多摩丘陵

小野路図師紀行
(第3集)



2005年 1月2月 3月4月 5月6月 7月8月 9月10月 11月12月



2005年6月25日、東京都町田市小野路町

 今日は渋滞を避けて午後3時に清里に向け出発するので、手際良く効率的にと考えて散策を開始した。この季節、本当に写す野の花や各種の実がない。ドクダミはもう咲き始めの美しさはすでに無く、ホタルブクロは絵になるものになかなか出会えない。芝地にはネジバナが咲いているが、これまた撮影がとても難しい花である。五反田谷戸まで行けば何かしらの野の花に出会えるだろうが、今日は前述したようにそれ程の時間が無い。そこでまず雑木林の縁の陽が当たらない下草の上を重点的に目を向けて、昆虫を撮影しようと思ったのだが、トホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、ヒメカメノコハムシ等がいる位で寂しい限りである。今日はとても良い天候であるし、昆虫たちも朝夕の涼しい時間帯に行動パターンを変えたらしい。それに若葉の季節はとっくに過ぎて、各種の樹木の葉は硬くなっているから、オトシブミやハムシ達もそろそろ活動を停止しているのだ。そんな状況なので目星をつけておいた樹液が出ているコナラの若木を見に行くと、超小型だが今年初めてのノコギリクワガタのペアがやって来ていた。昆虫においても出来るだけやらせ写真は撮りたくないのだが、どうアングルを変えても様にならないので、指で雄だけつまみ上げ幹に這わせて撮影した。今日は散策する時間が限られているので、超小型のノコギリクワガタと言えども貴重な被写体なのである。
 雑木林に沿った小道を歩いて行くと、いつも気をつけているアワブキの木の葉に、スミナガシの幼虫が食べた独特な食痕があったので、幼虫はいないかと探して見ると、スミナガシではなくアオバセセリの幼虫が目に入った。まるでサーカスのピエロのような度派手の衣装をまとっているからすぐ分かった。小野路町にアオバセセリがいる事は時たま成虫を見ているので知っていたが、幼虫を見るのは初めてである。どうにかしてオレンジの地に黒い斑模様の顔を正面から撮りたいと思ったのだが、アオバセセリの幼虫はご機嫌斜めで、臍を曲げて身体までも曲げてしまった。しかし、それでも度派手の衣装は印象的で、これを綺麗と思われる方は多いと思われるが、やっぱり毛虫、芋虫は苦手である。なんとなく大嫌いな蛇や蒟蒻を連想してしまうのだ。美しい雑木林に到着するも、これまた前回に引き続いて蝶や野の花の姿はなく、ただ、マツアナアキゾウムシが樹木の幹で昼寝をしていた。それでもキノコは種類数こそ少ないものの、カワリハツやドクベニタケがたくさん生えていた。
 液晶ディスプレイで撮影したものを確認して見ると、まだまだかなり数が少ない。そこで伐採木がたくさん積んである場所へ行った。ここは立ち入り禁止となっているが、今日は持ち主の方が来ていて、これでは立ち入り禁止の禁を破って侵入する訳にもいかない。これは困ったと持ち主に目を向けると、なんと顔見知った無人野菜販売所を開いている農家の若者だった。「なんだ、ここもお宅の土地だったんだ」と沢山ある畑の多さにびっくりして言った。そこで「ここの丸太に写したい昆虫が来ている筈だから、中に入っても良いですか」と許可を求めると、「どうぞ、どうぞ、ごゆっくり」ということになった。「どんな虫が来るの?」と聞かれたので、「ルリボシカミキリという水色のカミキリムシ」と答えると、さっそく農家の若者が探し始めて、「本当だ、あそこにいるよ」と指差してみつけてくれた。そんな訳で地主さんの許可を貰ったことだし思う存分撮影出来た。今日はルリボシカミキリは少なかったが、他にキスジトラカミキリ、ミドリカミキリがやって来ていた。これで今日の観察記と小野路図師紀行を飾る8枚の写真が無事に撮影出来た。
 午後からは中古で買ったシグマ180ミリマクロの試し撮りも兼ねて、万松寺谷戸入口の水田や蓮田にいるトンボを狙った。どう言う訳かオオシオカラトンボばかりなのでがっかりした。真っ赤なショウジョウトンボも期待していたのに一匹だにいない。毎年、必ず見られるのにどうしたことだろう。しかし、試し撮りは無事に成功して、シグマ180ミリマクロはとてもピントが合わせやすい、近づくとすぐに逃げてしまう昆虫には最適レンズであることが分かった。これから行く八ヶ岳高原や白州町中山峠でもたびたび出番がある事だろう。また、これからやって来る夏は、このレンズで数々の傑作写真が撮れそうにも感じられた。時計を見るとまだ出発予定の午後3時までかなりあったが、熱中症が心配な程に気温が上がって来たので、躊躇することなく清里に向かって小野路町を後にした。

<今日観察出来たもの>花/ネジバナ、ドクダミ、ホタルブクロ、ワルナスビ、コンフリー等。蝶/クロアゲハ、ツマグロヒョウモン、メスグロヒョウモン、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、キマダラセセリ、ジャコウアゲハの幼虫、アオバセセリの幼虫(写真上右)等。昆虫/ノコギリクワガタ(写真中左)、マツアナアキゾウムシ(写真中右)、ルリボシカミキリ(写真下左)、キスジトラカミキリ(写真下右)、キイロトラカミキリ、ミドリカミキリ、ベニカミキリ、トホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、ヒメカメノコハムシ、オオシオカラトンボ、ヤマサナエ等。キノコ/カワリハツ、ドクベニタケ(写真上左)、イヌセンボンタケ等。


