横浜市戸塚区

舞岡公園散策手帳
(第6集)




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2005年12月29日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今日は本年度最後の舞岡公園行きである。また、一年間続けて来た舞岡公園散策手帳も、今日をもって完了し終了する。舞岡公園には記憶が無い程前から通っていたが、今年程頻繁に出掛けたのは初めてであった。週一回のペースであったが、一度として同じ状況であった事は無く、当たり前だが、生き物たちは日々変化し暮らしているようだ。今日は大変御世話になった小谷戸の里のK女史やチャリコバサン、大学野球アオゲラさん、日限山機長さん等に年末の挨拶をした事は勿論だが、舞岡公園の生き物を代表して、アゲハの蛹のウリちゃん、サワグルミの葉痕のサワちゃんにも勿論年末の挨拶は怠らなかった。
 後で聞いて分かったのだが、舞岡公園も、ルリビタキ、アオゲラ等、いよいよ野鳥の数が多くなったようである。しかし、他の何ででも撮影が難しくなっているのに、野鳥だけで所定の枚数を確保するなんてとんでもなく難しい。そこで今日は一日中一般撮影用機材で散策した。こんな河童池が厚く氷が張っている状況では、見るもの撮るものに苦労する筈と、まずはエノキの大木の下の落ち葉捲りから挑戦した。舞岡公園はカメムシの仲間が多いから、直ぐにアオクサカメムシ、チャバネアオカメムシ、エサキモンキツノカメムシを見つけ出した。みんな寒さに凍えているが、触ると触覚を伸ばしスローモーに歩き始める。もちろん、ゴマダラチョウの幼虫も見つけたが、一頃よりその数は少なくなっているように思われた。習性を同じくするアカボシゴマダラの大発生と、何らかの因果関係があるのかも知れない。こんな調子で奥の手の落ち葉捲りを続ければ、直ぐに所定のカットを得る事が出来たが、あまりに寒々しいものだけでは不本意である。
 そこで公園内に行っても今までほとんど撮り尽くしているので、虹の家周辺に向かって歩き始めた。まず最初に撮ったのは果物のキウイである。ほとんどの物は収穫が終わっているのだが、まだかなりの数が残されていた。ことによったら最後の最後まで木にならしておいた方が美味しいのかもしれない。もちろん持主が食べるのだろう。次に民家の垣根からサネカズラの独特な格好の実が真っ赤に熟して垂れ下がっていた。暖かい地方へ行くと山野に普通らしいが、関東地方では植栽しているものにしかお目にかかっていない。また、クチナシの実も色付いてちょうど撮り頃だ。クチナシは芳香溢れる純白の花が咲き、その実は熟してから黄色い染料としてキントン等に用いられる。更に、昆虫ではスズメ蛾の仲間のオオスカシバの貴重な食樹である。図鑑によると碁盤の足はクチナシの実の形をかたどっているとあるが、たしかにそうである。これもサネカズラと同様に関東地方では自生していないが、静岡県以西には山野見られるらしい。たくさ自生している場所での花の時期の芳香は、いかばかりのものなのかと感じ入った。
 ここまでは順調だったが、畑でモンシロチョウの蛹を、柑橘類の植栽されている場所で各種のアゲハの蛹をと探し回ったのだが、見つからなかった。こうなるとお手上げで、すっかり色付いたキンカンの実を撮ろうと思ったら、小鳥除けに網がかぶされていた。キンカンはもっとも遅くに収穫される柑橘類で、それ程の美味だは思わないし利用価値があるのか分からないが、とっても可愛らしい実である。しかし、この時期になると、その葉は寒さと乾燥にやられて瑞々しい色をすっかり失っているのはとても残念である。以上、午前中はこれだと思われるものも撮影出来なかったし、尾根の散策路を通って車に戻った。途中、アオキの実がすっかり色付いていた。
 食事を済ませると久しぶりに車の中で昼寝をした。外は寒いが車の中には太陽光線がたくさん入って暖かいのである。ほんの15分のつもりが、なんと気づいた時には1時間も経っていた。まるで縁側で昼寝をする猫ちゃんのようだが、やっぱりこのところの寒さの中での散策は相当疲れを呼んでいるようである。散策を再び開始すると、畑の横の梨畑の片隅でウサギが日向ぼっこをしているのが目に入った。もちろん何処かで飼われていたものが捨てられた訳だが、近づくと物置小屋へ逃げ込んでしまった。目がまん丸で大きく、とても可愛らしい。舞岡公園ではオオタカがコサギを襲ってコサギの姿が見られなくなっているのだから、用心しないとウサギもオオタカの餌食になってしまうかもしれない。ペットを飼う方は最後まで責任ある愛情を注いで欲しいものだ。この後、前述したように御世話になった方々、そしてウリちゃん、サワちゃんに挨拶して、いつもより相当早くの帰宅となった。「舞岡公園の生き物たち、本年は大変御世話になりました」と、大声で胸の中でお礼を言ったのは言うまでもない。

<昨日今日観察出来たもの>花/ヒイラギ、ヤツデ、カンツバキ等。蝶/アゲハの蛹、モンシロチョウの蛹、ゴマダラチョウの幼虫等。昆虫/クロスジフユエダシャク、チャバネアオカメムシ(写真下右)、アオクサカメムシ(写真下左)、エサキモンキツノカメムシ、イラガの繭、オオカマキリの卵のう(写真中右)、チョウセンカマキリの卵のう等。野鳥/ヤマシギ、アオゲラ、ルリビタキ、シジュウカラ、スズメ、ハシブトガラス、ツグミ、ヒヨドリ、キジバト、コジュケイ等。キノコ/エノキタケ、スギタケ等。その他/サワグルミの冬芽葉痕、キウイの冬芽葉痕、アオキの実(写真中左)、キウイの実(写真上左)、クチナシの実、サネカズラの実(写真上右)、ナンテンの実、ノイバラの実、ガマズミの実、ニシキギの実、マユミの実、ウツギの実、センリョウの実、マンリョウの実等。


