横浜市戸塚区

舞岡公園散策手帳
(第4集)




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2005年8月24日、横浜市戸塚区舞岡公園

 台風第11号が近づいている。このため明日、明後日は荒れ模様の天気となるらしい。たとえそうであても、今日は歴戦の疲れを癒すために完全休養日としようと思っていたが、無粋にも昨晩、このHPの掲示板に、「舞岡公園宮田池にはアジアイトトンボもアオモンイトトンボも両方とも生息していますよ」とのご投稿があった。今までずっと舞岡公園にはアジアイトトンボのみが生息すると思っていたので、これは是非調べて来なければならないと、疲れた身体に鞭打って出かけてみた。家を出た時は身も心も重く、眼には乳白色のゼラチンフィルターがかかっていたが、散策を開始するや否やいつもの調子となるのだから、まるでパブロフの犬のようである。そんな訳ですぐに宮田池に直行する事もなしに、いつものように前田の丘の草原や瓜久保周辺から散策を開始した。昨日の夕方から晩にかけて、台風の影響からか轟くような雷鳴を伴ったかなりの雨が降った。このため前田の丘の草原はかなり濡れている。こんな時は長靴が最高である。既にクズ等の大きな葉は乾いていて、その上にイチモンジセセリ、キマダラセセリ、ヒメアカタテハ等が羽を乾かしている。もちろん各種のバッタやキリギリスも歩く度に逃げ惑う。ここ前田の丘の草原は、夏前に草刈機でつんつるてんに刈られたのだが、雑草の生命力の逞しさは言わずと知れたもので、もう昆虫たちの憩いの場と化していた。また、草原に点在する樹木の幹には、なんとまだニイニイゼミが見られたので苦笑した。雑木林のクヌギの樹液酒場は昨日の豪雨のために大物は見られなかったが、それでもカナブンやサトキマダラヒカゲがたくさん集まっていた。
 次はもちろん今日の大きな課題である宮田池のイトトンボを探しに行った。何処かでも書いた様に目をイトトンボモードに切り替えなくては発見が難しい。最近、よる年波には抗せず身も心も通常モードから他のモードに切り替えるのが億劫になったが、目に関してもその範疇のなかにあるから、イトトンボモードに切り替えるのに苦労した。しかし、そのお陰で容易くイトトンボを見つけ真横から複眼から尾端に至るまでピントがびしっと来るように撮影した。多くのトンボの仲間は、このように真横からびしっと撮った一枚がないと種名判別は難しい。良く「このトンボは何トンボですか」と写真を見せられ種名判別を求められるのだが、このように撮影してなくしかもボケやブレ写真ではお手上げで、ご婦人の方には微笑みを返すが、同性だと馬鹿にしないでくれと怒りたくなる。少なくとも種名判別の難しい昆虫は、これに真上からのものと2カットは欲しいものである。そんな訳でイトトンボをびしっと真横から撮影すると、液晶ディスプレイで尾端の青い部分を拡大した。すると最終の10節が黒いのでアオモンイトトンボである事が判明した。こんな時はなんとデジカメは有り難い事だろう。確かに昨晩このHPの掲示板にご投稿されたように、舞岡公園宮田池にはアオモンイトトンボがいたのだ。それではお次はアジアイトトンボを見つけなければならないと、ちょっとか細い個体を見つけて撮影し確認すると、なんと10節が青いアジアイトトンボであった。昨晩の掲示板のご投稿を見て「嘘だろう、そんな事は無い筈だ」と思ったが、やはり宮田池にはアジアイトトンボもアオモンイトトンボも両方とも生息していたのである。以前は昆虫なんて知っている方がはなはだ少なかったから、適当に答えていても尊敬されたが、めきめきその知識を詰め込み虫目モードを鮮明にしつつある方が舞岡公園には増えたので、たじたじとする事も多くなった。一人で楽しんでいた時の方が実に気楽であったなあと懐かしい。
 宮田池を後にし水車小屋周辺を散策していると、前回、雑木林の暗がりで幽霊のようににゅーっと現れた顔見知りの色白のご婦人に出会った。しかし、今日は白昼堂々だから、とっても可愛らしいご婦人に見える。聞くところによると、「アライグマの写真を撮ったから、小谷戸の里に報告に行く」との事である。ついに農作物等に大きな被害を及ぼすアライグマも、タイワンリスに続いて舞岡公園に現れてしまったようだ。まったくアカボシゴマダラもいついてしまったように、舞岡公園は生き物には居心地が良い所なので、アライグマも居ついてしまうかもしれない。写真を見せて貰うとラスカルのようにとっても可愛いアライグマであった。悪さをしなければ舞坊と呼んでやりたい位だ。この分ではコーカサスオオカブトムシやヘラクレスオオカブトムシも舞岡公園に現れるかもしれない。午後からは2日連続の舞岡公園となる虫愛でるご婦人の鎌倉のNちゃんや、毎日の舞岡公園散策がお仕事のサイクリストヒーローさんや、甘味厳禁ヤマイモおじさん等と散策した。なんと総計8個の目となったので各種の昆虫を発見したが、オケラやコフキコガネやベッコウヒラタシデムシまで見つかった。明日、明後日は荒れ模様となり完全休養日、歴戦の疲れは癒され秋が各所に現れる事だろう。