2005年6月18日、東京都町田市小野路町・図師町

 今日はどうしてもまだ撮影していない、ミドリシジミの雄の羽を開いてキラキラと緑色に光る写真を撮りたくて、ほしみすぢさんに教えて頂いたHの里に寄った。本当は朝の7時に行かないと撮影チャンスはぐっと減ることは知っていたが、朝寝坊癖が抜け切らないので午前9時に現地に到着した。しかし、朝の内はどんよりと雲っていたこともあってか、かなりの個体が下草に降りて羽を開いていたが、雲がしだいに薄くなり気温が急に上昇したこともあってか、近づくとすぐに飛び立ってしまう個体が多かった。それでもなんとか1カツトだが撮影出来てほっとして小野路町に向かった。
 このため小野路町に到着したのは午前11時を回っていた。そこで迷わず美しい雑木林へ直行した。しかし、我が目を疑うがごとく何処を探してもゼフィルスは1頭だにいない。それどころか蝶の姿が見られないのである。去年、この雑木林の下草に、それこそたくさんのウラナミアカシジミ、アカシジミ、ミズイロオナガシジミが降りていた事は、同行した方々もしっかり観察している筈だが、その雑木林に今年はミズイロオナガシジミが僅かに見られた位で、ほとんど発生しなかった事になる。今日、Hの里で出会った方も、去年は寺家町でもウラナミアカシジミがたくさん発生したと言っていたが、去年は例年とは異なったゼフィルスの豊作の年とは言え、今年、こんなに少ないとはいったいどうした事だろう。去年、台風が何べんとも無く上陸した事もその原因の一つなのだろうが、異常発生の翌年はほとんど見られなくなるという現象は、ニシキギやマユミにつくキバラヘリカメムシでも経験している。それにしても今後絶滅してしまうのではないかと危惧される程の、今年の小野路町のゼフィルスの発生状況である。
 そんな訳で両肩を落とし、Hの里に立ち寄って来たために散策時間はかなり少なくなり、しかも、空は事前の天気予報とは異なってかなり青空が広がり、陽が射しとても暑くなった。ことによったら今日の観察記は、写真が撮れないために書く事が出来ないのではとの不安にかられた。そこでいつもたくさんの昆虫が見られるニリンソウの谷の雑木林の縁の小道に足を早めた。しかし、ここでも昆虫の姿は僅かで、こうなったら以前に紹介したものでもなんでも撮ってやれと、アカガネサルハムシ、トホシオサゾウムシ、イチモンジカメノコハムシ等を撮影し、だいぶ写真映えがしないが新顔のマダラアシナガバエやアシナガムシヒキ等も撮った。その後、午後からの散策に期待を寄せて車に戻って菓子パンをぱくついていると、可愛子ちゃん主婦のKさんが、ご亭主と一緒にやって来た。何故だかこの時期に毎年出会う。彼女等の狙いはもちろんゼフィルスだが、五反田谷戸の野の花巡りも兼ねている事は言うまでも無い。ご主人に「Hの里に立ち寄って来たんだけど、ミドリシシミの雄がたくさん羽を開いていましたよ。お近くなんだから、明日必ず午前中に行ったら良いですよ」と勧めてみたら、必ず行ってみますとの答えが躊躇なく返って来た。自然好き蝶好きには、ミドリシジミのきらきらと緑色に光る雄の姿は、是非見てみたいとの魅力溢れる存在なのである。
 昼食とは程遠い菓子パンを胃の中に流し込むと、最短距離で五反田谷戸を目指した。昆虫ばかりではこの観察記を飾るのにちょいと寂し過ぎるから、ウツボグサ等の野の花も撮りたい。キノコ尾根を下って行けば、だいぶ雨が続いたからキノコがたくさん見られる筈と思った訳なのである。しかし、その期待は見事に裏切られ、キノコはドクベニタケ等がわずかに単生している位で、これといったものに出会えなかった。五反田谷戸ではもちろん各種の野の花が咲いていたが、生憎の陽が射す陽気となって、しっとりとしたウツボグサ等を撮影する事は出来なかった。やはり今の時期の谷戸の花は、雨に濡れ露を宿していてこそ風情がある。五反田谷戸で手短に撮影をすませるとキノコ山へ行ったが、ここにもキノコの姿は無く、万松寺谷戸に下って来ると、草刈された後に早くもウマノスズクサが伸び始め、真ん中に白い帯を持ついぼいぼの生えた真っ黒いジャコウアゲハの幼虫がたくさん見られた。谷戸入口の小さな池や水田にはギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボがいたが、カメラに装着している90oマクロレンズでは近づくとすぐに逃げられてしまった。この次来る時には長玉レンズを持参して、じっくりとトンボを撮ろうと思った。以上、今日のゼフィルス狙いの小野路町、図師町は、僅かにウラナミアカシジミを1頭観察したのみで、久しぶりにあまり成果の上がらない、そして気温が高く蒸し暑い一日となった。しかし、それでも充分に楽しい散策となった事は言うまでもない。

<今日観察出来たもの>花/ノアザミ、ホタルブクロ、ウツボグサ(写真上右)、ミヤコグサ、ドクダミ、ヒルガオ、トキワハゼ、カタバミ、イモカタバミ、アカツメクサ、シロツメクサ、ニワゼキショウ、ヒメジオン、クマノミズキ等。蝶/アゲハ、キアゲハ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、テングチョウ、ミスジチョウ、コミスジ、メスグロヒョウモン、ウラナミアカシジミ、ヤマトシジミ、ルリシジミ、ベニシジミ、コチャバネセセリ、ダイミョウセセリ、キマダラセセリ、ヒメキマダラセセリ、ジャコウアゲハの幼虫等。昆虫/トンボエダシャク、カノコガ、ギンヤンマ、ヤマサナエ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ベニカミキリ、ヒメクロオトシブミ、ウスモンオトシブミ、トホシオサゾウムシ、コフキゾウムシ、オジロアシナガゾウムシ、アカガネサルハムシ、イチモンジカメノコハムシ、ヒメカメノコハムシ、テントウムシ、ムーアシラホシテントウ、トホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、オオヒラタシデムシ、マダラアシナガバエ(写真中左)、アシナガムシヒキ(写真中右)、マガリケムシヒキ、オオイシアブ、モモブトハナアブ、ミサキオナガミバエ、ヤマトシリアゲ、ヤマトフキバッタの幼虫(写真上左)等。キノコ/ヒメカバイロタケ、ドクベニタケ、カワリハツ、ヤケアトツムタケ、ヒトヨタケ、アミスギタケ、種名不明調べ中(写真下左)、コガネニカワタケ(写真下右)等。その他/オニグルミの実、クマヤナギの実等。