2005年12月20日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今日でこの舞岡公園散策手帳を最後にしたい、あるいは、なるかもしれない本当に貧果に泣いた1日であった。咲いてる花が一つもないと言い得る状況で、カンツバキは咲いているもののサザンカはすっかり終わっていた。午後になっても各所の溜池は全面氷結のままで、ハシブトガラス以外、これと言った野鳥が現れずデジスコ撮影の練習にもならなかった。今年一年様々な被写体で賑わった舞岡公園ではあるが、もうお手上げの状況で、冬鳥がたくさんやって来るまで行く気がしなくなった。もし舞岡のファーブルさんに途中出会わなければ、どうなった事であろうかと思うとぞっとする。氏が貴重なイラガの繭のありかを教えてくれた。そんな訳で今日は、ぎりぎりの8カットを撮ったのみとなった。
 昨日、年末恒例の里山写真クラブ作品展の搬入も無事に終わって、今日は忙中閑有りの一日となった。何処へ行こうかとさんざん悩んだ末、これまで週一に訪れていた舞岡公園へ行くしかないなと思った。いつもなら舞岡公園へ行って、あれとこれを撮ろうと、すぐに頭の中に今日の写真撮影の献立表が出来上がったものだが、花は一服、キノコや昆虫は見られず冬鳥の出が今一の現在、どんな献立にしようかと迷ってしまった。まさかご飯にたくあん味噌汁だけでは余りにも寂し過ぎる。現在の多くの主婦は栄養の偏りを考えて、夕飯の料理は最低5品と考えているらしい。江戸時代の寒村と異なって、スーパーへ行けば様々な食材が売られているから、家庭の主婦が夕飯の献立に頭を悩ます事もほとんど無かろう。そんな江時代の冬の寒村のようなフィールドで、料理ならぬ写真を8品も撮ろうなんて気違い沙汰である。しかも、以前に出した献立ではなく、出来うる限り美しくあしらえてと思うのだから、どんなフランス料理の名コックだって不可能かもしれない。
 まあ冗談はこれくらいにして、「何でも屋だから何とかなるべえ」と恐れ多くも気楽に散策を開始した。しかし、1時間半が経過してもノーカットの現状で、今までかつてなかった惨状だから、焦りに焦った。しかし、ほとんど行った事のない丘の上の駐車場周辺へ行ってみると、まだ、ノイバラやガマズミの実が残っていた。また、フユザクラも寂しげに咲いていたが、今一絵にならないのが残念であった。これに冠を被ったようなハコネウツギの小公子セドリックのような貴公子の葉痕とクズの葉痕を加えた。今まで一つの樹種の葉痕には様々な顔が見られるが、その中でもクズは比較的同じような顔が多いと思っていた。しかし、今日は長い蔓にある10個近くの顔を見比べてみると、そうではなく、様々な顔がついていた。今日はロートレックの絵画にでも出てきそうな退廃的で物憂げな女性の顔を撮った。生まれつき根明かで、働き者の両親に恵まれて不幸を知らずに育った私には、こういう顔の女性に出会うと、「もっと前を向いて歩いてね、いい事もそのうちあるさ」なんて、ついお節介をしてしまい、後々酷い目によくあったものである。まあ、磁石ではないがプラスはマイナスを引き付けるのである。それにしても、どんなに貧乏であっても、しかも苛められても、その気品を失わなかった小公女セーラは偉い。きっと、詩人の金子みすずさんもそんな方だったのだろう。
 これで4品の献立が出来たから、谷戸見の丘へ行って以前から見つけておいたハラビロカマキリの卵のうを撮影していると、歳に似合わないサイクリング車に乗った舞岡のファーブルさんが現れた。「花虫さん、ここにイラガの繭があるよ」と教えてくれたので行ってみると、撮影にほど良い高さについていた。今日は是非ともイラガの繭をゲットしたかったので、とても嬉しくなった。真っ青な冬の空に浮かぶイラガの繭は、冬の風物詩の一つなのである。これで6品となった。後2品を加えれば献立表は完成するとばかりに、去年、ウラゴマダラシジミの卵が見られた谷戸の小川脇のイボタノキを念入りに探した。ラッキーな事に去年よりその数は少ないものの、3個の卵を見つけた。しかし、直径1センチにも満たない大きさだから撮影は至難の業である。マクロレンズの最短撮影距離で絞りを絞り込んで被写体深度を深くし、もちろん三脚、レリーズを使用し、風が止むのを待ってシャッターを切った。そして最後の一品は、瓜久保の河童池で、久々に霜を薄っすらと乗せたキノコ(スギタケ?)を撮った。今日は本当に苦労したが、比較的バラエティーに富んだものが撮影出来た。しかし、午後からのデジスコによる野鳥撮影はゼロで、本当に午前中に8品撮っておいて良かったと感ずる一日となった。こんな状況だから、年末にもう一度散策するつもりだが、ギブアップとなるかもしれない。しかし、そうであっても、今年一年大変お世話になった舞岡公園に、年末の挨拶を兼ねてやって来ようと帰路に着いた。

<昨日今日観察出来たもの>花/フユザクラ、チョウセンレンギョウ、ヤツデ、カンツバキ等。蝶/ウラゴマダラシジミの卵(写真下右)、アゲハの蛹等。昆虫/クロスジフユエダシャク、イラガの繭(写真下左)、ハラビロカマキリの卵のう、オオカマキリの卵のう、チョウセンカマキリの卵のう等。野鳥/キジバト、ジョウビタキ、ハクセキレイ、キセキレイ、シジュウカラ、スズメ、ハシブトガラス、ヒヨドリ、コサギ等。キノコ/エノキタケ、スギタケ(写真中左)等。その他/ハコネウツギの冬芽葉痕(写真中右)、クズの冬芽葉痕、イロハモミジの紅葉、ナンテンの実、ノイバラの実(写真上左)、ガマズミの実(写真上右)、ニシキギの実、マユミの実、ウツギの実、センリョウの実、マンリョウの実等。