<今日観察出来たもの>花/ミズオオバコ、ナンバンギセル、キンミズヒキ、ミズヒキ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ヘラオモダカ、ヤマイモ(写真上左)、オニドコロ、ガガイモ、キツネノカミソリ、キキョウ、アゼムシロ、ミソハギ、ヒルガオ、コヒルガオ、ツユクサ、アカツメクサ、セリ、ハス、ムクゲ等。蝶/アオスジアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハ(写真中左)、キタテハ、ヒメアカタテハ、サトキマダラヒカゲ、ウラギンシジミ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ、キマダラセセリ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ(写真中右)等。昆虫/コフキコガネ(写真上右)、キボシカミキリ、ベッコウヒラタシデムシ、クロカナブン、カナブン、トウキョウヒメハンミョウ、マメコガネ、チャバネアオカメムシ(写真下左)、クサギカメムシ、ホシハラビロヘリカメムシ、ブチヒゲカメムシ、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、ウスバキトンボ、アジアイトトンボ、アオモンイトトンボ(写真下右)、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ベッコウハゴロモ、アオバハゴロモ、ササキリ、ヤブキリ、ミヤマフキバツタ、オケラ、ツチイナゴの幼虫、ハラビロカマキリの幼虫等。その他/シマヘビ、ナガコガネグモ、ジョロウグモ、オオトリノフンダマシ、オオトリノフンダマシの卵のう等。


2005年8月18日、横浜市戸塚区舞岡公園





















































 舞岡公園で良く出会う同好のご婦人が、なんとタマムシを発見してしまって写真まで撮った。そこで、是非、私も撮りたいと昨日も行ったのだが、遠征の疲れが残っていてか昼寝ばかりしていた。去年、小山田緑地で飽きる程にタマムシを撮っているが、舞岡公園のタマムシは非常に価値があるのだ。しかし、そんな思いがあると他の昆虫や花が目に入って来ないので、今日はいつものなんでも屋に戻ったら、様々な野の花や昆虫が目に入って来た。遠征していた嬬恋村に比べるととんでもなく暑い舞岡公園だが、もうツクツクボウシが鳴き、ツリガネニンジン等が咲いて、秋はすぐそこまでやって来ていると感じた。今日もまず最初に、いつものように樹液が滴るクヌギの木を見に行った。昨日はここで一生懸命に写真を撮っていたら、顔見知りの色白のご婦人が現れて、神経的にも疲れた目にはびくっとしたものがあったが、今日は無粋にも仕事の電話が入った。あっちのクヌギの木にはルリタテハが羽を開き、こっちのクヌギの木にはコシロシタバが昼間だというのに白い下羽を見せて止っている。「いつもこうなんだよな」と心の中で愚痴りながらも、大切なお客様に対するその口調は、信じられない程にやんわりとしたものであった。今日はかなり込み入った話なので通話が長くなったが、ルリタテハもコシロシタバも変わりなくお食事中である。しかし、なんと散策路の向こうから人がやって来る。こんな薄暗い薮蚊の多い散策路なんて入って来なければ良いのに思うのだが、万事休す、その方がクヌギの傍らを通り過ぎると、ルリタテハもコシロシタバも逃げ去ってしまった。こんな事は17年間の散策で度々あったが、もしこんな事が起きていなかったら、きっと数多くの傑作写真をものにしていると思われる。
 そんな訳で「いつもの事だい」と、うなだれる事無く胸を張って前田の丘へ行った。今日は様々なセミを撮ろうと思っていたのだ。アブラゼミ、ミンミンゼミなんて、何処にでもいて簡単に撮れそうだが、セミを美しく撮れたら昆虫写真に於いて一人前だと思っている。まず、セミは日陰になっている幹に止まっている事が多く、美しいバツクを選べば明るい緑の梢となる。この明暗差をストロボを使って上手く調整して撮影しないとならない訳である。誰か助手でもいて、大きなレフ板で照らして貰えば良いのだが、そういう訳には行かないから大変である。また、止まっている幹もセミが樹肌の色に埋没せず、バックの緑がかなり入っていないと駄目だから、細からず太からずの幹に止っているのが一番である。例えば、羽が茶褐色のアブラゼミが杉や檜の太い幹に止っていたら、同色だからすっかり溶け込んでしまうと言う訳である。また、セミは鳴いている時が羽を少し広げていて風情があるのだが、鳴いているセミは近づくとすぐに逃げ去ってしまう。今日もミンミンゼミがとても絵になる場所に止っていて鳴いていたのだが、近づいたらすぐに鳴き止んで飛び去ってしまった。鳴いてるセミが鳴き止んだら、「もうあなたの存在を察知してますよ、カウントダウンが始まっていますから、すぐにでも飛び立ちます」というシグナルなのだ。これに比べて鳴いていないセミは、幹に口吻を刺してお食事中の事も多いから、かなり近寄っても逃げ去りはしない。今日も結局は鳴いていないものばかり撮影する事となった。やはりセミの撮影には300ミリは欲しい。
 そんなこんなで前田の丘を降り、小谷戸の里へ向かっていたら、なんと舞岡のSさん、鎌倉のNちゃん、サイクリストヒーローさんに出会った。みんな舞岡公園が大好き、動植物・キノコが大好き、そして写真の腕も最近めきめき上がっている。こんな方々が、「舞岡公園生き物ボランティア」のお仲間に入ってくれたら百人力である。そこで小谷戸の里の掲示板の張り紙を指し示し説明すると快諾され、事務所に行って参加しますと登録された。なんで戸塚区民ではなく港北区に住む私がこんなプレゼンテーションをし、参加するのか分らない。また、群れる事が嫌いで組織に馴染めずリストラされた身だが、昆虫の種名判別のお手伝い位は出来るだろう。どのような活動が始まるのかは未知数であるが、舞岡公園が大好き、動植物・キノコが大好き、そして写真が大好きな方々が集まったら、なにか一つや二つの花が咲くに違いない。それに毎日のように一生懸命に通って自然観察をし、写真撮影をなさっている方々の情報や作品が個人どまりでは、いつかは無に帰する。余程の事が無い限り舞岡公園は未来の長きにわたって存続するだろうから、例えば100年経った後に、100年前は、こんな動植物・キノコが見られた等の記録はとても重要である。今は瞬時に過ぎり、決して戻っては来ないのだ。「2005年8月7日、タマムシを観察撮影」なんて記録を100年先の子供たちが見て、目を白黒させる顔が浮かんで来る。