2005年6月9日、東京都町田市小野路町

 週間天気予報を見ると、やはり明日から天気がぐずつくようだ。傘をさしての仕事も憂鬱で大変だが、それでも溜まった仕事を明日すべてこなせば良いと、小野路町へ行った。今日は一日中曇り日で撮影にも散策にも好適な日和で、今日は何もかも期待出来るだろうと心が弾んだ。もちろん今日の目的はゼフィルスである。その中でもアカシジミが発生している筈で、もちろん美しい雑木林に足を早めた。途中、ハスジカツオゾウムシ、ヒメクロオトシブミ、ヒメカメノコハムシ、イチモンジカメノコハムシ等がいたし、テングチョウもたくさん舞い、ハチクの竹薮の湿った地面には種名は判別出来ないが、ハリガネオチバタケを超小型にしたようなものや、写真のような透き通るように白いキノコが生えていた。また、待ちに待ったギンリョウソウも頭をもたげていた。美しい雑木林に着くと、去年のように下草にオレンジ色をしたアカシジミやウラナミアカシジミがたくさん舞い降りているだろうと胸をわくわくさせたのだが、ゼフィルス類は1頭も見られなかった。やはり去年何べんともなく上陸した台風の影響なのだろうか、それとも春がやって来るのがとても遅かったのがまだ尾を引いているのだろうかと思ってみたが、小野路町で今年はこのままオレンジ色のゼフィルスが見られないかも知れないとの不安がよぎった。いずれにしろ、来週また来て見れば、この疑問は解ける事だろう。それでも美しい雑木林で、トンボエダシャクやゴイシシジミやキマダラセセリを撮影した。
 残念無念の思いを持ちながら美しい雑木林を後にすると、丘の上の畑沿いにTさん宅まで行った。雑木林に置かれているヤマザクラのとっても太い丸太に以前から生えているヒイロタケは、雨がこのところたっぷりと降ったから、真っ赤に燃えるように大きく成長していた。地味な色合いが多いサルノコシカケ科の中では別格な色合いのキノコである。また、毎年、樹液をたっぷりと出すクヌギは今年も健在で、樹液がかなり滲み出ていて、オオスズメバチ、サトキマダラヒカゲが吸汁に訪れていた。後1ヵ月もすれば国蝶オオムラサキも訪れるかもしれない。顔見知った農家の塀沿いに植栽されているナツグミは真っ赤に色づいてとても美味しそうだ。ご主人が試食してみたらと勧めるので2粒程味わったが、モミジイチゴ、クワ、ウグイスカグラにはない少々渋味を伴った味である。Tさん宅に近づいて雑木林の下草に注意を払うと、やっとミズイロオナガシジミに出会う事が出来た。
 午後からは万松寺谷戸を詰めてキノコ山に登り、雑木林を巡り歩いて牧場経由で車に戻るコースをとった。この時期、谷戸奥の栗林にとっても大きなタマゴテングタケモドキが生えている筈と行って見たのだが、やはりまだ雨が足りないようで生えていなかった。栗林のクリの花も咲き始め、アカシジミが吸蜜に訪れていても不思議ではないのだが、ベニカミキリやコアオハナムグリが盛んに吸蜜していた。自然度の高い小野路町とは行ってもオニグルミの木は左程ないが、ここには大きなものがあって、カメノコテントウはいないかなと探して見たが、真っ白なリンゴコフキハムシが葉を食べていた。また、オニグルミの実はだいぶ大きくなって真ん丸として来て、とても微笑ましく感じられた。キノコ山へ登ると途中、またしてもミズイロオナガシジミが下草に降りていた。小町井戸のじめじめした場所には、とっても会いたかった可愛らしいダイダイガサが生えていた。里山ではタマゴタケと同様に、とても写真映えのするキノコなのである。この後、いつもならたくさんのアカシジミの見られる雑木林や栗林へ行ったが、少数のミズイロオナガシジミを観察しただけであった。春にはとても楽しい思いをさせて貰った植木屋さんの畑では、サツキが美しく咲きナツツバキが花を開き始めていた。この他、大きな石が置かれている場所で、羽化したてのウスバカゲロウを見つけた。ウスバカゲロウと言っても分らない方が多いと思うが、あの蟻地獄に潜む幼虫の成虫である。以上、今日はかなりの手応えで見るもの撮るものがあったが、やはりこの時期、ゼフィルスがたくさん見られないとなんとなく寂しい。一週間あけた来週こそ、多くのゼフィルスに出会える事を期待して小野路町を後にした。

<今日観察出来たもの>花/ドクダミ、ギンリョウソウ、ニワゼキショウ、オカタツナミ、ヒメジオン、ノアザミ、コンフリー、アワブキ、ウツギ等。蝶/ゴマダラチョウ、メスグロヒョウモン、キタテハ、テングチョウ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、モンキチョウ、キチョウ、ヒメジャノメ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲ、ゴイシシジミ、ミズイロオナガシジミ(写真中左)、ウラゴマダラシジミ、ルリシジミ、ベニシジミ、キマダラセセリ、ヒメキマダラセセリ(写真中右)、ダイミョウセセリ、コチャバネセセリ等。昆虫/トンボエダシャク(写真下右)、アカスジキンカメムシ、ヤマサナエ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、シオヤトンボ、コクワガタ、オオアオゾウムシ、コフキゾウムシ、ハスジカツオゾウムシ、ヒメクロオトシブミ、ジョウカイボン、ヒメカメノコハムシ、イチモンジカメノコハムシ、リンゴコフキハムシ、クロウリハムシ、アトボシハムシ、ムーアシロホシテントウ、トホシテントウ、ウスバカゲロウ(写真下左)等。鳥/ツツドリ、キジ、ガビチョウ等。キノコ/ダイダイガサ(写真上右)、ヒイロタケ、アミスギタケ、カワリハツ、種名調べ中(写真上左)等。その他/モミジイチゴの実、クマヤナギの実、ヘビイチゴの実、ナツグミの実等。


