等。


2005年4月12日、横浜市戸塚区舞岡公園

 このところ仕事が忙しかったり天候不順であったり、はたまたコツバメやギフチョウを見に行ったりと、舞岡公園にはなかなか行けなかった。近々どうしても行って来なければならないと考えていた。今朝、起きてみると雨が降っていない。急いでパソコンの電源を入れて天気予報を見ると、舞岡公園のある戸塚区は午前中は曇で、午後から雨になると予想されていた。これはラッキーと食事を急いで済ませて車に乗った。舞岡公園に着くとなんと一台も車が止っていない。こんな曇天でおまけに気温がとても低いから誰もやって来ないのである。車を降りると背伸びして雑木林を見渡すと、まるで美しい日本画を観賞しているがごとくに、やや霧が立ち込めた静寂の中に、オオシマザクラ、ヤマザクラ、ソメイヨシノが何層にも渡って咲き誇っている。「良いな舞岡公園の春は」等と一人ごちた。本当に午前中だけでも曇り日をプレゼントしてくれた神様に感謝したくなる程の夢心地なのである。瓜久保の家に行くと純白のカラタチの花が咲き出している。掃除に来たとっても感じの良いご婦人と、しばしぼーとして観賞した。「カラタチの花が咲いたよ、白い白い花だよ、カラタチの棘は痛いよ、青い青い棘だよ」とからたち花の歌の出だしだが、これを読んでいるとごく当たり前の事が書いてあるのだが、曲がついて歌われると、とっても素晴らしい忘れがたき詩となるのだ。今は亡き立川澄人やこの私、花虫とおるが朗々と歌うと、それは素晴らしいものである。こんな歌が日本にはたくさんあると言うのに、最近流行っているものは軽薄短小のものばかりだと思うのだが、いかがなものだろうか。
 カラタチの花を撮影し終わると河童池の方へ行った。今日もキノコの穴場にアラゲキクラゲ、キクラゲが水をたっぷりと吸って美味しそうに生えている。たくさんあるアオキの花は満開で、雄花、雌花をそれぞれ撮った。今日はいつ雨が降って来るか分からないので、足を早めて河童池を後にしてきざはしの池に向かった。途中、畑にナシの花が咲き始めていて足止めを食う。バラ科の樹木の花はみな美しいが、花弁は純白で雄しべ雌しべが紫のナシの花は、とても品格溢れる清楚な花でとても好きなのだ。新聞によると川崎市大師河原の梨園で「長十郎」が見出されて、今年で100年という事であった。きざはしの池へ行くとデジスコを構えた方が一人でウグイスを待っている。今日もたくさんのウグイスの囀りが聞こえるが、まだヤマグワの小枝の天辺に来てくれるのだろうかと心配になって聞いてみると、「まだ大丈夫ですよ」との事であった。「今日は人も少なく、こんな曇日の方がウグイスの撮影日和ですね」と言って、またまた足を早めたが、小道の脇にサルトリイバラの花が咲いている。先日の藤野町の石砂山では芽吹いたばかりでルリタテハが産卵に訪れていたが、舞岡公園は暖かいからもう花が咲いていると言う訳である。これで今日は植物の花はかなり確保したから、蝶よ昆虫よと注意しながら歩くのだが、こんな寒さでは蝶も昆虫も草むらの中に潜り込んでいるようで、まるっきりお出ましにならない。それならぱキノコとばかりに、まだ早いかもしれないが尾根に上がってサクラがたくさん植栽されている所へ行ったが何も生えていない。ただアミガサタケは期外れであったが、戻って来る途中で、トカリアミガサタケをたくさん見つけた。また、小道脇の急な露地の斜面に、これまた雨をたっぷり吸い込んだツチグリが元気にたくさん見られた。みんな外皮を思いっきり反らしているので地面から浮き上がっていて、まるで今にも蟹のように歩き始めるのではないかと錯覚させられる程であった。
 こんな調子なら午後も雨が降らないのではと思って、弁当を車の中でぱくついた。今日はこんな寒さだから冷えた弁当は美味しいとは言えないが、腹ごしらえをすませると、去年、アミガサタケがたくさん見られた尾根沿いの散策路へ行ってみた。しかし、これまたトガリアミガサタケとツチグリばかりであった。そんな訳でこれで引き上げようかなと思った瞬間、かなり雨脚の強い雨が降って来た。大急ぎで車に引き返したがかなり濡れてしまった。タオルを出して濡れたカメラ及び髪の毛を拭くと車のヒーターをがんがん利かせて暖をとると同時に、充分に乾燥させた事は言うまでも無い。以上、決して褒められた写真撮影こそならなかったものの、やって来た舞岡公園の春を足早やだが充分に味わっての帰宅となった事は言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/ヤマザクラ、オオシマザクラ、ソメイヨシノ、シダレザクラ、ヤエザクラ、カラタチ(写真上右)、ナシ、ヤマブキ(写真上左)、シロヤマブキ、モクレン、ボケ、ミツマタ、キブシ、ツバキ、ヒイラギナンテン、サルトリイバラ(写真下左)、アオキ(写真下右)、ニワトコ、ウグイスカグラ、クサボケ、フデリンドウ、ニオイタチツボスミレ、ビオラソロリア、タチツボスミレ、ヒメウズ、ムラサキケマン、ケキツネノボタン、キランソウ等。鳥/ウグイス、アオジ、モズ、ツグミ、ムクドリ、カルガモ等。キノコ/キクラゲ、アラゲキクラゲ、ツチグリ、トガリアミガサタケ等。その他/キリの芽吹き等。