<今日観察出来たもの>花/ナンバンギセル、キンミズヒキ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ゲンノショウコ、キツネノカミソリ、キキョウ、ミソハギ、アキノタムラソウ、ヒルガオ、アカツメクサ、セリ、ハス等。蝶/アゲハ、カラスアゲハ、クロアゲハ、モンキアゲハ、アカボシゴマダラ、ルリタテハ、キタテハ、イチモンジチョウ、コミスジ、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメ、ヤマトシジミ等。昆虫/コシロシタバ、ハグルマトモエ、カブトムシ、クロカナブン、カナブン、エゴヒゲナガゾウムシ、トウキョウヒメハンミョウ、チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、ホシハラビロヘリカメムシ、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、ウスバキトンボ、アジアイトトンボ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、アオバハゴロモ、ミヤマフキバッタ、ヤブキリ、ウシアブ等。その他/コウジタケ、コガタコガネグモ等。
写真/ハス、ツリガネニンジン、キンミズヒキ、コウジタケ、カラスアゲハ(8月4日撮影)、オニヤンマ(8月4日撮影)、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ヤマトフキバッタ、アオメアブ(8月4日撮影)、コガタコガネグモ。


2005年8月2日、横浜市戸塚区舞岡公園

 長期の夏休みに入る前に、どうしても行っておかなければならないフィールドとして、今日は舞岡公園へ行った。相変わらず気象庁の天気予報は外れて曇り日ではなかったが、意外と気温は低く、絶好の散策日和となった。これで後夏休みに入る前に、ほんの少し仕事をして、夏休みへの準備に入れば良い訳でほっとした。夏休みは15日までと予定しているので、例年のように帰って来てしばらくすると、涼しい秋風が吹く事だろう。早いものでもうすぐ9月がやって来る。このHPも9月21日で3周年を向かえ、今年一杯で「つれづれ観察記」は終了として、来年からは作品本位で過ごそうと予定している。最近のデジカメの性能はとても良くなって、誰でもが図鑑的写真及び記録的写真を美しく確実に撮れるようになった。そんな訳で自分だけにしか撮れない写真、いつまで見ていても見飽きない写真を撮りたいと思っているのだ。また、ここへ行かなければ等との制約もなくなるから、風の吹くまま気の向くまま行きたい所へ、撮りたいものが撮れそうな所へ行くことになるだろう。そしてまだ見ぬ土地、まだ見ぬ生き物に数多く出会いたいとも思っている。まさに「フーテンの花虫」と呼ばれるようになるのだろう。今年の前半は身体の調子が悪くて、病院の診療各科を巡り歩いたが、上記の思いを果たすのには健康第一、そして軍資金もかかるからまずは禁煙せねばならないだろう。まあ、禁煙は除夜の鐘までなんとかすれば良いのだからと、今日も紫煙を楽しくくゆらせた。
 今日の舞岡公園はとても静で、子供たちの遠足や集まり事もないようである。梅雨が明けてとても暑くなったが、逆に来る方がとても少なくなったから落ち着いた散策が出来る。さあ今日は何に巡り合えるかと目聡い助手も来ないようだから、一人視線を落ち着かせて散策を開始した。まずは樹液酒場へ行って見た。ご存知のようにアカボシゴマダラが居ついてしまって、一体、アカボシゴマダラの成虫(蝶)は何を食べて生きているのだろうかと気になった。秋になると熟し柿に吸汁するが、今の時期は舞岡のファーブルさんことTさんによれば、同族のゴマダラチョウやオオムラサキと同様に樹液との事である。しかし、まだ樹液に来ているのを観察したことが無いので、是非とも観察したいなと思っていたのである。そんな訳でアカボシゴマダラがやって来そうな樹液酒場へ行ったが、いるのはオオスズメバチ、カブトムシ、クロカナブン、カナブン、サトキマダラヒカゲ位であった。それでもサトキマダラヒカゲがカブトムシの雌と分け合って吸汁している姿が微笑ましくて撮影していると、前方の梢にアカボシゴマダラが緩やかに羽ばたいて舞って来た。飛び方やその色合いから小型のアサギマダラのようである。最も開けた場所で素早く飛ぶ時はゴマダラチョウのようであるが、樹間を飛ぶ姿はまことたおやかであった。これは吸汁に来たんだと悟って、少しその場を離れて様子を見ていると、案の定、幹に着地して吸汁を始めた。逆光気味で見るアカボシゴマダラは陽が透けてとても美しく、まるでステンドグラスのようである。その名前の由来である赤い斑紋がとっても美しい。こんな場面にはもちろん初めての遭遇で、うっとりとその美しさに見入ってしまった。また、口吻はゴマダラチョウと同じで、レモンイエローである事にも初めて気づいた。撮影は日中シンクロと自然光のみと二つ試みたが、その赤い斑紋の美しさは後者の方に軍配が上がった。完全に横向きになってくれたら、この上ない美しい写真が撮れるのにと頑張ったのだが、叶う事無く他の昆虫の邪魔が入って飛び去ってしまった。
 以上、今日の前半で樹液に吸汁するアカボシゴマダラを撮ってしまったので、あとは余裕綽々、水車小屋脇のエゴノキでエゴヒゲナガゾウムシを撮ったり、葉に止るキアゲハやキタテハを撮りながら丘の上まで行って、ミンミンゼミとアブラゼミを撮ろうと思ったのだが、まだ、その個体数は少ないようであった。そんな訳で地面にぽっかり空いたセミの穴を見て回ると、今夜羽化しようとして顔を出したミンミンゼミの幼虫を発見した。しかし、ご機嫌が悪いらしく、すぐに穴の中に引っ込んでしまって、それ以後顔を出すことはなかった。また、秘密の樹液酒場でなんとクロコノマチョウにも出会ったし、他の酒場では、雄雌合わせて合計6匹ものカブトムシが井戸端会議を開いていた。これからもずっと、夏になればいつでもこんなカブトムシの姿を観察出来る公園であって欲しいと願って、舞岡公園を後にした。