2005年12月13日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今日は午前中は風がほとんど無い暖かい小春日和、午後になるとにわかに空は雲って、なんと一時雪が降った。少量だが初雪という事になるのだろう。そして夕方には、お月様が真ん丸く青空に浮かんでいた。とっても変わりやすい天気であった訳で、帰宅して今日の天気を調べてみると、“日本海側は北海道から西日本まで雪、室戸岬、千葉、勝浦で初雪が降った。明日も、日本海側は雪が続き、山沿いを中心に大雪に注意が必要。季節風が強く、太平洋側は晴れるが雲が広がりやすい。東海地方など平野部でも雪のちらつく所があり、全国的に厳しい寒さが続く”とあり納得した。舞岡公園にも、ついに厳しい冬がやって来たのだ。
 かなりしぶとく残っていた雑木林の葉もかなり落葉して、ボランティアの方々が落ち葉がきに忙しそうだ。もちろん園内の清掃兼堆肥をつくる為に集めているのだ。ここのボランティアの主的存在であるバンダナおじさんによると、「舞岡公園にカブトムシが多いのも、各所で堆肥を作っているかかもしれないな」と言っていたが、確かに舞岡公園は他のフィールドに比べて、面積あたりのカブトムシの数はとても多い。しかも、みんな十分に育った大型ばかりなのだから、やはり堆肥の中で育ったものだろう。自然がまだ豊かに残る山梨県や長野県や群馬県なら、さぞかしその数も身体も大きいだろうと思われるのだが、カナブンをちょくら大きくした位のカブトムシもかなり多い。いかに舞岡公園の堆肥作りは水田や畑の有機栽培に役立つばかりか、カブトムシはもとより堆肥の中で育つ昆虫たちにとっても大歓迎なのだ。しかし、ゴマダラチョウの幼虫や各種カメムシ等は落ち葉の下で冬眠する。だから、落ち葉がきは困った事なのだが、毎年、これらの昆虫を含めてその数が減じていないのだから、それ程、心配する事はないのかもしれない。
 今日は最初から野鳥を狙って散策を開始した。この時期に舞岡公園を訪れる自然大好き人間の大多数は、野鳥観察並びに撮影を目的とした方が多くなる。野鳥以外でも冬芽葉痕、越冬する昆虫たちを撮影すれば撮るものが無いなんて事は無いのだが、やはり野鳥が冬の自然観察のずば抜けたスターである事には間違い無い。今日もかなり多くの方が野鳥撮影にやって来ていた。数年前だと大砲のような一眼レフ用レンズをカメラに着けた方が多かったが、今日はほとんどの方がデジスコであった。この傾向はますます続きそうで、徹底的に画質を重んじ、また、動き回る野鳥や飛翔する野鳥写真を撮る以外は、一眼レフカメラの出番はなさそうな勢いである。また、かなり望遠側に振ったコンパクトデジタルカメラの方も、何倍にもなるテレコンを着けた一眼レフカメラの方も以前にはかなり多く見られたものの、このところそのような方も少なくなった。一眼レフ+超望遠レンズ+重量級三脚の十分の一程度の費用で揃ってしまうデジスコが人気なのは、まこと時代の流れのようである。私も清水の舞台から飛び降りる気持ちで、デジスコセットを購入して試し撮りをしているが、「これは使える」と言う事が十分に分かった。
 今日の舞岡公園の野鳥の出は芳しくなく、このページに載せたジョウビタキ、カワセミ、コガモの写真は、実は昨日撮ったもので、集まって来た方々が皆、「今日はいないねー」と口にするように、少なくとも午前中は本当に鳥の出が悪かったのだ。全面氷結した宮田池や河童池で餌を獲っていたカワセミやコガモが現れないのは頷けるが、他の野鳥も少ないのには驚いた。小谷戸の里のK女史によると、「天候が穏やかな時よりも、崩れる前の日なんかの方が野鳥は多いわね」と言う事なのだろうか。これは午後からは一般撮影機材で回るしかないかなと、早々車に戻って冷えた弁当を家から持参した熱々のお茶と一緒に胃袋に流し込んでいると、チャリコバさんがウインドーガラスをノックする。「舞岡公園のルリビタキが見たいんでしょう、今、そこにいるよ」と言うので食事を中断してついて行くと、ルリビタキが頭を振り囀りながら小枝に止まっていた。もちろん急いでデジスコを取りに戻って引き返して来たが、ルリビタキは絵にならない所に場所を移していた。「もっと良い所へ止まってよ」と、そこに居合わせた方々が願ったにもかかわらず、ついに飛び立って何処かへ行ってしまった。唯一、第一発見者の日限山機長さんだけが素晴らしい写真を写す事が出来た。液晶ディスプレイで見させて貰うと、まるで野鳥図鑑から借りて来たような写真が撮れていた。午前中、かなり一緒に散策した日限山機長さんの苦虫潰した顔が、薔薇色に変わっていた事は言うまでもなかろう。蝶と同じで野鳥は、かなり偶然性が支配する。初めて来た方が素晴らしい写真を手にすることも数多い。だからこそ、止められない止まらない野鳥撮影で、みんなその魅力にはまり込んで、カメラメーカーやスポッティングスコープメーカーを喜ばす存在となるのだ。デジスコの登場と定着で、ますます野鳥に親しむ方が増えるだろう。しかし、皮肉にも日本野鳥の会の会員は減り続けていると言う。やはり「日本道端自然観察の会」を立ち上げなければならなくなるのかもしれない。

<昨日今日観察出来たもの>花/コセンダングサ、ノゲシ、オニノゲシ、ヤツデ、チャ、サザンカ、ヒイラギ等。蝶/ベニシジミ、ゴマダラチョウの幼虫、アゲハの蛹等。昆虫/クロスジフユエダシャク、アキアカネ、オオクモヘリカメムシ等。野鳥/キジバト、ジョウビタキ(写真中左)、ルリビタキ、カワセミ(写真下左)、ハクセキレイ、キセキレイ、シジュウカラ、メジロ、ツグミ、スズメ、ハシブトガラス、コガモ(写真下右)、アオサギ、コゲラ、ハイタカ、ヒヨドリ等。キノコ/エノキタケ、スギタケ等。その他/舞岡公園の火の見櫓に浮かんだ月(写真上左右)、ジョロウグモ、アジサイの冬芽葉痕(写真中右)、イロハモミジの紅葉、ナンテンの実、ノイバラの実、ガマズミの実、ニシキギの実、マユミの実、アオツヅラフジの実、ウツギの実、センリョウの実、マンリョウの実、ヤブコウジの実、トキリマメの実等。