2005年4月1日、横浜市戸塚区舞岡公園

 有り難い事に本業(広告代理業)で大きな仕事が入ったために道端自然観察を2日間程お休みしたが、一段落ついたので舞岡公園へ出かけてみた。先日、同業者の社長さんに、「まだ隠居する歳ではないよ、仕事をしないでぶらぶらしていたら病気になってしまうよ」と言われたが、まさにその通りで、還暦まではひとまず男は仕事と痛感していたので、お客様からの出稿依頼はまことに有難い事である。陽気もよくなり仕事も頂き、しかも今日は天気も上々で、久しぶりだから朝早く目が覚めてしまって自宅をかなり早く出発した。いつもの場所に車を停めると、その傍らの雑木林の斜面にタチツボスミレが美しく咲いている。まったくいつの間に生長したの?と問いかけたくなる程の早やさである。ご存知のように山野に自生するスミレは、春の間にそのライフサイクルをすべて完了してしまわなければならないスプリング・エフェメラルなのだから当然の事と言えよう。瓜久保の家の前に行くとブンゴウメは咲き終わってアンズがほぼ満開となっている。ここのアンズは紅色が強く、先日行った駒場野公園のものに比べるととても艶やかで美しい。田んぼと雑木林の間の小道を河童池に向かって歩いて行くと、アカバナマンサクは完全に咲き終って、キブシの花が簾の様にクリーム色に垂れ下がって見事である。向こうから工務店の若社長がやって来て、「ルリシジミが飛んでいましたよ」と教えてくれた。早くも若社長は野鳥撮影に区切りをつけて、蝶の撮影に切り替えたようである。
 今日の午前中の目的は、ベニシジミ、イタドリハムシ、バッコヤナギだから、瓜久保を足早に後にするときざはしの池を目指した。すると前回記したように、イタドリと名がつくのにスイバに多数のイタドリハムシを発見した。しかし、天気が良いからじっとポーズをとってくれないばかりか、歩き回って草や葉の天辺まで来ると羽を開いて飛び立ってしまう。もっともほんのちょっと飛んで移動するだけの小旅行なのだが、その繰り返しにはまこと閉口する。やっとじっとしている個体を見つけたと思ってカメラを向けると、なんと触覚が一本とれていた。天敵にやられたのだろうか、それとも仲間と喧嘩したのだろうか、いずれにしても早々傷を負ったと思うととても可愛そうになった。それでもなんとかイタドリハムシを撮影すると、お茶畑の下の日溜まりの小道に寄り道してみた。案の定、ベニシシミはたくさんいて、羽化したばかりの個体が多いようで羽を開いて日光浴をしている。ここでも羽化に際して何らかの不都合が生じて羽が伸びきらない個体を発見した。恐らく羽はもう縮こまったままで伸びないだろうから飛べずに、やがて天敵に食べられてしまう事だろう。以上のように上天気で身も心もとても軽やかだと言うのに、生存競争の過酷な場面に遭遇してしまって少し残念であったが、宮田池畔のバッコヤナギを見に行った。バツコヤナギは今日が一番の見頃で、青空に美しく黄緑色の花が浮かんでいた。早起きが多いヤナギの仲間では、超の字がつく程に寝ぼすけさんであるなあと変に感心する。