<今日観察出来たもの>花/キツネノカミソリ、キキョウ、アゼムシロ、カワラナデシコ、オニユリ、ヤマユリ、ミソハギ、アキノタムラソウ、ヒルガオ、ツユクサ、アカツメクサ、セリ(写真上左)、シモツケ、ムクゲ、ヒマワリ等。蝶/ジャコウアゲハ、キアゲハ(写真上右)、カラスアゲハ、モンキアゲハ、アカボシゴマダラ(写真中左)、キタテハ(写真下左)、クロコノマチョウ、サトキマダラヒカゲ(写真中右)、ヒメジャノメ、ルリシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ等。昆虫/カブトムシ、クロカナブン(写真下右)、カナブン、エゴヒゲナガゾウムシ、トウキョウヒメハンミョウ、マメコガネ、チャバネアオカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、クサギカメムシ、ホシハラビロヘリカメムシ、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ベッコウハゴロモ、アオバハゴロモ、ツチイナゴの幼虫、ササキリの幼虫、ハラビロカマキリの幼虫等。その他/カバイロツルタケ、カワセミ等。


2005年7月27日、横浜市戸塚区舞岡公園

 上陸が心配された大型の台風7号は、次第に勢力を弱めながら、房総半島を昨晩かすめるように過ぎ去った。山沿いでの降雨量は相当なものであったが、平地では左程の事はなかった。そこで今日は台風一過の青空、こんな日は気温が高く湿度も高くて炎熱地獄となる事は分っていたが、舞岡公園散策手帖を7月も4回としようと出かけてみた。本来なら7、8月は2回の予定でいたが、前述したようにミヤマクワガタの雌を発見してしまったので、雄も探そうと行く回数が多くなった訳である。8月は夏休みの長期遠征もあるので2回となる予定である。
 舞岡公園に到着すると予想通りの青空と雨上がりの後の湿気に満ちていた。こんな日はあまり人が来ていないのではと思ったのだが、デジスコ持参の方、カメラ持参の方が数多く見られた。昨日、一日中雨で家に閉じ込められてしまったので、欲求不満が溜まっていたのかもしれない。私も月曜日は一日中東京に出て久しぶりに仕事をし、そしてもちろん昨日は自宅に蟄居していたのだから、やる気満々かと思うかもしれないが、今日は台風一過のピーカンで最初から期待など持っていなかった。夏場の道端自然観察は晴れの日は駄目なのだ。我々人間だって涼しい所にいたいのだから、昆虫達の活動も朝夕が基本となる。夜行性の昆虫となるともちろん夜専門だ。
 そんな訳で何でも撮影してやるぞとの意気込みで、まずは瓜久保の家で田んぼにいるオオシオカラトンボとショウジョウトンボを撮った。その後、河童池に上がって行ったが、前回来た時にコウジタケ等が生えていたキノコの穴場は、まるで雨で全てが流れてしまったかのように何も無い。雨が降るとキノコが発生すると言われているが、梅雨もこれで完全に終わって生えるべきキノコは全て生えたようだから、いくら雨が降っても当分生えそうも無い。河童池奥の広場へ行ったが、熱気を帯びたむっとする湿気が充満していて耐えられない。それならば河童池でギンヤンマやコシアキトンボの飛翔写真でもと思ったが、雲一つ無い青空から降り注ぐ夏の日差しにくらくらして、これまた長くは耐えられなくなった。そこで以前から見つけておいた樹液滴るクヌギの木を見に行ったが、期待したアカボシゴマダラやゴマダラチョウはいなかったが、なんと立派なカブトムシの雄が2匹もいた。きっと夜半には雨が上がったから飛んで来たのだろう。「こんな所では子供たちにすぐに見つかってしまうよ」と声をかけたが、お食事に夢中であった。もちろん今日は貴重な被写体とばかりに、カブトムシばかりでなくカナブンも撮影した。
 予想したように、今日は貧果であることが現実のものとなりそうである。そこでなるべく日向を避けて日陰の下草を丹念に探して行った。今年は例年に無くベッコウハゴロモが大発生のようで至る所に止っている。ササキリの赤ちゃんを真正面から撮るのも今日の課題だったが、あんなに雨が降ったと言うのに赤ちゃんは元気一杯に這っている。これらを全て撮影したが、まだまだとばかりにマミジロハエトリを撮影した。真ん丸の目と白い鉢巻が印象的なクモである。この鉢巻を命名されてた方は目見、すなわち目元、それが白いという事で目見白(マミジロ)としたのだろう。目見なんて言葉は使われる事はこのところ無いのだから、眉白ハエトリとかホワイトバンダナハエトリがぴったりとしているのになあと微笑んだ。
 午後からは「もう帰ろうか、どうしよう、何も期待出来そうもないな」と思いながらも、まるで魂の抜け殻のような重たい足取りで、それでも宮田池、小谷戸の里周りで丘の上まで行った。宮田池には謎のヤンマが2匹かなりのスピードで飛んでいて、止る事もホバリングすることも無いので、その正体がつかめない。しかし、尾端近くに目立つ黄斑があるので、オオヤマトンボではなかろうか。また、少ないながらもか細いアジアイトトンボも見られた。小谷戸の里へ行くと、木陰で多数の女性が縄をなっている。私の子供の頃は何処の農家の庭先でも見られた光景だが、稲藁で縄をなうのは本当に難しく力がいる仕事なのだ。縄がなえなければその先の筵作りも出来ないのだから、昔のお百姓さんの必要不可欠の手仕事なのである。小谷戸の里でがぶぶと水を飲み、古民家の縁側でしばし休憩すると重い腰を上げて丘の上まで行ったが、期待したアブラゼミやミンミンゼミには時期尚早で、ニイニイゼミがたくさん鳴いていた。以上、これから夏場の舞岡公園は晴れたら休む曇ったら撮る、すなわち晴読雲撮と言う事になる。