2005年6月2日、東京都町田市小野路町・図師町

 6月に暦が変わって、いよいよ待ちに待った大好きな梅雨のシーズンに入ったようである。今日は午後から雨が降って来ると予報されていた。それでも小野路町の方が舞岡公園よりも降り出しが遅いとあるので出かけてみた。しかし、到着してからすぐに小雨が降ったり止んだりで、カメラにタオルを被せての散策となった。こうなったら早いところ、このHPのための写真を8枚確保せねばならないと考えたのは当然である。先ずは咲き始めたドクダミを撮った。自宅の庭の雑草としても手ごわいドクダミ、また草むしりの時になんとも言えない悪臭を放つが、ドクダミの花無くして梅雨は語れない。ドクダミを撮影すると万松寺谷戸にほんの少し足を踏み入れてみた。こんな小雨がぱらつく日は、各種の昆虫が植物の葉や茎に止って静かにしている筈だからだ。その思惑は的中して第2化のベニシジミや羽化が遅れたらしいジャコウアゲハの雌がいたものの、今日はそれほどまで気温が低くなっていないからか、接近を気づかれて飛び立たれてしまった。一昨日、かなりの量の雨が降ったのでキノコの穴場へも行って見たが状況変化はなくて、たくさんのアカスジキンカメムシの成虫とクマヤナギの赤く色づいた実が出迎えてくれた。
 いつものようにニリンソウの谷から美しい雑木林の道を歩く事にしたが、前回来た時と異なってウスモンオトシブミは見られなかった。それでも小野路町で初めて遭遇するヒゲコメツキを見つけたが、残念なことに髭のような触覚ではない雌で、更に残念な事に片一方の触覚が折れていた。今日はあんまり昆虫が見られないなとぼやいていると、葉の上にカラフルな色彩のハチがいる。はじめホソアシナガバチかと思ったが、胴の付根がかなり太い。自宅に帰って図鑑を調べてみたが、それに該当するものは残念ながら見当たらない。更に張り出したムクロジの枝で、エダシャクの仲間の幼虫が枯れた枝になりすませているのを発見した。これまた種名を見極めるのがとっても難しい種類である。案の定、自宅に帰って様々なものであたってみたが残念ながら見当たらなかった。まったくもう17年も道端自然観察をしていて、昆虫はかなり知っているつもりだがまこと寂しい限りで、また、それだけ昆虫の種数は圧倒的に多いと言う事だろう。美しい雑木林に行く途中、雨も降ったし時期的にもギンリョウソウが生えているのではと期待したが、その芽生えさえも発見できなかった。
 今日の目的の第一は、もちろんアカシジミ等のゼフィルスが発生したかどうかにあったから、萌芽更新中の背の低いクヌギやコナラの雑木林に寄ってみた。周辺部の草原に羽化したばかりのアカシジミが降りていることがよくあるからだ。アカシジミは残念ながら見つからなかったが、コナラから樹液が出ていて、サトキマダラヒカゲが吸汁していたが、なんと根際にコクワガタの姿を発見した。さらにもっといるのではないかと土を掘ってみると、この場所だけで雌が3匹、雄が1匹もぐっていた。いよいよクワガタムシの仲間も活動を開始したようで、早ければ今月中に大型のノコギリクワガタやカブトムシが発生するに違いない。美しい雑木林に到着して、アカシジミはいないかと目を凝らしていると、小さなシジミチョウがチラチラと飛んでいる。この飛び方はゴイシシジミである。なかなか止ろうとしなかったが、一度止るとじっとしていてすぐには飛び立たない。今年初めて見るゴイシシジミだから慎重に近づいて撮影した。ゴイシシジミは羽裏の黒紋が黒の碁石を散りばめたようだからその名前がついたが、とっても可憐な蝶である。そんな可憐で可愛い蝶の幼虫が、タケノアブラムシ等の幼虫を食するとは思えないが、純肉食性の蝶なのである。
 美しい雑木林の中に更に入って逍遥し、くまなく目を光らせたが撮るべきものは見当たらない。そこで五反田谷戸へ行って少しは花でも撮ろうと足を早めた。途中、畑の土留めのために置かれている丸太にアミスギタケがたくさん生えていた。笠と柄がはっきりと分かれているが、これもなんとサルノコシカケ科のキノコなのである。もちろん極々普通に見られるものだが、雨が降らずに日照りにあってキノコも生えず心の中もキノコ日照りであったから、可愛らしいものを選んで撮影した。しかし、雨が次第に強くなって一向に止む気配がなくなった。そこでTさん宅の庇を借りて食事をし、雨が止むのをかなり待ったが雨が止む気配はない。そこでカメラの液晶モニターで今まで何枚の被写体を納めたかと確認してみると、なんとか使えるものが9枚確保されていた。そこでカメラをザックの中にしまい込んで、傘を差して五反田谷戸へ下って行った。小ぬか雨降る五反田谷戸は非常に静で情緒溢れ、レモンイエローのミヤコグサの群落や花に小さな水滴をつけたノアザミが出迎えてくれ心洗われ、早々の帰宅の途に着いた。

<今日観察出来たもの>花/ドクダミ(写真上左)、ミヤコグサ、ニワゼキショウ、オカタツナミ、ハルジオン、キツネアザミ、ノアザミ、アカツメクサ、ウツギ等。蝶/ジャコウアゲハ、モンシロチョウ、イチモンジチョウ、コジャノメ、クロヒカゲ、ゴイシシジミ(写真中左)、ベニシジミ等。昆虫/アカスジキンカメムシ、クヌギカメムシ、ヤマサナエ、シオカラトンボ、ヒゲコメツキ、シモフリコメツキ、コクワガタ、コフキゾウムシ、ヒメクロオトシブミ、ジョウカイボン、ヒゲナガハナノミ、ジンガサハムシ、イチモンジカメノコハムシ、クロウリハムシ、アトボシハムシ、ムーアシロホシテントウ、トホシテントウ、トビモンオオエダシャクの幼虫、カラフルなハチの仲間(写真中右)等。鳥/ホトトギス等。その他/サワガニ、ミスジマイマイの子供?(写真下左)、イオウイロハシリグモ、チュウガタコガネグモ、モミジイチゴの実、クマヤナギの実(写真上右)、ヘビイチゴの実、アミスギタケ(写真下右)、ヒトヨタケ等。