2005年12月4日、横浜市戸塚区舞岡公園

 天気予報によると、今日は久しぶりの曇天である。朝起きて空を見上げと、やっぱりどんよりとした雲が空を覆っているし気温もかなり低い。風邪でも引いたら元も子もないから行くのは止めようかなとも思ったが、せっかく早く起きたのだから行ってみるかと出かけた。まだ、12月に入ったばかりだから、防寒をしっかりすれば何とかなる。これが厳寒期なら、恐らく即座に止めにしたことだろう。これからしばらくの間は、晴天で風のない日がベスト散策日和となる事は言うまでもない。舞岡公園に到着してみると人の出はやはり少ない。しかも、なんと午前11時半に雨が降って来た。夜中から雨の筈だったのにと恨んだが、仕方あるまい。そんな訳で今日の散策は、正味2時間のものとなった。この為、ここに貼り付けた写真のうち、トチノキの葉痕とミカドトックリバチの空巣は、以前に撮影したものである。もちろん今日も健在である筈である。
 前述したように結局は雨が降って来て出来なかったが、今日は午後から購入したデジスコの練習に励むつもりでいたので、午前中になんとかこのHPに貼り付ける写真を確保したいと真剣な眼差しで散策を開始した。今日はここしばらく続いた虹の家周辺の午前中の散策は止めにして、公園内をくまなく散策する事にした。もちろん始めに、瓜久保のアゲハの蛹が健在であるかを確かめた事は言うまでもない。今日も端整な姿で着いていてほっとした。季節が良ければ確実に何がしかの昆虫が休んでいるアジサイの葉にはべっとりと朝露が降り、その色も黄色くなって赤褐色の縁取りのある葉も見られる。もう幾日かすると落葉が始まるのだろう。河童池に行くとアオサギとコサギが休んでいる。驚かさないようにキノコの穴場に行ったが、相変わらずエノキタケの幼菌とヒイロチャワンタケが見られる。しかし、撮影に値する絵になるようには生えていない。河童池から雑木林に足を進めると、ジョロウグモが巣に引っかかったコナラの枯葉の裏で休んでいる。すでにお腹にたっぷりとあった卵を産卵した後で、写真のように痩せ細っている。もうすでにジョロウグモはその生を全うしたのだから、死滅しても本望の筈だが、しっかりと命ある限り生きようとする姿に感動する。我々人間だって、命ある限り一縷の望みを抱いて、元気良く明るく生きて生きたいものである。
 前田の丘に到着すると、前々から撮影したいと思っていたマユミの実を見に行く。どうした訳かここに植栽されているマユミだけが特に仮種皮の色が赤いのだ。もっとももっと色の濃い、それこそ真っ赤な仮種皮のものを園芸店で見ているが、この前田の丘のものも園芸品種なのだろうか。野山を歩いていて、色のまったく薄いものから、かなり赤いものまで散見するから、園芸品種と言っても赤くなるものを選別し育種しただけなのだろう。マユミは漢字で書くと真弓、女性の名につけられているが、この名の方は一部の例外を除いて真にまじめで素敵な女性が多い。真弓は真の弓、枝が良くしなうので弓の材料に用いられた事は著名である。
 前田の丘を後にすると谷戸奥に向かって足早に歩いていった。狐久保入り口にある畑に、凍えているベニシジミやヤマトシジミはいないかと寄ってみたが見られなかった。しかし、畑の縁に植栽されているカキの木の葉は全て落葉して、まるで微笑んでいるかのように見えるから「笑みちゃん」と名づけられたカキの葉痕がたくさん笑っていた。ここのカキは枝が肥えて太っているから簡単に撮影出来る。また、畑の際に一本何故か残してあるエノキの大木の根際に、葉がたくさん落ちていたので、もしやと思って葉を捲ってみるとゴマダラチョウの幼虫が越冬していた。まだ、木から下りて来たばかりのようで顔は緑色を帯びていた。撮影するために顔を何べんも起こしていたら眠りから覚めたようで、ゆっくりと動き始めた。もちろん、元の根際に戻したが、恐らく落ち葉は掻き集めて畑の腐葉土として利用される事だろう。そうなれば残念ながらゴマダラチョウの幼虫もいっかんの終わりとなってしまう。最近、同じような習性のアカボシゴマダラが放蝶によって増え、舞岡公園ではゴマダラチョウの生息を脅かす程の勢いだから、ゴマダラチョウには本当に頑張って欲しいものである。
 次に水車小屋へ行って、イロハモミジの紅葉やナンテンを撮り、小谷戸の里に辿り着いた所で雨が降って来た。液晶デイスプレイで今まで撮影したものを確認すると合計6枚であった。雨が止んだら谷戸見の丘のトチノキの冬芽葉痕を撮ろうと思っていたが、雨はなかなか止まないし、どうやら降り続くようだったので、雨脚が弱まった時を見計らって大急ぎで車に戻った。以上、今日は本当に短時間の散策で、午後から楽しみにしていたデジスコの練習も出来なかったが、お天気には敵わないので、「6枚撮れたからまあ良いかな」と、本当に早々の帰宅となった。

<今日観察出来たもの>花/ホトトギス、コセンダングサ、ハキダメギク、タイアザミ、キク、ヤツデ、チャ、サザンカ、ヒイラギ等。蝶/ゴマダラチョウの幼虫(写真下左)、アゲハの蛹等。昆虫/ミカドトックリバチの空巣(写真下右)等。野鳥/キセキレイ、アオサギ、コサギ等。キノコ/エノキタケ、ヒイロチャワンタケ等。その他/ジョロウグモ(写真中右)、サワグルミの葉痕、カキの葉痕、トチノキの葉痕(写真上右)、イロハモミジの紅葉(写真上左)、ナンテンの実(写真中左)、ノイバラの実、ニシキギの実、マユミの実、アオツヅラフジの実、ウツギの実、センリョウの実、マンリョウの実等。