<今日観察出来たもの>花/キキョウ、アゼムシロ、カワラナデシコ、オニユリ、ミソハギ、イヌゴマ、アキノタムラソウ、ヒルガオ、ツユクサ、アカツメクサ、ネムノキ、シモツケ、ムクゲ、ヒマワリ等。蝶/モンキアゲハ、ナガサキアゲハ、カラスアゲハ、、アオスジアゲハ、アカボシゴマダラ、キタテハ、コミスジ、モンシロチョウ、ヒカゲチョウ、ヒメウラナミジャノメ、コジャノメ、ウラギンシジミ、ベニシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ、イチモンジセセリ等。昆虫/カブトムシ、クロカナブン、カナブン(写真下右)、トウキョウヒメハンミョウ、マメコガネ、キマワリ、チャバネアオカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、ツヤマルシラホシカメムシ、アカサシガメ、ウチワヤンマ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ(写真中左)、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、アジアイトトンボ、ニイニイゼミ(写真上左)、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ベッコウハゴロモ(写真中右)、アオバハゴロモ、ツチイナゴ、ササキリの幼虫(写真上右)等。その他/マミジロハエトリ(写真下左)、ナガコガネグモの幼生等。


2005年7月21日、横浜市戸塚区舞岡公園

 今日は天気予報によるとお昼前後は晴れるとあって、これは炎熱地獄の中での息せき切った散策となるかなと眉をしかめたのだが、舞岡公園に到着すると意外にもとても涼しいのには驚いた。気象庁が関東地方の梅雨明け宣言を出したものの、富士山より北では、まだ本格的な夏にはなっていないようである。車をいつもの場所に停めて、胃腸のためには止めなくてはならない筈の煙草をくゆらせていると、太いケヤキの幹に何かが這っている。あの緑の体色と格好からするとヤブキリの雌かなと思ったが、非常に絵になる場所に止っていたので、大急ぎで機材を取り出して撮影した。家へ帰ってパソコンで拡大してみると、なんとヤブキリではなくコロギスなのには驚いた。コロギスをこんなにしっかりと撮影出来たのは、これがなんと初めてなのである。コロギスはキリギリス科でもコオロギ科でもなくて単独のコロギス科の昆虫で、全体の格好はキリギリスに似ているのだが、羽の重なり具合がコオロギの仲間と同じだから、コオロギのコロとキリギリスのギスで、コロギスと名付けられたのである。林さんと内藤さんが創業者だからリンナイと名付けたようなものである。
 いつものように河童池周辺へ行くと、期待したキノコは既に生気を失っていて萎びていた。この状態からも涼しいながらもやはり梅雨は明けて、梅雨時のキノコの発生は終わりを告げたようである。そこで各種の樹木の幹にたくさんニイニイゼミの羽化殻がついていたので、ニイニイゼミの写真を撮ろうと探していたら、なんと羽化したてのニイニイゼミが羽化殻につかまっていた。普通、ニイニイゼミは日没と同時に地中から這い出て羽化するのだが、これは一体どうした事だろうかと思ったが、これはラッキーとばかりに木漏れ日を取り入れて慎重に撮影した。瓜久保の棚田は不耕起栽培を試みているから、トンボの数がとても多い。オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボが群れるように飛んでいる。今日はその中で黄色の帯が鮮やかなオオシオカラトンボの雌と、真っ赤なショウジョウトンボを撮影した。ネット友達の花なばさんによれば、「ショウジョウとは漢字で猩猩、中国の妖怪で真っ赤な体毛に覆われている原人のような妖怪の事」だそうである。そう言われてみると、ショウジョウトンボは真っ赤な赤い毛に覆われているなあと感じ入る。瓜久保を後にして小谷戸の里方面に歩き始めると、畑の傍らのヒマワリがとても大きく咲いて青空に浮かんでいる。夏と言えば連想するものは多々あると思われるが、ヒマワリもその中の一つである。そんなヒマワリを無事に撮影すると、昆虫界の夏の代表選手たるカブトムシを急に撮りたくなった。そこで秘密にしている樹液滴るクヌギの大木を見に行くと、今日はなんと雄が2匹も吸汁していた。