 これで無事に今日の目的たるものをカメラに納めたので、クサボケやヒメウズ等を撮影してから車に引き返して、野鳥撮影用機材に変えてきざはしの池まで戻った。舞岡公園は他所に比べてウグイスがとても多く生息していて、しかもその姿を間近に観察出来る稀有な公園なのである。野鳥通の方々の話を総合すると、ウグイスはお嫁さんが見つかるまでのほんの少しの間だけ木の枝に止まって囀りを繰り返し、お嫁さんが見つかると薮の中に入り込んでしまうから撮影出来るのはこの僅かな期間だけなのだと言う。また、ひょんの事から「里山生き物百人一首」なるものを作ろうと思い立ったので、野鳥の中で最も有名な部類に属するウグイスを撮っておかなければとも思ったのだ。そんな訳でウグイス撮りたさでかなりの野鳥ファンがカメラを構えていたが、そのお仲間に入れてもらって頑張ったら、何とかお見せ出来る写真を撮ることが出来た。それプラス、長い間、その囀りは知っているが正体を見たことが無いという代表格たるウグイスをこの目でしかっと確認することが出来た。午後からはこの陽気に誘われてほしみすぢさんご夫妻や鎌倉のMちゃんがやって来たので、またまた即席自然観察会となってしまった。お目当てのフデリンドウこそ咲いていなかったものの、咲き始めたノジスミレ、舞岡公園では初めて遭遇するニオイタチツボスミレの品格溢れる花を愛でる事が出来た。また、イチョウやカツラの木の下にしか生えないと思っていたトガリアミガサタケが、雑木林の小道脇にかなり発生していて嬉しくなった。以上、今日は今年に入って最も充実した道端自然観察及び写真撮影となって、思わず「舞岡の春、万歳!」と叫びたくなったのは言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/コブシ、ハクモクレン、ミツマタ、ヤマザクラ、スモモ(写真上左)、アンズ、キブシ、ツバキ、マンサク、サンシュユ、ヒイラギナンテン、ニワトコ、ウグイスカグラ、クサボケ、バッコヤナギ、ニオイタチツボスミレ、ノジスミレ、タチツボスミレ、ヒメウズ、ムラサキケマン、キランソウ、ヘビイチゴ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ、オオイヌノフグリ、ツクシ等。蝶/モンシロチョウ、モンキチョウ、キチョウ、ルリシジミ、ベニシジミ(写真下左)、キタテハ。昆虫/イタドリハムシ、ルリノミハムシ、アシブトハナアブ、ビロードツリアブ等。鳥/ウグイス(写真上右)、シジュウカラ、アオジ、モズ、ツグミ、ムクドリ、カルガモ、カワセミ等。キノコ/トガリアミガサタケ(写真下右)等。