2005年11月24日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今年の舞岡公園行きも今日を入れてあと数回となった。今年は我が身の実力を顧みず、恐れ多くも「舞岡公園散策手帳」なるものを始めてしまい、毎週必ず行くとのかなりしんどいしばりをかけてしまった。しかし、12月に入れば見るもの撮るものが、がくんと少なくなる。もちろん野鳥撮影の最適シーズンとなるのだが、到底8枚の写真を野鳥ばかりで揃えるのは至難の業だ。そこで12月は毎週行ったとしても、撮りだめして2回程ご紹介するしかないなと思われる。今日はまあばっちり写真が撮れる今年最後の日と思い、慎重に、しかし、楽しく散策した。お蔭様で望外の数の写真をカメラの中に収める事が出来た。
 今日もこのところ定番となっている、虹の家から散策を開始した。地下鉄舞岡駅へ向かう道の小川沿いに、冬桜ないし10月桜が咲いている。今日も撮るものに苦労するだろうと思われたので、まずはそれを撮っておこうと思ったのだが、足場も悪く絵になるようには咲いていなかった。そこで尾根上の散策路手前の畑や路傍を丹念に見て歩くと、イヌショウマがまだ咲き残っていたり、セイタカアワダチソウの葉にトビイロツノゼミを見つけた。また、畑の脇に植栽されている小菊の蕾に、ヨモギハムシが止まっていた。ヨモギにつくからヨモギハムシなのだが、ご存知のようにキクもヨモギに近い仲間なのだ。これとはまったく逆に、キクスイカミキリというカミキリムシがいるが、こちらはキクとつくが、ヨモギにも見られるのである。そんなこんなで幸先良く写真が撮れて嬉しくなったが、前回と同じように尾根上の散策路は見るもの撮るものがない。ただ、クヌギの大木の幹に、卵でお腹が膨れあがったクヌギカメムシを発見した。好適な産卵場所を探しているようである。三角畑へ着くと、誰も振り向かない、しかも名前が可愛そうなハキダメギクを撮るしかないなとカメラを向けた。この名は牧野富太郎博士がつけたもので、博士も墓場の中で今頃「しまった」と思っているに違いない。しかし、マクロレンズで覗くと、なかなか可愛らしい花なのだ。もし品種改良がなされて花がもっと大きくなったら、ハキダメギクなんていう名前が、白雪小菊なんていう名前に変わるかもしれない。なにしろ白雪姫は、実は実はとっても素敵な少女だったのだから。冗談はさて置き、雑木林の縁には相変わらずアオツヅラフジ、スイカズラの実、エビズルの実が見られ、尾根上の雑木林にも前回撮ったクサギの実が美しく輝いていた。しかし、それらは前回紹介したものである。そこで蜘蛛の巣に引っかかって、樹木の幹に触れているヤマザクラの葉を撮った。時計を見ると早くも正午となった。そんなに多くの収穫があった訳ではないが、じゅっくりとのんびり歩き過ぎたようである。そこで虹の家に足早に引き返したが、途中、陽が良くあたるコンクリートの土留めにアオマツムシ、アオクサカメムシが暖をとっていた。
 午後からはもちろん瓜久保から散策を再開した。人や天敵に見つかりやすい場所を選んでしまったアゲハの蛹は、相変わらず美しくついていてほっとした。ドラエモンののび太のようにドジという方がいらっしゃるが、本当にドジなのだろうか。ことによったら静ちゃんのように慎重で聡明なのかもしれない。その答えは春まで待たなければ分からない。その為には人為的な採取が無い事を切に希望する。また、木の重たい門を支える石柱には、ミカドトックリバチの空巣が二つもあった。河童池に向かうとサワグルミの葉は完全に落ちて、様々な可愛らしい葉痕がたくさん見受けられた。少し早いかなとも思ったが、その微笑ましい魅力に負けて撮影した。団体さんでやって来たご婦人が、「何を撮ってるんですか」と尋ねるので、「おばちゃんに似ている、とっても可愛らしい顔を撮ってたんだよ」と液晶デイスプレイで拡大して見せてあげた。会費を納入しなかったので、日本冬芽葉痕普及協会の会員ではなくなったが、昔とった杵図化は健在のようである。ご婦人たちは「本当だ、知らなかったわ、ここにもある」と大喜びだ。そこで「冬のソナタの主人公とヒロインがいるよ」と、とっておきの葉痕を見せてあげると、「本当だ、ヨン様とチェジウがいるわ」と益々盛り上がっだ。まったく馬鹿げたお話だが、笑う角には福来るなのである。いつも期待を裏切らない瓜久保だが、キノコも無し、昆虫も無しで、小谷戸の里へ向かった。小谷戸の里では、昨日の舞岡公園最大のイベントである「収穫祭」の後片付けで忙しそうだ。今年はつきたての御餅も、そんなに並ばないで食べられたらしい。来年はやはり是非行って見るべきだと思った。その後、ガマズミの実、ヘクソカズラの実、ウツギの実等を撮って、今日もカメラのお腹は満腹となり、早くも谷戸は陽が落ちて、お帰りの時間となってしまった。

<今日観察出来たもの>花/リンドウ、ワレモコウ、ホトトギス、ノコンギク、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、ハキダメギク(写真上左)、カタバミ、タイアザミ、ノゲシ、イヌタデ、ツワブキ、シュウメイギク、キク、ヤツデ、チャ、サザンカ等。蝶/モンシロチョウ、キチョウ、ツマグロヒョウモン、ウラギンシジミ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミ、ベニシジミ等。昆虫/ナナホシテントウ、テントウムシ、ヨモギハムシ(写真上右)、ウリハムシ、クロウリハムシ、アキアカネ、トビイロツノゼミ、クサギカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、アオマツムシ、ツマグロオオヨコバイ、クロスズメバチ、ハラビロカマキリ、チョウセンカマキリ等。野鳥/ジョウビタキ、アオジ、ダイサギ、スズメ等。キノコ/エノキタケ、ヒイロチャワンタケ等。その他/ジョロウグモ、サワグルミの葉痕(写真中右)、ヤマザクラの葉(写真中左)、ガマズミの実、ムラサキシキブの実、ノイバラの実、ニシキギの実、ヒヨドリジョウゴの実、マユミの実、コマユミの実、カマツカの実、スイカズラの実、アオツヅラフジの実、ウツギの実(写真下右)、ヘクソカズラの実(写真下左)、センリョウの実、マンリョウの実等。