 午後からは瓜久保の家で一人寂しく御握りをほうばっていたら、鎌倉のNちゃんがやって来たので、ご一緒させて貰った。なにしろ今年に入ってから昆虫観察のノウハウを急激に身につけているから、昆虫観察の御供には鬼に金棒なのである。早速、腰を上げてクワカミキリはいないかと桑の古木へ行ってみると、そこで鎌倉のNちゃんが超大型のカブトムシを見つけた。どうして桑の木にいるのかなと不思議に思ったが、これまた木漏れ日を取り入れて情緒溢れるように撮影した。その後、連れ立って谷戸奥へ歩みを進め、水車小屋周辺のエゴノキで牛面で愛嬌のあるエゴヒゲナガゾウムシと戯れたり、桑の大木で多数のトラフカミキリを観察した。更にゆっくりと歩みを進めていると、「花虫さん、あれなあに、枯葉?」と、ススキの葉を指すのでその方向を見ると、そこにはなんと奇怪なシャチホコガの幼虫がいたのである。以前、小野路町の栗林で葉の裏にいるのを発見して以来である。また、その時は風が強くてどうしても上手く撮影出来なかったのだが、今日は風も弱くて撮影には絶好である。シャチホコガの仲間の幼虫は全て名古屋城のしゃちほこに似ているようではないのだが、かなり奇怪な形をしているものが多いようである。それでは成虫はどうなのだろうかと図鑑を開いてみると、地味なごく普通の蛾であった。昆虫の歴史は何と4億年も遡れるし、その世代交代スピードも速いから、とんでもない進化がなされていることは承知しているが、それにしてもシャチホコガの幼虫はまことに奇怪である。これでは天敵もおいそれとは近づかないだろうし、鎌倉のNちゃんのように枯葉に思うかもしれない。いずれにしても素晴らしいものを発見してくれて大助かりであったので、お返しに幽霊に擬態したトリノフンダマシを探してあげた。やっぱり多人数の昆虫好きが集まってそぞろ歩くと成果抜群である。そのうちにまた「瓜久保の家で弁当を食べる会」でも開かねばなるまい。

<今日観察出来たもの>花/オトギリソウ、キキョウ、アゼムシロ、ヤブカンゾウ、クサレダマ、チダケサシ、ミソハギ、オカトラノオ、イヌゴマ、アキノタムラソウ、ヒルガオ、ツユクサ、アカツメクサ、ネムノキ、アジサイ、シモツケ、コムラサキ、クマヤナギ、アオツヅラフジ、ヒマワリ(写真上左)等。蝶/モンキアゲハ、ジャコウアゲハ、アオスジアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、アゲハ、モンシロチョウ、キチョウ、キタテハ、イチモンジチョウ、コミスジ、ジャノメチョウ、ヒカゲチョウ、ヒメウラナミジャノメ、ミドリシジミ、ヤマトシジミ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ等。昆虫/カブトムシ(写真上右)、クロカナブン、カナブン、トウキョウヒメハンミョウ、マメコガネ、トラフカミキリ、ヒメヒゲナガカミキリ、キマワリ、チャバネアオカメムシ、ハサミツノカメムシ、ウチワヤンマ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ(写真中右)、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、ニイニイゼミ(写真中左)、コロギス、シャチホコガの幼虫(写真下左)等。鳥/ホトトギス、ウグイス等。その他/トリノフンダマシ(写真下右)、ナシの実、カラタチの実等。