2005年5月24日、東京都町田市小野路町

 前回来た時に図師町の五反田谷戸は草刈がなされていたから野の花はあまり無いだろうし、このところずっとまとまった雨が降っていないから、何処を探してもキノコは皆無だろう。そんな訳で、今日は小野路町で昆虫探しに徹しようと散策を開始した。ニリンソウの谷に曲がると、ウスモンオトシブミがたくさんキブシの葉の上に止っている。今日は前回と異なって風が弱いからすこぶる撮影は楽だ。更に歩みを進めると、アカスジキンカメムシが2匹成虫になって葉上に鎮座している。小野路町は舞岡公園に比べれば内陸で気温が低いから、まだだと思っていたので驚いた。それにしてもアカスジキンカメムシは、成虫はもちろん幼虫もとっても目立つ色をしているのに、ご覧下されとばかりに葉に静止しているのはどのような訳があるのだろう。天敵である筈の小鳥達に簡単に見つかり食べられてしまうに違いないと思うのだが、とっても不思議な事である。カメムシは別名「屁っぴり虫」と呼ばれるように臭い匂いを発する事が出来るから、小鳥たちも敬遠しているとしか考えようがない。まあ、その真偽は分らぬものの散策開始でもうお目当てのものをカメラの中に納めたのだから、今日は上々の出足だ。
 更に谷戸を詰めると、谷戸奥で田んぼと畑を耕すお爺ちゃんが山裾で鎌を片手になにやらしているので、「なにをしてるんだい、お爺ちゃん」と聞くと、「ほら竹の子だよ」と、ほっそらしたものを見せてくれた。「それマダケでしょう」と聞くと、「ハチクだよ、柔らかくって美味いんだよ」と言う。こんなに野山を歩き回っている私だが、実はマダケとハチクの違いが分らないのである。更に恥を晒せばアズマネザサとメダケの違いも分らないのである。物凄く太くて背が高くなり八百屋で売っている竹の子をとるのがモウソウチク、それより細くて肉が薄く竹とんぼを作るのに好適なのがマダケ、そして笹のように背が低くてほっそり真ん丸のものがアズマネザサと言った按配なのである。まあ、それでなんとかなってしまうから気にしていなかったが、やっぱりウィークエンド・ナチュラリストを標榜しているのだから、帰宅したらその見分け方を勉強しなくてはならんなと思い、お爺ちゃんと分かれた。ニリンソウの群落地の背後でオカタツナミが咲き始めている。これまた紫色のタツナミソウと異なって青い花だと言う位の区別点しか持たないが、花ばかりでなく葉や茎もかなり異なるのかもしれない。まあ、それ以上専門的に立ち入らないからいつまでもウィークエンド・ナチュラリストなのだが、それでも不便もなくとても楽しいのだから良しとしよう。
 今日は図師町の五反田谷戸へは行かないからと、美しい雑木林の脇の耕作地に足を踏み入れてみると、ブルーベリーの実はだいぶ大きくなり、キウイが真っ白の花をつけていた。美しい雑木林の中に入って行くと、梢から「東京特許許可局」とホトトギスの澄んだ囀りが聞こえて来る。しかし、その姿は確認出来ない。図鑑で見知ったホトトギスは決して美しい鳥ではないが、里山の代表的な夏鳥である。里山の自然を撮影しようと思い立ったのだから、ホトトギス、カッコウ、ツツドリの姿をカメラの中に納めなければ片手落ちだが、「ぶんちゃん、撮っておいてね」と相模原の方向を向いて両手を合わせた。いざという時がもしあったら写真を借りれば良いのだとの魂胆だが、いつか撮らなければ気が済まないとは思っているのだ。美しい雑木林はこれといった花もなく、まだクヌギやコナラの樹液も出ていないから、コクワガタ位はと思ったのだが、昆虫もこれといったものに出会えなかった。やはり梅雨がやって来て水分を地面に充分に補給せねば、樹液は滲み出て来ないのだろう。
 午後からも引き続いて昆虫を探して、万松寺谷戸やキノコ山を中心にウロウロと散策した。このHPの掲示板に度々素晴らしい写真を送ってくれる森のきのこさんがゴイシシジミを観察しているので、アズマネザサが茂っている場所には特に注意したが発見出来なかった。しかし、モウソウチクの林で様々な昆虫たちに出会った。もっとも竹林の中へ入った訳ではなくむろん道端からだが、真っ赤なベニカミキリがたくさんいたし、なんとクロヒカゲと思われるサナギを発見して嬉しくなった。更に赤褐色の地に白い真ん丸の斑紋を持つムーアシロホシテントウが、竹に着く白いものの近くに静止しているので、てっきりカイガラムシないしアブラムシを食べているのかなと近寄ってみると、小さな米粒のような卵を産卵している事が分った。以上、今日は季節の端境期と割り切ってあまり期待していなかった小野路町であったが、驚きと発見の連続で、どんな時でも自然に停止は無いのだと感じ入ってフィールドを後にした。

<今日観察出来たもの>花/ドクダミ、ササバギンラン、オカタツナミ(写真上左)、ハルジオン、キツネアザミ、アメリカフウロ、アカバナユウゲショウ、イモカタバミ、ノアザミ、ジシバリ、ニガナ、シロツメクサ、アカツメクサ、カラスノエンドウ、トキワハゼ、フタリシズカ、ウツギ、コゴメウツギ、エゴノキ、コンフリー、ジャガイモ、シュンギク、キウイ、シラン等。蝶/クロアゲハ、モンキチョウ、モンシロチョウ、キチョウ、イチモンジチョウ、コジャノメ、クロヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、ダイミョウセセリ、ヤマトシジミ、ベニシジミ等。昆虫/アカスジキンカメムシ(写真中右)、クヌギカメムシ、オオクモヘリカメムシ、ヤマサナエ、シオヤトンボ、シオカラトンボ、ギンヤンマ、シモフリコメツキ、マダラアシゾウムシ、コフキゾウムシ、ウスモンオトシブミ(写真中左)、ヒメクロオトシブミ、ジョウカイボン、ヒメジョウカイ、ヒゲナガハナノミ、ヨツキボシカミキリ、ツマグロハナカミキリ、ベニカミキリ、キクスイカミキリ、ジンガサハムシ、アカガネサルハムシ、クロウリハムシ、ウリハムシ、アトボシハムシ、ムーアシロホシテントウ(写真下右)、ナナホシテントウ、ホソヒラタアブ、クロヒカゲの蛹(写真下左)等。鳥/ホトトギス、ガビチョウ、キジ、カルガモ等。その他/ササグモ、チュウガタコガネグモ、カジイチゴの実(写真上右)、モミジイチゴの実、クサイチゴの実、ヘビイチゴの実等。