2005年3月25日、横浜市戸塚区舞岡公園

 最近、お金がないにもかかわらず舞岡公園へ行く時には第三京浜、横浜新道と高速道路を使うが、第三京浜に乗るや否や、軽ワンボックスカーの小野路号は横風にかなり難儀している。これでは風が強くて今日の舞岡公園における散策は成果が無いかな、咲き始めたミツマタやキブシは風に揺れて撮影どころではないかなと心配したものの、到着してみると尾根沿いの雑木林はゴーゴーとうなりを上げているにもかかわらず、瓜久保等の谷戸は意外と静である。瓜久保の家前にあるアンズはやっと咲き始め、後で「ほしみすぢ」さんに教えて頂いたのだが、地域によっては、アンズはサクラより美しいと言われるらしく、ウメやスモモやサクラには無いほんのりとした紅色の花がとても爽やかで美しい。こんな事を言ってはご婦人達に総スカンを喰らうかもしれないが、セブンティーンの少女の頬のような色合いである。また、瓜久保の家横にあるミツマタは今が撮影し頃で、強風が心配されたがぴたりと花の揺れが止まる時があったのには驚いた。今日の風は確かに強いものの強弱のある息づかいのような風で、春一番や台風等の大風とはまったく異なるようである。なんだか春の神様が「もう春が近いよ、いつまでも眠っていては駄目だよ」と動植物に知らしめているかのようなのだ。気温も風が無ければぐんぐん上がったと思われる位で、天気予報で言われていた程の低さでもない。雑木林の片隅にはタチツボスミが可愛らしく顔を出していて、火の見櫓の向こうの空は、とっても暖かい青空に変わっていて、綿飴のようなふんわりとした雲が気持ち良さそうに静に流れて行く。それを見ていると当たり前だが「春って良いな」と感慨に耽ってしまうのだから軟弱者である。こんなロマンティクな性格ではライブドアのホリエモンさんのような大物にはなれそうもない。
 ぶらりぶらり春風に乗って「きざはしの池」まで行くと、野鳥が少なくなったというのに野鳥好きがたくさん集まっている。今日は何を狙っているのかなと聞いてみると、タシギとウグイスであると言う。久しぶりに会った舞岡公園のドンであるFさんがウグイスの写真を見せてくれた。いつもプロ以上の鮮明な詩情溢れる写真ばかりである。芽が綻んで緑の葉がのぞいているヤマグワの小枝に止って、一生懸命に囀っている写真である。写真を見ていると「ホーホケキョ、ホーホケキョ、」と聞こえて来そうな素晴らしい写真だ。しばしFさんの野鳥写真にうっとりしていると、本物のウグイスが付近で「ホーホケキョ、ホーホケキョ、」と囀り始めた。どうやら葦原の薮の中で鳴いているようだが、その囀りは前方の樹木の上の方の小枝から聞こえて来るようで、その囀りも非常に大きく聞こえる。やがてウグイスはお気に入りだとされるヤマグワの小枝にやって来て囀りを開始した。止った小枝の向こうには宮田池の美しい芽吹いた緑のヤナギがバックに入って素晴らしい。残念な事に一般撮影用機材のみであったので涙を飲む。しかし、観察しているとウグイスはスズメより小さく見えるが嘴を思いっきり開いて「ホーホケキョ、ホーホケキョ、」と繰り返す。やがてその囀りは止んでしまったが、下倉田の野鳥好きのKさんが「小さい身体だから鳴きくたびれてしまって、しばし休憩ですね」と言う言葉が、なるほど合点とスムーズに納得出来た。ウグイスはその響き渡る素晴らしい囀りに比べると、本当に身体はか細く小さいのである。相模原方面にもこんなバイタリテイー溢れる方がいたなあと連想する。
 午後からは病気療養中の方や介護で来られない方もあったが、また、「来るとぱっと明るくなる方が来なくて寂しいね」との声も聞かれたが、久しぶりにたくさんの自然好きの仲間と一緒に楽しい散策を開始した。。去年はフイルムカメラを持って散策された方も多かったが、今日は全員デジタルカメラで、一眼レフデジタルカメラの方も多くなって、みんなピカピカの新品一年生のようである。今日はまだ少し春が早いようであったが、蝶ではベニシジミ、モンシロチョウ、昆虫では各種のヒラタアブ、ハナアブ、ビロードツリアブ、それにイタドリハムシがスイバにかなりたくさん見られた。舞岡公園のイタドリハムシは、その名にイタドリとつくのにスイバに多い。舞岡公園にはイタドリは少ないからとも思うのだが、スイバとイタドリは近縁なのかなと図鑑を開いてみると、ピンポンパン、イタテドリもスイバも同じタデ科であった。この他、今日印象に残ったのは蕾が伸び始めているセンボンヤリである。春と秋に2回も咲いて野の花人生を2度も楽しむ珍しい植物である。まったく熟年に至ってまで青春の人生いつも青春の「花虫とおる」さんのようである。冗談はさておき、来週また来る時には真っ白な花を咲かせている事だろう。今日の散策はそれ程の成果は無かったものの、集まった方々は満足気味であったのは喜ばしい事であった。しかし、私は野鳥撮影用機材を一度も出す事がなかったので少々不満気味で、みなさんと別れるとほんの短時間だが野鳥撮影を試み、アカハラと今年最後となるかもしれない可愛らしいジョビ姫を撮った。

