東京23区内道端自然観察館
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東京23区内は誰もが認める都市化が最も進んだ地域である。しかし、かなりの生き物が頑張って生活していることも確かである。
そんな特異な地域で生き物達を見つけて、美しい写真が撮れたらどんなに素敵な事だろう。横浜に住んでる人間がわざわざ出掛
けて行くのもおかしいが、前からとても興味があったことなのでスローペースでやり始めてみる事にしました。


2004年12月28日、東京都品川区林試の森公園











林試の森公園入口/ヤブツバキ/ツワブキ/ウメ











イヌホウズキ/ピラカンサの実/ナワシログミの実/ヘクソカズラの実











ヤブミョウガの実/ハンカチノキの冬芽/ハンカチノキの冬芽/ニワウルシの冬芽











ハリエンジュの冬芽/センダンの冬芽/トチュウの冬芽/ノグルミの冬芽











ムクロジの冬芽/アジサイの冬芽/アカメガシワの冬芽/イイギリの冬芽

 月に2回、東京23区内の公園へ道端自然観察に行くと決めてしまったので、12月ももう一回行かなくてはならなくなった。寒さも相当厳しくなったので、そう期待は出来ないし、まさか、野鳥用の重い機材を持って行くわけにもいかない。前回、戸山公園へ行った後、今度はどこへ行こうかと地図を広げていたら、品川区に林試の森公園と言うかなり広い公園が目に入って来た。早速、インターネットで調べてみると旧林野庁林業試験場の跡地で、様々な樹木が見られるとある。しかも、東急目黒線の武蔵小山駅からすぐとあるから非常に行くのに楽なのである。これは私的な事であるが、我が亡き両親が新婚生活を始め、戦災にあったのもこの周辺なのである。もし、戦争が無ければずっとこの辺りに住んでいて、私も小山台小学校、中学校、高等学校、東京大学へと進んで、だいぶ今の生活とはかけ離れた生活をしていたかもしれない、そんな冗談はさておき、林試の森公園は、こんな所があったのと目を疑いたくなるような道端自然観察には好適な公園であった。案内板を見ると250種類以上の樹木があり、かなり珍しいものまで見られるとある。また、鳥類ではオオルリ、オオコノハズク、サンコウチョウも見られるとあり、蝶ではゴマダラチョウが、昆虫ではオツネントンボ、カンタン、カブトムシが見られるとあるのだ。これはたったの一回だけの観察かもしれないが、それらのものがいても可笑しくない環境であった。今日は主に樹木の冬芽と葉痕を中心として回ったが、今まで観察したことのないノグルミやトチュウの木があった。出かけたのが遅かったし冬の日は短いから、ほんの少ししか撮影できなかったが、これはこれは樹木に親しむには格好の公園で、ことによったら小石川植物園を凌ぐのではないかと思われる程だ。是非とも四季折々に出かける事をお勧めする素晴らしい公園であった。

<今日観察出来たもの>花/サザンカ、ヤブツバキ、ボケ、イヌホウズキ、ツワブキ、ウメ等。昆虫/クワコの巣。鳥/シロハラ、オナガ、コサギ等。その他/ヒヨドリジョウゴの実、アオキの実、ヘクソカズラの実、センダンの実、ヤブランの実、ピラカンサの実、ヤツデの実、ヤブミョウガの実、イイギリの実、ナワシログミの実、ノグルミの冬芽、アオキの冬芽、フジの冬芽、センダンの冬芽、アジサイの冬芽、トチュウの冬芽、アカメガシワの冬芽、ハコネウツギの冬芽、ムクロジの冬芽、ニセアカシアの冬芽、ハンカチノキの冬芽等。