2005年5月17日、東京都町田市小野路町・図師町

 気温が低くどんよりと曇った日々は、やっと昨日で終わった。朝の内こそ曇っていたが今日も晴天で、いくらか気温が低い。いつもの場所に車を停めて、雑木林を見上げると緑の色はだいぶ濃くなって、その上に真っ青な空が広がっている。時折、綿飴のような雲が流れて行って、とてもコントラストが強い印象である。きっと空気がかなり澄んでいるのだろう。なんとなく夏の高原を思わせるなあと一人ごちる。今日も風がやや強く、また、キンラン、ギンランに代表される連休前後の花盛りも過ぎたから、写真撮影は梃子摺るぞと思いながら散策を開始する。こんな日は先ずは日陰になっている場所の葉上に静止する昆虫を撮っておかなければ枚数が稼げないぞと、ニリンソウの谷に入って行くと、キブシの葉にウスモンオトシブミを見つけた。まだかまだかと思っていたのだが、ウスモンオトシブミはヒメクロオトシブミに比べるとだいぶ発生が遅れるようである。これはいただきと三脚を立ててかなり粘ったのだが、一向に葉の揺れは止まらずに断念する。谷戸を詰めて美しい雑木林に到着するが、これといった花は咲いていない。昆虫もこれといったものが見当たらないが、羽化したばかりのイチモンジチョウが一頭いて、黒地に白のストライプが鮮やかで軽快に飛んでいる。なんとか撮影したいなと眺めていると、地面に置いたカメラバックに静止したので、「そんな場所では絵にならないからお退き」と追い払うのだが、執拗にカメラバックに興味をしめす。きっと汗が染み込んでいて、その中の塩分が目当てなのだろう。夏の高原に行くとクジャクチョウ、コムラサキ、シータテハ、エルタテハ、ミドリヒョウモン等が、コンクリートで作られている土留めに止って吸汁するのと同じ理由なのだ。しかも羽化したばかりの個体にこの傾向が強い。そんなイチモンジチョウと遊んでいたら、カメラザックにしめす執着心も薄れたのか梢高く飛んで行ってしまった。
 やっぱり今日は駄目そうだと五反田谷戸へ急いだ。途中、早くもオオスズメバチがコナラの樹液を吸いにやって来ていた。たくさん出るようにと、その強靭な大腮で樹肌の傷を広げている。辺りにはオオスズメバチが満腹したらお余り頂戴と、複数のコジャノメが舞っている。五反田谷戸へはキノコ尾根を下って行ったのだが乾き切っていて、前回来た時に次回は大きく成長しているぞと期待していたアカマツの丸太に生えたヒメカバイロタケは、すっかり萎びて縮こまっていた。期待した五反田谷戸に降りて行ったが、農家の方が草刈をした後で、僅かにノアザミとタツナミソウが見られるだけである。もちろんレンゲソウが咲いていた田んぼもすっかり田お越しされている。そんな訳でますます今日は駄目だなとの思いが強くなったので、谷戸の入口へ出て白山谷戸へ行ってみる事にした。こんな時は畑に咲いているシュンギクの花や農家の庭先のイモカタバミも貴重な被写体である。しかし、白山谷戸へ行けども状況は変わりなく、途中、アオカメノコハムシやクロウリハムシ、ウツギを撮って神明谷戸へ向かった。
 神明谷戸も状況に変化はなかったが、前回同様にツマグロヒョウモンの雄が乱舞していて、更にイチモンジセセリも見られた。今日はこれを撮らなければどうしょうもないなと、カメラザックも三脚も地面に置いて身軽になり、手持ちでツマグロヒョウモンをばんばん狙った。フイルム時代と比べるとISO400にしても画質の変化がないデジタルカメラは、蝶の撮影をとても容易にしてくれる。しかもバンバン撮ってもタダなのだから尚更だ。ここが本当に東京都と疑いたくなる静で長閑な谷戸に、雑木林から、「カッコー、カッコー」とカッコウの囀りや「ピーシャララー、ピーシャララー」と静寂を破る、なんとなくこの場の雰囲気を壊すガビチョウの囀りも賑やかだ。ガビチョウはやっぱり中国がお似合いの鳥なのだ。しばらくたって今度は「ポポー、ポポー」と特徴ある囀りが聞こえて来た。なんだろう家に帰ったら是非調べてみたいと思っていたら、キノコ山の入口で可愛い子ちゃん看護婦さんの親友の美人先生に出会ったので聞いてみると、「それはツツドリですね」との事であった。「花や昆虫以外にも最近は鳥も撮るんですよ。だから、ハンドルネームをトリモトール花虫(鳥も撮る花虫)に変えようと思っているんですよ」等と冗談を言ったら笑われてしまった。万松寺谷戸に下りて行くとヒゲナガハナノミが至る所にいて、ヒメウラナミジャノメが交尾していたし、すっかり青くなったシオヤトンボやヤマサナエがたくさん出迎えてくれた。また、朝見つけたウスモンオトシブミはいないかとニリンソウの谷にもう一度寄り道すると、ウスモンオトシブミは見つからなかったが、代わってエビズルの葉に赤い金属光沢が美しいアカガネサルハムシをたくさん見つけた。以上、「今日は駄目かな」が「今日も満足」へと短時間の内に変化した。これだから止められない停まらないカッパエピセンならぬ道端自然観察と言う訳なのだ。

<今日観察出来たもの>花/キンラン、ギンラン、ササバギンラン、タツナミソウ、コバンソウ(写真上右)、ハルジオン、キツネアザミ、アメリカフウロ、アカバナユウゲショウ、ノアザミ(写真上左)、ミヤコグサ、ジシバリ、ニガナ、レンゲソウ、シロツメクサ、カラスノエンドウ、ムラサキサギゴケ、トキワハゼ、フタリシズカ、コケリンドウ、イモカタバミ、ウツギ、コゴメウツギ、ヤマツツジ、キリ、コンフリー、ジャガイモ、シュンギク等。蝶/アゲハ、カラスアゲハ、クロアゲハ、ツマグロヒョウモン(写真中左)、イチモンジチョウ、コジャノメ、クロヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ(写真中右)、イチモンジセセリ、コチャバネセセリ、ムラサキシジミ、ヤマトシジミ、ルリシジミ、ベニシジミ等。昆虫/ヤマサナエ、シオヤトンボ、シモフリコメツキ、、マダラアシゾウムシ、ジョウカイボン、ヒゲナガハナノミ(写真下右)、ヨツキボシカミキリ(写真下左)、ツマグロハナカミキリ、アカガネサルハムシ、フタホシオオノミハムシ、クロウリハムシ、クロボシツツハムシ、アオカメノコハムシ、ウスモンオトシブミ、オオスズメバチ、ホソヒラタアブ等。鳥/ツツドリ、カッコウ、ガビチョウ、キジ等。その他/アオダイショウ、アマガエル、アカガエル、カメ等。