2005年11月17日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今週に入って本当に寒くなった。しかも、北風がかなり強い日が続いている。気温としては今日が一番低いのではないか。日陰にいると耐えられなくなるほどの寒さである。しかし、陽が当たる風が遮られる場所はまだかなり暖かく、アキアカネを筆頭として各種の昆虫が日向ぼっこにやって来る。もちろん太陽は低い軌道を回っているので、そんな日溜まりも午後になると次第に減少して行く。これからしばらくの間は午後の2時半位までが、道端自然観察及び写真撮影の時間帯となるだろう。地球温暖化による暖冬なのではと危惧していたが、今のところ季節は順調に推移しているようだ。
 今日も虹の家に車を停めて、地下鉄舞岡駅の方へ戻って、久しぶりに尾根道から散策を開始した。虹の家周辺では、相変わらず背の低いセイタカアワダチソウや植栽されているキクが咲いているが、もう先週までの新鮮さは失われている。例年、セイタカアワダチソウやキクが咲き終わると、ほとんどの昆虫たちは姿を消す。食事をしようと思っても咲いているのはヤツデの花位になるのだから当然だ。一番最後まで見られる昆虫といったら、このヤツデにやって来るヒラタアブの仲間や、成虫で越冬する日溜まりのムラサキシジミ位となる。舞岡駅に近づくと小川沿いに植栽されている冬桜が、ほんのりとピンクに色づいた花を咲かせている。先日行った三ツ池公園にもたくさん植栽されていたが、写真撮影が出来る距離に咲いていなかったので断念をした。それにしても枯れ木にまばらに花がついている冬桜は、晩秋の侘しさ寂しさをより一層感じさせる。今日は北風がとても強く、やって来る冬がまざまざと至近に感じられた。こんな場合でも、分厚い財布にたっぷりと札束が入っていれば、やって来る冬もほっかほっかなのだろうが、薄っぺらの財布では本当に身も心も寒々しい。かつて勤めていた会社で主要な顧客が倒産して、いつもなら豆腐の厚さとは言い難いがハンペンの厚さ位はあった期待した冬のボーナスが、なんと油揚げ一枚の薄さとなった。これでは女房に手渡せないと嘆いたものである。それならば有馬記念で増やそうとも思ったのだが、テンポイント、トウショウボーイの銀行馬券ではいかんともしがたかった。大金持ちになりたいなんて生まれて以来思った事はなかったものの、冬をほっかほかに暮らせる位の小金持ちにはなりたいものだとその時思った。しかし、「良い時もあるわよ」と良く出来た太っ腹の女房に慰められ我慢したら、なんとバブルの絶頂期には本当に豆腐の厚さとなったのだ。そしてバブルが弾ける訳だが、あまりにも横道に逸れすぎたので、その後の事は書くのはよそう。まあ、人生良い時もあれば悪い時もあるものなのだ。結局、幸福と不幸を差し引きすると、全ての人間がプラマイゼロなんだから、我が道を胸を張って歩くのが一番である。
 期待した尾根道だったが、これといったものには出会えず、ただ路傍にスッポンタケが萎びて転がっていた。眺望が開けた場所に出ると富士山がますます白くなって鎮座している。真っ白に変身するのもそう遠くはなかろう。やはり今日も撮るものに苦労するのかと不安が過ぎったので、三枚畑へ到着すると、日頃はカメラも向けないノゲシやイヌタデを撮った。ノゲシは春の花と図鑑に分類されているが、秋もまたその花の盛期なのである。また、畑にぽつんとある細い樹木の幹に、ハラビロカマキリがおどけた姿で暖をとっていた。更に雑木林の縁に赴くと、サルトリイバラ、スイカズラの実が垂れ下がり、雑木林の中に入るとクサギの実が美しく、それらをすべてカメラの中に納めたから、液晶デイスプレイにはカラフルな写真が一杯となって、とても賑やかになった。今日もなんとか規定枚数は撮れそうと、陽のあたる山道を降りて車に戻った。
 午後からはまず最初にいつものように瓜久保に場所を変えた。瓜久保の家周辺は雑木林に遮られて陽が射さないからとっても寒い。それでも建物に早やくも見つけたアゲハの蛹を撮ったり、まだ緑滴るアジサイの葉上や樹木の幹で、カネタタキ、セスジツユムシ、ホソアシナガバチ、アオマツムシ、ハサミツノカメムシ等を観察した。また、河童池横のキノコの穴場では、エノキタケ、ナラタケ等も観察する事が出来た。そんな訳で、時計を見るとまだ午後1時半なのに手ごたえある写真が勢ぞろいとなった。そこでとっても気楽な気持ちになって、「もう早々と帰ろうかな、しかし、チャリコバさんや小谷戸の里の方々に挨拶でもしてこよう」等と思いながら、谷戸奥へ向った。今日も宮田池ではデジスコの放列だ。しかし、見るとカルガモとハクセキレイが見られる位であった。こんな寒い日でも小谷戸の里の方々は外で里山管理の仕事をしているらしく誰もいず、陽の良く当たるバードウォッチングには最適な場所で、白熊君のように厚着して太って見えるチャリコバさんがいた。しばらく話していると、お腹が白いノスリがカラスと青空でバトルを繰り広げてくれた。

<今日観察出来たもの>花/リンドウ、イヌショウマ、ツリガネニンジン、ホトトギス、ノコンギク、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、タイアザミ、ノゲシ(写真上左)、イヌタデ(写真上右)、ツワブキ、シュウメイギク、キク、ヤツデ、チャ、サザンカ等。蝶/アゲハの蛹(写真中左)、モンシロチョウ、モンキチョウ、ルリタテハ、ヒメアカタテハ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミ、ベニシジミ等。昆虫/ナナホシテントウ、アキアカネ、コノシメトンボ、ハサミツノカメムシ、クサギカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、セスジツユムシ、アオマツムシ、カネタタキ、ツマグロオオヨコバイ、アオバハゴロモ、ホソアシナガバチ、ハラビロカマキリ、オオカマキリ等。野鳥/ノスリ、オオタカ、カルガモ、シジシュウカラ、ハクセキレイ等。キノコ/スッポンタケ、エノキタケ(写真下左)、ナラタケ、ヒイロタケ(写真下右)、ヒイロチャワンタケ等。その他/ジョロウグモ、ガマズミの実、ムラサキシキブの実、ノイバラの実、クサギの実(写真中右)、ニシキギの実、ヒヨドリジョウゴの実、マユミの実、コマユミの実、カマツカの実、スイカズラの実、サルトリイバラの実、センリョウの実、マンリョウの実、ヤブコウジの実等。