2004年12月14日、東京都新宿区戸山公園











戸山公園入口/サザンカ/ユリオプスデージー/ボケ











ウグイスカグラ/センダンの実/ピラカンサの実/ヤツデの実











イボタの実/アオキの実/ヤマボウシの紅葉/イチョウの落葉










センダンの冬芽/アジサイの冬芽/アオキの冬芽/エンジュの冬芽











ニセアカシアの冬芽/カラスザンショウの冬芽/コブシの冬芽/ヌルデの冬芽











コフキサルノコシカケ/カワラタケ/オオクモヘリカメムシ/テントウムシ

 なるべく都心からだと中央区、千代田区の順に道端自然観察に出かけたから、今度は新宿区の公園へ行って見ようと考えていた。新宿区で一番大きい公園は入場料有りの新宿御苑である。ここへ行ったらそれこそ面白いものが一杯ありそうだが、あって当たり前の公園だから後回しにした。地図を開くと戸山公園と言う所が、かなり広くて面白そうだ。昆虫写真家の海野和男さんがご幼少の頃すごされた所で、氏の昆虫観察の第一歩は戸山公園であると、何かの著書で読んだ記憶がある。戸山公園は尾張徳川家の下屋敷跡で、44.6mの高さの箱根山がある。この箱根山は23区内で一番標高がある山だと思っていたが、山手線内で一番とか新宿区で一番とかの説もあってちょっとがっかりした。しかし、登ってみると見晴らしは素晴らしい。箱根山の山麓には陸軍戸山学校跡との石碑があって、遠い軍国主義下の暗い歴史を思い出した。また、戸山教会も隣接していて、12時には教会の鐘が鳴り響いたのには驚いた。春から初秋にかけてならまだしも、こんな年末に観察できるものなどほとんど無かろうと思ったが、公園はかなりの広さがあって、クヌギやコナラ等の雑木林の樹種が残っていた。よく見ると樹液が出たらしい痕が残っているので、夏に行ったらカナブンくらいは観察できそうだ。そんな訳で今日は徹底して、樹木の冬芽と葉痕に的を絞って散策した。戸塚公園は箱根山のある箱根山地区と高田馬場に近い大久保地区があって、かなり離れている。昆虫や野花やキノコ等の自然観察には箱根山地区の方が野趣に富んでいて面白そうだが、樹木に限っては両地区を散策することをお勧めする。まさかあろうとは思わなかったセンダン、カラスザンショウ、ウグイスカグラ、イボタ等は大久保地区にあった。これで東京23区内道端自然観察は第3回目となったが、みなそれぞれ自然度は低いものの、浜町公園や日比谷公園より戸山公園の箱根山地区の方がはるかに上である。春から初秋にかけてはかなり期待出来そうなので、今度は時期を選んで是非もう一度訪れてみたいと感じた公園であった。

<今日観察出来たもの>花/サザンカ、ツバキ、ボケ、ウグイスカグラ、ユリオプスデージー等。昆虫/テントウムシ、オオクモヘリカメムシ。キノコ/コフキサルノコシカケ、カワラタケ、アラゲキクラゲ、スエヒロタケ。その他/ヒヨドリジョウゴの実、アオキの実、イボタの実、センダンの実、ヤブランの実、ピラカンサの実、ヤツデの実、トチノキの冬芽、アオキの冬芽、フジの冬芽、センダンの冬芽、アジサイの冬芽、エンジュの冬芽、アカメガシワの冬芽、ニワトコの冬芽、ヌルデの冬芽、ニセアカシアの冬芽、カラスザンショウの冬芽等。


2004年11月30日、東京都千代田区日比谷公園











飯野ビルからの日比谷公園入口/イチョウの黄葉/黒松の藁巻き/アカメガシワの葉











サザンカ/ヤツデの実/ツワブキ/ハマヒサカキ











ヒヨドリジョウゴの実/アオキの実/ヤブミョウガの実/クチナシの実











アメリカスズカケノキの実/ハマヒサカキの実/トチノキの冬芽/マロニエの冬芽











コフキサルノコシカケ/カワラタケ/アラゲキクラゲ/ミンミンゼミの抜殻











アカスジキンカメムシの幼虫/コカマキリの卵のう/ヒメフンバエ/種名不明の蛾

 東京23区内道端自然観察の第2弾は何処へ行こうかと考えていたが、中央区の次は皇居のある千代田区、千代田区と言ったら日比谷公園に行かないと何だか片手落ちである。あまりにも有名で広い公園はパスしようと考えていたが、誰もが知っていていつでも行ける日比谷公園なのだから、これは散策して来るしかないなと思った訳である。以前にももっと季節の良い時に何べんも行っているから、それなりのものはあるのではないかと思ったが、何と言っても明日から12月だからちょっぴり不安が掠めた。しかし、上に貼り付けたような写真が撮影出来たのだから、合格点どころか望外な好結果であったと言えよう。特にヒヨドリジョウゴの実があった事とアカスジキンカメムシの幼虫がいた事、コカマキリの卵のうがあった事がとても嬉しかった。日比谷公園は前回行った浜町公園に比べて樹木が沢山あり、しかも鬱蒼としているからキノコも生えているのでは無いかと思ったが、いわゆる傘と柄がある一般的なキノコは無かったものの、サルノコシカケの仲間やアラゲキクラゲがあった。今日は気温が低くおまけに北風が強いから蝶や昆虫達はお出ましにならないのではと思ったが、ツワブキやヤツデの花に各種ハナアブやニホンミツバチが見られた。いったいニホンミツバチは何処に巣を造っているのだろうか。日比谷公園にはグリーンアドベンチャーと名付けられた樹木30種を紹介していて、また、郷土の木と言うことで都道府県の木が植えられているコーナーが、飯野ビルに面した入口付近にある。こんな訳で冬芽と葉痕観察にも好適な環境で、もちろん樹木があればその実も見られ、アカスジキンカメムシの幼虫はアメリカハナミズキの真っ赤な実で吸汁していた。日比谷公園はこれからの厳冬期は無理にしても、季節が良くなれば必ず多くの生き物達の楽園になる事が今日の散策で確認出来た。初夏になればクスノキがたくさん見られるからアオスジアゲハが青空に舞っている事だろう。また、梅雨時や初秋のキノコ観察もとても興味が持てる場所である。いづれにしてもお隣は東京23区内で一番自然が残っていると言われる皇居だから、鳥達が実を、風が種や胞子を、羽のある昆虫達は飛んで来る事も出来るのだから、とっても楽しみな公園である事は言うまでも無い。