2005年5月10日、東京都町田市小野路町・図師町

 連休の遠征があったりして、だいぶ間隔があいた小野路町・図師町行きである。しかも、久しぶりに平日という事で、心を清め耳を澄ませ目を潤わせて散策しようと、ゆったりとした気分で散策を開始した。このHPの掲示板に度々素晴らしい野鳥の写真をご投稿くださる相模原のぶんちゃんは、めらめらとした撮気で野鳥に逃げられてしまうことが最近多いと言う。花やキノコなら見つければまあこちらのもんだけど、野鳥や昆虫等の動物はそうはいかない。例えば小さな昆虫だって人の接近を感知して逃げてしまうし、撮気を持とうものなら殺気と感じてすぐに逃げてしまうのだ。言わば動物たちにはカメラは、ピストルやライフルのように見えるのだろう。われわれ人間だって微笑を浮かべた柔和な人間には親しみを持つが、目が血走って落ち着きが無く、しかも棒でも持っていたら近寄りたくないものだ。だから見れたらラッキー、撮れたらなおラッキーという心持で散策しないといけない訳なのである。しかし、私のようにもうさんざん様々なものを撮っているからそういう気分になれるのであって、始めたばかりの方にはとても難しい事なのだと思う。すなわち道端自然観察及び写真撮影の不動の悟りの境地に至るのには、だいぶ時間がかかると言う訳なのである。
 今日は久しぶりに五反田谷戸へ行って見ようと直行した。途中、もうキンラン、ギンランは咲き終わっているかなとも思ったが、雑木林の各所に咲き残っていた。まったく久しぶりに花の谷戸である五反田谷戸へ行ってみると、もうノアザミ、ミヤコグサ、タツナミソウが咲き出しているのには驚いた。また大好きなヒメハギも咲き残っていて、誰もいない静かな谷戸で、そよ風のように花散歩を楽しんだ。いよいよこれからは、五反田谷戸から目が離せなくなったという訳である。そんな素晴らしい珍しい野の花があるというのに、今日は何とかこのフイールドでヤマツツジを撮影したいと思った。連休に行った比企丘陵に比べて数が少なく、形良く咲く花を見たことが無いから今まで撮影したことが無かったのである。また、一面に咲くハルジオンも美しく撮りたいとも思ったのだから、前述した悟りの境地にかなり接近しているようである。何処にでも見られる外来種であるハルジオン、猫の額のような我が家の庭にも生えるハルジオン、しかし、いつも左右に弥次郎兵衛のように蕾をつけてバランスをとっているかのような花はとても面白く可愛らしいのだ。そこで普通に撮ってはつまらないから、久しぶりに溜池の水面反射の玉ボケを入れて撮影した。そんなハルジオンを撮影していたら傍らの花の上に、ご婦人たちの大嫌いなモモブト(腿太)カミキリモドキを見つけた。私なんか腿が太くってもそれは健康な母性の証拠と思うのだが、女性は皆、チェ・ジュウのように細っそらしたいらしい。しかし、撮影していてどうしてこんなに腿が太くなる必要があったのかと思うと笑ってしまった。
 五反田谷戸で思う存分ゆったりと過ごした後、この後何処へ行こうかなと思ったが、神明谷戸経由でキノコ山へ登り、万松寺谷戸へ降りて行くことにした。神明谷戸にはツマグロヒョウモンの雄がたくさん乱舞していて、もう越冬明けのタテハチョウは一頭だに見られない。キノコ山はキノコナシ山で、あんなに咲いていたタチツボスミレも一輪だに咲き残っていない。万松寺谷戸への降り口にヌルデが生えていたので、マダラアシゾウムシはいるかなと探してみると、仲の良い夫婦がいて、おまけにヨツキボシカミキリまで見つけた。急な坂を下ると切り倒したモウソウチクがたくさん積んであって、ベニカミキリはいないかなと探したら、ちゃんといてくれるたのだから嬉しくなった。ジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサが生えている栗林の下草は綺麗に刈られていて、これではジャコウアゲハが見られなくなってしまうかなと心配したが、雌が傍らの刈り残された草原で産卵飛翔をしているので行ってみると、ウマノスズクサが生えていた。なんとかジャコウアゲハを撮影したいと思ったが、発生盛期は連休中であったらしく、みんな尾状突起がなくなっていてボロボロの個体ばかりである。そこで仕方無しにウマノスズクサの葉裏に産卵された卵を撮った。アゲハチョウの仲間の卵はたいがい球形で面白くはないのだが、凹凸の紋様が入っていて、まるでオレンジ色のナツミカンか宇宙に輝く火星のようである。その後、にわかに空が黒々として来て雷小僧も登場し雨が降り出したので、谷戸に早くも発生したヒゲナガハナノミ等の撮影はこの次にして車に戻った。一休みしている内に雨が止んだので、小野路町のジョウカイボンを撮影して今日の散策を終了とした。

<今日観察出来たもの>花/キンラン、ギンラン、ササバギンラン、エビネ(農家の敷地で)、タツナミソウ、ヒメハギ(写真中左)、ノアザミ、キツネアザミ、ハルジオン(写真上右)、ミヤコグサ、ジシバリ、ニガナ、オニタビラコ、レンゲソウ、シロツメクサ、カラスノエンドウ、カントウタンポポ、ムラサキサギゴケ、トキワハゼ、カキドオシ、ケキツネノボタン、フタリシズカ、ミズキ、ヤマツツジ(写真上左)、キリ、ホウノキ、ニセアカシア、コバノガマズミ等。蝶/アオスジアゲハ、カラスアゲハ、クロアゲハ、ジャコウアゲハ、キアゲハ、ツマグロヒョウモン、コミスジ、コジャノメ、クロヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、ダイミョウセセリ、コチャバネセセリ、ヤマトシジミ、ベニシジミ等。昆虫/ヤマサナエ、シオヤトンボ、シモフリコメツキ、、マダラアシゾウムシ、ジョウカイボン(写真中右)、ベニカミキリ、ヒゲナガハナノミ、モモブトカミキリモドキ(写真下左)、ヨツキボシカミキリ、クロボシツツハムシ、ホソアシナガバチ、ホソヒラタアブ等。その他/ヤマカガシ、ガビチョウ、ヒメカバイロタケ、ジャコウアゲハの卵(写真下右)等。