2005年7月12日、横浜市戸塚区舞岡公園

 ゼフィルスの季節は終わったし、舞岡公園にはもちろんオオムラサキは生息していないし、夏の昆虫達がお出ましになるまでしばらく休憩しようと思っていた。そんな訳で、7月、8月の舞岡公園行きは月に2回に減らそうと考えていたのだが、今日は曇り日であることも手伝ってか、様々な昆虫に出会えてとても面白かった。まず最初に出会ったのはトノサマバッタの褐色型だ。トノサマバッタにしてはやけに胸部の上の部分が隆起しているが、羽の紋様からクルマバツタではない。バッタやキリギリスの仲間はもうだいぶ生長して、ヤブキリ、ヤマトフキバッタ等が成虫となっている。それに比べて、ショウリョウバッタやオンブバッタはまだまだ子供で、ササキリやツユムシに至ってはまだまだ赤ちゃんである。
 今日はトリノフンダマシの仲間を見つけようとクヌギ休憩所下部の草原にまず出向いたが、見つける事が出来なかった。そこでジンガサハムシがたくさんいたからジンガサ横丁と名付けた場所に出向いてみると、なんとキツリフネが咲いていた。ツリフネソウの仲間は平地では初秋の花と思っていたので驚いたが、同じ仲間のホウセンカが咲いているのだから可笑しくはないだろう。今日のジンガサ横丁ではこれといったものは出会えず、畑の向こうの民家を見るとオレンジ色のノウゼンカズラが美しく咲いていた。毎年、夏になると撮りたくなる園芸品種の花があるが、ヒマワリ、ハス、ムクゲ、ダリア等に並んで筆頭核の花である。しかし、残念なことに絵になるようには咲いてはいなかったが、クロアゲハがやって来て吸蜜していた。もし今日の空が抜けるような青空だったら、それこそ沖縄へ行ったような情景であったのにと一人ごちた。しかし、民家の隣の日曜菜園にキンカンの花が咲いているのを発見した。ミカンやカラタチ等はずっと前に咲き終わっているのにキンカンが今咲くとは驚いた。とっても寝ぼすけではあるが、道理で柑橘類の中では、その実が一番遅く色づく筈である。また、ブドウ棚にはとても大きくなった実を付けた房がたくさんぶら下がっていた。
 今日はなんの風の吹き回しか毎日来るはずの下倉田のサイクリストヒーローさんにも出会わない。子供たちの遠足の姿も無く、訪れる人の姿もまばらだ。気温が低く曇り空の今日の天候と同様にとっても静かな舞岡公園である。午後からはこの時期の舞岡公園名物のトラフカミキリとウチワヤンマを探しに出かけた。トラフカミキリは畑の中の老衰したクワの幹に威張っていたが、ウチワヤンマは飛んでばかりいて棒杭に止ろうとはしない。そこで前々から目星をつけておいた樹液の滴るコナラとクヌギの木を見に行った。するとなんとミヤマクワガタの雌が、ノコギリクワガタの雌やコクワガタの雌と並んで吸汁していた。もちろんカブトムシのおっさんやカナブンのお兄さんもいたのだから楽しくなった。そこで午前中に「今日は珍しいもの見つけましたか」と質問された小谷戸の里のK女史に見せてやろうと、カメラベストのたくさんあるポケットに、それぞれを仕分けして入れて持っていってあげた。「ミヤマクワガタがいるなんて舞岡公園の自然度の高さの現れですね」等と言いながら全てをカウンターの上に乗せると、事務所の若者がびっくりして目を白黒させていた。K女史がそれを見て、「花虫さんは、珍しいものを見つけるのがとっても上手いんですよね」等と言うので嬉しくなった。まあ、こんな事を生まれてからずっとやっていたようなものだから、上手くなくては困るのだが、人にそう言われるとやはり嬉しくなる。K女史に手渡した昆虫の処遇をまかして、久しぶりに丘の上まで行った。桜やモミジの幹にニイニイゼミの泥んこの抜け殻がたくさんついている。付近では「チー」と鳴いているのだが、みんな雑木林の中である。そこで一匹くらいはいる筈と探し回ったら、樹肌にすっかり溶け込んだ灰色のものを発見した。ニイニイゼミの防衛策は樹肌に似た保護色である。このためかあるいは地下で甘い汁が吸えるためか、サクラの木にいることが多いのである。以上、今日は前述したようにそれ程の期待は持っていなかったのだが、とんでもなく様々な昆虫に出会って、このぶんではしばらく舞岡公園への週1のペースは変わりそうも無いようである。

<今日観察出来たもの>花/アゼムシロ、キツリフネ(写真上右)、ヤブカンゾウ、クサレダマ、チダケサシ、ミソハギ、オカトラノオ、イヌゴマ、アキノタムラソウ、ヒルガオ、ツユクサ、アカツメクサ、ネムノキ、アジサイ、シモツケ、コムラサキ、キンカン等。蝶/モンキアゲハ(写真上左)、ジャコウアゲハ、アオスジアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、モンシロチョウ、キタテハ、ヒメアカタテハ、ヒカゲチョウ、ミドリシジミ、ヤマトシジミ、ベニシジミ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ、キマダラセセリ等。昆虫/カブトムシ、ミヤマクワガタ(写真中左)、ノコギリクワガタ、コクワガタ、カナブン、トウキョウヒメハンミョウ、マメコガネ、トラフカミキリ(写真下右)、ゴマダラカミキリ、ナガゴマフカミキリ、キボシカミキリ、ヒメカメノコハムシ、オジロアシナガゾウムシ、アカスジカメムシ(写真下左)、チャバネアオカメムシ、トノサマバッタ(写真中右)、ウチワヤンマ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ等。鳥/ムクドリ、スズメ、ホトトギス、ウグイス等。キノコ/ニオイコベニタケ、アラゲキクラゲ、ツノマタタケ等。その他/ナシの実、カラタチの実等。