2005年11月10日、横浜市戸塚区舞岡公園

 最近、穏やかな秋晴れがずっと続いている。しかし、週末に天気が崩れるというパターンは定着したようだが、今週末は道端自然観察及び写真撮影に、左程影響する程の事は無いようである。そろそろ見るもの撮るものが少なくなって苦労するのかと思ったが、今日の舞岡公園は非常にバラエティーに富んでいて、とっても楽しめた。きっと今週末も楽しさ一杯のフィールドだと思われる。今日の特筆事項はヌメリスギタケモドキだろう。野鳥撮影に来ていた方に詳しく場所を聞いて行ってみると、オニグルミの幹の程好い高さに、一家族が勢ぞろいしていた。また、ウラギンシジミの雌の美しい姿もカメラの中に納める事が出来た。
 今日もこのところ定番となっている虹の家に車を停めて散策を開始した。虹の家の植え込みにはハマナスの実が真っ赤に色付いて輝くばかりだ。また、センリョウ、マンリョウの実もとても鮮やかである。シュウメイギクはほぼ終わった感じたが、変わってツワブキの黄色が目に染みる。植栽されているカマツカの実が晩秋の午前中の光に眩しい程に光っている。花も良し実も良しの樹木だから、虹の家に植栽されている訳がしっかりと分った。虹の家を出て付近の畑を散策すると、草刈があったために花期が遅れていたセイタカアワダチソウが満開である。人間の背丈よりも高い立派なセイタカアワダチソウの群落も見事で美しいが、背の低いこじんまりと咲く晩秋のものもとても風情がある。その花の間を元気良くモンシロチョウが飛んでいる。しかし、物置小屋の壁には早くも蛹が張り付き、そのまま越冬に入る個体もあるようだ。
 虹の里から尾根の散策路に向って行くと、日陰になった雑木林の縁にコウヤボウキがまだ美しく咲いていた。もう各所で紹介したが、舞岡公園散策手帖では初めてだと思って一輪を素直に切り取った。期待した尾根上の散策路はこれと言った撮るもの見るものもなくて、Uターンして三枚畑の方へ歩いて行くと、ゴボウの葉に日光浴をしているウラギンシジミの雌をみつけた。羽に傷みはなく新鮮そのもので、慎重に近寄り撮影した事は言うまでもない。丘の上の果樹園では、温州ミカンや次郎柿がすっかり色付いていて、収穫はもうすぐのようであった。その後、今日は陽の良く当たる坂道を下って再び民家が立ち並ぶあたりに行った。途中、太陽で温められたコンクリートの土留めで、昨日と同様にヤマトフキバッタが身体を暖めていた。民家の庭先にはオシロイバナが咲き、やはりセンリョウ、マンリョウの赤い実が光り、そしてヤツデやチャの花が咲いていた。
 午後からは舞岡公園内にフィールドを移して、もちろん瓜久保から散策を開始した。今日は午前中に花、実、昆虫をしっかりと確保したので、「キノコちゃんやーい」と河童池の方へ上って行ったが、相変わらずイヌセンボンとヒイロチャワンタケのみであった。途中、今年はどんな葉痕をつけているだろうとサワグルミの小枝を見てみると、なんと小枝の上下隣りあわせで冬のソナタの主人公とヒロインが一緒にいるので笑ってしまった。今年も多くの冬芽葉痕ファンを喜ばせるに違いない。いつも期待を裏切らない筈の瓜久保で肘鉄を食らったからと、谷戸奥へ向って歩き始めた。すると見慣れたゲンチャリが止まっている。鎌倉のNちゃんのスクーターだ。今日は今までのお返しとばかりに無粋に携帯電話をかけたら、小谷戸の里にいると言う。そこで足早に行ってみると、髭面のバンダナおじさんが、「面白いキノコを見つけたよ」と、二人を案内してくれた。バンダナおじさんは隠れた写真芸術家なのである。案内された場所にはなんと2本のスッポンタケが生えていた。そこでしっかり撮影とかなり頑張っていたら、鼻を突く臭いで鼻の粘膜が刺激されて鼻汁が出て来た。去年、たくさんのスッポンタケを撮影したがほとんど臭わなかった。やはり臭ってこそスッポンタケなのだと認識を新たにした。
 その後、谷戸見の丘の方へ歩いて行くと、日限山機長さん、サイクリストヒーロー改めチャリコバさん、オーギストスコープさんらが、バードウォッチングをしていた。その中の方が狐久保で珍しいキノコを見つけたと言うので、一目散に駆けつけてみると、オニグルミの幹からちょうど撮影に手ごろな高さに、多分、ヌメリスギタケモドキらしい傘に独特の特徴があるキノコが生えていた。しかも本当絵になるように生えているのだから感激した。こんな美しいキノコを見るのも久しぶりである。そこで年末の写真展に何を出展したら良いかと悩んでいる鎌倉のNちゃんに、「これで行こう、これで」と様々な角度から撮影を勧めた。レリーズを持っていないのでセルフタイマー撮影をしたらとアドバイスをした。彼女のカメラは一般撮影には非常に有効な手ぶれ防止付だが、道端自然写真には全く用をなさないのだから、しっかりとした三脚とレリーズは必携である。今日は見るもの撮るもの一杯で、そして最後に本当に素晴らしい被写体に出会って、「これだから止められないんだよね」と言いあいながら、薄暗くなり始めた道を引き返した。

<今日観察出来たもの>花/セイタカアワダチソウ、コウヤボウキ(写真上右)、ワレモコウ、ツリガネニンジン、ホトトギス、シロヨメナ、カントウヨメナ、ノコンギク、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、タイアザミ、ミゾソバ、ツワブキ、シュウメイギク、キク、ヤツデ(写真上左)、チャ、サザンカ等。蝶/ツマグロヒョウモン、キタテハ、ヒメアカタテハ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミ等。昆虫/キボシカミキリ、ナナホシテントウ、アキアカネ、マルカメムシ、クサギカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、キバラヘリカメムシ、アオバハゴロモ、コバネイナゴ、チョウセンカマキリ等。キノコ/ヌメリスギタケモドキ(写真中左)、スッポンタケ(写真中右)、ヒイロチャワンタケ、イヌセンボン等。その他/ジョロウグモ、ガマズミの実、ムラサキシキブの実、ノイバラの実、ニシキギの実、ヒヨドリジョウゴの実、マユミの実、コマユミの実、カマツカの実、センリョウの実(写真下左)、マンリョウの実(写真下右)、ヤブコウジの実等。