2005年5月1日、東京都町田市小野路町

 いよいよ連休前半の最終日、風薫る5月に入った。今日は花曇りの天候で撮影には最適だが、相変わらず鯉のぼりのために風が強い。鯉のぼりは5月5日の子供の日だけに勢い良く泳いでくれれば良いのだが、何処の家庭でもその前から庭に鯉のぼりを立てているのだから仕方あるまい。それにしても昔の人はこの時期に風が毎日のように強く吹くということを知っていたらしく、子供の日(端午の節句)に鯉のぼりを泳がせようとしたのは成る程と頷ける。今日はキンラン、ギンラン、エビネ、クマガイソウと野生のラン尽しで頑張ってみようと思ったのだが、吹く風に相当悩まされてしまった。いつものように車を路肩に停めると、ニリンソウの谷に入って行った。ここは不思議な所で、風が強い日でもいつも静かだ。このため葉の上には各種の昆虫が見られ、今日はヒメクロオトシブミ、シモフリコメツキ、ヒメジョウカイが鎮座していた。舞岡公園ではヒメクロオトシブミはクマノミズキの葉が大好きだが、ここではコナラやノイバラ、もちろんクマノミズキの葉も巻いていた。また、羽化したてのヤマサナエが羽を休めていて、まったく逃げようともしないから楽々撮影する事が出来た。ヤマサナエはカワトンボと同じく丘陵地帯の細流に発生するから「山」というよりは「谷戸」ないし「里」の方が相応しいのだが、最初に発見された場所がきっと低山地であったのだろう。こんな命名は昆虫の世界では数多くあって、子供たちに人気のミヤマクワガタなんて、「深山」とつくのに私の子供の頃は、東横線綱島駅の裏山でも生息していた。
 谷戸を詰めた雑木林の縁のニリンソウ、イチリンソウの群落は、まだ咲き残ってはいるものの先週の眩しい程の豪華さはない。そこで急坂を登ってヤマグワの木の下にキツネノワンとキツネノヤリタケを見に行った。その両方とも生えていたが、どうして別種のキノコが同じような環境を分け合って、同時期に発生するのだろうかと不思議に思った。更に美しい雑木林の方に足を進めると、ボーイスカウトの野外訓練のための雑木林に囲まれた草地があるが、そこにはハルジオンが一面に咲いていて、遅ればせながら紫色のキツネアザミが咲き始めていた。そんな訳で、キツネノワン、キツネノヤリタケ、キツネアザミとキツネ尽くしとなったが、本物のキツネはもちろん現れずに、今年初めてのダイミョウセセリが現れた。また、雑木林に接する日陰にはウラシマソウがたくさん咲いていて、その花の髭の長いこと長いこと30cm以上はあるだろう。家に帰って図鑑を開くと、1メートルもの長さのものもあると記してあってびっくりした。これでは確かに、その名の由来となった浦島太郎の釣竿というのも頷ける。
 美しい雑木林に行く前に、ここで耕作に精を出すお爺ちゃんの家の庭に咲く、エビネとクマガイソウを撮らせて貰った。話によるとまだ人が行かない薮の中に、この両種とも見られると言うことだが、そんな薮の中に入っては、このHPは道端自然観察館でなくなると、道端からそのような所には決して入らないのだ。野生のエビネはとても地味な色をしているが、お爺ちゃんの庭には黄色、ピンク、赤褐色と色とりどり様々であった。美しい雑木林に入ると、もちろんキンラン、ギンランがお待ちかねで、何処でも見られるキンランよりも背がとても低いから、常に山掃除されるような雑木林でしか見られないギンランを撮った。キンランは豪華絢爛の宝塚のトップスターとすれば、ギンランは田舎町のタバコ屋の清純な乙女である。私が若かりし頃に下宿生活を送った信州の城下町松本市には、ギンランのような乙女がたくさんいた。誰だって静かな城下町にキンランのような女性は不釣合いだと思うことだろう。環境が人をつくるとはまさに名言である。それなら古いお寺が立ち並ぶ静かな由緒正しき鎌倉市にも、そのような女性が多そうに思えるのだが、東京に近すぎるようであまり見たことがないのは残念だ。
 午後からは去年の今頃にハルシメジが爆生していたので今年もどうかなと行ってみると、去年よりも尚一層の数が見られた。梅の木の下とはいえタンポポ等が咲く草地である。キノコと言えばじめじめした日陰を思い起こすが、ハルシメジはキノコの中でも異端児なのかもしれない。全部収穫すればかなりの量になると思われたが、なんとなく粉っぽいのではとも感じられた。ハルシメジは強風にもびくともしないから楽々撮影すると、毎度御馴染みの午後のコースを一周してみた。するとギンランが5、6本固まって咲いているのを発見した。さすが小野路と感激し、「やっぱり豪華絢爛の宝塚のトップスターも素晴らしい」と一人ごちたのだからしまらない。さあ明日一日仕事をして新潟に向け遠征するぞと、そのエネルギー確保のためにも足早に散策して帰路に着いた。

<今日観察出来たもの>花/キンラン(写真上右)、ギンラン、エビネ(農家の庭にて)、クマガイソウ(農家の庭にて)、タマノカンアオイ、ウラシマソウ(写真右左)、フデリンドウ、イチリンソウ、ニリンソウ、ムラサキケマン、スミレ、ビオラソロリア、ミツバツチグリ、ヘビイチゴ、レンゲソウ、カラスノエンドウ、カントウタンポポ、ムラサキサギゴケ、トキワハゼ、カキドオシ、ケキツネノボタン、タガラシ、ミズキ(写真上左)、ヤマツツジ、ハナミズキ、サヤエンドウ、ダイコン、ネギ坊主、ブルーベリー等。蝶/キアゲハ、ヒメウラナミジャノメ、コミスジ、ダイミョウセセリ(写真下左)、ベニシジミ等。昆虫/ヤマサナエ(写真下右)、シオヤトンボ、シモフリコメツキ、ヒメクロオトシブミ等。キノコ/ハルシメジ(写真中右)、キツネノワン、キツネノヤリタケ等。




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