<今日観察出来たもの>花/ミツマタ、キブシ(写真下左)、アンズ(写真上左)、ツバキ、ブンゴウメ、マンサク、サンシュユ、ヒイラギナンテン、ニワトコ、ウグイスカグラ、バッコヤナギ(写真上右)、タチツボスミレ、ムラサキケマン、キランソウ、ヘビイチゴ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ、オオイヌノフグリ、フキノトウ、ツクシ等。蝶/モンシロチョウ、ベニシジミ。昆虫/イタドリハムシ、ナミホシヒラタアブ、ハナアブ、ビロードツリアブ等。鳥/ウグイス、トビ、タシギ、アオゲラ、アカゲラ、アカハラ、ジョウビタキ(写真下右)、シジュウカラ、アオジ、モズ、ツグミ、ムクドリ、コサギ、カルガモ、カワセミ等。


2005年3月15日、横浜市戸塚区舞岡公園

 「なにをそんなにぐすぐずしているの春ちゃん、もうすぐ春分の日だよ」と言いたくなる程に今年の春の到来は遅れている。今日はモンシロチョウやベニシジミ等の蝶が飛んでいないかと期待して出かけたのに、冬に逆戻りしたような低温と曇天で、その期待は見事に裏切られてしまいました。いつものように瓜久保の家へまず行ってみると、やっとブンゴウメが咲き出し、もちろんお先に咲いている枝垂れウメや実ウメも咲いていて、ミツマタはまだ咲いていないもののだいぶ黄色味を帯びているから、あたり一面は大変華やかである。河童池方面に歩みを進めると、なんと一本の低いキブシの木だけだが花が咲き出していたので嬉しくなった。春は前述したようにぐずぐずしているのだが、それでも順調に歩みを進めているのだから安心である。
 昨日、仕事で埼玉県の川越へ行ったが、目になんとなく花粉症のような症状が出て心配したが、自宅に帰ってからはそんな症状も引っ込み、今日の舞岡公園に於いてもそんな症状は出なかったから、どうやら花粉症では無いようである。きっと川越はスギが植林されている山々が近いから、花粉の飛ぶ量が多いのだろう。今日の朝日新聞夕刊によると、今年の花粉飛散量は史上最高と予測され、既に東京都内では昨年の1シーズン分を超えているとある。なんと八王子は昨年の12倍の花粉量を一昨日までに記録しているらしい。花粉量は1平方cmあたりに何個観測されるかで決められるらしく、八王子市は一昨日までに3119個の花粉が観測されたとある。花粉は顕微鏡で確認するくらい小さくとも、1平方cmあたり3119個となると薄っすらと積もって見える事だろう。ちなみにこれからスギ花粉に加えてヒノキ花粉も加わり、4月上旬がピークでゴールデンウィークまで続くのだそうである。昔の林野庁が経済効率一辺倒で雑木林をスギ、ヒノキ林に変えたことが多くの花粉症患者を生み出している事は間違いない。しかも植林されたスギ、ヒノキは管理が行き届かず、また、伐採等の経費がかかってそろばんが合わないらしい。まあ、戦後の大失政と言う訳で、NHKの受信料ではないが税金を返せとまでは言わないものの、花粉症治療にかかる費用はお国が面倒を見ても良いのではなかろうか。だいぶ話は横道にそれてしまったが、保水力のある広葉樹を主体とした雑木林、様々な生き物が暮らす事の出来る雑木林よ万歳!と言う訳である。舞岡公園はお陰様でスギ、ヒノキの植林は見られず、ほとんどが広葉樹だから花粉飛散は少ないのだろうが、それでも箱根や丹沢から花粉がたくさん飛んで来るらしく、散歩する方々の中にはマスクをかけている方がかなり見られる。
 左程の変化のない瓜久保を後にして小谷戸の里へ行ってみると、ウグイスカグラの可憐な花は益々増えて、植栽されているミツマタがほんの申し訳程度に花開いていた。今日の午前中の目的の一つとしてトガリアミガサタケを見つけようと言う期待があったのだが、かなり歩いてみたが舞岡公園にはトガリアミガサタケが発生するイチョウやカツラの木は一本も無かった。しかし、ソメイヨシノを初めとするサクラは至る所にあるので、サクラの花が散る頃のアミガサタケは他所よりたくさん発生する。そんな訳で今日の午前中は植栽されている木の花ウォッチングとなってしまい、一頭の蝶も一匹の昆虫にも出会えなかった。そこで午後からは野鳥撮影に専念したのだが、待てども待てども野鳥の出は芳しくない。冬鳥としてはかろうじてジョウビタキやアオジが残っている位であった。毎日のように舞岡公園にて野鳥観察および撮影をしている方々との会話は、「本当に鳥が少なくなって寂しくなりましたね」と言う、しんみりとしたお通夜のような会話ばかりとなった。しかし、まだ蝶や昆虫の出番も遠く、また、野鳥撮影の魅力も忘れがたい。だがしばらくは各種の花の撮影が中心となるだろう。そう言った意味では、来週は舞岡公園のベストシーズンと言える。