2005年11月3日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今日は第5回目となる舞岡公園小谷戸の里に於ける「マイ作品展」である。舞岡公園の「舞」と私の「My」の二つの意味合いから、そう名付けられたらしい。私は初出展でヤングマンなのに、何故か「里山オールドボーイズ」のメンバーの一員となって、カブトムシとオオシオカラトンボの羽化の2点を出展した。私が「まだかなりのヤングマンなのにね」とぶつぶつ言っていると、あるご婦人いわく、「そのうちオールドボーイになるのだから良いじゃない」と言う。まあそういう事にしておこう。しかし、女性もやがてはオールドガールになはずだが、そんな事を言ったら当局からきついお叱りを受けるので、女性は何歳になってもレディーなのである。 そんな話はさておいて、いつまでも心だけは「みなぎる青春」でいたいものである。今日は連日の疲れをものともせず、いつもより朝早く起きて行ったのだが、展示作業や後片付け等があって、正味3時間の散策となった。時折日が差し風が殆んど無いという絶好の日和だったが、11月に入ってはさすが撮影するものに苦労する。もっとも9月や10月に撮影し紹介したものがだぶっても良いのなら簡単だが、出来るだけそうしたくないのである。それでも各種の実や日向ぼっこに現われている昆虫達を中心に探し回ったら、なんとかノルマを達成する事が出来た。
 春から初夏への季節の歩みは新幹線の「のぞみ」のような超特急だが、首都圏平地の秋から冬はローカル線の各駅停車のようである。秋がとてつもないスピードで深まり行き冬に至るのは、北国や標高の高い所なのだろう。信州松本市に下宿していた頃は、真っ赤に色付いたスターキングの実の向こうに、夕日と紅葉で赤紫に身を染めた北アルプスが屏風のように聳えていて、夕方になると刻々と山が黒く変身して行く様が見られた。11月に入れば、ちょこんと顔を出している槍ヶ岳に雪が降って、朝見上げるとキラキラと光っていた。冬はかなりの早さの駆け足でやって来るのである。しかし、今日の舞岡公園はかなりぽかぽかした陽気で、咲き始めている真っ白なサザンカの花にルリタテハが吸蜜に訪れていたり、キタテハが畑のゴボウの葉で日向ぼっこをしていたりした。オオニジュウヤホシテントウが、多分、収穫後に再度芽吹いた瑞々しいジャガイモの葉を一生懸命食べていた。また、成虫で越冬するエサキモンキツノカメムシが各所で見られ、まだまだ越冬場所に移動する気配はない。なにしろエサキモンキツノカメムシは落葉した葉の裏で寒い冬を縮こまって過ごすのだから、その枯れ葉が落ちなければ、ぐっすりと眠る布団が無いと言う訳なのである。
 有れば蝶のように動いたり逃げたりしないし風にも揺れないから、比較的撮影が簡単なキノコなら写真の枚数が稼げると河童池周辺を丹念に探しのだが、エノキタケは萎び、サンコタケは姿を消し、ただスギタケ(?)とヒイロチャワンタケが依然として健在であった。とっても息の長い例外的なキノコである。また、尾根の散策路に発生しているコガネタケは、かなり生長して傘が開きキノコらしい格好になっていたが、絵になるように撮影するのは困難な場所だから、成菌はこんな格好になるんだと頭にしまいこんだ。。そんな中で、ヤマグワからまるで招き猫の手が幹からにょきっと現れたがごとくの格好をしたヒラタケ(?)が僅かに一本出ていたので、微笑んで撮影した。いよいよキノコの観察も終期を迎えていると言う訳である。
 午後の2時半から「マイ作品展」の後片付けのために小谷戸の里の古民家の庭へ行った。今日は「スケッチの会」や「カービングの会」や個人参加の方々もいらっしゃったから、かなり広い庭だが出展者並びに見に来た方々で一杯であった。たった1日の作品展だが、青空の下でのものも格別な味わいがある。後片付けは展示作業に比べると、あっという間に終わってしまう。「来年は里山オールドボーイズ&オールドガールとしようや」との要望が出る。「&オールドガールじゃ、絶対にご婦人達は参加しないよ、プライドが高いんだから。&レディにしようよ」と言う提案も出た。しかし、誰でも参加自由なのだから、舞岡公園にカメラを持ってやって来るご婦人達で、1グループを作って参加したら良いと思う。室内の白いクロスに作品を飾るのとは異なった、とっても風情溢れる作品展なのだから。ただし、今日のような風も無く穏やかな日ならばとの注意書きがつくのだろうが、それは天気の神様の高邁なるお計らいにすがるしかなかろう。

<今日観察出来たもの>花/トリカブト、セイタカアワダチソウ、ツリガネニンジン、ホトトギス、シロヨメナ、カントウヨメナ、ノコンギク、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、タイアザミ、ミゾソバ、アキノウナギヅカミ、サザンカ等。蝶/モンシロチョウ、モンキチョウ、キチョウ、アカタテハ、ルリタテハ、ヒメアカタテハ、キタテハ(写真下左)、ウラギンシジミ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミ、ベニシジミ、チャバネセセリ等。昆虫/オオニジュウヤホシテントウ、ナナホシテントウ(写真下右)、アキアカネ、コノシメトンボ、マルカメムシ、クサギカメムシ、ハサミツノカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、キバラヘリカメムシ、アオバハゴロモ、コバネイナゴ、ツチイナゴ、ヒシバッタ、ウマオイ、オオカマキリ等。キノコ/コガネタケ、スギタケ?(写真中左)、ヒラタケ?(写真中右)、ヒイロチャワンタケ、ツチナメコ、エノキタケ等。その他/ジョロウグモ、ガマズミの実、ムラサキシキブの実、シロダモの実、ノイバラの実、アオツヅラフジの実、ニシキギの実、ヒヨドリジョウゴの実、カラスザンショウの実(写真上左)、マユミの実(写真上右)、カマツカの実等。