<今日観察出来たもの>花/ツワブキ、ヤツデ、セイヨウタンポポ、イヌタデ、ソバ、サザンカ、ハマヒサカキ等。蝶/ヤマトシジミ。昆虫/ヒメフンバエ、アカスジキンカメムシの幼虫、ミンミンゼミの抜殻、コカマキリの卵のう、ハナアブ、ホソヒラタアブ、ニホンミツバチ等。キノコ/コフキサルノコシカケ、カワラタケ、アラゲキクラゲ。その他/ヒヨドリジョウゴの実、アオキの実、ヤブミョウガの実、クチナシの実、センリョウの実、ヤブランの実、アメリカスズカケノキの実、ハマヒサカキの実、トチノキの冬芽、マロニエの冬芽等。


2004年11月17日、東京都中央区浜町公園



都営新宿線浜町駅出口/浜町公園入口/明治座を望む/自然観察コーナー



ツワブキ/イモカタバミ/ベニバナシャリンバイの実/アオギリの実



センリョウの実/ヤブランの実/フエジョアの実/ハンカチノキの冬芽



アゲハ/ウラナミシジミ/ヤマトシジミ/チャバネセセリ



ハナアブ/アシブトハナアブ/シマハナアブ/ナミホシヒラタアブ

 なんでこんな花や虫が少なくなった晩秋から、この東京23区内道端自然観察館を始めなければならないのか不思議であるが、まあ、月に2回程度だからのんびりやって行こう。今日は何と言っても東京のど真ん中はお江戸の昔から日本橋と決まっているので、浜町にある浜町公園に行った。ここは大きな区のスポーツセンターが同公園内にあることでも有名な場所で、都営地下鉄新宿線の浜町駅出口が公園の傍らにある。また、隣接してハゼやセイゴやボラの釣れる隅田川が流れ、街中には明治座がある。はたしてこんな環境の中の公園に、花や虫はいるのかな、しかも晩秋であるからとても不安であったが、行って見てとても驚いた。それ程広くはない公園なのに、野の花や昆虫達に配慮した自然観察コーナーもあって、しかもアゲハの仲間の食草であるミカン、キンカン、レモン等の柑橘類がたくさん植えられていた。また、ハギも植栽されているからウラナミシジミ、ツバメシジミ、ルリシジミ等の仲間にも配慮しているようだ。今日は晩秋だと言うのに蝶では、アゲハ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミ、チャバネセセリが見られた。特に、こんなに寒くなってもアゲハがひらひら飛んで来たのには驚いた。花では植栽されているツワブキが各所にそれはそれは見事に咲いて、この蜜を求めてハナアブ、アシブトハナアブ、シマハナアブ、ナミホシヒラタアブとハナアブの仲間がたくさん集まっていた。ハナアブの幼虫は下水溝等に住んでいて腐食物を食べていると言うから、都会の中でも成虫の食べ物である花が有りさえすれば生息可能である事が分かった。今日一番勉強になったのはアオギリの実である。散歩道を歩いていて地面に変わったものを発見したのだが、これは一体なんだろうと首を傾げた。その場所から頭上を見上げると、アオギリにこの変わったものがついている。帰宅して図鑑を開いてみると、アオギリの果実の皮にくっついている種子である事が分かった。また、これから冬に向かうと花や昆虫達は見られなくなるものの、ハンカチノキが植栽されていて、とっても可愛らしい葉痕が見られたから、お近くに出向いた折には是非散策して欲しい。いずれにしても行く前の「なんにもないんじゃない」と言う杞憂はすっかり晴れて、この東京23区内道端自然観察が今後楽しくなりそうである。

<今日観察出来たもの>花/ツワブキ、イモカタバミ、イヌタデ、ノゲシ、カタバミ等。蝶/アゲハ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミ、チャバネセセリ。昆虫/ハナアブ、アシブトハナアブ、シマハナアブ、ナミホシヒラタアブ等。その他/センリョウの実、ヤブランの実、アオギリの実、ベニバナシャリンバイの実、フエジョアの実、ハマナスの実、ハンカチノキ冬芽等。


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