<今日観察出来たもの>花/ツバキ、ブンゴウメ(写真上左)、ウメ、マンサク、サンシュユ、アカバナマンサク、ミツマタ(写真上右)、キブシ、ニワトコ、ウグイスカグラ、ヒイラギナンテン(写真下左)、イヌコリヤナギ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ、オオイヌノフグリ、フキノトウ、ツクシ、クロッカス、フクジュソウ等。鳥/アオゲラ、ジョウビタキ、シジュウカラ、エナガ、アオジ、モズ、シロハラ、ツグミ、ムクドリ、コサギ、カルガモ、カワセミ(写真下右)等。


2005年3月8日、横浜市戸塚区舞岡公園

 先週末の大雪や寒さがまるで嘘であったかのように、今日は本当に暖かい一日であった。スキー帽を普通の帽子に代え、セーターを脱ぎ捨て、ラクダの股引を薄手の股引に代えて散策を開始した。陽の光が明るく暖かい事ばかりでなく、薄着で散策となったためか足取りも気分もとても軽やかである。ここしばらく体調が優れなかったのは寒さはもちろんだが、どんよりとした天気も多かったし、おまけに重たく身動きがとれない厚着もプラスされていたのではなかろうか。今日はいつもの所に車を停めたが、尾根に上がって虹の家周辺に下りて行った。こんな軽やかな天気なのだから裸木に止る野鳥や、じめじめした所に生えるキノコ等を撮る気にはなれない。様々な色合いのパステルカラーの被写体を撮影したいと思った訳である。クヌギ休憩所に登って行くとキブシの花穂はだいぶ伸び、、植栽されているミツマタの蕾も薄っすら黄色味を帯びて大きくなっていた。尾根沿いに多いヤツデの実はすっかりまん丸に堅く大きくなったし、アオキの花は咲いてはいないものの、その芽はぷっくり膨らんでほころび始め蕾がたくさん現れていた。三角畑から右に曲がって虹の家方面に下って行くと、菜花として栽培されていたアブラナの花がとても見事に咲いている。こんな陽気だからセイヨウミツバチがたくさん現れて吸蜜を繰り返している。モンシロチョウやベニシジミはいないかなと探してみたがセイヨウミツバチばかりであった。畑の周りの草原にはオオイヌノフグリがびっしりと眩しい位に咲いている。フキノトウはますます大きくなり数も増して、もうすぐ花咲く事だろう。雑木林の日溜りでは今年初めてのタチツボスミレが一輪咲いて、「とても暖かくなりましたね」と挨拶されたように感じた。
 虹の家に到着するとますます気温が上がって、越冬していたキタテハが現れて日向ぼっこをしている。これならきっとモンシロチョウが羽化しているはずだと小松菜畑に行ってみると、弱々しく羽ばたきながら真っ白の蝶が飛んでいる。今年初めての羽化したばかりのモンシロチョウである。大雪が降った、例年より寒かった、周りを見渡すと身体の不調を訴える方々が多かった等、なんとはなしに暗い話題ばかりであったが、モンシロチョウが羽化して来たのだからもう安心である。