2005年7月6日、横浜市戸塚区舞岡公園

 実は7月1日にも舞岡公園へ行ったのだが、すぐに雨が降って来てしまい、ほとんど観察も撮影も無しに帰って来たと何処かで書いたと思う。今日も特にお昼前後は雨となって、これまた連続しての無念の帰宅となり、この舞岡公園散策手帖も書け無い事になるかもしれないと思われた。しかし、夕方遅くなっても何とか8枚の写真を撮るんだと覚悟を決めたら、その覚悟が天に通じたらしく、午後3時頃より雨は止んでくれた。そんな訳で短時間の道端自然観察および写真撮影となったため、これと言った稀少種には出会えなかったものの、雨が上がって昆虫達が一斉に現れ、とても楽しかったとも言えるだろう。今日の目的にはトラフカミキリ、ウチワヤンマ、クサレダマ等があったが、こんな天候の為もあって前2種には会えなかったが、クサレダマは今が見頃と撮影出来た。クサレダマは夏休みに高原へ行くと、やや湿った草地に普通にお目にかかれるが、自然度の高い多摩丘陵においても観察した事がない。舞岡公園になぜそのクサレダマが群落をつくっているのかと不思議に思い、植栽ではないのかと思っていたが、このHPの掲示板に度々ご投稿下さる日限山住人さんに事務所に尋ねてもらったら、どうやら自生である事が分った。と言う事は、舞岡公園のクサレダマはとても大切にしなければならない植物のようである。この他、植物ではチダケサシ、ウツボグサ、タケニグサ、アキノタムラソウ等と夏の花が咲き始めていたが、なんと今年はオカトラノオの生育が悪くて、花がほとんどついていないのが不思議に感じられた。
 今日の舞岡公園の特筆事項はやはりこんなに雨が降り続くから、キノコがあちこちに大発生している事であろう。大物のタマゴテングタケモドキも生えていたし、ヒダサカズキタケが地面に落ちた枯れ枝からたくさん生えていた。キノコは以前は植物の中に分類されていたが、菌類として生物界の中で動物、植物と並び立つ位置に格上げされた。すなわち、生物は動物界、植物界、菌界と3つの世界から成り立っているという事になった訳である。キノコの生態的な位置は、有機物を分解し地中に戻すと言う分解者の役割を担っている。植物は葉緑素によって太陽エネルギーと空中の二酸化炭素、地中の水及びミネラルで有機物を生産し、動物はそれを消費し、キノコはそれらの遺骸を完全に地中に戻すというサイクルで、生態系は成り立っている。そんな仕組みを学んでいたので、消費者の一部である昆虫だけを追っているのも片手落ちと思い、生産者にも分解者にも関心を寄せて来た訳だが、キノコは言わばカビの花だから、比較的構造は単純だからこそ、その見分け方にはほとほと参っている。今まで舞岡公園はキノコは少ないのではと思って来たが、今日、河童池畔をほんのちょっぴり巡り歩いただけからの印象だが、その気になって尾根道などを探し歩けば、かなりのキノコに巡り合う事が出来るだろうと感じられた。すなわち生産者、消費者が豊かなのだから、分解者がいなければゴミの山がるいるいとしてしまう訳で、そうならないという事は、分解者であるキノコもたくさん生えるとの証明なのである。
 今日は上記したように短時間の観察となったが、雨が止むと昆虫達は濡れた身体や羽を乾かしに一斉に現れた。蝶ではコチャバネセセリやダイミョウセセリの第2化が発生し、大物のカラスアゲハやクロアゲハが咲き始めたネムノキの花に吸蜜に訪れていた。しかし、かなり高い位置で撮影は出来ず、雨上がりに羽を開いて身体を乾かす最も普通種のヤマトシジミの水色の羽表が美しかったので、何枚もカメラの中に納めた。また、交尾しているペアもみつけたので、雌雄の複眼にぴったりとピントが合う位置を探して撮影した。最も普通種で見向きもされない道端の蝶ヤマトシジミであるが、雨上がりの羽化したての個体は実に美しい。先だって久しぶりに日本の蝶の図鑑をじっくりと見入ったが、シジミチョウの仲間はとっても可愛らしくて美しいなと感嘆した。まあ、そんな感動のまず第一作がヤマトシシミから始まったのかもしれない。久しぶりに、ルリシジミ、ツバメシジミ等の普通種の羽を開いた写真を美しく撮りたいと思った。最後に、これに触れたら大変な事になるチャドクガを発見したから、貼り付けた写真を目に焼き付けて、フィールドでの楽しい散策を繰り広げて欲しいと思う。次回行く時は一日中雨が降らずに、夏の大物達をご紹介出来ればと思っている。しかし、熱中症になるような晴天はもちろん御免である。

<今日観察出来たもの>花/ヤブカンゾウ、クサレダマ(写真上左)、チダケサシ、ミソハギ、ホタルブクロ、オカトラノオ、ワルナスビ、イヌゴマ、アキノタムラソウ、ドクダミ、ヒルガオ、ツユクサ、ミヤコグサ、アカツメクサ、ネムノキ、アジサイ、シモツケ、コムラサキ等。蝶/アオスジアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、モンシロチョウ、キチョウ、ヒカゲチョウ、アカシジミ、ミドリシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ(写真中左右)、ベニシジミ、コチャバネセセリ(写真下左)、ダイミョウセセリ、キマダラセセリ等。昆虫/カノコガ、チャドクガ(写真下右)、ショウジョウトンボ、アジアイトトンボ、トウキョウヒメハンミョウ、マメコガネ、ゴマダラカミキリ、ジンガサハムシ、ヒメカメノコハムシ、イタドリハムシ、シロコブゾウムシ、オジロアシナガゾウムシ、ハスジカツオゾウムシ、カツオゾウムシ、チャバネアオカメムシ等。鳥/カワセミ、ホトトギス、ウグイス等。キノコ/ツルタケダマシ、タマゴテングタケモドキ(写真上右)、コキララタケ、ヒダサカズキタケ、カレバキツネタケ、キツネタケ、ニオイコベニタケ、アラゲキクラゲ、キクラゲ、シロキクラゲ、ツノマタタケ等。その他/ヒメコウゾの実、ナシの実、カラタチの実等。