しかし、今日のような天候だからスギ花粉は蔓延しているようで、道行く人達のなかにはマスクをかけている方もかなり多く見受けられた。今日はパステルカラーの被写体を多く撮るんだと考えていたから、ほんのりと赤紫のアセビや紫色のクロッカス等を撮影した事は言うまでもない。虹の家裏の民家のオウバイはこぼれんばかりに美しく満開となっていたが、このHPにもう何べんともなく登場したから撮影は見合わせた。この他、トサミズキの蕾も本当に大きくなって、来週の今頃には独特な花が咲き始める事だろう。そうなればユキヤナキも咲いてコブシも続くことだろうから、百花繚乱の春は益々各所に見られることになる。午後からはもちろん野鳥撮影に切り替えるつもりでいたが、3月に入ってから午後3時を過ぎないと野鳥達が現れないので、前回来た時に上手く写せなかったマンサクを撮りに行った。シナマンサク、アカバナマンサクに比べて本当に花期が遅い。今見頃なのだから、マンサクの名の謂れである「先ず咲く」を返上せねばならないのでわと苦笑する。
 午後2時を回ったので野鳥撮影用機材で散策を開始したが、本当に野鳥の姿が見られない。一羽だけジョウビタキの雌のおジョウちゃんが盛んにポーズを撮ってくれるのだが、もう撮り飽きたと言ってはすまないのだが、まあ、その通りなのである。人間様の女性の美人だって、毎日朝晩見ていたらきっと飽きが来るに違いないし、いつも銀座のフランス料理を食べていたらこれまた飽きてしまうのに違いない。それと同じで野鳥の中の一番可愛らしいおジョウちゃんだって、毎度お馴染みになると今日は撮影パスねと言った具合になる訳である。そんな訳で田んぼにいた決して美鳥とは言えないムクドリ君を新鮮な思いで撮影した。まあ、吉野家さんには怒られてしまうかも知れないが、「フランス料理は食べ飽きたから、今日は牛丼にしよう」と言う訳なのである。そんな訳で久しぶりに遠くアオゲラを観察した位で、これと言った野鳥には出会えなかったが、いつものように満腹しての帰宅となった事は言うまでもない。冬鳥の季節は遠くになりにけりのようだが、いよいよ来週の舞岡公園は春一杯の、とっても楽しい面白ランドに変貌しているに違いない。

<今日観察出来たもの>花/アセビ(写真上右)、ウメ、マンサク(写真上左)、アカバナマンサク、ウグイスカグラ、イヌコリヤナギ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ、オオイヌノフグリ、フキノトウ、クロッカス、フクジュソウ、ブロッコリー、アブラナ等。蝶/モンシロチョウ、キタテハ(写真下左)。昆虫/セイヨウミツバチ。鳥/アオゲラ、ジョウビタキ、エナガ、アオジ、モズ、シロハラ、ツグミ、ムクドリ(写真下右)、コサギ、カルガモ、カワセミ、スズメ等。キノコ/エノキタケ等。


2005年3月2日、横浜市戸塚区舞岡公園

 
天気予報によると明日の木曜日の夜から金曜、土曜にかけて雪が降ると予想されている。と言う事はしばらくフィールドへ出向く事が出来ないという事である。3月に入ったのに雪とは嘘のようである。昨日のニュースでは去年の12月は暖冬だったが、今年に入って平年並みに戻ったと報道されていた。特に2月は低温で、私を含めた周りの方々が体調を崩したのも頷ける。長期予報を見ると来週からは暖かくなるようなので、冬将軍の最後の突っ張りなのかもしれない。今日の舞岡公園はぽかぽかした陽気だけでとても楽しくなった。畑の周りにはオオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ等が春と言う名の万華鏡を覗いているがごとくに煌びやかに咲いていた。もう少し気温が高ければ越冬していたキタテハ、アカタテハ、ルリタテハ、テングチョウ等がお出ましになる筈だが、来週までお預けのようだ。しかし、河童池に行って見ると、モミジの小枝にオジロアシナガゾウムシがしっかりと抱きついていた。オジロアシナガゾウムシは成虫で越冬するのだから、今見られても不思議ではないものの、このところ寒かったから、どうやってモミジの小枝まで移動して来たのだろうかと思うと実に不思議であった。しかし、今年になって初めて見る甲虫に出会ったのだから、とっても嬉しくなった事は言うまでも無い。小谷戸の里に出向いてみるとクロッカス、フクジュソウがまっ黄色で目に眩しく、フキノトウもたくさん顔を出していた。木の花では河童池畔のソシンロウバイは咲き終っていたが、アカバナマンサクは満開で、ようやく本物のマンサクが咲き出していた。古民家裏にあるイヌコリヤナギはどうなっているだろうかと今日の課題であったが、小さな短い綿毛を一杯につけて膨らんでいた。ネコヤナギに比べるととても小さいが、その芽の数はとても多くて、こちらの方が風情があるとも言えよう。また、宮田池畔のバッコヤナギは相変わらず芽が固かった。
 午後からはいつものように野鳥撮影用機材で散策した。しかし、モズ、カワセミ、ジョウビタキ、ツグミ等の常連さんは見られるものの、なんとなく鳥の出が悪い。午前中に見られたコゲラ、カシラダカ、アオジは全く姿を見せない。どうやらお昼寝の時間だなとお仲間と話し合っていたものの、いつまでたっても状況は同じである。冬鳥たちは旅立つ季節が近づいたので、その行動に何らかの変化が生まれたのかもしれない。小鳥達は日本にやって来て、それぞれがその習性なりに暮らしていたが、群れではなく単独行動していた野鳥であっても、まさか一人で旅立つのではなく群れで旅立つのだろう。どのような仕組みで散り散りばらばらになっていた小鳥達が集合するのかは分からぬものの、いずれにしても集合準備の号令ラッパが鳴り響いたのかもしれない。そんな事を考えると、ただ美しい野鳥の写真を撮りたいと言うだけでなく、少しは野鳥の習性を勉強しなくてはならなくなった。そんな訳で帰り際まで一回もシャッターを切ることが無かった。こんな事は舞岡公園でも他のフィールドでも一度も無かった事だから、いかに鳥の出が悪かったかが分かる事だろう。もっとも、その気になりさえすればモズ、カワセミ、ジョウビタキ、ツグミ、カルガモ、コサギ等の常連さんは写せた筈だが、それらの鳥でさえ絵になる場所には現れなかったと言う事になる。
 今日も前回についで“鳥撮りが、鳥撮れず”の一日になるかもしれないと思ったものの、帰り際に下倉田のKさんがその囀りと木を突付く音でアカゲラを発見してくれて、夕暮の中でかなりの鳥好きの方々がその姿にじっと見入った。写真の方は距離が遠くてブレブレで証拠写真にすらならなかったが、カメラのファィンダーで初めて見るアカゲラの美しい姿をしかと確認した。また、近くにアカハラがやって来て樹木の小枝に止ってくれたので、こちらの方は小さくしか撮れなかっものの鮮明に写す事が出来た。今日の舞岡公園はたとえ最後のラッキーが訪れなくとも、ぽかぽかした陽気でとても楽しかった訳であるが、なお一層、アカゲラ、アカハラがその楽しさに花を与えてくれた。これだから舞岡公園は止められない止らない道端自然観察となる訳なのである。

<今日観察出来たもの>花/ウメ、マンサク、アカバナマンサク、ウグイスカグラ、イヌコリヤナギ(写真上右)、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、トウダイグサ、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ、オオイヌノフグリ、フキノトウ、クロッカス、フクジュソウ等。鳥/アカゲラ、アカハラ(写真下左)、ウグイス、ジョウビタキ、シジュウカラ、アリスイ、アオジ、カシラダカ、コゲラ、モズ、ツグミ、シメ、メジロ、コサギ、カルガモ、カワセミ、スズメ等。昆虫/オジロアシナガゾウムシ(写真下右)。キノコ/エノキタケ、アラゲキクラゲ、カワラタケ等。その他/ニワトコの芽吹き等。